リゾカジ カジノレポート

ロスト・クリスマス(1995)【完】

* マカオ 2021/ 12/ 25 Written by マカオの帝王

コメント( 2)

■ 1995年12月27日(水)未明

「あぁ、ユーが席を外している間に、お向かいの老人達から、或るお願いをされました、『あの日本人は “リーハイ(強い)”、自分達では勝てる気がしない。もう絵札を見るのも飽きた。そこで次の勝負は自分達もバンカーに賭けるから、あの日本人が代表として絞り手になって貰って、我々の直近の負け分を挽回させて欲しい! 尚、キッチリと勝てた場合は、バンカーのコミッション分位のお礼は進呈する。』とね……」

五老人? の提案を脳内で高速検証する。

『お礼? は確かに美味しいが、卓の全員がバンカーに張った場合のハウスプレイヤーの強さは半端ない! これぞ正に “そうは烏賊の天ぷら” である。ディーラーのナチュラルで、あっさり転がされるのが落ちだ……、しかし待てよ、まだ手元には厄介な“ラッキーチップ”が6万$分残っていたのだったな? これを処分するには頃合いか……』

ジャクソンを呼び寄せ、修正案を説明する。

「良いか、ジャクソン、老人たちにはこう説明しろ! 『我明白了!(分かりました!)、提案の通りバンカー側の代表としてベット致します。但し、経験上、卓の全員がバンカーに張り、ハウスがプレイヤーとなった場合は、何故か負けることが多いような気がします。そこで今回は、自分はプレイヤーにも同額ベットし、それをこの隣にいるジャクソンが、2枚とも絵札になるよう、悪い “運気”をカードに注入した上で負ける為に絞るので、この目論見通り、バンカーが見事勝利したならば、その “お礼” 分をジャクソンに進呈願います。いかがでしょう?』、とな!」 

それを聞いて、興奮しながら早口の広東語で “五老人” に説明するジャクソン。

“長老” が静かに頷いた。
それを見て、残る4人も賛意を示した。

ゆっくりと “長老” がバンカーに3万$、他の4人が同じくバンカーに1~2万$をベットし、こちらにバンカーへのベットを促す視線を送る。

先ず、バンカーに “ラッキーチップ” を3万$ベットする。
次に、左隣に座っているジャクソンに一旦3万$を渡し、それを自分の手でプレイヤーにベットするよう伝える。

老人軍団のバンカーへの総ベット額は約10万$だったので、“長老” が約束の ”お礼” 相当分として、5千$のキャッシュチップ1枚を手に持ち、ジャクソンに示す。

それを見て、ますます興奮するジャクソン!
カードが配られる。

「ゴン!! ゴン!!」と、いつも以上に気合を込めて、ジャクソンが金属製のライターで、目の前の2枚のカードを卓上で叩く!(何故だか、マカオではこうすることで、絵札が出やすくなる?? と考えられている)

その甲斐有ってか、1枚目は絵札だったようだ。
「ゴンチャイ!」とジャクソンが叫ぶ!

退屈なので、2枚同時に絞る。
2枚とも4ピン、勿体をつけても仕方ないので一気に絞り上げる。
9+9=ナチュラル8!
牌を卓上に晒すと、五老人(御老人?)、一同大喜び!

後はジャクソンが与えられた仕事(9以外なんでもOK、最悪でも8!)をこなせば、本人も含め皆さんハッピーだった訳だが……

2枚目を絞るジャクソンの顔が曇る。
どうやら絵札(ゴン)では無かったようだ……
カードを横にするが、ますます暗い雰囲気が漂ってくる。
「ガオチョー!(何てこった!)」とジャクソンが叫ぶ。

こっちが2枚も9を引いた訳だから、4ピンとしては10の方が2枚多い筈なのに、肩が強いのか弱いのか? 何故か9を引いてしまい “ご祝儀” の5千$を獲得し損ね、項垂れるジャクソン。

“パーシューガウ(8対9)” で勝利して、これ程残念そうな顔をする絞り手を、生まれて初めて見た。

「残念だったな、ジャクソン! それではやり直しだ!」

そう告げながら、残る3枚の“ラッキーチップ”の内1枚を千$10枚と両替して貰い、バンカー/プレイヤー双方に15,000$ずつベットする。

五老人はやや張りを落とすも、同じく全員がバンカーにベットする。
(“長老”はバンカーに14,000$を、又“ご祝儀”としては今回は3千$が提示される)

再びカードが配られる。

目の前にぶら下げられた “人参” は一回り小さくなったが、次こそはそれを獲得すべく、気合を入れ直すジャクソン!

「ゴーン!! ゴン!! ゴン!! ゴーン!!」と声を張り上げながらカードを叩くジャクソン!

