Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#48 カジノ機器見本市G2E Asia② IR機能の一部「場所としての国際展示会場」 2016/05/26

「G2E Asia」はアジア地区最大のゲーミング機器国際見本市として知られていますが、「見本市」と聞いて皆さんは何をイメージされるでしょうか。

一般の方なら近い例として「モーターショー」「コミックマーケット(コミケ)」などを思い浮かべるかもしれません。しかしモーターショーは企業対消費者の「B to C」(厳密には特別公開の「B to BC」もある)、コミケは消費者対消費者の「C to C」の色合いが濃くなります。一方で、見本市は「B to B」すなわち企業間の取引の場になります(こちらでも厳密にはB to BCも存在します)。モーターショーやコミケでは地方からの参加者が深夜バスで行き来するといったこともあるでしょうが、見本市では会社の経費を使って出張として派遣されます。そうなると、ホテルや飲食もそれなりの場所になり、帰りがけに観光するといったことも考えられます。つまり、誘致した地元の飲食業・宿泊業・観光産業などに大きな経済効果をもたらすことになります。国際見本市では、インバウンドとして海外からの出張者やその家族が訪日するため長期滞在が見込め、飛行機代も加算されるため経済効果がさらに期待できるわけです。

G2E Asia 2016の会場内にはゲーミングに関連した各社の最新機器が並んでおり、参加者は各企業のブースをめぐって競合他社の製品を相互に見比べ、気に入ったものがあれば実際の商材に触れながら担当者に商材について尋ねることができるようになっています。会場となったホテル「ヴェネチアン・マカオ」にはカジノのほかショッピングモールやレストラン、バーなどの店もたくさんあるので、担当者と話が盛り上がったら近くのバーに移動してマンツーマンでゆっくり商談を…といった使い方もあるかもしれません。

会場内で行われる「商談」そのものの経済効果も見逃せません。Reed Exhibitions Japan㈱のHPによると、2015年2月に日本で行われた「スマートエネルギー展」では3日間で総額1,733億円もの商談が、なんとその場で行われたそうです。こうした現状を踏まえ、展示会などの主催者で構成する「(一社)日本展示会協会」(日展協)の石積忠夫会長は2014年1月の会合の席で、国会議員11名や経産省の関係局長、観光庁長官らを前に「展示会は経済発展の切り札」と強調しています。

一方で、日本国内の展示会場は需要に対して供給が全く足りていないという現実があります。日本国内の展示会場総面積はアメリカの671万㎡、中国の475万㎡に比べて35.1万㎡しかありません(2014年・日展協調べ)。もともと需要が足りないなかで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催で20か月間にわたり東京ビッグサイトと幕張メッセが使用できなくなるため、展示会関係者の間で大問題になっているわけです。「展示会場の不足のため開催を断念せざるを得ない展示会が非常に多く、日本にとって大きな機会損失を招いている」(同上・石積氏)という現実があります。

2013年3月の衆議院予算委員会では、IR議連副会長で民主党所属(当時)の鈴木克昌衆議院議員がIR推進法案関連の質疑の中で、安倍晋三首相への同じ趣旨で質問を行っています。安倍首相は「ハノーバー・メッセに行く機会があり、余りにも大きいので相当びっくりした。しっかりとこの見本会場に我々も力を入れていきたい」と答弁していました。鈴木氏は展示会場の事情に通じた議員であるとともに、IR議連の主要メンバーでもあります。

今回のG2Eが開催されたCotai Expoの展示会場面積は約7万5千平米に及び、日本国内1位の東京ビッグサイト(約8万㎡)と2位の幕張メッセ(約7.2万㎡)のちょうど中間の規模にあたります。このような施設をヴェネチアンはじめとするIRリゾートではオペレーターが自ら建設しているわけです。日本進出を表明しているオペレーターの中からは5千億円から1兆円もの建設資金を投入するとの声も上がっていますが、これはカジノ単体にそれだけつぎ込むという意味ではなく、このような国際展示場などのMICE施設の建設費も含まれているわけです。つまり、IRが建設されればそこを起点として国際見本市などのビジネスが生まれ、さらに経済効果が広がっていくことになります。IRというとカジノばかりに目が行ってしまうものですが、公金を投入しない民間のインフラ投資事業としての側面も見逃してはいけません。

