Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#38 ハウステンボスで「ロボットカジノ」 西九州統合型リゾート研究会総会 2016/02/18

「西九州統合型リゾート研究会」は16日、ハウステンボス(HTB)のレンブラントホールにて定期総会を開催しました。HTBへのIR誘致活動は長崎県・佐賀県・福岡県の経済界関係者を中心に、2007年より観光活性化に向けた取り組みの一環として取り組まれてきました。当日は研究会会員のほか、地元市民、マスコミ関係者など、約100名の参加者が会場を訪れました。

HTBでは2015年7月に最先端技術を活用した「変なホテル」が開業。ロボットを宿泊分野へ活用したことが話題となったほか、輻射パネルなどの技術導入によって冷暖房のコストを削減。特に人型や恐竜型のロボットが宿泊客を相手にチェックイン手続きを行う様子はとてもユニークで、テレビや雑誌などでも多く取り上げられました。一方、ハウステンボスを擁する長崎県・佐世保市エリアは、官民一体となった誘致活動が長期にわたって展開されてきたエリアとしても知られています。

今回のイベントでは「ロボットカジノ」と題して、ロボットが模擬カジノのディーラーをサポート。ルーレットテーブルでは「ノーモアベット」とチップを賭ける終了の合図の掛け声を上げ、そのユニークな動きに参加者も思わず顔をほころばせていました。

講演を行った大阪商業大学の美原融教授はイベント開催後の取材で、「将来のカジノとしてのPR効果も大きく、話題性の提供という観点でもとても面白い取り組み」とコメント。主催関係者も「説明会などを開催してきたが、IRに関して新しい可能性を提案していきたい」と話していました。また、ロボットとカジノという組み合わせには報道機関の高い関心を引き、長崎県内の全てのローカルテレビ局・地方紙で取り上げられました。

HTBでは今年の夏には「ロボットの王国」のコンセプトのもと、ロボットが店長や料理長をつとめる「変なレストラン」、さまざまなロボットを体験できる「ロボットの館」をオープンする予定。“ロボットとIR”のコンセプトは世界でも例がなく、ハウステンボス独自との取り組みとして今後も関心を集めることになりそうです。

(写真左)ロボットがルーレットディーラーをサポート。西九州統合型リゾート研究会提供

#37 パチンコ依存症を扱った映画「微熱」が2週間限定で上映中 2016/01/13

1月22日までの2週間限定で渋谷ユーロスペースにて開催されている「全力映画祭」で、ギャンブル依存症をテーマにしたショートムービー「微熱」が上映されており、私も見に行って参りました。

映画では、若い夫婦と幼い娘の3人の家庭が、夫のパチンコ依存症によって転落していく過程が丹念に描かれています。テンポの良い映像として表現されていることで感情移入しやすく、転落していくストーリーが決して他人事ではないと感じられることから、思わずスクリーンから目が離せなくなります。

精神科医で作家の帚木蓬生氏の「ギャンブル依存とたたかう」(新潮選書・2004年)という本の冒頭に「ある主婦の『転落』」という悲劇の物語が描かれており、ふとその内容が脳裏に浮かびました。ギャンブル依存症問題について勉強するなかで読んだ一冊でしたが、こちらもパチンコ依存症の主婦の心境が緻密に描かれ、私自身もこの本で大きな衝撃を受けたことが現在の取材の原点のひとつになっています。「微熱」ではギャンブル依存症者の心境や家族の風景がリアルな映像として表現されているためそれ以上に心に刺さるものがあり、依存症についての事前知識の有無に関わらず映画を観た観客も大きな衝撃を受けるだろうと思います。

周囲にギャンブル依存症者がいない場合、依存症についての本や記事を読んだとしても本人や家族の苦悩というところまではなかなか理解することが困難で、「自分には関係ない」とどこか他人ごとのように捉えてしまいがちです。映画ではナレーションがなく役者同士の会話も少なめですが、カメラがギャンブル依存症者本人やその家族の視点に置かれ、彼らの心境が生々しく表現されています。たとえば「会社の金に手を付ける」という場面。ギャンブル依存症で横領と聞いただけでは「いくらギャンブル依存症でもそこまではしないだろう」と思ってしまいがちですが、映画を見ると「こういう状況ならやってしまいかねない」と背筋が凍る思いがしました。