冬だと言うのに、汗だくになりながらジャクソンが精いっぱいの2枚(絵札とA)をオープンする。

老人達の期待に応える為に、最後にひと踏ん張りするところであったが、よくよく考えるとプレイヤーが勝った方が、バンカーのコミッション分だけ得する訳なので、サクッと捲ると共に絵札で有った。

“五老人” から溜息が聞こえてきた。

又もや眠気が襲ってくる。

プレイヤーが1点からのベストは4ピンの9で有ったが、それは言い難いからか、
「ゴン!!  ゴン!!」と叫びながらカードを叩き続けるジャクソンの姿が瞼の向こうにボンヤリと浮かぶ……

「ゴンチャイ!!!」と一際大きな声でジャクソンが叫んだ瞬間、バンカーのラストカードを絞りにかかった右手の指先が滑り、絵札の枠線が目に入る。

『全くもう! こんな隣で、“ゴン! ゴン!”と連呼されちゃあ、その妙な “運気” がこっちに乗り移ってきて、こっちの3枚目まで、“ゴン(=絵札)”に成ってしまったでは無いか!』

3枚目の絵札をディーラーに向け放り投げる。

それを見て肩を落とすジャクソン+五老人……

7連敗で戦意を喪失したのか、“長老”が静かに席を立つ。
他の4人も後に続く。
ジャクソンと二人取り残され、ディーラーが何やらジャクソンに話しかける。

「あぁ、彼女が言うには、もうすぐこのシューは終了だ。お前達がハウス相手に真剣勝負するのなら、シャッフルするが、さっきのような “キャッチボール” しかしないのだったら、この卓は閉じる、と言ってる……」

それは、尤もな話だな……、と思いつつ、

「分かった! それじゃジャクソン、彼女にこう伝えてくれ! 次で最後にする、後ワンゲームだ。それなら良いだろう?」

ディーラーが了承する。

最後に残った “ラッキーチップ” を千$に交換し、バンカーに7千$、プレイヤーに7千$をベットする。(1枚は予備として残す)

「さぁ、ジャクソン! 段々 “祝儀” が小さくなって悪いが、泣いても笑ってもこれで最後だ! 勝負を始める前にはっきりさせておく。プレイヤーのジャクソンが勝ったら、 生き残りの“ラッキーチップ” 8千$+キャッシュ2千$の合計1万$を、バンカーの僕が勝ったら、生き残りの “ラッキーチップ” 8千$を、今回の “お礼” として進呈する。小一時間の祝儀としては十分だろう、さあ、今年最後のバカラの始まりだ!」

最後の勝負が始まった。
ジャクソンが懸命にカードを絞るも、4+2=6点であった。

それに対し、此方は盲ピン(1、2、3)と両ピン(4か5)であった。

『まだアタマが呆けてやがる……、正確な確率の計算が出来ないが、これは勝ったも同然! ここからどうすりゃ負ける???(4+1=5点から、3枚目で6を上回れなかった場合のみ負け)』

盲ピンを確認すると、“2”だった。

爪楊枝を取り出し、咥える。

『これで負けは無くなった。有るのは引き分けか勝ちか……、けど、これが引き分けだとラストだとさっき宣言したのに、“ラッキーチップ” がそのまま残ってしまう。それは困る!。出来れば最後は美味しい“チャーシュー(7対6)”で勝って終わりたい!』

“獅子搏兎(ライオンは兎を狩る時にも全力を尽くす)”という諺の通り、兎(ジャクソン)にとどめを刺すべく、牌に “運気” を送る!
中央に、徴が見えた!

1995年最後の勝負は、“チャーシュー” で幕を閉じた。

ディーラーにバンカーコミッションとして、キャッシュチップ300$+巾着の中から香港$の分厚い5$コイン10枚の計350$を渡す。
配当を一旦受け取り、手元の全てのキャッシュチップをディーラーに渡し、“板(10万$)” 2枚との交換を要求する。

ディーラーが間違いの無いように何度も確認しながら計算する。
それは20万$ジャストであった。
目を丸くしながら、10万$の板を2枚取り出し、当方に渡す。

ジャクソンにも約束の8千$を渡すが、やや不満そうであった。

「それじゃあ、ジャクソン、今回は九龍行きのフェリーの “豪華席” のチケットを1枚、宜しく頼む。マカオ発は午前6時の便が有った筈だから、フェリー乗り場に午前5時半に持って来てくれ。それまで僕は、両替/食事+ビール/休憩だ、再見! 」
そう言い残し、ジャクソンと別れる。

キャッシャーに行くと、珍しく香港上海銀行の番号続きの新札の千$札百枚! のパック一つと、普通の千$札のバラ百枚を受け取る。バラをレートの良い、24時間稼働中のローカル両替屋で、日本円約120万弱と交換する。(ここでも、日本円の1万円の新札100枚+バラで受け取る)