ちなみに、次回の「G2E Asia」は2017年5月16日から18日に今回と同じ「ヴェネチアン・マカオ」で開催。日本企業の出展はReed ISG Japan株式会社(担当:平野氏 hiranos@reedexpo.co.jp 03-6261-2996)で受け付けているそうなので、興味をお持ちの方はお問い合わせされてはいかかがでしょうか。

次回のコラムからは、個別のブースに焦点を当てていきます。

(写真)会場内でゲーミング機器を熱心に見つめる参加者

#47 カジノ機器の国際見本市「G2E Asia」に行ってきました① 2016/05/24

マカオにあるIRリゾートホテル「ベネチアン・マカオ」で今月17日から19日までの3日間開催された、ゲーミング機器の国際見本市「G2E Asia 2016」に行ってきました。「G2E(Global Gaming Expo)」は米国内のカジノオペレーターや機器メーカーなどからなる「American Gaming Association(アメリカゲーミング協会)」と国際見本市オーガナイザー「Reed Exhibitions(リード・エグジビションズ)」の共催で、毎年ラスベガスで開催しているものです。G2E Asiaはそのアジア版で、アジア最大のカジノ産業展として知られています。2007年のスタートから10周年にあたる今回は、主催者によると83の国と地域から昨年比1割増の約1万1千名の参加者が会場を訪れたそうです。

会場は「カジノを含む統合型リゾート(IR)」であるヴェネチアンに併設された国際展示場「Cotai Expo(コタイ・エクスポ)」。1階にあるA・Bの二つホールをつなげた9,200㎡の展示場フロアに、今年は昨年より20多い180の出展ブースが並びました。隣接する会議場でも世界やアジアのゲーミング市場や、IR産業の最新動向、オンラインカジノなどをテーマとしたセミナーを開催。このほか会場内では立食パーティーも行われ、新たな取引先の開拓として、あるいは情報交換の場として利用される訳です。すなわち、企業の展示ブース、各種セミナー、ネットワーキングパーティーの3つの要素が大規模で行われるものが「国際見本市」ということになります。

今回のG2E Asia 2016では日本からIR誘致に取り組んでいる自治体からは長崎県と佐世保市が共同でブースを構え、セキュリティ分野で「共同印刷」が出展。どちらも今回が初出展ということで、かなりの注目を集めたようです。日系メーカーではスロットマシンメーカーの「セガサミー・クリエーション」「アルゼゲーミング・マカオ」「コナミ・オーストラリア」、紙幣識別機の「JCMグローバル」、トランプの製造販売を行う「エンジェルプレイングカード・マカオ」、トランプやカジノテーブルの製造販売・輸出入の「マツイ・アジア」、オンラインカジノソフト開発の「MIKADO GAMES」がそれぞれ出展していました。そのほか、日本人により設立された「マカオ新聞」を発行している「大航海時代新聞出版社」もブースを構え、熱心な取材をされていたのが印象的でした。

少し原稿をため込んでしまったので他のニュースもはさみながら、今回から何回かに分けてG2E Asia 2016について報告していきます。お楽しみに。

(写真)国際見本市「G2E Asia 2016」の会場入り口の様子

#46 「ギャンブル依存症問題を考える会」が青少年向け依存症教材を開発 2016/04/27

一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」は4月26日、青少年向けのギャンブル依存症教材として『知ろう!ギャンブル依存症』を作成しました。この冊子は高校生や大学生および青少年教育関係者を主な対象として、20ページのマンガと10ページの解説で構成されています。おととしの年末に募ったクラウドファンディングの資金で開発したもので、料金は無料。(ただし、郵送料は受取人負担)考える会の担当者によると、初版としてすでに1万冊用意してあるそうです。