小澤雅人監督に話を伺ったところ、ご自身もギャンブル依存症の家庭で育ったそうで、「自分がギャンブル依存症だということに気づけないと、悪い循環から抜け出せない」と話していました。監督はこれまでも社会問題にスポットを当てた映画を手掛けており、「微熱」も第14回イマジンインディア国際映画祭でベストショートフィルム賞を受賞しています。ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表も「パチンコ依存症者やその家庭のリアルが描かれており、その現実を知ってほしい」と話していました。

前回までのコラムで海外カジノ産業における「レスポンシブル・ゲーミング」(賭博産業の企業責任)について書いてきましたが、映画「微熱」は日本で啓発が遅れている現実についても私たちに突きつけてくれた気がします。ギャンブルの楽しさと表裏一体にある依存症問題について、あらためて考えさせられる映画です。

「全力映画祭」は今月22日までのレイトショーで、小澤監督のトークショーも予定されています。興味のある方は是非ホームページで上映スケジュールをチェックしてみてください。

(写真)「微熱」で第14回イマジンインディア国際映画祭ベストショートフィルム賞を受賞した小澤雅人監督

#36 パチンコの釘調整問題で考える「責任あるギャンブル産業」の在り方 2015/12/25

12月24日、新聞・テレビ等の報道各社がパチンコの釘調整問題について、一斉に取り上げ始めました。各社の報道を見ると表現の共通点が多く、記者クラブを通じて発表がなされたものとみられます。ギャンブル依存症問題の関連テーマとして今回はパチンコの釘調整問題についてスポットを当ててみます。

パチンコ店に置かれているパチンコ台の釘に関して、法令において「おおむね垂直であること」との規定が置かれています。一方で金属の釘は用意に曲げることが可能であることから実際には釘調整が広く行われており、これは法的にグレーゾーンです。パチンコ・パチスロは製造にあたって「射幸性(当たりやすさ)」に焦点を置いた型式検定試験を通過する必要があり、試射試験では一定時間内の出玉数が所定の範囲内に収まらなければなりません。しかし釘調整で射幸性を高め、本来は検定を通過できない射幸性の高い機械を生み出す「釘曲げ」も蔓延していました。今回の問題はこの過度な「釘曲げ」行為が出荷段階で行われたことが問題視され、警察庁が業界団体に対して撤去を要請する騒ぎになりました。

この背景には、レジャー産業の多様化にともなうパチンコ市場の縮小による、パチンコ店同士の競争激化というパチンコ業界が抱える構造的な問題があります。言い換えればパチンコ店・機械台数の供給が、縮み続ける需要・すなわちファン人口減少のペースに追いついてこなかったということです。釘調整によって射幸性を過度に引き上げ、客単価を上げて利益を確保することで参加人口の減少をカバーしてきており、これは「射幸心(ギャンブルで大当たりしたいという欲望)」をあおってきたということと同義です。結果として多くのギャンブル依存症者を生み出してしまい社会問題化しており、これが昨年行われたIR推進法案の国会質疑をきっかけに一気に表面化していました。

パチンコ業界における大規模な機械の入れ替えは、今回が初めてではありません。今から10年ほど前のことですが、警察庁の主導によりホールに設置されていたパチスロ(4号機)のいわゆる「爆裂機」を3年間の移行期間を設けて新たな基準に基づく「5号機」に全台入れ替えたことがあります。一般にはあまり知られていませんが当時と現在とで入れ替えの背景について考えてみると、いずれも政府や与党内でカジノ合法化が政策として浮上していた時期と重なります。実際に当時もカジノ合法化議論の中で推進派の国会議員からパチンコの換金問題などについて警察庁を問いただす場面が見られ、今回も警察庁が監督官庁としてカジノ・IRの法案が国会で議論される前に、射幸性を高める主な要因となっている釘調整問題について手を打ったと考えるのが自然でしょう。

