リゾカジ カジノレポート

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*テニアン

奇術~ 【テニアン】

Written by カンシー

投稿日:2011/09/26

コメント(10 件)

*

Casiono Report

「奇術」

あの時はほんとうにお金がなかった。

お金がないならカシノになんか行ってはいけないと思うのだけど、
それでも、無理して計画をたてた。
勝てなくてもいい、ちゃんとターンオーバーさせて、
コンプも少しもらってっていうことも、計画に入れた。
・・・無理かも。
そんなこと、わかってる。だけど行かないと私の身がもたない、
でも、頭はずきずき。お腹もしくしく。

同伴者は、カシノメンバーになりたいと言った。
それはコンプを狙うには悪くはない話だけど、
いくらテニアンのVIPカード発行の基準が低いって言っても、
US$で2,000のバイインが必要。
同伴者はお金をまったく持ってないに近いと言っていた。

飛行機は貯めていたマイルをほとんど全部使って、ビジネスクラスを2枚とった。
そんな事情は私は私の内だけに留めておいた。

同伴者はBJならわかるし強いって、飛行機のなかで一人で盛り上がっていた。
でもそのレベルは日本のゲームセンターでやっとことがある。ザッツオール。
私は不安。私はちょっと意地悪に、「自分がA+6・アップカードが5だったら?」と
聞いてみた。「ステイ」と自信たっぷりだった。
やっぱり同伴者はBSを覚えてきていない。何回も話したのに。
マイストラテジー、お金を捨てに来た人。
「ごめんごめん、ほんとはヒットでしょ。」笑顔だけは爽やか。
私も笑顔をつくった。
カードを作ったら、お金をすぐに取り返さなくっちゃ。心に強く決める。

事前に連絡をしておいたからなのか、ホテルに着くなりすぐに
同伴者はパスポートを持って別室に連れていかれた。$2,000渡していたので、
私の財布にはあと$1,000ちょっとと日本円が少し。カシノ入り口のATMが気になる。
だめだめ、そんなのはだめだ。

新しいカードと$2,000分のCPVを持って同伴者は出てきた。
VIPホストはすぐにでも打たすような感じで話しかけてきている。
同伴者が英語が苦手なことをいいことに、私は
「飛行機の中でお酒を飲みすぎたから、少し休みたい。」と話して
私たちの部屋に逃げ出した。

私は飛行機用の服を着替えながら、ちょっとルールに関して嘘をついて
CPVを取り返した。変わりにキャッシュで$1,000を渡した。
クローゼットに服や水着をしまったり、同伴者の荷物を片つけたりしていたら、
お酒が効いていたのか、少しベッドで横になった。

2、3時間寝てしまったのかも。
・・・同伴者がいない。バスルームにもいない。
嫌な予感。私は身支度もそこそこに急いでエレベーターに乗り1Fに急いだ。
やっぱり。BJの卓に同伴者はいた。すばやくチップを確認すると、
$300ないくらい。お願いだからバイイン$1,000じゃありませんように。

「ずるいんだよ、あのディーラー!」
「そうなんだ、流れが悪いんだ、私なにか食べたい。」
「これからなんだよ、ちょっと待てない?」
「じゃぁいい、私一人で食べる。」
「それは・・わかった、一度やめるよ。」
私はカラーアップするように、話した。
ブラックが2枚、グリーンが3枚、レッドが1枚。クォーターが2枚。
同伴者が席を立つとき、クォーター2枚をチップとしてあげていた。
いくらからだったの?

同伴者はバドライト、私はアイスウーロンティーを注文した。
「ずるいんだよ、あいつ。こっちが20とかでもBJだしてさ、
 何回もBJだからここはインシュラ~ンス!とかってしたら
 ただの2とかさ、まったくきたねーよ。」
「・・・」
「最初は$20とかでやってたんだよ、ぜんぜん勝てなくってさ。
 それで$5にしたら、けっこう勝ってきて、それで$25にしたら
 あのディーラーBJ3連続とかでさ。」
「・・・」
「なんだよ?」
「ねぇ、あのさ、いくらバイインしたの?」
「えっ、全部だよ、だって当たり前だろ。」

もう、$2,280になってしまった。
まだ到着してから4時間しかたっていないのに。

*

*右に見えるのがさいぱん島なはずです

「奇襲」

私は私が勝手にインド屋さんと呼んでいる、
1Fのコンビニエンスストアで、大きなabsolute水と
チョコレート、そして1デッキ分のカードを購入した。

それから人の良いおじさんが案内してくれていた
ツアーデスクに行って、亀サンゴを申し込んだ。
一人当たり$90、二人で$180。痛い。
でもこのままでは、負の連鎖に引き込まれてあっさり終わる。
私には予感があった。
少し迷って、決済の遅いほうのクレジットカードを出す。
テニアンの電話回線事情はまだまだ不安定だったらしく、
何回かかのトライのうち、じじじっと紙が出てきて、私は署名した。

出発まで2時間ほどの間に、たっぷりと日焼け止めを塗った。
水着のストラップの下も違うもので塗りなおす。
日本のほうが暑く感じる日もあるけど、やっぱりここの紫外線は強烈なり。
同伴者に手伝ってもらう。今日は素直だね。

ビーチまでは歩いても5分くらいなのは知ってたけど、
ツアーっぽいピンクのマイクロバスで送迎してくれる。
うん。だんだんリゾート気分になってきた。
二人ともシュノーケルは経験あるので、ビーチでは簡単な説明を受けて、
早速ボートへ。亀がよくいるポイントまでざーっと移動する。

案内してくれるチャロモ系の彼が海に飛び込む。
同伴者も続いて飛び込む。うらやましい。
私は子供のころの運動会はビリだけにはなりたくないと思っていた口だ。
同伴者きっとクラス対抗リレーで走っていた口。
ボートのはしごを使って、私はゆっくり海へ。
ライフジャケットがあるので、簡単に浮きながら足にフィンをつける。

チャロモ系の彼に左手を、同伴者に右手を引っ張ってもらいながら、
けっこうな速さで進んでいく。視界いっぱいに熱帯魚の魚群とサンゴがある。
きれい。青くて白い。生きているような青白さだ。
急に左のほうから、腕が伸びてきた。なにかを指しているみたい。
いた!その先に亀だ。
同伴者の方を見てみる。気づいてるみたい。

亀は一匹で、私たちよりずいぶんと深いところを泳いでいる。
前足を一生懸命動かしているかのよう、かわいい。
でも、それは見かけだけで、すっごく早い。
2人は追いかけるように私の腕をぐいぐい引っ張って泳ぐ。
私たちはずーっと泳いでいった。

ずっと追いかけて息もきれそう。亀はどこにむかってあんなに早く
泳いでいるのか。そう思っていると迎えのボートが近くに来ていた。
一番最初にあげてもらう。少し落ち着いてから聞いてみた。
「ねぇ、あの亀どこに向かっていたのかな?」
「俺らから逃げてたんじゃね?びっくりしてさ。」
そうなのかも、悪いことしちゃってたのかも。ごめん。

