リゾカジ カジノレポート

続・新年快楽2016!(後編)

* マカオ 2016/ 04/ 22 Written by マカオの帝王

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■ 2月27日(土)

11時に目覚める。

12時に部屋を出て、リンちゃんと鼎泰豐でブランチを食べる。

ニューヨークタイムス誌で世界の10大レストランに選ばれただけあって、卓越した技術を持つ “点心師”の作るここの小籠包は美味しい。

「リンちゃん、今日のトーナメントだけど、優勝すれば28万$! 2位なら18万$ 3位でも12万$だよ」

「アナタ、頑張ってね。賞金は半分ね♪」

「それは……、まぁ、2~3割かな……」と言葉を濁す。

店を出て、決戦の場へ向かう。

指定された席に座り、目の前のビニール袋の封を破り、チップを積み上げる。

ボードを見ると、日本人でDAY2に残ったのは二人だけであった。

午後2時、DAY2の開始である。

後一人飛べばインマネという、所謂 “バブルライン”の為、全てのテーブルのゲームが終了後、次のゲームに入るというルールが適用されるので、ゲームの進行が非常にゆっくりとなる。

『さっさと誰か飛べば良いのに……』

その願いが通じたのか、後ろのテーブルで“オールイン”の声が上がる。

『何でも良いから、ショートの方が飛べ!』

遠くで良く見えないが、歓声が上がったことから、ショートが飛んだことを悟る。

ボードの残り人数が “32”となり、全員から喜びの声が上がる。

兎に角、これで一安心である。

あちこちで、オールインの声が上がる。

あっという間に4人が飛び、残り28人となる。
(賞金が、8,200$ → 8,800$にアップする)

賞金がアップしたのは良いが、ポットを取れないので持ち点がアベレージ(約29万点)以下となってしまう。

『ハンドが入れば勝負するのに、そのハンドが入らない……』

そうした中、♠A、♠3という、♠が絡めば面白い、というハンドが入る。

取り敢えず、コールで参加する。

参加者は全部で3名。

フロップ;♠7、♠6、♠5!

いきなりAハイフラッシュ完成!

嬉しいが、様子見でポットの7割程打つ。

一人フォールドし、中国系相手にヘッズアップとなる。

ターン;♠4!
ストレートフラッシュ完成!

しかし、これでもし相手が “♠8” を1枚持っていたら、上のストフラに負けてしまうという、ややこしい事態に突入……。

苦し紛れにポットの7割を打つと、誘うようにミニマムレイズで返される。

『どうする? 相手は♠8を持っているのか? もしそうだとしたら、そもそもどんなハンドで参加したのだろう? ♠9、♠8? ♠8と何かの8? ♠8、♠K? どれも有りうる。こっちがオールインしても、もし相手が♠8を持っていたら、飛んで火に入る夏の虫で、クィックコールされ終了だ……、もうリバーカードには何も望めない……、悔しいが、ここは撤収だ……』

<明日の為に、今日のこの屈辱に耐えるのだ!>

どこからか、沖田艦長の声が聞こえる。

泣く泣くフォールドする。

中国系のおっさんが、「ナイス」と呟き、1枚だけカードをオープンする。

それは “♠8” であった。

『撤収は正解だったが、ストフラを作って負けたか……、残りは23人、現状のアベレージは352,173点なのに、今の負けで持ち点が約17万点と半分以下になってしまった……。まるで1943年6月のラバウル上空での航空消耗戦だ。決定的な敗北では無いが、ここまで保ってきたテーブル上の“制空権”は、この負けで失われた……、これを取り戻すのは容易じゃない』