前々回(#34)のコラムでも簡単に触れましたが、海外のカジノ先進国では「レスポンシブル・ゲーミング(または、レスポンシブル・ギャンブリング)」という言葉があります。この概念は、ギャンブル産業が射幸性に基づく産業である以上、産業として一定の社会的責任を果たすべきという考えです。その一端としてギャンブル依存症予防・ケアへの資金の拠出などがあるのですが、日本では「自己責任」として、現状では依存症者本人や家族の負担になってしまっており、これは見直す必要があります。IR推進法案にもその趣旨の規定が盛り込まれていますが、カジノがまだ存在しない日本でギャンブルに関連した社会問題が発生している以上、既存のギャンブル産業もレスポンシブル・ゲーミングに倣って、相応の負担を負うべきでしょう。言い換えれば、現状は依存症対策が満足に行われていないために、社会問題になってしまっているわけですね。

さらに今回の一連の報道が出た背景として「ギャンブル依存症問題を考える会」の活動の影響も大きいと見ています。先月末、都内で開催された考える会のフォーラムにはギャンブル依存症に苦しんだ経験を持つ元大関貴闘力関や与野党の国会議員を迎え、多くのテレビや新聞などの多くの報道関係者が詰めかけていました。そのフォーラムの席においても、国会議員らを前にギャンブル依存症問題のほか、釘調整問題について問題視する声が上がっていました。

個人的には、ギャンブル産業全体にとっても近代化を進める良い機会になると考えています。今年もつい先日までテレビなどで年末ジャンボ宝くじのCMがバンバン流れていましたが、やたらと当選金額を強調したCMを見るたびにいつも「これはいかがなものか」という思いが浮かびます。日本では宝くじはギャンブルではないなどと言う識者もいるようですが、賭博とは「①偶然の事象に②金銭を賭して③勝敗の結果で財物を手に入れる遊興」のことなので、本来は宝くじもギャンブル産業として適切な規制がなされるべきです。もちろん、競輪や競馬などの公営ギャンブルも適切な規制が必要ということはあえて言うまでもありませんが、それらもカジノ・IRの議論が深まるたびにだんだん俎上に上がっていくことになるでしょう。

日本ではレスポンシブル・ゲーミングが浸透していないため対策がおろそかになっており、結果としてギャンブル産業の社会的評価がいつまでも高くならない遠因となっています。今回のパチンコ釘調整問題は、カジノ・IRの議論という黒船によって既存のギャンブル産業も変革せざるを得ない場面に直面したひとつの事例ということです。

#35 「IR*ゲーミング学会」でギャンブル依存症をテーマに議論が行われました 2015/11/30

10月29日、大阪商業大学で「IR*ゲーミング学会」のシンポジウムが開催されました。カジノ・IRの議論は経済や地域振興、観光学、社会学、病理学などの幅広い分野に及んでおり、IR*ゲーミング学会はその横断的議論をリードしてきました。

今回のシンポジウムではIRの先進国であるシンガポールより「国立依存症サービス管理機構(National Addiction Management Service 通称:NAMS)」医療委員会副会長のクリストファー・チョク氏が登壇。「シンガポールにおける問題賭博行動への取り組み」と題して講演を行いました。シンガポールでは2010年に2つのIRがオープンしましたが、オープン前の2008年と2014年とを比較して病的賭博と問題あるギャンブル依存症者の比率が大きく減少したことが分かっています。チョク氏は、「減少したという事実は他のメンタルコンディションでは説明がつかない」と話し、自己排除システム・家族排除システム等の取り組みが減少の要因になっていることを明らかにしました。

ギャンブル依存症の対策が進んでいるシンガポールでは、カジノ入場にあたりIDの提示を求められ、本人や家族などの事前の申請によって入場を断られる「自己排除(家族排除)システム」が行われています。また、シンガポール人に対して24時間あたり70シンガポールドル(約7,000円)の入場料を科しており、これについても「安易な参加を抑止する効果がある」と話していました。シンガポールではカジノ・IRの解禁にあたって継続的にギャンブル依存症について調査を続けており、これらの結果は日本におけるIR推進法案の議論でも先行事例として参考とすべきだと感じました。