マンガはパチンコにハマっている大学生「カケル」と、カケルを支えようとする彼女の「キョーコ」の二人が主人公。借金に苦しむカケルがパチンコで一発当てて返済そうとし、キョーコがカケルのために借金を肩代わりしようとする場面からスタート。二人に対してマスコットキャラクター「アディ」がギャンブル依存症について分かりやすく解説します。続いてアディはキョーコに対し、彼女はカケルのために自分を犠牲にしている「共依存」だと指摘。それをきっかけに二人がそれぞれギャンブル依存症者本人が回復するための自助グループである「ギャンブラーズ・アノニマス」(GA)、共依存の家族のための「ギャマノン」につながり、回復していく物語です。

解説もマンガの内容に対応したもので、「依存症ってなに?」「依存症かも!? じゃあどうしよう」「依存症の人がそばにいたら?」「自助グループってなに」などの項目ごとに、わかりやすくまとめられています。巻末に添えられた「ひとりで抱え込まずに、すぐに相談しましょう」というメッセージが印象的です。

ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表は発刊にあたって「活字離れが進んでいる若者にできるだけ興味を持って読んでもらえるように内容を最小限に絞り、漫画に重点を置いて分かりやすく伝わるように努めました。是非皆さん役立ててください」と話していました。私も実際に読んでみましたが、これまでギャンブル依存症という言葉に触れたことのない学生はもちろん、依存症の入門書として大人が読んでも分かりやすい内容だと感じました。

日本国内のギャンブル依存症に関する問題は、そういった問題が起こり得るという予防・啓発活動ができていないことが、対策が思うように進まないネックになっています。ギャンブル依存症をメインテーマとした教材は日本ではまだ例がなく、これをてこに社会の理解が加速していくことになるでしょう。

郵送希望者は「ギャンブル依存症問題を考える会」のホームページにある専用フォームより、「依存症教材郵送希望」と明記の上、郵便番号・住所・名前・希望部数など必要事項を記入して問い合わせてください。

(写真)『知ろう!ギャンブル依存症』の表紙・裏表紙 ギャンブル依存症問題を考える会提供

#45 「闇カジノ問題」について橋下徹前大阪市長がテレビでコメント 2016/04/25

先週18日の夜、「橋下×羽鳥の新番組(仮)」(テレビ朝日系23:15~)という番組で、橋下徹前大阪市長がいまメディアで話題になっているリオオリンピックのバトミントン選手として出場予定だった桃田賢斗選手の「闇カジノ」問題についてコメントしていました。

番組ではまず「桃田選手がオリンピックに出られなくなったのは“やりすぎ”」という街の声を紹介していました。それを受けて橋下氏は法律家としての視点から、何か不祥事を起こした時に制裁は当然とひとこと前置きしたうえで、「(日本では)罪と制裁とがバランスを保つ“罪刑法定主義”が大原則」と説明。実際に「単純賭博罪」は刑法において「50万円以下の罰金」と規定されており、刑務所に収監されるほどの重い罪ではありません。橋下氏は冷静に見てほしいとしたうえで、「二十歳直後という年齢を前提にすれば、僕は五輪に出るべきだと思う」と話していました。

日本テレビ「行列のできる法律相談所」で過去に橋下氏と共演していた北村晴男弁護士も15日のデイリースポーツオンラインのインタビューで、「一般的に賭博罪は現行犯でなければ立件しない」と応じていました。北村氏によると、現行犯以外でも立件のケースはあるにはあるものの、極めて少ないそうです。昨年末からあれほどマスコミを騒がせた野球賭博問題も、現時点ではまだ立件されていません。

この背景には、日本独特のギャンブル事情があると考えて良いと思います。日本国内でカジノが禁止されているといっても、海外旅行などで立ち寄ったカジノに参加することは違法ではありません。桃田選手も記者会見で、海外のカジノがきっかけだったことを明らかにしています。これは、刑法の賭博罪が「属地主義」すなわち賭博行為が行われた場所を起点に判断しているためです。つまり、現地でカジノが合法化されている場合、日本国刑法の賭博罪の規定は及ばないので、カジノに日本人が参加することは「海外では合法」「日本では違法」という状態です。