私たちは部屋に戻り、先に同伴者にシャワーを浴びてもらった。
私はゆっくり1時間は入るからといって、その前にCPVを渡した。
min$5の小バカラでやってみてと話す。どんなゲームか説明した。
私はミニマム$5だったら、いくらなんでも$2,000は残るって計算した。
同伴者は喜んで部屋を出て行った。「増やしてくるからねー。」

私が着替えて1Fのカシノに行くと、同伴者はちゃんとレッドで
打っていた。よしよし、頭をなでてあげたい。
カラーアップすると$20増えていた。
そのままキャッシャーに行きドルに交換する。お札は私がしまう。
カシノカフェで食事をする。同伴者はカルビジムとバドライト。
私はキムチチグーとアイスウーロンティー。
付けあわせがおいしい。ここのコリアン料理っておいしいと思う。
値段も適当。チップ込みで$30くらい。
署名してチップは現金で明細帳にはさんで渡す。

部屋に戻って、BSシートと比較しながらBJの練習をする。
もちろん私がディーラー役だ。
「たりぃー」とか「わかんねぇ」とか言って、最後には、
自分の勘で引いたほうがいい!とまで愚痴をこぼした。
私は笑顔で我慢だ。
その後、二人とも寝てしまった、でも私はしかけた携帯のバイブで目を覚ました。
ボタンを押して時刻を確認する。朝の3時半。

私は同伴者が寝息を立てているのを確認しながら、
お金、VIPカード、小物をそろえた。
冷蔵庫から水とチョコレートを出して食べる。
いまあるお金と支出をメモする。
鏡をみる。私が写っている。馬鹿になるわけには行かない。
ちゃんと打って、ちゃんと戻ってくる。よし。




「奇人」

私はカシノに入り、おはようって警備員に挨拶をしてから
誰もいないmin$5のBJ台のサードベースに座った。
$2,000をバイインするとVIPカードの提示を求められた。
「グリーン?」とディーラーが尋ねてきたので、「はい」と
答える。その後ブラック2枚をレッドに変えてもらう。
ブラック10枚は端にどけた。これは使わない。お守りみたいなもの。
ブラック3枚。グリーン20枚。レッド40枚。

「グッドラック!」ディーラーが笑う。
私はグリーン一枚を掴んで、ベットした。
ちゃんと記録してね。インスペクターさん。
私はブラックコーヒーを頼んで、ゲームをはじめた。

悪い流れは、ちょっとツアーに行ったくらいでは断ち切れなかった。
グリーン1枚では勝てても、2枚では勝てない。
スプリットやダブルダウン分で少しずつ減ってきてしまう。

カッティングカードが出たので腕時計をみると、1時間くらいたっている。
私の手持ちは、10%マイナスにならないところで持ちこたえている。
途中からは例外を除きレッド2枚でプレーしたから。

「なにか飲みますか?」とウェイトレスさんに尋ねられたので、
ん~マンゴージュースの気分じゃなかったので、
「とまとジュースありますか?」って頼んだら、聞き返されてしまった。
「とめぃ・とジュース」って言い直したら、了解してくれた。

とめぃ・とジュースを飲むと、少し落ち着いてきた。
私のことを覚えるんだろうなぁって思うスラッシュの彼女が
冗談っぽく聞いてきた。
「それ、とめぃ・とジュースなの?好き?」
「はい、好き。日本でもよく飲むの。」
「そう、あなた肌の色が白いけど、そのせいなのかしら。私はダメ。」
私は少し照れたけど、すっかり落ち着いてきた。どこの国だっておんなじだ。

次のシューでディーラー側にバストが目立ってきた。
私はグリーンに戻す。2回痛い負けはあったけど、
かまわずグリーンで打ち続けた。負けゲームが多いと思うけど、
トータルではなんとかバイイン以上のチップにすることができた。
一人しかいないし、ちょっとトイレといって席をたった。

戻ってくると、ファーストベースにおじさんが、その隣に女の子が座っていた。
日本人だよねって思えるおじさんは短髪で派手な黄色いめがねをかけている。
女の子は日本の基準では細くはないほうだけど、
とても魅力的な顔立ちをしている。中国系なのかなぁって思う。
メイクがないから未成年にも見えるけど、ここに入れるということは
21以上なのだろうか。
私がサードベースに座りなおすと、おじさんはちょっと驚いたように、
「ここ、いいですか?」と関西のイントネーションで尋ねてきた。
いいもなにも、私は困ってしまったのだけど、
「えぇ、かまいません。」と答える。
「あぁやっぱり日本の方。いや、BJとかポーカーはハンドが変わるから、
 それでブツブツ言われるのが嫌なんですよ。前は入った瞬間に
 フラッシュだしたら、ずーっと嫌味を言われて。」
「そうですか、それは大変ですね、私は大丈夫です」
それにブツブツ言われるのはサードベースの私のほうだ。きっと。
私だって少しは経験があるのだ。
「バカラをよくするのですか?」と尋ねてみる。
「いや、昔はやりましたけど、最近はやりませんわ。」
「どうして?」
「いやね、だってアレ、本当の博打。この年になって蓄えたお金、
 全部無くしてしまうかもしれませんからね。」

私がトイレに行っている間にバイインしたおじさんのチップを
見てみた。じっと見たわけじゃないから正確じゃないかもしれないけど
$10,000。大金だ、少なくとも私にとっては大金だ。

この二人組は私にはいい感じに流れを持ってきてくれた。
おじさんはBSを完全にはわかっていないようで、間違いやすいハンドでは
ほんとうに良く間違っていた。そしてベットアップで負けが多くて、
その次のゲームではディーラーにバストが目立った。
おじさんには悪いけど、わたしはそれを頼りに、信じてベットアップした。
おじさんが私の作戦に気づく前に、勝負手が入った。
私の浮き分オールの状態。
$150からはじまって、6+6、アップカードは5。
スプリットして6+A。怖がらないフリだけしてダブルダウン。+4。計21。
もう一組は6+4。やっぱりダブルダウン。さっきよりは気が楽。+9。計19。
ディーラーはもう一枚5を引いて、だめかなって頭をよぎる。
だけど3枚目は2、そしてA、もう一回5を引いて計18。

おじさんに私の作戦がばれてしまったよう。
ごめんなさい、人間罫線にしてしまって。
でも、わたしにとっては真剣な博打なの。これ。

その後、嘘のように入ったナチュラルで私は今回のテニアントータルでも
ほんのわずかプラスになった。
そこに同伴者が少し眠そうにやってきた。
おじさんのとなりの女の子が、
「愛人いたんだ?」ってつぶやいた。やっぱりね。
私は普通語で話す。
「ううん、この人は私の愛人じゃないの。」
彼女はちょっとびっくりした様子で、「ボーイフレンド?」って尋ねた。
「ううん、男朋友っていうのでもない、彼はあなたの愛人?」
「ううん、違う、男朋友でもない。」
「うん、私も同じ。またね。」
「またね。」

