Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#25 IR推進法案が国会へ提出されました 2015/04/28

国際観光産業振興議員連盟(IR議連)は4月28日、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)を衆議院に提出しました。IR議連は自民党、民主党、公明党、維新の党、次世代の党など7党219人(2015年3月30日現在)の衆参国会議員が参加する議員連盟で、「カジノを含む統合型リゾート」(Integrated Resort・IR)の導入を検討しています。

IR推進法案は2013年12月に衆議院に提出されましたが、2014年末の衆議院解散総選挙に伴って廃案となり、今国会での再提出に向けて調整が進められていました。総選挙では自民党、維新の党の両党がIRを公約に掲げて選挙戦を戦った一方で、今国会では安保法制議論に加えて4月中に統一地方選挙が行われたため、地方議会議員の層の厚い公明党では与党内でも公明党に慎重意見も見られました。IR議連では先月末の総会開会後すみやかに法案を提出する方向で調整を進めていましたが、公明党に配慮するかたちで提出をいったん見合わせていました。先週末の公明党政調部会および本日の政調役員会における協議においてIR推進法案提出について容認の方向となり、本日開催された与党政策責任者会議において自民党の法案提出提案に対して公明党から異論が出なかったため、本日の法案提出に至ったという流れになります。

今回の提出にあたっては、報道等で焦点とされてきた法案付託先委員会については未定となっています。これは衆参両院のどの委員会で法案の議論を行うかということですが、提出後に各党の国会対策委員会で調整する例は他の法案でも多く見られるもので、特段「まだ決まっていないのか」と目くじらを立てる必要はないでしょう。「法案審議の目途がたっていない」との指摘についても、今国会では安保法制に加えて昨年末の衆院解散に伴って審議が待たれる法案が多く残されているため、大幅の国会延長が見込まれています。会期延長幅が不透明な現状では法案成立目途を議論すること自体、あまり意味のないことだと思います。

逆に言えば、国会会期延長幅が法案成立可否のひとつの要素となるということです。こちらのコラムでも指摘してきましたが、報道等の議論では現在も偏りが見られるため、法案提出にともなって多面的な議論が進むといいですね。

(写真=2015年4月28日IR議連メンバーが衆議院へ法案提出。IR議連提供)

#24 カジノの解禁・ギャンブルと選挙 2015/04/13

IR推進法案は現在、国会への提出の是非を巡って与党内で調整を行っています。報道等で広く報じられている通り公明党の一部に慎重論があるため、与党内で意見が分かれている法案として注目を集めています。法案について報道で取り上げられるようになったこと自体は議論の俎上に載せられたという点で好ましいことですが、公明党幹部の発言に過度の注目が集まりすぎているという感じがします。

端的に言ってしまうと、統一地方選挙戦のさなかという特殊な状況下に置かれている中で、カジノ・IRについて結論を出していない政党幹部が、ギャンブルという一面を持つカジノ・IRに関してどういった反応を示すのかということですね。会見などの場でマスコミ各社からマイクを向けられれば何らかの応答をしなければなりません。そうなると当然ながら慎重な発言になります。公明党は「平和の党」を自認する政党で主婦層を主なターゲットとしていることに加えて、IR法案についていまだ偏った議論が行われていることも影響してきます。

党幹部が「党内で議論を行う」と明言しているのですから、議論の結果を待てば良いのです。日頃から議論を重ねてきた政党ならいざ知らず、法案に対してIR議論を続けている政党が議論の進展によって法案への態度が臨機応変に変わるということは特に珍しいことではありません。国会議員など政治家も有識者などからヒアリングを行い、議論を重ねて論点を整理して、対応を考えます。我々が日々の報道や書籍、インターネットなどを通じて新しい情報に触れ見方を一新するのと同様、国会議員でも自身の専門的な領域でなければ新たな知見に触れて考えを改めるというのはよくあることです。

昨年末の衆議院解散・総選挙の時に行われた候補者アンケートの結果を示して「この党は~」と断言する方が多いのですが、公約ならまだしもアンケート自体にはあまり深い意味はありません。いずれにせよ統一地方選のうち知事選や道府県議会選など大きな自治体の選挙を行った前半戦が終了したことで、近く結論が出ることになると思います。