何も出来ないまま、アンティとブラインドが削られる。

乱戦(叩き合い)の中、イケ面の日本人男性プレイヤーが散る。

残り18人で2テーブルとなる。

ボードを見ると、18位-16位は賞金が同額で、15位から賞金がアップする、とある。

「アナタ! 次の目標は15位よ!」

後ろからリンちゃんの声が聞こえる。

幸か不幸か? 勝負手も入ら無いので“永遠のゼロ”モードに入り、只管争いに巻き込まれないように努め、順位の繰り上がるのを待つ。

待てば海路の日和あり? で3人が消え、15位以内が確定する(賞金は15,900$以上)。

それは良いが、残り15人でアベレージが54万点なのに、とうとう持ち点が下から2番目の12万点にまで減少してしまう。

『もう限界だ……、ここまで良く健闘したが、“ラバウル航空隊”もそろそろ解散の時が来た。肝心のハンドは……、♠K、♠Qか。ミニマムレイズとコールが二人、ポジションはSB、頃合いだ……』

オールインを告げる。

するとBBの女性プレイヤーもオールイン!

そこまでは想定内だったが、残る2名も悩んだ挙句オールイン!

勝てば4倍で、戦列に復帰出来る。

しかし、現実は甘くない。

隣の女は♢A、♣Q。

Qをドミネイトされているので、勝ち目はKのみである。

他の二人は♢J、♣J と♢Q、♡Q!

現状は4人中最低だが、残り3枚有るキングが出れば捲くり目は有る。

フロップ;♠T、♢9、♡2

誰もヒットせず、現状はQQが優勢。
(ジャックが出ればガットショットのストレート!)

ターン;♠4!

フラッシュ・ドローも付く!

『キング! ジャック! スペード!』

ショートから4倍アップの一発逆転! へ続く扉が開くかに見えたが……、

リバー;♢7

夢は砕け散った。

QQの総取りとなる。

結局、DAY1終了時と同じ、全体の15位でフィニッシュとなる。

キャッシャーで、賞金の15,900$を受け取る。

「アナタ! 残念でした……」とリンちゃん。
  
≪さらばラバウルよ 又来るまではしばし別れの 涙がにじむ……≫

心の中で別れの歌を口ずさみながら、会場を後にする。

CODを出て、シェラトンに帰る途中で、新しく出来た“スタジオ・シティ”行きの無料送迎バスが目に留まる。

気分転換に観光でもするか? とリンちゃんに提案すると、激しく同意される。

バスに乗り込む。

中央を8の字型に繰り抜いて設置してある観覧車が売り物の、“スタジオ・シティ”に到着。

早速観覧車に! とチケットを買いに行くと、バットマンの4Dアトラクションとセットだと30$お得になる、と言われる。

それなら、とバラだと一人250$が、セットで220$になった共通チケットを2枚購入する。

中国経済の冷え込みと、旧正月明けの為か、観覧車は空いていた。

コタイを一望し、気分転換にはなった。

お次はバットマンの4Dアトラクションである。

こちらは20分程並んだ後に、案内される。

USJなどに有るものと同工異曲であったが、それなりに楽しめた。

小腹が空いたので、「アトラクションのチケットをお持ちの方は30%割引」との表示が出ていた、オールド・スタイルの上海料理の店に入る。

店内は、約100年前の上海をイメージしてか、鉄格子の鳥籠? のようなものが設置されており、ウェイトレスのチャイナドレスも時代を感じさせ、料理のお味も3割引なら納得であった。

この“スタジオ・シティ”全体を貫くコンセプト(モノクロを基調とした、世紀末的なスタイル)は、金ピカが多いマカオでは他と一線を画しており、個人的には嫌いでは無いが、リンちゃんのお好みでは無かったようで、「アナタ! このホテルの経営者はナニ考えしている? こんな屋根も鉄、壁も鉄で、少しも綺麗でないホテルに誰が泊まるよ? アホちゃうか!」と手厳しい。