彼女と私以外の二人はぽかーんとしていた。

「何語?」と同伴者に聞かれる?
「ううん、共通語。世界中できっとおんなじ話いっぱいあるから。」
と、私が答える。
あのおじさん、きっとお金がいっぱいあって、お金を捨てに来てるんだと思う。

*

*テニアン空港の滑走路(変わった場所から)

「奇行」

今回は3泊4日の予定。
もぅ3日目の朝だ。時間はあまり残っていない。

私はバイイン$2,000だったチップが$3,000に増えてるうちに席を立てた。
もともと10%分、$200も勝てばラッキーと思っていたので、
本当には間違って起きてしまった勝ちだ。
トータルでも少しだけプラスになっている。
でも、私はターンオーバーのほうが気になる。

同伴者とカシノカフェで朝食を取った。
同伴者はクラブハウスサンドとホットコーヒーを
私はサラダ(パン2つ付き)と日本茶があるかと尋ねると、
ありますよって答えるので、日本茶にした。
ドレッシングはサウザンアイランドとイタリアンで迷ったけど、
サウザンアイランドにした。

ここのサラダはとても美味しいけど、特にお気に入りは
きゅうりだ。大き目のものがスライスされて
お皿の周りをかざっている。歯ごたえが適度でみずみずしい。
パンもおいしい。ちぎってバターつけてぱくぱく食べる。

「今日はどうしよう?」
「せっかくシューズを持ってきたのだからトレーニングしない?」
「えっ?そっか、俺それならプールで泳いでるよ。」
「わかった。20分走って、20分自転車こいで、それから私も泳ぐね。」

私たちは部屋に戻った。いま朝の9時だ。
私はお金を数えて、使ったお金とあわせてメモをする。
それからハウスキーピング用のチップ1$札を2枚ベットスタンドに置き、
少しだけお金を取り分けてから、残りは金庫にしまった。

昨日の水着はもうとっくに乾いているけど、
違うのにした。タンクトップとホットパンツの上からTシャツを重ねる。
ショートソックスとランニングシューズを履いて、髪をまとめる。
引き出しから同伴者の分もゴーグルを出して、袋にまとめる。
よし。

ハウスキーピングにお願いしてから、
1Fまでおりてインド屋さんで飲み物を買ってからタオルを借りに行く。
SPAって呼んでもいいのだろうか?ランニングマシーンなど
少しだけおいてある建物でタオルを借りる。
「ビーチに行く?」って聞かれた。
「行くなら1枚につきデポジット$10。タオルを返せば$5戻すよ。」
「ううん、ジムとプール。」
彼は私がシューズを履いているのを確認してから、
「それなら、ここの部屋番号と名前、そして署名して。お金はいらないから。」と。

同伴者はすぐにプールへ行ってしまったので、私は受付の人以外
だれもいない部屋でランニングマシーンからやっつけにはいった。
両方の壁は鏡張りなので自分の姿が確認できる。
20分たったころには汗をかいていたし、疲れもあったけど、
ここが一番苦しい時間というのも知っているし、がまんして自転車をこいだ。

プールサイドに行くと、同伴者はクロールで泳いでいた。
なかなか早い。水深の浅いほうまで泳いでいくと、プールから出て
滑り台に向かいだした。
頂上で私に気づいて手を振る。それから姿が見えなくなって、
けっこう長い間してから、プールに飛び込んできた。
私は同伴者が荷物を置いたベンチをみつけて、そこに私のも置いてから
ゆっくりプールに入って、平泳ぎで同伴者のほうに近づいていく。
私は滑り台初めてだったけど、誘わるままやってみた。
けっこう楽しい。ううん、楽しい。何回もやってみた。

ベンチで横になっていると同伴者が尋ねてきた。
「カジノっていろんなのがあるんだな?」
「そうかも、カシノっていろいろゲームあるよね。」
「俺、むずかしいのダメだ、昨日やったバカラは簡単だからいいけどさ。」
「好き?」
「あんまり、どこが面白いかよくわかんねぇよ、あれ。」
「勝ったじゃない?」
「20くらいだろ、なんびゃく万とかになると思ってたから。」
「うん。その気持ちわかる。」
私は水を飲む。Volvicだ。インド屋さんで$2.25。
「・・・なぁ俺またやってもいいの?」
「うん、1,000ドル渡すから、それでやってみて。」
「いいんだ?」
「うん、だけどひとつ約束してほしい。」
「なに?」
「半分になったら、一度ゲームをやめて欲しい。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「それむずかしぃー、昨日も止まんねぇし、半分になったら
 全部かけて取り戻せばいいんじゃね?」
私は同伴者を見て笑った。

部屋に帰ると眠ってしまった。

私は同伴者が部屋を出て行ったのがわかった。
それほど深い眠りじゃなかったから。
時計を見ると昼13時すぎ、私は起きてシャワーを浴びる。
持ってきたシャンプーセットを使う。
水が硬いのかそれほど髪を滑らないけど、それでもここのよりはいい。
それから、1回サイズになっている洗剤を取り出して、
下着やTシャツ、靴下を洗う。
クローゼットからハンガーを取り出して、窓際に干す。
すぐに乾くから明日持って帰るのに楽だ。

チョコレートを食べた後、
私は時間をかけて身支度をした。
顔も髪も、爪も。
今日は時間をかけてゲームしなくっちゃだから。
集中。集中。
リゾートっぽい服を選んだ。
鏡をみる。やり直し、もう一度鏡をみる。
よし。

VIPカード、お金。そして身支度品。
それをポーチにつめて、ハッと思う。
私、決めてない。なにやろう?