#23 IR議連が総会を開催 2015/03/31

国際観光産業振興議員連盟(IR議連)は30日、国会内で総会を開催しました。今回の総会は昨年末の衆議院解散・総選挙後初の開催になります。

解散時に廃案となっていた「特定複合観光施設の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)は、昨年夏ごろより報道等を通じてギャンブル依存症問題に関する懸念の声が相次いだことから、昨年10月のIR議連総会でIR実施法案に盛り込む予定だった日本人に対する入場規制を推進法にも盛り込むこととした修正を決議。すでに法案を衆議院に提出していたことから、各党の調整を経て国会審議を通じて修正を反映していくこととしていました。今回提出の法案ではこの修正箇所をあらかじめ反映。加えて、政府に推進本部を作る他の法案と合わせるかたちで、主任大臣の規定を置くこととしました。

法案再提出の時期は前回のコラムで書いた通り当初は今月内の提出に向けて調整を進めていましたが、与党内での調整に時間がかかっているため、現時点では4月中旬と目されています。すでに地方自治体などでは予算案審議が終了していることに加え、統一地方選への影響なども見据えて、慎重に調整を進めて今国会での成立の可能性を高める方向にかじを切ったことになります。

海外などではこのような永田町の論理はなかなか通じないこともあって、日本におけるIR導入可能性を疑問視する見方もあるようです。しかし、これはどこの国でもそうですが、ギャンブルの解禁という側面を持つIRの導入は10年単位の時間がかかるのが通例。長期の視点で見る必要があると思います。石原慎太郎都知事の時代から17年目でここまで来たのですから、私も期待して見守りたいと思っています。

#22 IR議連が幹部会を開催 2015/03/24

国際観光産業振興議員連盟(IR議連)は24日に国会内で幹部会を開催し、今月30日に総会を開催することを決定。この中で総会開催後、すみやかにIR推進法案を国会に再提出することを確認しました。

IR推進法案は当初、2月にも国会へ再提出される見込みでしたが、イスラム国や閣僚の交代等により平成27年度予算案の審議が大幅にずれ込んだ影響で調整日程が大きくずれ込みました。今月13日に衆議院を通過したことから、先週より提出に向けた調整が本格化。誘致に取り組む自治体などの予算への影響も考慮して、年度内の提出になんとか道筋を付けました。

法案には提出者、賛成者として自民党・維新の党・次世代の党・太陽の党の各党より国会議員が名を連ねており、次世代と太陽は国会で統一会派を組んでいることから、3会派4党による法案提出というかたちになります。議連では総選挙を挟んで衆議院の構成議員に変化があったため、総会開催に向けて参加議員をさらに募ることとしています。

法案は議員立法として提出されることから、慣例により国会での審議順は政府提出法案(閣法)のあと。実際の審議は5月の連休明け以降になる見通しです。今までのような賭博というレッテル張りのようなイメージ先行の表面的な議論ではなく、提出によってメリット・デメリットを冷静に比較衡量する深い議論に発展するといいですね。

#21 国会は日程闘争 2015/03/17

最近、一部の地方紙などにIR推進法案の成立見通しが厳しいといった趣旨の記事が相次いで、関係者などにも動揺が広がっているようです。私のところにも問い合わせが来ていましたが、取材先で何人かの有識者と話す機会に尋ねたところ、どなたも似たような状況のようです。

私の感覚ではこの時期に、今国会での法案成否の観測が出ること自体に、強い違和感を禁じえません。日本の国会には会期の縛りがあるため、賛否の分かれる法案については野党が日程闘争に持ち込むことが通例です。というのも、過半数を占める与党が党議拘束をかけている法案では、野党の一部に反対があったとしても、採決に持ち込まれてしまえば必ず成立することになるからです。これは何ら問題あることではなく、民主主義国家における法律制定プロセスとしてごく当たり前のことです。しかし反対する勢力はマスコミを通じて世論に対して「横暴だ」とのアピールをすることが通例で、たいていは形だけで終わるものですが、会期末ギリギリになると野党の言い分で与党が譲歩することも実際にあります。

しかし、今回のケースでは2015年通常国会の会期末まで3カ月を残し、議員立法はおろか政府提出法案、予算案までもが国会を通過していません。また通常国会会期末までには官邸が会期の延長をするかどうか判断することになりますが、その結論すら出ていません。記事ではコメントの主は政府高官とされるものが多いようですが、記者会見の中での発言ですらなく、特段注目に値する内容だとは私自身は思いません。統一地方選挙や集団的自衛権の審議で後半国会は法案が立て込むことも事実ですが、これは一年以上前から想定されていたことです。法案成立が難しくなったと言い切るには、時期が早すぎるということですね。