一通り回ったので、これにて今回のマカオ遠征における“観光”は終了。

無料送迎バスで出発地点 → シェラトンへ。

ベッドで仮眠を取るが、不完全燃焼の為か、夜中に目が覚める。

『確か、CODでポーカーのリングゲームはやっている筈……、まだ寝るのは早い!』

リンちゃんは熟睡モードの為、一人で抜け出す。

CODに到着。

さて、年末以来のリングゲームだ! と思いきや、7人待ちだという。

一応エントリーして、1階に下りると、忘れかけていた感覚が蘇ってきた。
『うーん、夜中だと言うのに、何やら大勢の人たちが、「ゴンゴン!」と騒がしい。どうやらあのテーブルでは、同じサイドの連勝が続いているようだ。他のテーブルも、結構賑わっている様子……。あれは確か、“百家楽”とかいう、合計の数字の一の位が“9”に近い方が勝ちになる、単純なゲームだったな?』

夢遊病者のように、ディーラーの手招きに応じ、誰もいないミニマム2千$のテーブルに座る。

取り敢えず、1万$をチップと交換する。

2千$をバンカーにベットする。

40代と思しき、動作がしゃきっとした男性ディーラーから、さくっとカードが配られる。

ハウス・プレイヤーが裏向けたままなので、さっさとオープンするよう促す。

(良く、ハウス・プレイヤーにカードを伏せさせたまま、あーでもない、こうでもない、と自分のカードを一生懸命絞る人がいるが、あれは当方には理解出来ない。相手がナチュラル9なら、殆ど無意味だし、自分が例えばナチュラル8だったとして、ディーラーにカードをオープンさせた際に、相手が8又は9の場合には精神的ショックが大きいだけだと思うのだが……)

ハウスは3点。

良し良しと自分のカードを“ちら見”すると、絵札と3ピン。

縦で一気に絞るとナチュラル8で勝利!

ノーコミッション台なので、2千$をマルマル受け取る。

勝ち分をそのままバンカーにベットする。

次もハウスは3点。

こちらは2サイドと“ガッタウ(2か3)”。

6~8のいずれかであったが、予定調和的に真ん中の7(5+2=7)で決定。

ハウスの3枚目はピクチャーで連勝。

この辺りから、ディーラーと呼吸? が合って来る。

当方がバンカーにしかベットせず、常にハウス・プレイヤーの速やかなカード・オープンを希望していることを飲み込んだディーラーが、サクサクとカードを配り、自らのカードをオープンする。

そのオープンする最初の2枚のカードは、常に6以下。

そしてこちらに配られる2枚のカードの内、どちらか一方には足が有る。(つまり、ナチュラルで勝利の可能性が有るということだ)

勿論、時には敗れることも有ったが、20ゲームを15勝(内2回は6での勝利)4敗1分けで、あっと言う間に2万$の勝利!

惜しむらくは、途中でベットアップ出来ず、2千$のフラットベットに留まった為、勝ちが膨らまなかったことだが、『そろそろギアチェンジを……』、と思いかけた頃、最近は減った大陸系のガサツ者3人組が現れ、『おや? バンカーが強い台がこんなところに有るじゃないか? よし、みんなここに座るとしよう……、ほれ! バンカーに適当に賭けな! 俺様は手始めにと……』
とバンカーに2万$をベットする。

バンカーの4連勝中であったが、絞れないのでルックを決める。

やれやれ……、という表情を浮かべながら、ディーラーがカードを配る。

大陸系ガサツ者のリーダーが、ハウスのカードを1枚だけオープンさせる。

絵札である。

それに安心したのか、長い時間をかけて、自分の2枚のカードを捏ね繰り回す。

ようやく納得したのか、ぐちゃぐちゃになったカードをディーラーに渡す。

6+2=ナチュラル8である。

最後に、ハウスが残る1枚をオープンする。
何と“9”!

茶番である。

次もルックするが、3人組の7を、ハウス・プレイヤーはナチュラル8で一蹴。

その次も3人組の6を、ハウス・プレイヤーは美味しいチャーシュー(=7)で平らげる。

どうやら、ハウス・プレイヤーは7以上しか出なくなったようだ。

これに勝つのは難しい。

頭に血が上った大陸系ガサツ者3人組は、財布から千$札の束を取り出し、チップの補充を開始。

羅紗の上に千ドル札を広げて、これをサクサクと確認しながら、ディーラーが目で合図を送って来る。

テレパシーを用いて、相手の考えを読む。

『日本人の旦那、私も根っからバンカーが好きそうな旦那の相手をチマチマしていたかったのですが、どうやらそれもお開きのようでさぁ。ここはこの辺で一旦手仕舞いにしては如何ですか? これからはプレイヤー・モードに入りますが、それは旦那にとって不本意でしょうし……』