パネルディスカッションでは医療関係者のみならず、さまざまな立場の有識者が議論を交わしていました。国内で実際にギャンブル依存症者の治療にあたっている成瀬メンタルクリニックの佐藤拓院長はギャンブル依存症について、アルコール依存症などとは対照的に何らかの拍子にピタリと止まることもあり得るもので、自然回復率も高いとの報告があることを紹介しました。また、大阪商業大学アミューズメント産業研究所の大谷信盛客員研究員は、昨年夏に発表されてセンセーショナルに取り上げられた厚生労働省科学研究班の調査結果はアルコール依存症の調査を主眼に置いたもので、依存症とは言えない軽度のプレイヤーが含まれている可能性を示唆していました。

東京、大阪と2日連続でギャンブル依存症をテーマにしたシンポジウムが行われ、二つのシンポジウムでは専門家同士でも見解に大きな違いも見られました。特にギャンブル依存症を病気としてとらえるべきという意見がある一方で、治療においてもケースよっては病気とすると人格攻撃となり治療の障害にもなり得るとの意見もあって、とても興味深いですね。IR推進法案が国会で議論されたことをきっかけに、ギャンブル依存症の議論は世論でも盛り上がっており、この問題を改善したいとの思いは誰しも共通のものです。関係者がお互いに議論を交わすことで、議論が深まっていくことを望みます。

#34 「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました 2015/11/29

11月28日、都内で「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました。主催は「ギャンブル依存症問題を考える会」で、共催として「希望日本投票者の会」も加わり、フォーラム会場には約200名の参加者が集まりました。元大関の貴闘力氏が自身のギャンブル依存症体験を赤裸々に語ったこともあり、さっそくニュース番組などで取り上げられているようです。体験談のほか、専門の医師による病気の解説、国会議員による進捗状況の解説など、初めて議論に触れた人にも分かりやすい内容でした。

フォーラムで特に強調されていたのは、①ギャンブル依存症は病気であること、②ギャンブル依存症患者は回復が可能であること、③自己責任とするのではなく社会病理としてセーフティーネットの導入が必要であることの三点。

国会議員の対談では、自民党、公明党、維新の党、無所属の4名の衆参国会議員が登壇していました。首相補佐官をつとめる自民党の柴山昌彦衆議院議員は「既存のギャンブル依存症問題について、海外並みの規制を行う必要がある」と話し、規制強化に意欲を示していました。柴山氏は昨年6月にIR推進法案が議論された当時の衆議院内閣委員会で委員長を務め、昨年夏に委員会メンバーとともにシンガポールのIRを視察しています。維新の党の初鹿明博衆議院議員もIR推進法の議論で依存症にスポットが当たった一方で、公営ギャンブルやパチンコ産業がテレビなどでCMを流している状況を指摘して、「ダブルスタンダードはやめるべきだ」と指摘していました。

個人的に印象的だったのは、「職親(しょくしん)プロジェクト」を推進しているカンサイ建装工業株式会社の草刈健太郎代表取締役の話でした。職親プロジェクトとは刑務所出所者の社会復帰を手助けするため、有志の企業が働く場を提供するというもの。草刈氏は以前、ご家族を海外で殺された経験があるものの、出所者の55%が再犯を冒すことからプロジェクト参加を決めたそうです。刑務所では食事などの経費や人件費などを合算すると、受刑者一人あたり年間1,500万円の経費がかかるそうで、仮に3年で出所した後に再度3年の刑を受けると、1億円弱のコストがかかることになります。受刑者の社会復帰は、行政コスト削減に直結している訳ですね。

大阪商業大学の谷岡一郎教授の「日本にカジノができるとき」という本の中で、海外のカジノ産業で広く用いられている「ノブリス・オブリージュ(noblesse oblige)」という言葉が紹介されていました。これは「貴族の義務」、すなわち富を持つ者は積極的に社会に富を還元せよという意味です。ギャンブル産業は人々の心に潜在的に存在する「射幸心」(ギャンブルで儲けたいという欲望)に働きかける側面があるので、広い社会貢献が求められるのです。ノブリス・オブリージュの精神は海外のカジノ運営者のあいだで実際に「レスポンシブル・ゲーミング(responsible gaming)」として、ギャンブル依存症対策のための基金の拠出などのかたちで実践されています。残念ながら日本にはこれらの概念がありませんが、どこか職親プロジェクトと通じるものがあると思います。

