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投稿者:マカオの帝王さん

2021年2月18日

ラスト・クリスマス(1996)後日譚【完】

■ 1997年7月1日

マカオの帝王さん、好久不見了!

ワタシ、竹原典子は、先日ハワイの教会で、9歳年上のアメリカ人(ロバート)と結婚式を挙げました。(二度目のジューン・ブライドです)

前に私に、少し照れながら話してくれたことがあったでしょう?

「いいかい? 女性にとって好ましい結婚相手となる男性の年齢とは、今の自分の年齢を2倍して、そこから20を引いた数字となる法則が有るんだ。その証拠に、今の日本人の平均結婚年齢は女性が25歳、男性が30歳だ。ほら、この法則にピッタリだろう? 竹原さんは今確か27歳だったね? それを2倍して、そこから20を引くと……34歳! 何だ、これは僕の今の歳じゃないか……、兎に角、そういうことだ……」って。

そう言えば、最初に結婚した時も、私が23歳、相手が26歳で、この法則の通りでした。

今回も私が29歳、お相手のロバートが38歳なので又もや法則の通り!

閑話休題です。

もう後輩? 同期? 今でも良く分からないのですが、サニー電子の前河さんや、シェリーから既にお聞きになっているかも知れませんので、ここで説明しますね。

そもそもの馴れ初めは私が2年前に、サニー電子(香港)に復帰して直後に開かれた、北米サニー電子主催の優秀バイヤー10社を対象とした、香港インセンティブ・ツァーでした。

その中の「香港市内半日観光」そのものは、私の古巣の熊猫旅游社に委託したのですが、各種の調整役が必要だ! という話になり、誰からともなく 「そうだ! 我が社には元熊猫旅游社で“伝説のツァー・コンダクター”と呼ばれた、ミス.竹原がいるじゃないか!」という話になり、復帰したばかりでそれ程忙しく無かった私に白羽の矢が立った次第です。

勿論、頑張りました。夜も寝ないでプランを練り、予算の範囲内で最高の料理を提供して貰う為に、シェリーにお熱の“男朋友(今の旦那さんです)”のお父さんがオーナーのお店に頼み込んで、ほぼ原価で高級食材をふんだんに使った、晩餐会を企画しました。

その上、その宴を少しでも盛り上げる為、私とシェリーが“ちょっち”セクシーなスリットの入ったチャイナドレスを身に纏い、笑顔を振りまいてお運びしたのですけど、その中にアメリカ東海岸で御父上が大手家電チェーン店を展開している、二代目副社長のロバートがいた訳です。

最初は私のことを、コンパニオンの一人と思っていたみたいだったけど、サニー電子(香港)の社員だと分かると、

「ワォ! 何てこった! こんなに“prettyで、beautifulで、gorgeous”な女性が社員だなんて! 親父のお供で渋々ついてきたこの香港ツァーだったけど、HongKong最高! ところでユーは独身? ……つい最近離婚したばかり!? “unbelievable!” 僕もだよ! こんな偶然が有るかい? ユーの名前は? ノリィーコ! 良い名前だ。ジャパニーズなら、宗教は仏教かな? えぇ、クリスチャン? それもカトリックだって! 神様! これはミラクルだ! けど、ノリィーコ、君はどう見ても二十歳位だろ? 僕とはちょっと歳が離れすぎてるかなぁ……、えっ、何だって? もうすぐ27歳! 全然見えないよ! もしティーンエージャーだったらどうしようかと、思っていたんだ……、ブラボー! それにしても、ノリィーコの英語の発音はワンダフルだね? 留学経験でも有るのかな?」

そう聞かれたので、ワシントンのセント・ジョージ大学に短期留学したことを伝えると、偶然ロバートの母校だったので、ますます盛り上がった訳です。



*途中省略

それから毎月ロバートは香港を訪れるようになりました。

最初は適当に相手をしていたのですけど、前河さんから、「大事なお客さんだから、粗相の無いように……」と言われ、毎回アテンドしている内に、少しずつ打ち解けるようになりました。