当方が元手を含め、黄色の1万$チップ3枚との交換を求めると、軽く頷きながら戻してくれる。

席を立ち、キャッシャーでチップを交換し、様子見で戻って見たがプレイヤーの7連勝中で、3人組は連敗街道一直線! であった。

2階のポーカールームへ戻るとタイミング良く、名前を呼ばれる。

ブラインドが25-50$の安い卓と、50-100$のやや高い卓のどちらにも空きが有るが、どちらにするか? とスタッフに尋ねられる。

バカラで軍資金が増えたので、50-100$を選択する。

バイインはMAXの2万$(バカラの勝ち分全て)で席に座る。

さぁ、凡そ2ヵ月ぶりのリングゲームの始まり始まりである。

他のメンバーは? というと日本人と思しき30代イケ面男性(ハンサムなのに、どことなくやさぐれた感じが俳優の藤原竜也に似ているので、以後彼のことを“達也”と呼ぶ)が1名、20代の女性が1名、白人男性1名、インド人男性1名、残りは中国系という、平均的構成であった。

勝負勘が戻るまで、暫くは様子見。

様子見で何となく分かったことは以下の通り。

① 皆さん御上手(初心者はいない)
② SHARK(=鮫、つまり全てを喰い尽す凶暴なプレイヤー)もいない。
③ 太っちょの中国人は要注意。

③だが、若いのに腹の突き出た中国人のベットには戸惑った。

ポットの数倍を平気で打つ。

どうせブラフだろう……、と思うのだが、もし“本物(=AA、KK等)”だったらと思うと、自分自身が“本物”でなければ、なかなか勝負出来ない為、ズルズルとかき回される。

“達也”が、この“太っちょ”のブラフ気味」のオールインに降ろされ、その直後に『ざまーみろ!』とばかしにオープンされた最弱ハンド、♢7、♠2を目にして、「あっ、くっそう……」と思わず日本語が出たことから親近感が湧き、「ほっとけば、その内潰れますよ……」と呟く。

調子に乗った“太っちょ”が君臨するリングテーブルであったが、流れが変わる時が訪れた。

当方、♠7、♡7、 当然参加……、と考えていると、UTGの“太っちょ”が500$をベットする。

途中の皆さんはフォールド。

SBの当方、これをコール。

すると、BBの“達也”もコール。

フロップ;♣J、♢9、♠8

余り良くない。

3枚共7より上のカードだし、Tが出ればストレートだが、それは同時にQを持つ者も上のストレートになるので、全然安心出来ない。

『打たれたら降りよう……』

と思いつつチェックする。

BBの“達也”が2千$をベットする。

それに対し、“太っちょ”が4千$とミニマムレイズ。

「後はお任せします」と日本語で呟き、フォールドする。

“達也”がコールで答える。

ターン;♠A

双方チェック。

リバー;♢3、

“達也”がチェックした後、ラグっぽいにも関わらず、“太っちょ”が4千$をベットする。

“達也”、長考の末、これをコールする。

“太っちょ”がオープンしたハンドは♠J、♠T!

フロップの段階では、トップヒット+両面ストレートドロー、ターンでフラッシュ・ドロー付きと、思ったよりマトモな手であった。

これに対し、“達也”のハンドは♠Q、♣Q!
これは強力である。

ターンのA、完成ストレート、KK、セット、変な2ペア等、負けているケースが沢山あるので、オールインは出来ないが、歯を食いしばっての“コール”が功を奏したと言える。

(最も、“太っちょ”が欲しかったストレートとなるQと7は、共に2枚ずつ日本人が押さえているので、出る確率は通常の半分だった訳である……)

これで“太っちょ”帝国に亀裂が入った。

その直後、当方に♣K、♣Tという、そこそこのハンドが入る。

当方コール、SBの“達也”もコール、

これに対し、“ティルト”気味になった“太っちょ”が900$のレイズ!