『円高のお陰で、何だか少ないなぁ……、けど、香港ドル、日本円、共に新札100枚をゲットしたのは大変気分が良い! これは次回の軍資金として、当面はバラで凌ぐとしよう……、もうクリスマスは終わったというのに、何故か街はまだまだクリスマス・ムードたっぷりだ! これもマカオのいい加減さ(良くも悪くも)の一例だな……、さて、いつものポルトガル料理店で、スパゲティとビールでも頼むとするか?』

ほろ酔い気分で通りを歩きながら考える。

『今年のクリスマスはもう終わってしまった……、“覆水盆に返らず”、だ。確かに10万$は手に入れたが、その何倍も大事なものを失ったような気がする……』

フェリー乗り場に到着。

ジャクソンを待つが、5時40分になっても姿は見えなかった。

仕方なく、残ったマカオパタカの小額紙幣と硬貨をかき集め、現金でチケットを購入する。
(これで二つの巾着のコイン軍団は、香港$/マカオパタカ、共にほぼ消滅)

『ジャクソンも、たかだか百数十$のチケット代を惜しんで、カモ(当方)を逃すことはしない筈……、とすれば答は一つだな。① 目の前で当方の鮮やかな勝利を目撃した。② 手元に現金ではなく、ノンネゴチップが8千$分有る。③ 一勝負する時間も有る。とくれば奴のことだ、勝負しない筈が無い! そして十中八九、全て溶かしたのだろう……』

フェリーがマカオを離れたので、シートを倒す。
(船内の席はガラ空きであった)

脳内を様々なクリスマス・ソングがメドレーで流れ出す中、1995年のクリスマス・マカオ遠征はその幕を閉じた。

                  ロスト・クリスマス(1995)【完】



このReportへのコメント(全 2件)

2021/12/27(Mon) 08:38

マリタイム

マカオの帝王さん、こんにちは。

ノンネゴチップをバンカー、プレイヤー双方に同額張るのは、
意図的にローリングを進ませる行為で認められないと思っていましたが大丈夫なんですね。

バカラに勝つより、香港に行きたかったというのが、正直なところでしょうが、
大変なトラブルに巻き込まれても、大きく勝って終わるのは、地力の強さですね。
後にリスボアで軟禁されていたことを伝えた時、竹原さんは何て言っていましたか。

しかし、ジャクソンは普通に負ければよい勝負で負けず、フェリーチケットは持ってこずと、
何やってんのという感じですね。(笑)

レポート作成、お疲れ様でした。
もしマカオでお会いすることがあれば、グランドリスボアパレスの居酒屋くるくるで、
くるくるさんの奢りで食事しましょう。(^O^)/


2022/01/05(Wed) 01:50

マカオの帝王

マリタイムさん、新年快楽!

クリスマスに何とかアップしてから、年末ポーカー大会+新年早々に眼のレーザー手術(加齢性黄斑変性)を受けたため、返事が遅くなりました。

>ノンネゴチップをバンカー、プレイヤー双方に同額張るのは?

ですが、カジノ側が招待客にかなり有利なプログラム(ホテル宿泊+食事無料+送迎+往復航空券)を提供している場合は、あからさまな “キャッチボール” は認められませんが(最も、その場合でもカジノ側はギリギリでマイナスにならない範囲内でしか、コンプを提供していないことが多い)四半世紀前のマカオにおいて、この種のジャンケットルームで、ジャクソンのような “ジャンケット屋” が提供するサービスは、フェリーチケット、タバコ、飲み物、優遇レートでのホテル宿泊、といった、大したことの無いものばかりでしたので、問題有りませんでした。
(時として、自己流の “罫線予想” を売り物にするジャンケット屋も大勢いましたが、全勝負ほぼバンカーにベットする当方には用無しでした)

>後にリスボアで軟禁されていたことを伝えた時、竹原さんは何て言っていましたか。

後日、話を単純化し、「リスボアで “トラブル” に巻き込まれ、連絡出来なかった……」とのみ伝え
たところ、それ以上詳しく問われることは有りませんでした。今にして思えば、彼女の方にも翌日にシェリーの提案に乗ったとはいえ、急遽ロバートとクリスマス・ディナーを行ったという “負い目” があったのでは? と思料します。

>しかし、ジャクソンは普通に負ければよい勝負で負けず、フェリーチケットは持ってこず……

カジノにおいて、香港ドルのキャッシュをチップに交換した時点で現実感が減衰します。これを “ラッキーチップ” に交換した時点で、ますます現実感が乏しくなります。それを、ジャンケット屋を生業とするものの、骨の髄までバカラ・ジャンキーのジャクソンが、自らの報酬として受け取ったなら、フェリーチケットを用意するという最後の仕事の前に、“一勝負” するのは当たり前でした。こればっかりは、ジャクソンを責めることは出来ません。

またマカオに行けるようになったら、“くるくる” さんとも一緒に食事しましょう!


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