1995年のクリスマス・イブの夜、シェリーが神内さんに振られ、私は貴方にすっぽかされ、部屋で二人で一晩中ワインを飲んでいると、真夜中に酔っ払ったシェリーが、

「もう怒った! 初芝の男はどいつもこいつも、オンナを見る目が無い碌でなしぞろいだ! そうでしょ、典子! こうなりゃアイツで良いや!」

そう言って、長年シェリーに駄目元でプロポーズを続けている男友達に電話をかけて、クリスマスの夜に最高のレストランで、最高のプレゼントを用意すれば、お前のプロポーズを考えてやっても良い! と告げると、相手は大喜びで、明日のクリスマスの夜はペニンシュラでディナーだぁ! とかシェリーが言い出すものだから、私も酔っていたので、ロバートに国際電話をかけたら、「今から急いで飛行場に行く! 僕は君のサンタクロースだ、明日の夜はノリィーコと一緒に香港でクリスマスだ!」と言い出して、本当に空を飛んで、私に会いに来てくれたんです。

そして去年の夏休み前、シェリーにアメリカに遊びに来るように誘われた際、行きたいけどお金も無いし……と告げると、「馬鹿ねぇ、そのお金持ちのロバートさんに、一度アメリカに来て家族に顔を合わせるよう何度も誘われているんでしょ? だったら、その話に乗ったことにして、私の旦那の店で一緒にご飯を食べて、その後ウチに来て、一晩中パジャマ・パーティーしましょ!」と言われ、ロバートに電話すると、あっという間にビジネスクラスの航空券が送られてきて、ニューヨークに行くことになったのです。

シェリーの部屋で、二人でワインを何本も空けながら出た結論は、「オンナの幸せは、自分のことだけを考えてくれる、自分が2番目に好きな(お金持ちの)オトコと結婚すること! 何故なら、自分が1番好きな(お金持ちじゃ無い)オトコと結婚すると、いつか愛が冷めた時、きっと後悔するから……」でした。

閑話休題

去年のイブの夜、12時前にロバートから、「どうしても君に会いたくて、去年と同じ飛行機に飛び乗って、今 “Kai Tak Airport” に到着した。今、何処にいる? 教えてくれ?」と言われたのですけど、一旦は電話を切りました。

けど、戻ってみると貴方は瞼を閉じていて、どうしたら良いか分からなくなり、シェリーに国際電話を掛けました。

するとシェリーは「アンタ馬鹿ぁ……、そんなの、狸寝入りに決まってるでしょ! 一念発起してイブの夜に典子を誘ったものの、土壇場になって怖気付いたのか、だってあの人、ギャンブル以外じゃ小心者だもの……、それとも電話の相手が大金持ちのロバートさんだと分かって……、十分有り得るわよ、サニー電子にはお友達がいるのでしょ? ここは一つ典子の幸せを願って、男らしく身を引いたのか……、それならちょっと見直すけど、もし、もしもよ! 本当に寝ているのだとしたら、“ナルコレプシー” だか何だか知らないけど、飛んでもハップン、歩いて5分よ! そんなおたんこ茄子のコンコンチキは豆腐の角に頭をぶつけて死ねば良いんだわ! 兎に角、今、典子のすべきことは、さっさと荷物を纏めて部屋を出て、タクシーに飛び乗って、ロバートさんの胸に飛び込むこと!」

*省略

今から思えば、去年のクリスマス(Last Christmas)は、私にとって “想い出がいっぱい” 詰まった、まるで宝石箱みたいな香港の地で過ごした私自身の20代の、そして、“借り物の場所(borrowed place)”で、“借り物の時間(borrowed time)”を、大好きだった貴方と一緒に過ごした、最後のクリスマス(Last Christmas)でした。

去年のクリスマスから体重が??kg増えてしまって、“紅の豚”一直線! の私としてはイブの夜に、貴方に私の一番綺麗な姿を見て貰えて良かったです。

ワインに酔って、いつものように眠ってしまった貴方の手の平からこぼれ落ちた、周大福珠宝のラッピングのクリスマス・プレゼント? を見ることが出来て嬉しかった。

そして、クリスマス・イルミネーションで煌めく返還前の香港の100万ドルの夜景をバックに、最後に貴方がメガネを外して俯く横顔を瞼に焼き付けることが出来たこと、それが私にとっての、“ラスト・クリスマス” です。

最後に私から、“マカオの帝王” さんに一つ、お願いが有ります。

貴方がいつも私に話してくれた、マカオのカジノで毎週末に繰り広げられる物語の数々を、いつか本にして下さい!