普通ならフォールドだが、何故かいける気がした。

800$を追加する。

「今回はお任せします。陰ながら応援致します……」と日本語が聞こえてくる。

フロップ:

♣A、♠K、♡K!

豪快なフロップである。

“太っちょ”がAA、AKなら死亡だが、落ち目の“太っちょ”にその可能性は低いと見た。

“太っちょ”が、いつもの4千$をベットする。

何度かこれで降ろされたが、Kのトリップスなので勿論コール。

ターン;♣Q!

Kのトリップス+ロイヤル・ストレート・フラッシュ・ドローとなる。

“太っちょ”がオールインを告げる。

勿論、こちらもオールイン!

リバー;♣4

ロイヤルは成らなかったが、♣のフラッシュは完成!

“太っちょ”のハンドは♡A、♡Q

悪くは無かったが、オールインは無謀であった。

2手で“太っちょ”帝国は崩壊した。

ショートに転落した“太っちょ”は、次ハンドで投げやりに屑手でオールインし、ポケットのインド人にコールされ、あっさりと終了。

僅か3手でチップを全て失い、“太っちょ”はテーブルを去って行った。

隣の“達也”と喜びを分かち合う。

この時点では、リングゲームの収支も大幅なプラス(約15,000$)であった筈だが、その後数時間の記憶が定かでない。

“参加することに意義が有る”とばかりに、何でも参加、ドローが有れば追いかける、といったプレイスタイルでは、絡めば確かに面白いが、同卓のプレイヤーが熟練者ばかりだと、長期的にはチップを削られることは自明であった。

それにも関わらず、何故かこのリングテーブルでのゲームを止めることは考えなかった。

半分寝ながら、朝の6時までプレイを続けた。

最高で約4万$有ったチップは徐々に減り、気が付けば4千$となっていた。

『おかしいなぁ……、一体いつの間に減ってしまったのだろう……、おや? 電話が鳴っている……』

自分の携帯であった。

「アナタ! 今は何処にいる? 勝ってる? 負けてる? どっち?」
リンちゃんからであった。

「何処って、CODのポーカールームだよ。調子はマァマァさ」と答えると、

「ホンマかいな? 変なマッサージの店じゃないでしょうね?」と痛くも無い腹を探られる。

「ちょうど良かった。東京から来たという、若い男前の日本人のお兄さんが隣にいるから、ちょっと変わるよ……」と告げ、電話を渡す。

「済みませんけど、嫁さんが疑ってるようなので、ポーカールームでプレイ中だと“事実”を説明してくれませんか?」と“達也”にお願いする。

「あぁ、もしもし、始めまして。旦那さんはずっとポーカー中ですよ、別に変な遊びはしていませんですよ♪」

これでようやく、リンちゃん納得するも、適当に切り上げで戻って来るよう言われる。

眠気も有り、ちょうどトーナメントの賞金(15,900$)をリングで溶かしたところであったので、ディーラーに終了を告げる。

すると、同じテーブルでプレイしたメンバー達から、「ヘイ、ミスター? 何故止める。もっと一緒にポーカーをエンジョイしようじゃないか? せめて後1時間、さぁ、お願いだよ」

と引き留めの声が……。

『ポーカー・プレイヤーは嫌われてナンボのもの、良く見れば、ピーク時から減った3万6千$は同卓の皆さんにバランス良くばら蒔かれているご様子。そりゃ引き留められる訳だ……』

“達也”に別れを告げ、エスカレーターで1階に降りる。

残った4千$をキャッシュに交換しようとしたところ、前の客がクレジットカードでのチップ購入中の為、待たされる。

業を煮やし、窓口を離れると、さっき勝ったバカラ卓が目に入る。

プレイヤーの最初の2枚は常に6点以下、バンカーにはいつも足が有るという、バンカー派に優しい卓であったことを思い出す。

<あの優しかった場所は今でもう、変らずに 僕を待ってくれていますか?>

脳内にコブクロの、初期の名曲が流れる。

4千$を握り締め、再びさっきと同じ左端の席に座る。
(別に深い意味は無いのだが、BJの習慣で……)