*

*自殺岬。言葉が出ない。

「奇縁」

私は冷蔵庫からabsolute水を取り出し、
部屋に備え付けのグラスに注いで一口飲んだ。
それからチョコレートを食べる。

一般フロアにあるゲームを思い出す。
BJ、バカラ、小バカラ、ルーレット、SicBo、
パシフィックポーカー、クラップス、
スロットやビデオの競馬を除けばこのくらいのはず。
クラップスは開いてるのほとんど見たことないから関係ない。
私はターンオーバー$15,000分はさせたい。
持ってきたお金は持って帰りたい。目的は2つ。

私は手持ちの$2,000をベッドの上に1枚1枚丁寧に並べた。
帰国した後のことも考える。無くせない。
やっぱりバンクロールが少ないと思う。
・・・無理だったのかも、と思う。

私がもう一度お金をまとめて、とりあえず下に行こうと思ったとき、
部屋のカードキーが差し込まれ鍵が開く音がした。
私はドアを見る。
同伴者が部屋に戻ってきた。
私はほっとしたけど、悪い予感もした。

同伴者は私のほうを向きながら、でも顔をみることなく、
強く、弱く、なげやりに、救いをもとめるように、言葉を放り投げた。
「やられた。」
「どうしたの?」
「だから、やられたんだよ。こんだけ。」
同伴者は手から私のいるベッドにチップも放り投げた。
私はちらっと見る。レッドとホワイトが数枚だ。
「もう、俺やんね。もうやれね。」
同伴者は私の飲みかけの水を取ると一気に飲み干した。
それからタバコに火をつける。
いままで、部屋ではタバコを吸わないでいてくれてたのに。

タバコを吸い終わるまで私は我慢していた。
同伴者はチョコレートも一気に食べた。私には何も残っていない。
それからベッドに横になると今度は言葉を天井にぶつけるように
しゃべりだした。
「バカラやったんだよ。BJはBSおぼえてねーし、他のゲームルールわかんねぇから。」
「うん。」
「昨日やったほうの台がツアーの外国人でいっぱいでうるさかったから、
 空いてるほうでやったんだ。」
「うん。それで」
「すわってから、最低で100からだってのはわかったんだけど、
 それで離れるのはかっこわりぃからそのままやったんだ。」
「うん。」
「1400までいって、楽ショーって思って300とかかけて3連敗。
 半分になってさ。」
「うん。」
「でも、4連続なんてありえねぇし、500かけて取り戻しにいったんだよ。」
「俺のほう、Bで7だったけど、Pが3枚目に5出して8になって負け。」
「うん。」
「残りのチップかけようとしたけどダメだって言ってんのはわかってさ。」

それから同伴者は立ち上がって、またタバコを吸いだした。
チップを拾い上げて、私の前に置く。
「これも使って取り戻せよ!」

それだけ言うと、同伴者は冷蔵庫からバドライトを取り出して、
ほとんど一気に飲んでしまってから、ベッドにくるまって何も言わなくなった。

私の隣にいるのが耐えられなくなって、部屋を出た。
どこで出会って、どうしてここで一緒?

*

*テニアン神社(参道から)

「奇才」

私はインド屋さんの横を抜けて、ホテルの庭に出た。
それは管理はされているけど、自然のままを大切に残したような庭だ。
散歩用の道は曲がりくねっていて私はすぐに方向を見失った。

少し曇っていて良かった。
こんなときでも日焼けが気になる。
さっきまで外に出るなんて思っていなかったら、
日焼け対策は最低限しかしていない。
なんだか同じところをぐるぐるしている感じがする。
木陰にベンチがあったのでそこに座った。

同伴者は約束を守らなかった訳じゃない。
約束を守れなかっただけだ。
半分になったらやめるって簡単なことじゃない。
私だってわかる。いっぱい見てきたから。
私ははじめてカシノに連れて行かれたときのことを思い出しそうになった。

思い出したくない。お願い、今はイヤだ。思い出したくない。
私はだからこそ今回、お金がないことを承知でここに来た。
私は頼らなくたって、彼がいなくたってちゃんとやれる。
ちゃんとする。
私は思い出と知識を区別しようと努力しながら、
これからのことを考えようと集中した。

ミニマムベットの40倍を3セットは持たなくてはいけない。
例えば、min$25であれば$1,000を3セット、計$3,000以上。
どんなに少なくとも30倍の3セット。計$2,250。
私は知識を思い出す。

このマネージメントに従えば、私はグリーンで出来ない。
これでターンオーバーして、お金を持ちかえれる?

オールイン。それも考える。
さっきから直感はある。だけど冷静にも考えたい。
雲はどんどん黒くなってきてるけど、部屋に戻るのもイヤだ。

パシフィックポーカー。アンティーに$500、チャンスは2回しかない。
それにアンティーベットオンリーウィンなんてことになったら、
もうずるずる負けるだけのような気がする。ダメ。
ノールック。もっとダメ。ぜんぜんダメ。

BJ。ダブルダウンならともかく、スプリット出来ないってなったらもうダメ。

ルーレット、SicBo。アウトサイドベットに全部。
ダメだ、スプレッドがそこまで効かない。インサイドなら?
私は$100を21回賭けたときの当たる確率を携帯の電卓機能を使って計算する。
完全じゃないと思うけど30%強しかない。ダメ。

・・・バカラしか残らなかった。でもそれは直感と同じ。

私はバカラをやったことがない。
もちろんやったことはあるけど、いわゆるスクィーズができるのは
やったことがない。
私は彼の隣で見てたり、たまにペアにだけちょっと賭けたり。それだけだ。
混んでる時は、ちょっとお小遣いみたいにチップをもらって、
スタッドポーカーをやったりしてた。
だから真似事はできても、きっとすぐばれる。ばれたら負ける。
だから最初にオールイン。それはバンカー。それが直感。

私は急に引き戻される。スコールが激しくなっていたから。
走りだしたけど、ホテルの方向がわからない。
そうしたらBBQピットのところに出てしまった。
ちょっとしたステージがあったのでそこで止むまで待つことにした。
せっかく選んだ服は雨で濡れてしまって、からだにぴったりくっついてる。
髪もくちゃくちゃ。あーあ。でも、なんとなく
晴れていく空を見ていたら、同伴者に投げつけられた言葉が
体からはがれていくような感じがした。

やっと案内板を見つけてホテルに戻れた。
自分の部屋に戻る。
同伴者はまだ寝ていたけど、机にメモ書きが置いてあった。
「ごめん。」
私は、くすっと笑うと、それを大切にかばんにしまった。
そのとき私はオールインすると決めた。理由なんてないけど決めた。
理由を聞かれたって、困る。

私はもう一度ベットの上で$100札、その他のお札、チップを並べた。
縦に並べて、横にならべ、また縦にならべた。
「ねぇ、おきてるんでしょ?」と、
私は同伴者に話しかけた。

*

*メモリアルパーク(戦没者慰霊)

「奇怪」

同伴者は掛け布団を跳ね上げると、ベッドに座りなおした。
目を真っ赤にしていた。もしかすると泣いていたのかもしれない。
私は同伴者がベッドに押し込み後ろに隠した紙も見た。
BSシート。くしゃくしゃになっていたけど、BSシート。
白黒のに、私が蛍光ペンで間違いやすいとこところを塗ったもの。

「私やってみようと思う。」
「ぜんぶ賭けんの?」
「うん。」
「なんに賭けんの?」
「バンカー。」
同伴者は言葉が見つからないよう。
私は自分の薬が入った半透明なポーチから目薬を取り出す。
それからコップをざっと洗って、冷蔵庫からセブンアップを取り出した。
部屋にある小さいプリングルスも開けて、ティーカップの受け皿に取り出す。
コップに半分ずつセブンアップを注いでから、ボールペンで今まで食べたものを
ミニバーのシートに記入する。