(だって、バカラやブラックジャックのルールを知らない、何年も香港に住んでいたのに、カジノに一度も足を踏み入れたことのない私がいつ聞いても、とっても面白かったのですもの! いつも貴方を騙そうとするのだけど、何故か憎めないジャクソンさん、カジノの馴染みのディーラーさん、いつも貴方と反対のプレイヤーに張る常連客のおじさん、ブラックジャックで貴方を見つけると、後ろから貴方に乗っかって1/5ずつ張るメガネのマカオ大学の学生さん、バカラが大好きなマカオのナイトクラブのお姐さん、毎週金曜日の夜に、リスボアのミニマム200$のバカラの卓に、20歳の美人の孫娘に車椅子を押されながら現れる、70代のしわくちゃのお婆さんとの勝負……)

それらの物語をいつか、今わたしのお腹の中にいる子供が大きくなった時、パパと出会う前にママが大好きだった人の物語として、聞かせてあげようと思います。

わたしの “マカオの帝王” さん

いつまでもお元気で

再見

ラスト・クリスマス(1996)【完】


 

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comment (8件)


  1. 投稿者:週末予言者さん

    投稿日:2021年2月18日

    マカオの帝王 様

    前から帝王さんのレポートのファンです。今回は久しぶりと言う点を加味しても、大変面白かったです。後編の「老板」のくだりでも十分面白く、「ああ、帝王さんのレポートが帰ってきた」と喜んでおりましたが、その後の完結編と後日譚では、今までとは一風変わって素敵なラブストーリーをお話し下さり、リアルに感動してしまいました。本もお出しになっているので、竹原典子さんのお願いも叶えた事になりますね。

     

  2. 投稿者:マカオの帝王さん

    投稿日:2021年2月18日

    週末予言者さん、好久不見了(お久しぶりです)

    香港返還の年(1997年)、頭の中で思い描いた未来予想図。

    40代:多分今と同じようにカジノ三昧だろうなぁ……
    50代:そろそろカジノは卒業? 若しくは強制終了?
    60代:いくら何でも、引退だろう……

    と考えていましたが、まさかコロナで海外渡航禁止になるとは、想定外でした。
    けど、ものは考えようです。現在のパートナー(リンちゃん)からは、“バカラ禁止令”が依然解除されていない為、若い人に交じってするポーカーの国内トーナメントも、それなりに愉しいです。

    この前も大阪であったポーカー大会で、終盤までトップだったのですが、最後息切れして20代の若者に優勝をさらわれ、ランナーアップ(準優勝)に終わったのですが、それもまた一興です。

    次は、1991年のフィリピン(マニラ)遠征の話、若しくは1995年の “Lost Christmas” のどちらかをアップする予定です。

     

  3. 投稿者:週末予言者さん

    投稿日:2021年2月18日

    マカオの帝王 様

    ご返信ありがとうございます。一度前にレポートにコメントさせて頂いた事がありましたが、覚えて頂いたのであれば大変嬉しいです。

    若者が有利と言われるポーカーでも良い成績を収められておられるとの事、流石です。

     

  4. 投稿者:マリタイムさん

    投稿日:2021年2月19日

    こんにちは。

    竹原典子が電話に出た時点で、微妙な雰囲気になっていますから、
    マカオの帝王さんは眠りに落ちて良かったのかもしれませんね。
    映画化するときは、眠りには落ちず、
    典子を賭けてロバートとバカラで勝負するシナリオで行きましょう。

    アンタ あの娘に惚れてるね
    港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ♪

    長編、お疲れ様でした。☆

     

  5. 投稿者:マカオの帝王さん

    投稿日:2021年2月19日

    週末予言者さん、こんばんは!