ディーラーは変わっていた。
プレイヤーが7点、8点になることも有った。
バンカーに足が無いことも有った。

けれども、全体として、バンカーが7割近く勝つことは同じだった。

4千$は短時間で3万4千$に増えた。

このまま、夢の時間が続いて欲しかったが、大陸系中国人二人組登場。

無造作にバンカーに1万$をベットする。

絞れないので、ルックを決める。

ハウス・プレイヤーが、この卓で初めてのナチュラル9を出す。

頃合いだと思い、席を立つ。

さてと、軍資金は復活した。
コブクロの名曲が依然として脳内で鳴り響く。

『さてと、戻るとするか? “あの優しかった場所”に……』

エスカレーターを上る際、その昔、大学生だった頃、大阪ミナミの道路を挟んで向かい合う2軒のパチンコ屋に連日通った時の記憶が蘇る。

朝:10時、手打ち式で台の癖を把握していた為、5回通えば平均すると3勝1敗1分けで勝ち越すことが出来る役物の有る店に入店。
柄の悪い客と、愛想の無い店員と、タバコの煙でもうもうとした、混雑した店内で、指が折れそうになりながら只管銀玉を特定のパターンに従って打ち続ける。

昼:打ち止め終了で平均1万円ちょい勝ち、ちょい勝ち分で美味しい昼ご飯を食べる。

夕方:向かいの店に入る。ここには動きが面白いが、余り勝てない
タイプの台しかなく、従って5回通えば平均すると1勝3敗1分けと負け越すことになるのがほぼ決定的なのに、顔見知りの常連客と、愛想の良い店員と、清潔な店内の雰囲気に何故か惹かれ、午前中の勝ちの大半を吐き出して家路に着くのが、二十歳の頃の日課であった。

『今にして思えば、どうしてあの全然出ない店に足を運んでいたのだろう……、出る方の店だけなら、月に60万は楽に稼げた筈なのに。けど、月に2~3度だったが、出る方の店できっちり勝った後で、あの普段出ない方の店でも勝つことが出来た時は、飛び上がりたい位愉しかったな……』

再び2階のポーカールームへ戻る。

メンバーは若干の変動が有ったが、皆さんお変わりなく、幸か不幸か1席だけ空きが有ったので、すぐに座ることが出来た。

「おおー♪ 帰って来たのか? 結構結構、さぁ、楽しくポーカーをしようじゃないか?」
と暖かく迎えられた。

どうやら、このポーカールームは、変わらずに僕を待ってくれていたようである。

人数が少なくなったので、テーブルが一つに統合され、レートは25-50$となっていた。

MAX6千$のバイインでリングゲーム再開!

資金にゆとりがあるので、さっき以上にハンドレンジを広げ、何でも参加する。

時々はフロップと絡まり、そこそこのポットを取った。

しかし、当然のことながら外すことも多く、夜と同じ流れでチップは減る。

中々オールインまで行かないのだが、途中でチップを補充するのでプレイは続けられる。

バカラの勝ちがどんどん、ポーカー(リングゲーム)で溶ける、溶ける、溶ける。

当方の手元から彷徨い出たチップの大半が、対面に座るメガネのタイトな中年女性のところに吸い込まれる。

昔、BJ好きの先輩とオーストラリアのパースに遠征した際のことを思い出す。

初 日;先輩と二人で楽しくBJ・・・-5,000A$
    深夜、一人でバカラ・・・・+5,000A$

二日目;先輩と二人で熱くBJ・・・-10,000A$
    深夜,一人でバカラ・・・・+10,000A$

最終日;先輩と二人でヤケクソBJ・・・・-15,000A$
    深夜,一人でバカラ・・・・・・+15,000A$

何のことは無い、BJの負けをバカラで補っただけの三日間であった。

バカラだけだと、3万A$の勝利だった訳だが、マカオと違い強制チップも無く、フレンドリーな金髪美人ディーラーが相手で、ワインを含めて豊富なドリンクが無料で飲め、BJ好きの白人連中と一緒に、BJ大好き人間である先輩と和気藹々とプレイするBJは、負けても負けても、何故だか、楽しかった。