「ギャンブル依存症問題を考える会」はIR・カジノを含む統合型リゾートについては賛成でも反対でもなく、中立の立場を取っています。先進各国の例を見てもギャンブルを禁止すると闇社会に戻るのが通例なので、きわめて現実的な対応だと思います。昨年春の通常国会でIR推進法案が質疑されたことでギャンブル依存症問題にスポットが当たりましたが、IR推進法案が進まないのであれば対策だけでも先行させるべきという声も上がっています。

ギャンブル依存症の問題というのは決してカジノが建設された後の将来の問題ではなく、いま現実に起こっている問題です。IR推進の側も、考える会などの依存症関連団体との連携を強化すべき段階に来ていると思います。

#33 IRとギャンブル依存症① なぜ日本でギャンブル依存症が問題になっているのか 2015/11/22

2015年のIRに関する議論を振り返ると、ギャンブル依存症問題について大きなスポットが当たったと思います。

IRとは「カジノを含む統合型リゾート」のことです。カジノはギャンブルの一種であり、その運営にはプラス面・マイナス面の双方があることは事実で、マイナス面のひとつがギャンブル依存症です。これは何もカジノに限ったことではなく、国内の既存のギャンブル産業も同じように抱えてきた問題でもあります。

取材を続けてきた印象をひとことで言うと、国内の議論ではロジックのすり替えばかりが目立つということです。パチンコや公営ギャンブル、宝くじなどのギャンブル産業を原因としているギャンブル依存症の解決について、なぜかカジノ・IRへ責任転嫁されています。IRはまだ日本に存在していないので、これでは解決に向かうわけがありません。

国内でギャンブル依存症問題の対策に取り組む「ギャンブル依存症問題を考える会」が今年9月にまとめた報告書によると、新聞で報道されたギャンブル依存症を原因とする事件ではパチンコ・パチスロへの依存症が大半を占めているそうです。パチンコ・パチスロ産業が日本のギャンブル産業で大きなシェアを占めているという事実からも、これは納得できる結果だと思います。

もちろん、大王製紙の横領事件なども実際に起こっており、カジノを原因とするギャンブル依存症がゼロであるということではありません。しかし、日本国内でカジノが解禁されていない現状においては、カジノのある海外リゾートに渡るか、国内の違法カジノに行くかの2択。どちらもハードルが高いので、既存のギャンブル産業と比較すれば限られたケースであることは明らかです。

一方で、報道もだらしないと感じています。ギャンブル依存症の問題について取り上げる一方で、CMや新聞広告ではギャンブル産業からの出稿が絶えないので、スポンサーとして過度に気を遣っているようにも見えます。ギャンブルのCMについて、カジノ・IRの先進国では「射幸心をあおる」ものとして制限されているのが通例ですが、日本では放置されてしまっています。

日本ではあるべきギャンブル依存症対策が導入されていないため、国際水準から見ても依存症罹患率が高くなっています。逆に言えば、しかるべき対策を導入すれば日本も国内のギャンブル依存症罹患率を減少させることも可能になります。実際に、2010年にIRを解禁したシンガポールの事例では、ギャンブル依存症対策を同時にスタートしたことによって、当初の懸念とは反対に国内のギャンブル依存症罹患率が減少を続けています。

ギャンブル依存症問題の解決について重要なことは。ギャンブルの種類や施設の数が問題なのではありません。適切な対策を導入できるかどうかです。今回から数回に分けて、この問題について掘り下げていきます。

#32 第10回日本IR創設サミットin泉佐野が開催されました 2015/10/31

10月30日、関西国際空港のおひざ元である「りんくうタウン」にて「第10回日本IR創設サミットin泉佐野KIXりんくう」が開催されました。会場には約300名の出席者が駆け付け、改めて地方におけるIR誘致の熱気が感じられるイベントでした。

「日本IR創設サミット」とは、以前は「日本カジノ創設サミット」という名前で毎年行われてきたもので初回は2003年にさかのぼり、今回10周年を迎えました。いろいろな団体が開催するセミナーや勉強会とは異なり、全国各地でIR誘致に民間の立場で取り組む「全国IR誘致団体協議会」加盟の団体が集まることで知られています。それらの加盟団体はIR推進法案が成立した後には、誘致を巡って相互に競争しあうことになりますが、そういった利害関係を乗り越えて関係者が一堂に会する、まさに主要国首脳会議になぞらえた年に1回の「サミット」ということになります。今年は4名のIR議連メンバーが出席し、全国協議会の代表者が壇上で議連に対し、法案の早期審議を要望しました。