    >若者が有利と言われるポーカー

    まったく、その通りです。若者達は恐れを知らず、最新の戦術を縦横無尽、自由自在に繰り出し、年寄りを翻弄します。そこにはマカオでの20年の経験など、まったく通用しません。

    けど、それがまた面白いのです。アミューズメントのポーカーハウスで、偶に暇つぶしにバカラをすると、「あれ? マカティさんもバカラするんですねぇ……」とか言われるのも、一興です。

    若者達より有利なのは確率の計算位ですが、最近はそれも程ほどにして、優勝しなくても、面白い勝負が出来たらそれで良し、と考えるようにしています。

    明日から4連休、大阪で一勝負です。

     

  6. 投稿者:マカオの帝王さん

    投稿日:2021年2月19日

    マリタイムさん、こんばんは!

    もしロバートとバカラ勝負となったら、それは太平洋戦争と同じ展開になったでしょう。
    勿論、ロバートが米軍、当方が日本軍です。
    こちらが幾ら個々の戦闘で勝利を収めようとも、米軍は怯みません。
    何故なら、米軍は多少損傷を受けてもすぐに挽回するのに対し、此方は勝ち続けるしかなく、一度でも決定的な敗北を喫したなら、それでゲームオーバーになるからです。

    その意味では、このゲームは前年(1995年)のクリスマス・イブに当方が彼女との約束を破った時点で決着が付いていたと言えます……

    所謂 “黒歴史” ですが、一息ついたら “Lost Christmas(1995)?” もアップします。
    ※ これはマカオでのカジノ(リスボア)の話が中心となります。





    すから、
    マカオの帝王さんは眠りに落ちて良かったのかもしれませんね。
    映画化するときは、眠りには落ちず、
    典子を賭けてロバートとバカラで勝負するシナリオで行きましょう。

    アンタ あの娘に惚れてるね
    港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ♪

    長編、お疲れ様でした。☆

     

  7. 投稿者:akasakatenさん

    投稿日:2021年2月21日

    マカオの帝王さん

    今回もあっという間に読了しました。
    楽しい時間をありがとうございます。

    マカオの帝王さんのアミューズメントポーカーのお気持ち、すごく共感いたします。私はフリー雀荘で、強くなりたいと一所懸命に打つ若者と同卓すると気持ちが嬉しくなります。

    飲む打つ買うの三拍子といいますが、
    (焼酎(カストリ)、チンチロリン、青線赤線ではなくて)
    ワイン、バカラ、大人の恋には
    艶のある美しい世界に惹きこまれます。

    多謝!

     

  8. 投稿者:マカオの帝王さん

    投稿日:2021年2月23日

    akasakatenさん、こんばんは!

    今、やっと4連休のポーカー遠征から戻りました。
    土曜日は、今ポーカー界で話題の “賞金総額1,000万円”の イベントの予選に参加し、序盤は鳴かず飛ばずでアベレージ以下だったのですが、ファイナルテーブルに入ってからエンジンがかかり、珍しく優勝し、2次予選の出場権を獲得しました。

    日曜日の大阪(ミナミ)№1決定戦は参加者70名中、序盤は独走態勢に入り、全体1位だったのですが、中盤でKK(2番目に強い役)が入り、これで更に上乗せだぁ! と喜んだものの、オールイン対決の相手の若者にAA(1番強い役)が入っており、普通に負けて失速してしまいました。

    本日の100人トーナメントの予選も、序盤はチップ・リーダーで、上位4人に入れば良かったのですが、残り5人となったところでQQ(3番目に強い役)が入り、ショートからオールインが入り、見送れば予選通過していたのですが、『ショートのオールインを、QQで降りられるか!』とコールすると、相手はJJで、一瞬勝った! と思ったものの、無情にも3枚目のJが出てしまい、無念にも5位で
    シートアウトとなりました。

    さぁ、明日からまた頑張ろう!

     


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