つらつらと書いてきましたが、こういった報道が出ること自体はIR推進法案がいよいよ世間で論じられるようになったということで、好ましいことだと思っています。その一方で、読者の方にとってはリテラシーの求められる時代になったのだともつくづく感じます。政治記者は政局の専門家で、話していると勉強になりますが、ことにIRについての知識ではまだまだと肩を落とすことも少なくありません。政治記事はテーマが非常に多岐にわたるたりIRはそのうちのひとつでしかないため、これは仕方のないことです。新聞報道ということもあって動揺された方も多いようですが、ここを読まれている方かなりIRについて知識のある方なのでしょう。「そういう報道も出るほど社会の関心が高まってきた」とどっしり構えてほしいと思います。

#20 アトランティックシティのカジノは失敗だったのか 2015/03/06

先日、参議院内で開催された日弁連主催のIRの反対集会を取材する機会がありました。反対集会についてもこれまで何度も参加しているのですが、賛成・反対で議論がかみ合わないものだなといつも感じています。

反対派の主張として昨年起こった米国・アトランティックシティでのカジノ閉鎖がよく取り上げられるのですが、一部分を切り取った議論だというのが正直な感想です。米国ではカジノ合法化は合衆国政府ではなく、州政府の管轄になります。アトランティックシティの位置するニュージャージー州でのカジノ解禁は1970年代。ラスベガスを擁するネバダ州に続いて古いもので、当時の時代背景を反映してマフィアなど社会悪の排除を念頭とした公的部門による厳格な法制度なっています。一方でネバダ州のモデルはライセンス交付時に厳格なチェックを行い、問題があった場合に巨額の罰金を科すというもので、米国ではこれがスタンダードになっています。ニュージャージー州がカジノを合法化した当時は近隣の州から多くの観光客が訪れていましたが、ここでは公による厳格な監視コストを税収として事業者が負担するかたちです。近隣の州にラスベガス型で設置されたカジノができれば、当然のことながら競争力で劣り、いずれ閉鎖に追い込まれるというのは既定路線。いわば時代的役割を終えたというのが妥当な表現だと思います。

私などは個人的にむしろ評価されて良いものと思っています。観光地として苦境に陥っていたアトランティックシティの観光を建て直し、40年近くにわたって州政府の財政にも寄与してきたのですから。日本でも40年にわたって続いたお店はむしろ老舗のたぐいと言えるでしょう。形あるものはいずれ消えゆくもので、ことさら最後だけ部分的に切り取ってやいやい言うことは不毛なのではないでしょうか。

#19 日本のギャンブル依存症についての研究調査は、まだまだ手探りの状態 2015/02/27

日本におけるカジノ・IRの議論の中で、特に注目されていることはギャンブル依存症問題についてだと思います。IR推進法案は2014年6月に衆議院で審議入りしましたが、8月にアルコール依存に関する厚生労働科学研究の報告書のなかで国内のギャンブル依存症者数の推計として536万人とする数値が報道で取りざたされて、一気に注目が集まった感があります。

最近、複数の専門家の方にお時間をいただいて話を伺っているのですが、その中で強く感じることは、日本ではギャンブル依存症という問題に対してまだまだ手探りの状態だということです。536万人という数値については海外で使用されている問診の診断基準を日本語に訳して算出したものですが、微妙なニュアンスの違いで数値が大きく増減するおそれが指摘されています。536万人という数値だけが独り歩きしていますが、成人男性の1割弱がギャンブル依存症を抱えているというのは、常識的に考えてもおかしいのではないかと思います。実際に専門家からも推計に用いた診断基準について疑問視する声が多数上がっています。

日本ではカジノ反対の文脈の中で依存症問題について取り上げられることが多々ありますが、これもどうなのでしょうか。日本のギャンブル依存症についての一番大きな問題点は、現在行われている公営ギャンブルやパチンコに、依存症対策のための予算が全くないということです。依存症問題についてはいまだに自己責任とする社会の風潮も根強くあり、パチンコ産業は遊技という建前で限定的な取り組みしか行っておらず、他の公営競技では対策そのものがありません。