また、国内ではカジノは禁止されているものの、同じギャンブルであって「ゲーム種目の違いしかない」公営ギャンブルや宝くじ、パチンコは日本国内にあふれています。競馬や競輪がOKでカジノがNOという理由は、国内では一般にギャンブルを禁止するという建前があるものの、実際には別途「特別法」すなわち「競馬法」「自転車競技法」といった種目ごとに法律を定めて合法としている訳です。一方では合法化し、他方では禁止されたままで、さらに法律的に換金がグレーであるパチンコ・パチスロもあるので、ギャンブルに対する法的整備は全然進んでいないということです。これは法律だけでなく社会的理解も同様で、ギャンブルを趣味とする人がいる一方で、「ギャンブルなんかけしからん」と顔をしかめる人もいます。

日本ではカジノが禁止されていることが闇社会の資金源にすらなっています。「禁酒法」でアル・カポネ率いるギャングが大儲けした時代と全く同じ状況です。海外に年間1,600万人の日本人が出かけている時代の中で、さらにギャンブル種目ごとにちぐはぐの対応を取っていることが、違法カジノを生む温床になっているんですね。マンションの一室で違法カジノをオープンしても客が集まる訳ですから、いくら警察が取り締まりを強化してもモグラたたきのようなもので、根絶するなどというのは現実的ではありません。「禁止からコントロールへ」というのが多くの国の考え方で、130ヶ国以上の国がカジノを合法化していることもそういった理由からです。

桃田選手らは今回の事件でもう懲りたと思いますが、もしそれでもやめられない場合、ギャンブル依存症の疑いがあるため、きちんと医師や自助グループへ相談した方が良いでしょう。私は取材を通じてギャンブル依存症から回復し、社会で広く活躍している人たちも見てきました。言うまでもなくオリンピックで日本代表の座を勝ち取るというのはものすごい才能、またたゆまぬ修練の成果なのだと思います。たとえ一度つまずいてしまったのだとしても、社会としてただいたずらに揚げ足を取ることに終始するのではなく、本人が回復につながるように暖かく見守ることが重要です。

#44 「マリーナベイ・サンズ」がデビッド・ベッカムを起用したキャンペーン 2016/03/31

シンガポールのランドマークとして知られる「マリーナベイ・サンズ」は、4月1日より日本国内のビジネス・レジャー利用に向けた“Never Settle”(とどまることを知らない)キャンペーンを展開します。キャンペーンでは世界的スターとして根強い人気を誇るデビッド・ベッカムを起用するそうです。

マリーナベイ・サンズには、国際会議場などの大型MICE施設、2,560室のホテル、東南アジア最高クラスのショッピング、有名シェフのレストラン、エンターテイメントを楽しめる2つの劇場、アートサイエンス・ミュージアムなどがあります。最も有名なものは最上階(57階)にあるシンガポールを展望する「サンズ・スカイパーク」でしょうか。そちらは2010年の開業直後、日本の国民的アイドルグループを起用した大手通信企業のCMの収録が行われて話題になりました。

日本国内のIR導入可否をめぐる議論を見ると、ネガティブなイメージに偏っているきらいがあります。特に、これまでこちらの過去のコラムで何度も扱ってきたギャンブル依存症の問題では、議論が進んでいない割にイメージばかりが先行しています。一方でIRのエンターテイメントとしての魅力については、ほとんど光が当たってきませんでした。

マリーナベイ・サンズの社長兼CEO(最高経営責任者)のジョージ・タナシェヴィッチ氏は、「過去5年間、当リゾートに海外から訪れるお客様の中で最も多いのが日本人です。日本の皆様が求める、ユニークなレジャーやエンターテイメントサービスを提供している証であると、自負しています」と話しており、シンガポール政府観光局によると、2015年に789,000人の日本人がシンガポールを訪れたそうです。

エンターテインメントの分野では、すでに歌舞伎役者の市川海老蔵さんや滝沢秀明さんのアジア初公演も行われており、有名日本人シェフによるレストランもオープンしています。IRについての正しい理解が進む良いきっかけになるといいですね。