「目赤いよ、目薬使って。」
同伴者なにも言わないまま受け取ると、何滴もさした。
私は同伴者の前に、コップとプリングルスを置いて、私も1枚食べた。

「きっと勝つよ、だって2分の1つえぇーじゃん。」
私はびっくりした。だって、私はいままで1/2を外し続けた。そう思う。
「ううん、私は2分の1当たらない。だから頑張ってきたの。努力の人。」
「頑張ってんのはわかるけど、そんなことねぇよ。」
「年賀状だってあたらない、商店街の福引だって当たらない、2次会の
 パーティーだって当たらない、当たったことないの、私。」
「そんなの当たんなくたっていいじゃん。どーでもいい。」
同伴者は立ち上がって、カードをシャッフルする。
「次は偶数?奇数?」
「偶数。」
同伴者がカードをめくると、5だった。やっぱり。
「ほら、あたらないでしょ。」
「どーでもいいことだからだよ、それに、もし全敗だったら全勝と同じじゃん。」
私はハッとした、同伴者が言いたかったことがわかったから。
「バンカーだって、プレーヤーだって同じだよ。」
「うん。」
「それに、俺、このこと一生忘れない。ずっと覚えてる。」

私は寝れた服を着替えるために、バスルームに入った。
髪を乾かしてから新しい服を着る。わりときちっとしたのを選んだ。
それから鏡で顔をみて、少し直した。
鏡をみる。私は馬鹿なのかもしれない。
でも同伴者の言葉はカードの勝ち・負けにこだわっていた私を、
ここにきた私の目的を思い出させてくれた。
私は勝つの、勝つためにきた。I came to win.

*

*昔の戦車が展示されています

「奇蹟」

私がバスルームから出ると、同伴者はベッドの上に並べられたままのお金を見ていた。
「俺、これ全部無くすくらい負けてるんだな。」
「うん、全部じゃないけど、そのくらい。記録見る?」
同伴者がうなずいたので、私は記録したホテルのメモ帳を見せる。
「・・・行きの飛行機に戻りて。」
しょうがない、戻れないんだから。いっつもLAST CALL。いつだってそうだ。

「ほんとに忘れないよ。」
同伴者は私に近づいて、けっこう強く抱きながらいった。
私はその言葉がウソかホントかはどうでもいい。
それにきっと私は同伴者から離れていく。今は一緒でもそうなる。
そういうのってわかる。次のカードなんかよりはるかにハッキリわかる。
同伴者の鼓動がしっかり聞こえてくる。私は私の体が自分でも驚くくらいに
鋭利になっているのがわかった。胸が手になり耳になったように感じた。

私はお金をまとめ、VIPカードと小物もポーチに入れる。
鏡をみる。私は私だ。

同伴者は部屋で待っていたそうだったけど、連れ出した。
私はエレベーターの中でイメージの復習をした。
誰もいないミディサイズのバカラ台。
まだ誰もゲームをしてない台。
私はバイインする。
チップを全部バンカーに。カードを引く。それだけ。
後はディーラーをだます。私が初めてだってことを。
オールインすることを。1回だけってことを。

私はカシノバーでブラックコーヒーをもらうと、
一般フロアを1週した。
min$100のバカラ台にはイメージ通りのものがひとつあった。
ディーラーさんは、どうですか?という感じで私を誘う。
私は笑顔だけつくって、BJ、ルーレット、小バカラ、ポーカーと順に回り、
一度カシノバーに戻ってきた。
私を誘ったバカラのディーラーさんはなかなか凛々しい顔立ちをしたおじさんだ。
でも目は優しい。浅黒い肌がとっても似合う。こんな人と一緒に仕事したら
素敵だと思う。
インスペクターさんは、ダークスーツを着てなければ、いっつもマックで
ご飯を食べてるって言われても納得してしまう感じの人だ。
口ひげがかわいらしい。
うん。決めた。あそこにしよう。

私は同伴者と一緒に台に向かおうとしたけど、同伴者が動かない。
同伴者の口が開いた。
「なぁ、やめたったいいんだよ。」
「どういうこと?」
「だってさ、それ日本円に直せば、結構な金じゃん。」
「うん。」
「ほんとにやるの?」
「うん。決めたの。一緒に行こうよ、ちゃんと見てて。」

私は少し大またで目指した台まで歩いていく。
同伴者ちょっと後ろから着いて来るのがわかった。
ディーラーさんがやりますか?というようなゼスチャーをした。
私はうなずくと、だれもいない台の真ん中に座った。同伴者は右に座る。
ポーチからお金を取り出す。インスペクターさんにVIPカードを渡す。
チップは全部ブラックになった。よしよし。

ウェイトレスさんが近づいてきて、
「なにか飲みますか?」と尋ねられた。
「I’m fine thank you.」
「え?fine?」って訪ねられた。
「Yes, I’m fine thank you anyway.」
そんな英語私は普段使わない。テニアンでも聞いたことがない。
彼女は笑った。彼女にはばれちゃったかな。でもいい。
同伴者はマンゴージュースを頼んだ。

ディーラーさんはカードをかき混ぜる。
それからカードを整えると、カッティングカードを私に渡す。
カードの束に普通に差し込もうと思ったけど、入らない。
私は冷静に、でも内では渾身の力を振り絞ってカードを差し込んだ。
最初に出たカードの数に従って、ディーラーさんはカードを捨てる。
準備ができました。さぁどうしますかと、私を促す。

私はポーチに入れてあった、ほかのチップも取り出して、
ブラックと一緒に両手を使ってバンカーサイドに押し出した。
カラーアップの訳がない。
ディーラーさんは一瞬だけ、えっ?という表情をしたけど、
すぐに表情を戻して、チップを数えだす。
賭けてはいけない端数分を私に戻してくれた。
負けたらこれをもって席をたつ。そうせざるを得ない。

*

*テニアン神社の狛犬(シーザー?)