今回のサミットでは地元から泉佐野市の千代松大耕市長や泉佐野りんくう国際観光振興協議会の宮本勝浩会長らが登壇。宮本会長は関西大学の名誉教授で、経済波及効果の算出の第一人者として広く知られています。最近ではタレントのマツコ・デラックスさんのテレビ番組での「おいしい」というひとことが、その商品を扱う店舗・原材料店・交通費など、8億円超もの経済効果を生むという推計を行って話題になっていました。りんくう協議会でも関西空港における関空利用者などをもとに需要の予測やIRの事業規模の算定を行っています。

サミットでは毎年、国内外から招いたさまざまな分野の有識者が講演やパネルディスカッションを行うことが恒例となっています。今回も趣向をこらした内容になっていましたが、特に印象的だったのは国内の4大監査法人の担当者がはじめて勢揃いしたパネルディスカッション。4社はそれぞれ世界4大監査法人グループと提携しており、そこでは実際にカジノオペレーターの監査を行っていることが知られています。すなわち、国内の4大監査法人も海外のグループ会社を通じてIRを公正に見ていることになります。パネルでは法案成立後の実施法の在り方についての綿密な分析が示されたほか、登壇者からIRが安倍政権の掲げる一億総活躍社会や国内GDP600兆円達成の切り札になるといった見通しも示されました。

IRの経済効果は、学術の分野における経済波及効果の第一人者、世界を代表する監査法人グループの双方から太鼓判を押されたことになります。

それともうひとつ感じたことは、今回のサミットは内容がかなり濃密だったということですね。登壇者の中にはサミットでの講演に備え、とても綿密な事前調査を行っていた方や、準備をしていたものの時間の関係で内容をかなり絞った方もいました。まさに、主催者や登壇者の方々の並々ならぬ意気込みが伝わってきたわけですが、数日間に分けて開催するなどもっと広く深くお聞きしたかったというのが正直な感想です。

(写真)当日の会場の様子

#31 IR(統合型リゾート)推進協議会が都内で会合。IR議連総会は年内にも開催 2015/10/22

北海道から沖縄まで、全国各地の経済団体などが中心となって財界の立場でIR導入を推進している「IR(統合型リゾート)推進協議会」は20日、都内で役員会を行いました。

会合は非公開でしたが出席者によると、共同代表を務める(一財)日本総合研究所の寺島実郎理事長のほか、役員を務める全国の関連諸団体、学識経験者らが出席。会議ではIR推進法案にギャンブル依存症の対策が盛り込まれるだろうとの見通しが示されたほか、IR議連から「臨時国会開催の有無にかかわらず、年内には議連総会を開催したい」とのメッセージも紹介されたそうです。

春の通常国会では一連の安保法制議論などの影響で時間切れとなり、IR推進法案の進捗は残念ながら再提出のみにとどまりました。しかし、来週30日には今回で第10年目となる「日本IR創設サミット」も関西空港のおひざ元である泉佐野市で開催され、今回のIR推進協議会を皮切りに、IR導入に向けた議論が再スタートすることになります。

今後のIRに関する論点をIRの賛成派、反対派ともにいかに深く掘り下げていけるかが焦点になるでしょう。ギャンブル依存症の問題についても、「国内536万人」という数値が報道等で独り歩きしている状態ですが、合法化されたカジノの存在しない日本においては、既存のパチンコ・パチスロ産業や公営ギャンブルが原因です。カジノの存在する海外と比較してギャンブル依存症が蔓延しているということは、日本ではそれだけ対策が遅れているということの証左であり、IR反対の理由にはなり得ません。IRの論点は依存症だけにとどまらず、幅広い経済波及効果、さらには大人の女性も楽しむことができるラグジュアリーな空間創出といったエンターテイメントとしての側面にももっとスポットが当たるべきでしょう。