#18 候補地選定はまだまだ先の話 2015/02/23

先週末、一部全国紙の一面トップに「政府が横浜、大阪で開業することを固めた」との記事が掲載され、話題になりました。過去の例では、昨年7月にも別の全国紙1面に「大阪・沖縄が候補」との記事が掲載されたこともあります。

IR議連の方針では推進法制定後に実施法を定め、用地指定はその後に主務大臣が地域指定のための基本方針を定めることとしています。現在は基本方針はおろか推進法も成立していない状況なので候補地特定などはまだまだ先の話です。おそらく政府側からの何らかの発言をもとに記事にしたのだと思いますが、法案への理解が足りていません。小誌は取材で全国紙の記者の方と同席することも多くありますが、総会や幹部会後のブリーフィングでの質疑応答で、議連側から「過去の資料に書いてあります」とたしなめられる場面を何度も目撃してきました。

私は国会のほかに地方取材も担当しているため、こういった記事が出るたびに地方誘致に取り組まれている関係者から問い合わせが殺到します。新聞やテレビなどは小誌とは違い広く国政全般をカバーしないといけないという事情も分かりますが、報道するからにはきちんとした取材を行ってほしいですね。私もそういった記事が出るたびに関係者に対して「あの記事は~」と批判するのは、気持ちの良いものではありません。

#17 オススメの珠玉の3冊 2015/02/16

先日、情報交換を兼ねて某所に伺った際、書籍の話題になりました。最近はカジノ・IRをテーマとする書籍の出版が相次いでいますが、これはここ数年の話。数年前までそういった書籍は年に数冊程度で、どれも読み込んだものです。今回はちょっと脱線して、私が教科書として読み込んだ一般書を3冊ご紹介しましょう。

■谷岡一郎「カジノが日本にできるとき」(2002年)
13年前に出版された本ですがいま読んでも全く色褪せていません。当時はシンガポールのカジノ合法化検討以前でIRという言葉すらありませんでしたが、IRがなぜ年間を通じて高い客室稼働率を維持できるのか、その概念をきちんと描かれています。入門書として今でも自信を持っておすすめできる一冊です。

■浅田次郎「カッシーノ!」(2003年)
作家・浅田次郎氏がヨーロッパ各国のカジノを巡った紀行文を1冊にまとめたものです。モナコ、オーストリア、スイスなど大人の社交場としてのカジノの雰囲気を浅田氏の流麗な文章とふんだんな写真とで余すことなく伝えています。事前調査をしっかり行ったのでしょう。歴史的背景などもきちんと描写されています。

■梅澤忠雄、美原融、宮田修「ニッポンカジノ&メガリゾート革命-国際観光立国宣言-(2007年)
教科書として何かにつけて参照している本です。発刊当時の法的枠組みであった公設民営をベースに極めて詳細に描き、その内容の多くは現在においても通用します。梅澤氏は各地の構想について写真を交えて、美原氏は法律の詳細ならびにシンガポールのIRについて、宮田氏は代議士などキーマンへのインタビューを行っています。

こうして並べてみるとどれもずいぶん前のものですね。こういった本が現在の私たちの議論の基礎を作ってくれているということなのでしょう。興味のある方は是非ご覧になってください。

#16 IR議連が衆院選後初の幹部会を開催 2015/02/07

国際観光産業振興議員連盟(IR議連)は2月6日、国会内で衆院選後初の幹部会を開催しました。「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)は昨年11月に衆議院が解散された影響で廃案となっていたため、議連として法案を再提出することを決定しました。
IR推進法案は前回2013年12月に国会へ提出され、昨年6月に衆議院内閣委員会で審議入りしましたが、それもあって報道では夏ごろからギャンブル依存症にスポットが当たり始めました。そのため議連は秋の臨時国会で「日本人の入場に制限を加える」という趣旨の法案の修正案をまとめ、法案が国会に提出されていたことから衆参の委員会での審議を通じて変更を促すことにしていました。今回、はからずもIR推進法案を再提出することになったため。変更点を反映したものが提出されることになります。
今後、再提出にあたり法案に名を連ねる提出者・賛同者の人選、衆参で審議を行う付託先委員会といった細部を詰めた上で、総会を開催する方向です。審議入りは5月以降となる見込みですが、これに先立って議連として勉強会も開催することにしており、法案に対する正しい理解を審議までにいかに広げるかが法案成立のキーになりそうです。

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