「奇跡」

インスペクターさんは少し目を細めて私とベットを交互に見比べた。
ディファレンシャルが$10,000の台だもん。このくらいでは驚くはずもない。
だけど、かれは私に渡そうとした罫線の記録紙をその場に戻した。
そして、幸運をという顔をして笑った。

「No more bets, Please.」
ディーラーさんは真面目な経理のように、プレーヤーとバンカーに2枚ずつ配る。
私だけだから、プレーヤーのカードをすぐに表にする。
7+6。3。

私は自分のカードをスクィーズする。
胸が感じる。痛いくらい。
1枚目のカードを横にして両手をカードの両サイドにおいてゆっくり絞りだす。
あっ、Kだ。
私は右手の親指の置き場所が悪くて、すぐにKが見えてしまったのだ。
でも、いい、どうせフレームだ。ディーラーさんにはばれない。そう思い直す。

2枚目に手をかける。
両胸とも痛い。ブラのサイズが合ってないって思うくらい痛い。
今度は慎重に親指をカードにおいた。
横でよかったのかな?って思うけど、もうやり直せない。やり直したらばれちゃう。
ゆっくり絞る。左上にダイヤが見えた。
右にも見えた。すぐに真ん中にも見える。
スリーサイド。
私は一瞬手を止めて考える。スリーサイドなら、6、7、8のどれか。
1枚目がピクチャーだから、8を出せば、プチ・ナチュラル。勝利だ。
私はスリーサイドならカードを回転する人がいたことを思い出す。
理由を思い出せない。でももういい。私は彼とは違う。

もう一度絞りだす。
着てる服全部が痛い。ショーツなんて、じゃまだ。
次の列にあって欲しい左上のダイヤはいつまでたっても現れない。
もうナチュラルはない。
右上をゆっくり探す。つけ、つけって心にさけぶ。
あった。右上にはあった。7だ。
私はスパッとカードを表にする。どう?うまくいった?

同伴者がぴくって反応したのがわかる。勝ったとおもったのかな。
でも、それは一瞬だけ。ディーラーさんがプレーヤーの3枚目をシューボックスから
引き抜く。いっつも思う。あの瞬間ってかっこいい。
ディーラーさんは、2枚目のカードを持って、3枚目のカードをひっくり返そうとする。
私はツーサイドしか想像できなかった。それも5。

ぱっと動く。
同伴者が「じゅうぅぅ~!」って叫んだ。
同伴者の祈り・応援・勇気・希望・叫び・懺悔にカードは答えなかった。
でも、私は、コンでもなくピクチャーでもなくフォーサイドでもない
あの叫びを今でもよく覚えてる。それだけで良かったの。

3枚目のカードはノーサイド、3だった。
「Banker wins. 7 over 6.」
ディーラーさんは優しくそう宣言してくれた。





「奇特」

5%コミッション分のやり取りを行って、
パープルが4枚とちょっと。
私がやめます。と言うと、うんそうだよね、って感じで
ディーラーさんもインスペクターさんもうなずいた。
ウェイトレスさんがマンゴージュースを持ってくる。
まるで待ってたかのよう。チップとしてレッドを1枚渡した。

それから同伴者を促して私は席を立ち、キャッシャーに向かう。
1枚2枚・・と数え$100札に変わる。
これっ、キャッシュだったら絶対行けないって思う。
重みが違う、でも、ほんとは同じ。不思議な感じがする。

部屋に戻って、「勝ったぁ。」って初めて一息。
ベッドの上でお札を並べる。縦に横に。
実感してからキャッシュボックスに片付ける。
同伴者が私にイタズラしてくる。甘えるように許しを得るように。
「くす。もういいよ。大丈夫。」
同伴者はパートナーらしいことをいきなりしてきた。
どうやら勘違いさせちゃったみたい。うん、まぁいいけどって
思ったけど、体のほうはまださっきの感じが残っていたみたい。
同伴者の手が私をなでる。ひとなでごとに電気が走る。
困ったことになったけど、しょうがない。私は同伴者に身をまかせて、
翻弄される。同伴者の形がはっきりわかる。でもそういうことも
ほかのことも全部ぜーんぶ包み込んで、その先へ飛んでしまった。

同伴者の声で目を開ける。眠った振りをさせてほしかったけど、
私の目の前に顔を近づけて話し出す。爽やかな笑顔、戻ってきたね。
「俺、またやってみたくなった。」
そうだろうねって、思う。
「うん、わかった、こうして見て。」
「なに?」
「2,000ドルバイインして、1,000ドルは横にどけて。」
「半分か。」
「ううん、残りも実際に使うのは500ドルだけ、それがなくなったら終わり。」
「昨日より難しいな、でもわかった。
 もうそれ以上使わない、あとBSも守るよ。」
BSシートを差し込んだタバコを見せて同伴者は笑った。

私がまだベッドにくるまっている間、同伴者はシャワーから出てきた。
「ほんと別人みたいだな。」
「んん?どういうこと?」
「さっき、バカラやってたときとは別人みたいだってこと。」
「そうなんだ。」
「俺、頭わりぃからうまく言えねぇけど、なんていうかな、
 集中してたじゃん、それで別人に見えた。」
「そんなことないけど、イヤだった?」
「そういうんじゃねぇよ、ただ、おっかなかったのかもな。」

同伴者はご飯が食べたいって言ったけど、その前に私は
ターンオーバーを確認しておきたい。同伴者はそういうの
なんだか恥ずかしいって言ってたけど、なにが恥ずかしいのだろう?
$2,000渡して、1Fのカシノバーに降りるとタイミングよく、
VIPホスト部の人が通りかかった。ダークスーツだけど笑顔はかわいい。
日本語も使える。日本人なのかもしれない。
「私と同伴者のターンオーバーを教えてもらえますか?」
「はい、集計するので少々お時間頂けますか。」
私はカシノバーで白ワインを頼んで待つ。
しばらくすると、彼女が記録を持って来て教えてくれた。
「同伴者さまは、ターンオーバー15,000ドルです。」
「え?あの、私は?」
「今12,000ドルですね。」
「そうなんだ、もう少しやらないと。」
「ええ、お願いします。」
あと、彼女は明日の出発に関して再確認をして去っていった。
同伴者は簡単に話したけど、負けたって話してたバカラは私の想像より
長いものだったのかもしれない。私はそれだけ思うと、すっと気が抜けた。
同伴者がターンオーバーをクリアしてたから。馬鹿みたいだから。

その間にBJをやっていた同伴者が戻ってきた。
$250勝ったから、なにか食べに行こうと私を誘う。
和食と鉄板焼きの嵯峨野か中華料理がいいのかな。
同伴者は鉄板焼きがいいって言うのでそうすることにする。

嵯峨野に行って、同伴者の注文に任せる。
サラダ、野菜焼き、オマール海老、牛フィレとサーロイン、あと焼飯。
それに、白ワインをボトルで注文。
少し多いって思うけど、食べる食べるって言う同伴者に従った。
やっぱりここのサラダはおいしい。ぱくぱく食べる。
コックさんがちょっとしたアトラクションを披露しながら、順番に調理してくれる。
人に作ってもらった料理ってなんて美味しいんだろう。
支払いは、ほんとうに同伴者がしてくれた。
素直にうれしく思ってしまった私はやっぱり馬鹿なのかもしれない。