(写真)マリーナベイ・サンズ提供

#43 訪日観光客数目標を2030年に6000万人に 安倍首相「観光産業を基幹産業へ」 2016/03/30

30日、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」が官邸で開催されました。訪日外国人観光客数を従来の「2020年に2000万人」の目標から倍の「2020年に4,000万人」「2030年に6,000万人」へと引き上げることを決定。会議に出席した安倍総理は挨拶の中で、観光について「成長戦略の大きな柱の一つ」「地方創生の切り札」「GDP600兆円に向けた成長エンジン」と位置づけました。

構想会議には議長に安倍首相、副議長に菅義偉官房長官および石井啓一国土交通相、構成員には麻生太郎副総理含め8名の大臣のほか、小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長など民間有識者が名を連ねています。構想会議は年間2000万人達成が視野に入った2015年11月にスタートしています。

前回、前々回のコラムで触れてきたように、今月25日の菅官房長官の「(観光立国を目指す日本にとって)IRは欠かすことができない」発言は言わずもがな。ここ最近の動きは風雲急を告げるといった感があります。IRは観光振興の切り札として位置付けられていますが、政府が観光振興を「大きな柱」「切り札」「成長エンジン」と重要視することは、IR推進法案に強い追い風になるでしょう。

(写真)会議の模様 首相官邸ホームページより引用

#42 IR議連幹部会が開催され、関西経済同友会がプレゼンを行いました 2016/03/29

29日、国会内にて「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)の幹部会が開催されました。今回の幹部会には自民党、公明党、民進党、大阪維新の会、日本のこころを大切にする党の各党から約10名の国会議員が参加しました。今回のテーマは、①関西経済同友会が今月はじめに発表した大阪・関西の経済効果の試算についてのヒアリング、②議連の今後の活動について、の2点です。

関西経済同友会からは講師として、齊藤行巨事務局長が出席。同友会の内部に設置されている「関西MICE・IR推進委員会」が今月2日にまとめた大阪・関西IRの経済効果の試算について説明を行いました。同友会では昨年1月「大阪・関西らしいスマートIRシティ」の構想コンセプトを発表するなど長年にわたり調査・研究を続けており、構想の発表と同時にギャンブル依存症に関する提言を行っています。

観光客数等や各種マーケティングデータをもとに試算すると、大阪ベイエリア・夢洲のIRでは年間ビジネス収入が5,545億円、投資規模は6,759億円。経済効果は開業前・開業後に分け、開業までの累計で1.5兆円・9.3万人の雇用、開業後では年間7,596億円・9.8万人の雇用創出効果が期待できるとしています。

約8,000億円の投資と聞くといささか大きすぎるように感じるかもしれませんが、議連の方針では日本国内のIR設置数は当初2~3カ所で試行し、プラス・マイナスの効果を検証しながら最大で10カ所程度まで拡大していくとしています。これは、アメリカでは約1,200ものカジノ・IR施設が存在することと対照的です。日本にはパチンコがあるため単純な比較は難しいとの声もありますが、IRの施設数で考えると日本の経済規模から比較すると寡占状態と言えるほど施設数が少ないということです。実際にオペレーター(カジノ事業者)は世界最後の市場として有望視しており、1兆円投資するとの声も上がっており、大阪ベイエリアという立地を勘案しても妥当なのではないでしょうか。

ギャンブル依存症について同友会の昨年の提言では、海外のカジノ・IR業者の例に倣ってIR運営業者が対策費を拠出するとしています。日本でギャンブル依存症が問題になっている背景は、海外のように予防・対策が行われてことが一番の原因です。ちょうどこちらの過去のコラムで取り上げた「レスポンシブル・ゲーミング(ギャンブリング)」の概念ですね。日本でもようやく進みつつありますが、今後は既存のギャンブル産業の見直しは進んでいくことになるでしょう。同友会は引き続き、ギャンブル依存症など社会問題について研究調査を継続し、さらなる提言を行う予定です。