深夜のバカラは、結果は連日勝利であったのだが、常にマイナスからのスタートで、一人孤独と闘いながら、崖っぷちでの勝負(軍資金=約2万A$)だった為、博打の醍醐味は味わえたものの、早朝チャラに戻したところで、5千A$のチップ数枚に交換し、疲労困憊で倒れそうになりながらキャッシャーに向かう3日間であった。

『あのパース遠征は愉しかったな……、特に酔っぱらった先輩がディーラーの“8”に対し、「ここは思い切って勝負!」とか言いながら自分の“66”を何故かスプリットし、9(普通にヒットなら21)、7、T、Tで両方バストし、ラストボックスの自分は19で当然ステイしたところ、ディーラーが、2、Aで21となり(先輩が変なスプリットをしなければ、ディーラーはバスト)、全滅となった直後、先輩がトイレの為席を立つと横の白人が、「ヘイ! JAPANESE、アンタの連れにBJのやり方をきっちり教えてやってくれや!」と呆れた顔で話し掛けてきたことがあったな』

20年近くも前のことが、まるで昨日のことのように思い出される……


しかし、徹夜の疲れから、さすがに昼前になると限界となる。

すると、リンちゃん登場!

「アナタ! 調子はどう? ご飯でも食べるか?」

空腹でもあったのでこれに同意し、“若社長”も誘い、隣の“鼎泰豐”へ。

同じテーブルのメンバーから、またまた引き留められるが“飲茶”だというと納得してくれた模様。(中国系の人々は、食事を重視する)
愉しくポーカー談義をした後に別れ、ホテルへ戻る。

そのまま、眠りに着く。


■ 2月28日(日)

夕方、目が覚める。

ここまでの収支を計算する。

ポーカー(トーナメント)・・・・・+10,900$
ポーカー(リングゲーム)・・・・・-30,900$
バカラ・・・・・・・・・・・・・・+50,000$
------------------------------------
合計・・・・・・・・・・・・・・・+30,000$

リングの負けが痛い。

ここまでの勝ちはジャスト3万$。

最後の勝負に出かけようとすると、リンちゃんから“身体検査”が入る。

「アナタ! 私は疲れたので、部屋で寝ている。爪楊枝はいらない。一人でカジノに行っても良いけど、カードと日本円と今回の軍資金は置いていくこと。持っていっても良いのはここまでで勝っている分だけ。分~かった!?」

抵抗するが、キャッシュ3万$とパタカと小銭を除き全て没収され、貴重品ボックス行きとなる。

何だか身軽になったが、全滅しても原点だと思うと気楽では有った。

一人、CODへ向かう。

ポーカールームを覗くが、イマイチ気が乗らない。

そう言えば今回、一度もBJをプレイしていなかったことを思い出す。

何故か5つしかボックスの無いBJ卓に座る。

ワンボックスに千$をベットする。
ディーラーの絵札相手に13からヒットしてバスト。

次も千$ベットする。

同じくバスト。

1,500$をベットする。

ディーラーの8に対し18で、『引き分けか……』と思っていると、Aで19となり負け。

引き分けを一つ挟み、最後に1,500$ベットするとディーラーの絵札に対し20で、これまた『引き分けか……』と思っていると、相手がBJで負け。

4ハンドで5千$負け、馬鹿馬鹿しくなり席を立つ。

手負いとなり、その怒りをぶつけるべく、バカラコーナーを彷徨う。

皆がプレイヤーに賭け、盛り上がっている卓を発見。

一人バンカーに5千$をベットする。

プレイヤーに2万$をベットした大陸系おっさんが頑張って5+2=7を出す。

それを横目に絞る。

絵札+3ピン。

何故か負ける気がしない。

縦で一気に絞るとナチュラル8!