「奇譚」

部屋に帰って、一休みすると、同伴者はBJをやりに1Fにでかけた。
私は一人部屋に残って、荷物をまとめにかかる。
明日には帰国しなくっちゃだし。
それまでの段取りをなんとなく考える。
出発間際までゲームしてるのはなんとなくヤダなーって思う。
散歩したりしたい。あと、サイパンのDFSには行かないって決めてたけど、
空港で1時間くらいはおみやげを選びたい。
せっかくビジネスクラスを取ったのだから、ラウンジでのんびりもしたい。
朝早く起きて、最後のゲームをして、その後は同伴者と相談しよう。
同伴者がずーっとやる、って言ったら私は走って泳ごう、
そうじゃなかったら、散歩か、スクーターでも運転してもらってもいいかなって思う。
そんなことを考えながら、もう着ない服・下着や水着をたたむ。
洗えるものは洗剤を使って洗ってから窓際にほす。乾いたものは取り込む。
化粧品とかコンタクトとかは片付けやすいように洗面台にまとめる。
一通りすむと、迷ったけど、同伴者の分もまとめた。
冷蔵庫を開けて確認すると、チョコレートが入ってる。
・・・いつの間に?くすっと笑って一つ食べる。
私は歯を磨いて、クレンジングして、その後記録を付けてから
携帯を目覚ましにして朝まで眠る。

起きたら快晴だった。
私はシャワーを浴びてから身支度をする。1Fに行く。
同伴者はmin5$のファーストベースに一人で座っていた。
私が後ろからどお?って話しかけると、こんだけ勝ってるって
チップを見せながら笑った。
「いい感じなんだ?」
「いや、ちょっと減ってきたとこ。」
「私入ってもいい?」
「うん、いや、いちどなんか食べね?腹減った。」

私たちは、カシノカフェで朝食?を取った。
私はコンジーとホットウーロンティー、
同伴者はアメリカンブレックファーストを頼む。
コンジーの中はチキンとピータンが選べるけどチキンにした。
同伴者は目玉焼きのイメージだったみたいなので、
サニーサイドアップにする。ハムとベーコンはベーコンにしていた。
同伴者は卵がまっ黄色なことにびっくりしていた。
おいしいよ。

BJのテーブルに戻って、同伴者は再びファーストベースに、
私はサードベースに座って、$2,000バイインする。
しばらくして私は気づいた。同伴者は完全にBS通りに打っている。
別にタバコにはさんであるカンニングペーパーを見てるわけでも無い。

ディーラーにバストが多いけど、私も同じ。同伴者だけが勝っていく。
まぁいいけど。だって、私より同伴者のほうがベットが多いいし。
私はボックスを開いたり閉じたりすることなく、おとなしく、たんたんと
自分のミニマムでBS通り進める。
私は見せ場もなんにもなく、負けていく。でも、そんなにイヤな気分じゃない。

3時間ほどプレーした後、私は9でステイする。間違えた。
ディーラーさんも気がつかなかったのか、
私のステイをそのまま受け取ってディールを続けた。ナチュラル。
やめ時かなって思う。同伴者もそう思ったのか、これで負けたし、やめようって顔。
カラーアップすると、私の負け分を入れても同伴者は$500以上勝った。

一度部屋に戻る。同伴者がシャワーを浴びてる間に出発の荷物をまとめる。
出てくると、着ていた服を汚れ物袋に入れて、新しいのを渡す。
引き出し、クローゼット、バスルーム、忘れ物が無いか確かめる。
ベッドの乱れをちょっと直して、タオルをたたんでまとめる。
冷蔵庫からチョコを出して、ミニバーの記録紙を持つ。
差し込んでいたカードキーを抜いてエアコンが止まる。
さよなら、テニアン。また来れるといいね。
同伴者は私を引き寄せると、キスしてきた。いいけど。

スーツケースを空港行きの列に並べてから、フロントで清算しようとすると、
VIPホスト部の彼女が走ってきた。
「ゲームは終了ですか?」
「はい、少し散歩でもしようと思って。」
「わかりました、ポイントを計算するので少々お待ちいただけますか?」
「はい、ソファーで待ってます。」

彼女がカシノに戻っていくのを見ていると同伴者がお金を取り出した。
「はい、返す、これ。」
「えっ、全部?」
「あっ?これもともと俺のじゃないし、だいたいこれでも負けてるだろ、俺。」
「うん。」
私は手持ちを$4,000にして、後は同伴者に渡す。
「ライター欲しいって言ってたでしょ。」
「BSのおかげだな。」
同伴者は笑ってお金を受け取ると、お土産屋さんのほうに歩き出した。

清算は宿泊代だけ。カシノバーで食べた分はコンプでとのこと。
私たちは少しだけ散歩した。もう出発の時間だ。
同伴者はロータリーにあるリムジンカーを見ていた。
「あの車すげぇな。どんな人なら乗れるんだ?」
私とVIPホスト部の彼女は視線を動かした。彼女は笑顔だけだ。
「さぁ、お金をいっぱい持ってきたら乗れるんじゃない?」
「一度、乗ってみてーな、あれ。」
「そんないいものじゃないかも、シャンペングラスだって・・。」
「あれ?乗ったことあんの?」
「ないなーい。ないよー。聞いたことあるだけ。」
VIPホスト部の彼女はいたずらな笑顔を浮かべたままだった。

私たちは日本製のバンに乗り込んで空港へ。
空港では荷物の重さと体重を量ってセスナの座席を指定される。
小さな飛行機の中は暑いけど、動き出したら風が入ってきて涼しくなる。
舞い上がると、テニアン、そしてサイパンが見えてくる。
終わったなーってほんとに思う。
「また来てーな。」
「そうだね、一緒に来れたらいいね。」
私と同伴者を乗せた飛行機はエンジンの音を響かせながら
青い海の上、サイパン空港へと飛んでいった。

*

*テニアンの$1チップ(JとKがあります)

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このレポートへのコメント(全10 件)

2011/09/29(Thu) 23:15サイゴンサイゴン

カンシーさん

初めまして、BJプレーヤーのサイゴンサイゴンと申します。
カンシーさんが女性とは知りませんでした。 全編に流れる、フレンチ小説の世界のような、
けだるく、あやしいリポート、ユニークで素晴らしいです。
以前の投稿で質問されてました、ダイナステイのBJルールですが、変更はないと思います。
プレーヤースプリット後のディラーBJは、ベット分総取りのはずです。
その時のスーパーバイザーのミスだと思います。ご存知のように、このカジノはディラーエラーがとにかく多いので、要注意です。
12月10、11日のBJトーナメントに仕事の都合がつけば、参加するつもりです。


 

2011/09/30(Fri) 00:30meikyu

なんかすげー「愛」を感じました・・・
例えば、恋人とかに感じる様な「愛」じゃなく、息子に感じる母の「愛」の様な・・・
私は「女」ではないので、母の「愛」というのが実感としては感じられないとは思うのですが、体感としては知っているつもりです

大好きなギャンブルという世界で、こんなにも「愛」を感じたのは初めてです
ありがとうございました
「愛」というのはなんか陳腐で、申し訳ないのですがこの感情をどう言葉にすれば良いのか解りませんでした・・・
もっと相応しい言葉はあるんのでしょうか?