議連幹部会では今後の方針として、①各党からさらに役員を募っていくこと、②今年5月の早いうちに議連総会を開催すること、③総会で「今年秋に法案の成立を期す」とのメッセージを示すこと、の3つの方針が確認されました。また、IRがテーマとなった今月25日に開催された衆議院内閣員会の模様として、先週の内閣官房IR特命チーム凍結報道が改めて否定されていたことが報告されました。さらに同委員会における菅義偉官房長官の「(観光立国を目指す日本にとって)IRが欠かすことができない」「(IR推進法案が)成立した暁にはすぐに対応することができるような状況はしっかりと作っておく」との発言が紹介されました。

先週の一部報道では関係者の間に大きな衝撃が走りましたが、それを受けて政府からIR推進に向けた強い意欲が表明されたことになり、IR推進派にとっては「災い転じて福と為す」といったところでしょうか。IR推進法案の審議は参院選後に持ち越される方向ですが、国会質疑を通じて政府の前向きな姿勢が示されたことから、法案成立後を見据えた環境整備として地方・民間の動きは加速していくことになりそうです。

(写真)「大阪・関西らしいスマートIRシティ」 関西経済同友会提供

#41 「IR特命チームの凍結報道」について、内閣官房へ直接聞いてみました 2016/03/24

22日の報道で「内閣官房のカジノ検討チームが業務を凍結する」という趣旨の記事が出ました。これまでの私自身の取材と照らし合わせて違和感があったため、その内容について内閣官房へ照会をかけてみました。

報道では「業務を当面凍結する方針」「事務室は近く閉鎖」という表現がみられましたが、担当者は業務凍結について「凍結ということではなく、何か決定したということでもない」と話していました。このほか、別の国会関係者に意見を求めたところ、こちらからも「閉鎖という可能性はないのでは」と疑問の声が聞かれました。

そもそもIR推進の特命チームは、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」(新成長戦略)において「統合型リゾート(IR)については、(中略)関係省庁において検討を進める」との表現が盛り込まれたことをきっかけとして発足しています。新成長戦略では「観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待される」という表現とともに、「犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要」との文言も盛り込まれており、特命チームはIRによって生じるプラス面・マイナス面双方の検討を進めているわけです。

ここから先は私見になりますが、IR推進法案の審議が昨年持ち越されたことで内閣官房の検討作業が先行していることも明らかで、定例人事異動で増減する可能性はあると思います。関係者の間では配置転換で減少するのではないかという観測もあることも確かですが、これを掘り下げると「凍結」という表現よりは「検討作業の山場を超えた」と見るのが適切。これまで段階的にチームが大きくなってきたことの揺り戻しにすぎません。実際、これまでも発足後の増員という事実はあった一方でニュースとして報じられることはなく、私もこれに絞って取材しようとは思いませんでした。もちろん特命チームが廃止されるなら話は別ですが、「人員が増えた」「減った」というだけでは私は特に報じる必要性は感じないということです。事務所の閉鎖という話も同じことで、人員規模が変われば今のスペースから移転することは当然のこと。要は定例の人事異動で適材適所に移る可能性があるというだけで、こちらも驚くべきことではないと思います。

一方で「内閣官房」「業務凍結」「事務所閉鎖」という表現は、その言葉だけが独り歩きしてしまうほど、強いインパクトが含まれています。現に電子版が出たわずか10分後から、さっそく驚いた関係者からなぜか私のところにまで照会がかかってきました。政府の動静を見定めるという点と、ちょうど年度末という時期も手伝って、関係者がこの手の情報に関して神経をとがらせているためです。

報道された政府高官によるコメントは、実際にあったものと考えて良いでしょう。また、現場に情報が下りていないだけで、今後事実になるという可能性も否定できず、「凍結する方針を固めた」という強い文言が気になることも確かです。ただし、他社が続かなかったことから記者会見における正式な発言ではなく、オフレコの独自取材として読むことになります。その上で記事内容を政府発と記者の見解とに分類していくのですが、見出しは基本的に記者とは別の人間が付けているため、そこも分けて考えます。さらに、ぶら下がりでの発言は記者会見と比べると往々にして憶測も混ざることもあるという点も念頭に読み解いていきます。