BJの負けが戻ってきた。

大陸系軍団が一斉にプレイヤーにベットする。

カバンから爪楊枝を取り出し、これを咥えてバンカーに1万$をベットする。
おっさんはパワーダウンし、1+5=6点。

それに対し、こちらは2ピン+ガッタウ(2か3)。

これまた、勝ったも同然である。

4+3=7点であっさり勝利!

次はバンカーに2万$をベットするが、ここで異変が起こる。

大陸系おっさんがバンカーに3万$をベットしてきた。

『どうする? 今回は見送るか……(プレイヤーにベット、若しくはおっさんにそのまま絞らせる、は選択肢に無し)』

迷った末、バンカーに4万$のオールイン!

これを見た大陸系おっさんは、そのまま3万$をプレイヤーに変更する。

取り巻き連中も3~5千$をプレイヤーにベットする。

鋭い眼差しが、妙に心地よい。
いよいよ最終決戦である。

おっさんが時間をかけて絞る。

なかなかオープンしない。

『長い、長すぎる!』

嫌な予感がする。

おっさんが薄っすらと笑みを浮かべながらオープンしたのは7+2=ナチュラル9!

心が折れそうになる。

1枚目を見る。

♣A。

まだ3ピンの8なら引き分けである。

2枚目を見る。

何も見えない。

もう少し絞ると、妙なモジャモジャが……

♠のA、1+1=2点であった。

『今回のマカオ遠征で、プレイ時間の大半をポーカーに費やしたというのに、最後のオールインのハンドが寄りによってポーカーにおける最強ハンドである“AA(=BULLETS)”だとは……、しかもそれがポーカーだと最弱ハンドの7と2に負けるとは……、やるべきゲーム種目を間違えたな……』

オールインが負ければ、敗者がすべきことはポーカーでもバカラでも同じだ。
黙って席を立つ。

『最後はルックでも良かったか? それと保険でバンカー対子に幾らかでも張っていれば……』

“覆水盆に返らず”、悔やんでも仕方が無い。

出口に向かう途中で、リンちゃんの身体検査を逃れたVISAのゴールドカードが1枚、カバンの内ポケットに入っていたのを思い出す。

『これでもう一勝負……』

一瞬立ち止まるが思い留まり、再び出口へ向かい歩き出す。

≪ここにしか咲かない花 ここにしか吹かない風 ここでしか聴けない歌 ここでしか見えないもの……≫ 脳内を同じフレーズが繰り返し流れる。

やはり自分が、“生きている証”を胸に刻むことの出来る場所はこのマカオしかない……、そう感じながら、マカオの帝王はCODを後にした。
                         (終わり)



*このレポートはリゾカジ.SNSの日記を転載したものです。


このReportへのコメント(全 2件)

2016/04/24(Sun) 09:11

マカオの帝王

マカオの帝王です。新年快楽に最後までお付き合い下さり、有難うございます。

以下、お知らせです。

1) 過去の冬のレポートを、アマゾン(kindle)から、マカオの帝王1(新年快楽編)の題名で、電子版を発売中です。姉妹作の、マカオの帝王2(夏夜之夢編)と合わせて、お楽しみ下さい。
(注)このロイヤリティの一部は、熊本地震の被災者への義援金と致します。

2) 今マカオです。CODで開催中のポーカー大会で、"2大会連続日本人最上位、セミファイナルテーブル進出⁉️" と言う、何とも微妙な結果となりました一一一
詳しくは、GW明けにアップする予定です。


2016/04/24(Sun) 22:18

ナッキー

マカオの帝王さんへ
先ほどCODでご挨拶させて頂きました同郷の者です。今作も楽しく読ませて頂きました。

私は持ち込んだ兵隊を全て失い、途方に暮れております。。。
やはりマカオとは相性が悪いのかも知れません。

今後のご活躍をお祈りします。
次作も楽しみにしております


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