2011/09/30(Fri) 01:33madamada

はじめまして、madamadaと申します。

素晴らしいです―――感動しました。
文章的にも、勝負師的にも…

いやあ、本当に「読ませて」戴きました。
その心理描写といい、独特の文章リズムといい、
感銘を受けたと云うしかありません。

さらに「ただ一回の勝負に向かう」ところ――――――
シビレました。
女性に云うのはなんなのかもしれませんが、
〝カッコイイ〟ってこういうこと、って感じでしょうか。
デビュー当初の井筒和幸監督の映画、思い出しちゃいました。

いいもの読ませて戴いた、って感じです。有難うございました。

2011/09/30(Fri) 11:37ジョニッパ

カンシーさん。

はじめまして。カジノ若葉マークのジョニッパと申します。

いやー、一言いわせていただければ、『カッコよすぎます!!!』
本気で惚れてしまいました。

最初はレディーファーストの温厚な紳士と思って読み進めてましたが、まさか女性でいらっしゃったとは。
イメージはカサブランカのハンフリーボガードです(笑)。

ボクだったら彼氏さんが約束を破って帰ってきた時の煙草にふて寝モードで絶対に大喧嘩になっていたと思います。(笑)
そこで自分を乱さないカンシーさんには勝負師の冷静さと人間としての器の大きさを見せつけられました。


後はバンクロールからの緻密な計算。
その結果、最も正しい選択がバカラオールイン。
その決断を感情でなく理性ではじき出したもの。
しかも、勝っても負けてもその結果を受け入れる心の準備をしていらっしゃる事もスゴイ。

それと、その瞬間を『忘れない』という言葉が心に刺さりました。
勝ち負けに一喜一憂することもそうですが、自分の一生という短い時間の中でカジノ行く意味を見出した気がします。

素晴らしいレポート、ありがとうございました。

2011/09/30(Fri) 20:14サイゴンサイゴン

カンシーさん、

テニアンBJルールのコメント訂正です。
ご質問をされた、ゲームの状況をよく読むと、88をスプリットし両ハンド3が付いてともに
ダブルにいったんですね。 すいません、私のケアレスです。
ディラーがBJの場合、テニアンルールはスプリット分は総取り、ダブル分はOBO という変則ルールです。ハーフヨーロピアンノーホールとでもいうのでしょうか。
したがいスーパーバイザーは間違っていないです。 スプリットからダブル分の総額を回収しようとしたディラーに、ダメだよ、ダブル分はOBOなんだから返さなければ。 ということですね。
テニアンBJのこのルールは一貫して変わってないはずです。 失礼しました。



2011/10/04(Tue) 00:33カンシー

みなさん

カンシーです。コメントありがとうございます。
たくさんのコメントを頂いたのに遅くなってしまいました。ごめんなさい。

サイゴンサイゴンさんへ
>あやしいリポート・・・
 そうですよね、こんな形式でいいのかなって、悩みましたが、
 運営者の方からメールを頂いて、とりあえす終わりまで行ってみましょうって
 励まされてのリポートです。最後まで読んでもらって良かったです。

meikyuさんへ
>もっと相応しい言葉・・・
 友人に読んでもらったら、あんたっ・・って絶句されました。
 リゾートだから、カシノだからの特別です。きっと。

madamadaさんへ
>〝カッコイイ〟・・・
 てれます。ふだんかっこいいって言われるタイプじゃないほうだから。
>いいもの読ませて・・・
 良かったです。ほんと最後まで書けて良かった。

ジョニッパさんへ
>ふて寝モードで絶対に大喧嘩・・・
 心の中では私だって大喧嘩です。ほんとです。
>『忘れない』・・・
 なんだか、不思議な勝ち負けの時って、ほんとによく覚えてると思いませんか?

BJって難しいですね。
私はあんまりBJってやらないほうなんです。
ダブルダウンでA。トラブル(12)ってディーラーさんに笑われます。(弱)

レポートできるのは他にもありますが、つまらないとだし、
また書けたらといいなって思っています。
それでは。

2011/10/09(Sun) 17:42豪州源

素晴らしいレポートですね。
文章力とか描写力とか、溢れまくっているのですが、そういうものがどうでもよくなるほどの「表現したいこと」が、読み手にじんじんと伝わってきました。

一点だけコメントさせてください。

>ゆっくり絞る。左上にダイヤが見えた。
>右にも見えた。すぐに真ん中にも見える。
>スリーサイド。
>私は一瞬手を止めて考える。スリーサイドなら、6、7、8のどれか。
>1枚目がピクチャーだから、8を出せば、プチ・ナチュラル。勝利だ。
>私はスリーサイドならカードを回転する人がいたことを思い出す。
>理由を思い出せない。でももういい。私は彼とは違う。

「花が咲く(向く)」方向の関係で、スリーサイドのカードは、上下からの絞りの選択肢ができます。
ただしダイヤのカードの場合だけ、この選択肢は消えてしまいます。
なぜそうなのかの理由を探るには、カードと睨めっこしてみてください。
したがって、カンシーさんは、正しい選択をしていたわけです。
多分、ご存知の上、お書きになっているのだろう、と考えますが。

とにかく、素晴らしいものを拝読いたしました。
ありがとうございました。

2011/10/11(Tue) 01:35カンシー

豪州源さまへ

私が勝手にリスペクト・オマージュ・インスパイアさせて頂いた
ことについて、お詫びしなくてはならないと思います。

 ザッツオール
 鏡をみる。私が写っている。馬鹿になるわけには行かない。
 大金だ、少なくとも私にとっては大金だ。
 理由を聞かれたって、困る。
 負けたらこれをもって席をたつ。そうせざるを得ない。

いま、読み返してみてもこれだけの表現があります。
ただただ、最後まで私の拙い文章に目を通して頂いて嬉しいです。

>したがって、カンシーさんは、正しい選択をしていたわけです。
>多分、ご存知の上、お書きになっているのだろう、と考えますが。
 
そうですね、いまはわかります。
「一発で決める?」は、ダイヤでは決まりません。わかります。

>とにかく、素晴らしいものを拝読いたしました。

ありがとうございます。また書きたいって思ったら
書いてみるつもりです。

ところで今は、「二度と戻らぬ」を読み返しているところでした。
前もそういうタイミングだったのでびっくりしています。
そういう私ですので、ご容赦いただけたら、と思います。

それでは。


2011/10/13(Thu) 15:44かっぱくん

最後の1ドルのカジノチップの写真に「JとKがあります」とありますが、Jだけだったはずです。4種類のJがありますから、その一部をKと勘違いされたのではないでしょうか。

2011/10/13(Thu) 21:36カンシー

かっぱくんさんへ

>4種類のJ
 ご指摘ありがとうございます。
 ずーっと、Kだと思っていたのですが、
 それはグリーンの$25だけなのですね。
 私のカン違いです。すみません。

ありがとうございました。

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