IR創設サミットでは経済アナリストのほか、国内の4大監査法人からIRの担当者がパネルディスカッションに登壇するそうです。国内GDP600兆円に向けた第三の矢としてIR導入が有効なのかどうか、議論がされることになると思います。

#30 IR議連勉強会とギャンブル依存症議員勉強会が開催されました 2015/07/31

今月29日、「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)は国会内で勉強会を開催しました。これは世界的なコンサルティング会社であるオックスフォード・エコノミクスが日本にIRが誘致された場合の経済効果について今月に入ってレポートを発表しており、担当者の来日に合わせてヒアリングを行ったということです。会場にはIR議連の役員、議連メンバーのほか、報道関係者も集まっていました。

今回発表されたレポートでは、日本の主な都市圏である東京圏、大阪圏でそれぞれIRが建設されたという前提で、推計調査を行ったものになります。それによると、消費支出(IRを訪問した内国人・外国人旅行客が消費した金額)は東京圏で2.2兆円、大阪圏で1.6兆円、雇用創出効果はそれぞれ103,000人、77,500人、税収は国税・地方税を合わせてそれぞれ4,700億円、3,400億円におよぶとされています。ライアン氏の説明によると、今回の分析ではマーケットの潜在性、需要予測、開発コスト、損益などについても考慮し、さまざまなプログラムを想定して算出したとのこと。

同日夕には院内で「ギャンブル依存症対策推進のための超党派勉強会」も開催。発起人にIR推進法案への反対者が含まれていたことからIR反対の勉強会との憶測も一部流れたようですが、IR議連から岩屋毅幹事長らも出席。ギャンブル依存症問題について医師・IR推進法案への賛成・反対ということではなく、日本における既存のギャンブル依存症問題の解決に向けて勉強会を続けていくことを決めたそうです。

カジノ・IRに関連して重要な会合が国会内で二つ開かれたことになりますが、ひとつ残念だったことは、報道の取り上げ方がIR推進法案への賛否、今国会でのIR推進法案成否の2点へ偏っていたことです。法案の賛否を検討するには世界各国のIRの現状、日本における15年の議論のストックへ目を向けるなど議論を深く掘り下げる必要がありますが、有識者による講演内容をよそに、政局に絡めた憶測ばかりにスポットが当てられていました。縦割り行政がかつて批判されたことがありますが報道も縦割りにならないように、広い視点から報道する姿勢が求められているのではないでしょうか。

(写真)当日の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)勉強会の模様

#29 IR推進法案の調整が本格化 2015/06/24

前回のコラムにおいてIR議連総会において、財界・地方自治体による早期成立にむけた要望の模様を取り上げましたが、さっそく調整の大きな進展が見られました。報道各社によると自民党の佐藤国会対策委員長は23日、IR推進法案の成立に意欲を示したと伝えられています。

ここで、政党の政策決定プロセスについて簡単におさらいしましょう。自民党はじめ主要国政政党では「政務調査会」(政調)、「総務会」、「国会対策委員会」(国対)という党内組織が置かれています。IR法案は超党派のIR議連において法案がまとめられたのち、政策の立案・審議を行う政調ならびにその下の部会において2012年はじめより議論がスタート。部会、政調役員会における承認を経たのち、翌年末に党の意思決定機関である総務会にて了承。この段階で党議決定、すなわち党内の手続きを終えたということになります。厳密にいうとIR推進法案ではギャンブルという側面も勘案して政調の部会にかける前にも時間をかけて丁寧な議論を行っているのですが、以前のコラムでも取り上げたので今回はその説明を割愛します。(本コラム#3参照)

政調、総務会というのはあくまでも党内の政策決定プロセスですが、国会は自民党だけ回るものではありません。他の政党と国会の進め方を協議して、調整を行うのが国対です。その自民党側の責任者である佐藤国対委員長が成立に意欲を示したということは、国会審議に向けた調整が進むことが期待できるということですね。

今回の発言における背景を考えると、会期の大幅な延長ということももちろんあるでしょうが、先日のIR議連総会における財界、地方自治体の弾みをつける要素になったと考えられます。政治では「一寸先は闇」という言葉もありますので、結果は最後まで分からない部分もありますが、期待して注視していきたいと思います。

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