今回の報道は社会的関心の表れ乃至ひとつのニュースとしての価値は十分ありますが、ここで紹介したように現場レベルでは困惑が広がっていることに加えて、他紙の後追い記事も見られません。そのため、関係者が各種判断を下す材料とするには不明瞭で、それには4月初めの人事異動や、さらなる続報での検証を待った方が賢明という判断になるかと思います。

日本の報道はどうしても人目を惹くであろう内容が過度に強調される傾向があるため、読み手側はそういうものとして、そこから割引いて読む技術も必要になってきます。一方で今回の件は、IRというテーマが社会の関心を惹くテーマとなっていることの現れでもあり、それ自体は結構なことだと思います。私はメディアリテラシーとして考えさせられる記事だと感じましたが、皆さんはどうご覧になりましたか。

#40 鳴門のミニフォーラムで考える「カジノと健康」 2016/03/07

鳴門IR健康保養誘致協議会は3月5日、鳴門市内でミニフォーラムを開催しました。徳島県内では日本カジノ健康保養学会が10年以上にわたって地方型カジノの誘致運動を展開。昨年9月には同学会のほか鳴門商工会議所、鳴門市うずしお観光協会、鳴門青年会議所、鳴門法人会などが結集するかたちで「鳴門IR健康保養誘致協議会」が設立されています。

今回のミニフォーラムのテーマは「カジノと健康」。日本カジノ健康保養学会の中西昭憲会長は、70枚におよぶスライド写真を見せながら、緑に囲まれた古くからのカジノ保養地として有名なドイツ・バーデンバーデンの街づくりを紹介。学会が提唱している「カジノ健康保養システム」の紹介がなされました。

ドイツ語圏ではバーデンという言葉を含む歴史あるカジノリゾートが多く存在します。Badenとはドイツ語で「温泉」を意味し、諸外国では日本のようにどこで穴を掘っても温泉が湧くということは極めてまれです。そのためヨーロッパ諸国の温泉保養地は王侯貴族に独占され、遠方からの訪問客が持て余した時間を過ごすレクリエーションとしてカジノが好まれました。これを現在の日本に置き換えると、諸外国から来日した富裕層が観光地訪問や文化体験などを楽しむかたわら、空いた時間でゲームを楽しむということになるでしょう。実際に日本ではナイトエンターテイメントの種類が乏しく、深夜便で日本に到着した外国人が行き場を失っているということが起きています。

インバウンド増の影響もあり、現在東南アジア諸国などから日本の高い医療技術を求めて、検査や手術を目的に来日する医療ツーリズムも増えてきています。現状では患者はほとんどが高所得者層で1週間以上の滞在。医療費のほか本人および同伴者の渡航費、宿泊費などを含めると1回の渡航費で数百万円以上という例も多く、その経済波及効果は莫大なものになります。地方では医療機関があってもラグジュアリークラスのホテルなどは極めてまれで、老若男女、病人やけが人でもハンデなく楽しめるカジノ・IRは医療ツーリズムとの相乗効果も期待できるわけです。

精神科医でもある中西氏はフォーラム開催後、「海外富裕層向けのメディカルツーリズムとしても意義があり、税収を街づくりに充てるシステムとしてカジノが街と調和している」と話していました。カジノ・IRの議論に縁がなかった参加者からは「マカオ・シンガポールとは異なる魅力があり驚いた」との声も上がったそうです。

セミナーには国際観光振興議員連盟から細田博之会長、岩屋毅幹事長、萩生田光一事務局長の連名による祝電が届き、鳴門での活動に対して議連として感謝の意が伝えられました。その中で法案については「遅くとも今年中の成立を目指し、調整を続ける」と従来よりも一歩踏み込んだ決意表明がなされました。セミナーの模様は地元ケーブルテレビなどで放送されたそうで、地元での理解がさらに進むものと思います。

(写真)当日の会場の模様 鳴門IR健康保養誘致協議会提供

#39 JAPICがセミナー 岩屋氏・観光庁田村長官・アトキンソン氏らが議論 2016/02/23

一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は17日、都内で「『観光立国ニッポン』実現のみちすじ」と題したセミナーを開催しました。基調講演には小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏が登壇。また、特別ゲストとして国際観光産業振興議員連盟幹事長の岩屋毅衆議院議員が講演したほか、パネルディスカッションには観光庁の田村明比古長官はじめ観光分野の有識者が加わって議論を交わしました。

JAPICは地方創生や国家戦略などの分野におけるさまざまな課題について、産官学および民間のネットワークをもとに革新的な提案を行っている団体です。IRに関しても膨大な蓄積があり、石原慎太郎東京都知事(当時)がお台場カジノ構想を提案した1999年に、内部に「複合観光事業研究会」を設置。米国や欧州、オセアニア、アジアのカジノ・IRリゾートの視察調査を実施し、その調査報告は現在のIR推進法案の議論の土台になっています。今回のフォーラムは「複合観光事業研究会」と「ヒト・モノ・カネ呼び込み戦略委員会」との共催というかたちで開催されました。

イギリス出身のアトキンソン氏はゴールドマン・サックス証券取締役を経たのち、文化財の修復を手掛ける小西美術の社長に転身した異色の経歴の持ち主。講演では日本の観光について自然・気候・歴史文化・食事といった観光資源に加え、海外と比較して「多様性」が武器になると話していました。フランスは世界第1位の外国人観光客数を誇る国として知られていますが、地中海には温暖な気候を生かしたビーチリゾートがある一方で、ヨーロッパ最高峰のモンブランでは登山も楽しむことができます。アトキンソン氏は日本の観光資源も世界有数の多様性を有しており、現在の日本の潜在的な外国人観光客数を試算すると5,600万人に及ぶそうです。さらに2030年には全世界の観光客数が現在の1.5倍程度増えるため、客単価を上げて増加分を抑えることを考慮しても、2030年の日本の観光客数受け入れの潜在能力は8,200万人まで上昇。すなわち、日本の観光産業の現状というものは、観光資源の多様性に恵まれているものの、観光客受け入れの潜在的能力を生かし切れていない状態ということになります。

続いて登壇したIR議連の岩屋毅幹事長は、日本の成長性として一番有力なものは観光分野であると強調。国会日程はタイトなものの、「今年中の推進法案成立に向けて環境整備をしっかりと行っていきたい」と発言。衆議院予算委員会で平成28年度予算案が通過の目途が付き次第、ただちに役員会を開催したいとの意向を示しました。

パネルディスカッションでは観光庁の田村長官が2015年の速報値で観光産業市場が3.4兆円を超えて過去最高を記録したことに触れ、「輸出製品として見ると自動車製品と同じくらいの額」と日本経済における観光産業の存在感が増加していることを指摘していました。また、ヒト・モノ・カネ呼び込み戦略委員会で委員長を務める森ビル都市企画(株)山本和彦代表取締役社長は、都市部の六本木ヒルズのほか、香川・岐阜・福井でのプロジェクトを紹介。ロードサイドでチェーン店の進出が続いている状況に触れ、既存中心街の活性化の意義を指摘。また、プライスウォーターハウスクーパース株式会社パートナーの野田由美子氏も、既存の観光資源を磨き、ないものを足して再構築することで8,200万人も夢ではないと話していました。

主催者によると今回のセミナーには約230名が出席したそうで、関心の高さが伺えました。世界の観光産業を見ると、シンガポールがIR導入後の5年間で外国人観光客数を1.5倍に増加させた例など、観光産業振興の切り札としてIRの導入が有効であることが実証されています。言うまでもなく観光産業は数少ない成長産業で、2030年に18億人まで増加する外国人観光客をいかに日本へ引き付けるかということは、今後の日本経済の成長性につながってくることになります。観光産業の切り札としても、IRの議論がさらに進んでいくといいですね。

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