リゾカジ カジノレポート

帝王的假日(秋天落日)

* マカオ 2009/ 10/ 15 Written by マカオの帝王

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■ 9月20日

遂にプラチナウィークが到来した。(来てしまった)
この秋の5連休に最近のリベンジを果たし、ゴールドを越えるプラチナウィークとすべくマネーバランスの調整を図ってきたつもりであったが、直前の一週間にちょっとした“手違い”が発生し、今回投入を予定していた軍資金が当初予定の2束半から、たったの1束弱になってしまった……。


『せめて1束半でもあれば……、これではバカラで全勝負バンカーサイドのカードを絞ることなど、とても出来ない。安物のプログラムにも入れないし、それどころかブラックジャックでも流れが悪いとすぐにパンクだ。
打てるのはテキサス・ホールデムのポーカー位だ。いっそマカオ遠征自体を取り止めするか? 駄目だ。今回は大阪から、当方のホテル(ベネティアン)に宿借りを前提にしている同行者(残念ながら男性)がいる上、掲示板の呼びかけで21日の昼にMGM の中のレストラン(食八方)に有志で集まることになっている、今更キャンセルも出来ない……。』

あやふやな気持ちのまま関空でikunoさんと合流し、16時半発のエアマカオ837便に乗り込む。
予定だと20時に到着の筈だが、何故だか45分も早く着くと機内アナウンスが流れる。

『気流の関係かも知れないが、
飛行機の到着時刻がそんなにズレて良いものか?』

と、かつて航空宇宙工学を専攻した者としては思料する。
とにかく、連休2日目とはいえ満員のエアマカオ837便は19時20分にマカオ空港に着いた。
マカオ半島側にホテルを予約しているikunoさんと別れ、ベネティアンに向う。
何度聞いても覚えられないここの女性スタッフからの、

「いつでも、部屋を、タダに、しますから、また、来て、下さい。」

という国際電話を頼りに、フロントでその旨を告げる。
カジノのスタッフが姿を出し、当方のパスポートとメンバーズカードを確認する。

「うーん、明日からならOKね。今日は難しいね。
フォーシーズンなら今晩空いてる。
今日はフォーシーズン、明日はベネティアンでOK?」

一般的には、結構なオファーだと思われたが、連れがいて、近いとはいえホテル間を移動するのは面倒であった。(ギャンブラーにとって“良いホテル”とは、クタクタになるまで勝負した後、5分以内にベッドの上で横になれる場所を指すと当方は考えます)

「この広いベネティアン・ホテルに、しかも国慶節前の日曜日の夜に、部屋が空いていない筈は無いだろう!もう一度良く探してみろ!
もし無いと言うのなら橋を渡ってリスボアに行くぞ!」

と強い調子で言うと、拍子抜けしたことに、

「あぁ、部屋はありました。今晩から2泊、OKです。勿論無料です。
次回からは来る前に連絡お願いします。」

と言われ、取りあえず北翼の11階の、前回は単なる“シャワー付き荷物預け所”であった無意味に豪華なスィートルームにチェックインする。
JALのマイレージを用いて、香港経由で前日よりマカオ入りしている友人に電話する。
この友人とは、当方が以前香港に駐在していた時から、かれこれ20年来のマカオ仲間であり、主にブラックジャックをプレイし、平均ベット金額は当方の10分の1程度であったが、“勝っても負けても月収の一月分”をモットーにしている堅実な打ち手であった。

“あまり美味しくもないが、そんなに不味くもないカジノ内の“帝王点心”という大袈裟な名前のレストランで腹ごしらえをし、ここまでの戦績を聞く。
驚いたことに、僅か10万円を8千ドル少々と両替し、ミニマムベット~5百ドル位でコツコツ打っているだけで、現在3万ドル弱に増えているとのこと。

『僅か一日で10万円が36万円に増えるのなら、100万円が360万円に増えても良い筈だ!それにしても、飛行機代は会社の出張で貯めたマイルでタダ、宿泊代は当方との相部屋でベネティアンのスィートがタダ、中の食事代も当方のポイントでタダ、合間にシティ・オブ・ドリームスに出向き、当方もまだ見ていないCGのショーも見、新しく出来た“凱旋門”とかいうカジノも見学してきたそうだ。
真の“リゾカジスト”とは彼のような人物のことを言うのだろうな……。』

そんなことを思いながら、1香港ドル=12円として、取りあえず当方の福沢諭吉24枚を千ドル札20枚と両替して貰い、(友人は1万ドル弱あれば十分とのこと)ミニマム2百ドルの空台に座り、友人は3番で適当に、当方は4番~7番に1、2、3、6単位ずつ張り【帝王式BJ】スタート!

序盤から【帝王式】が炸裂する!
すぐにベット金額を上げるが、それでも勝ち続ける。
勝ちが3万ドルを超える。

『よし!この調子だ!』

そう思った矢先に、ディーラーが何やらボソボソと呟く。
おぼろげには把握出来たが、確認の為、英語で再度喋らせる。

「あぁ、ミスター、このテーブルは11時40分でクローズします。
よって残り3ゲームで終了です。」

『もっとやれよ……』と思いながらチップの整理を始める。

最後の3ゲームはデイーラーが意地を見せ、端数分を全て回収される。
ジャスト3万ドルの勝ちで席を立つ。

ベネティアンの中に屯している綺麗なお姐さんが、

「ちーま?(遊びませんか?)」と話しかけてくるが、
「ごめんね、今からまだまだ遊ぶので忙しいのよ」と断る。

「忙しい? 何の遊びで忙しいの?」と再度尋ねてくるので、
「決まっているでしょ。ここはカジノだよ。」

と周囲のゲーム台を指差すと、肩をすぼめながら遠ざかって行った。
ちょい勝ちに終った友人が、これからどうするのかと尋ねてくる。

軍資金は有る。眠くは無い。宿は有る。
ゲームを続けない理由は存在しなかった。

■ 9月21日

12時を回った途端、まるで魔法が解けたシンデレラのように【帝王式】が効かなくなった。
賢明な友人はディーラー優勢とみるや、早々に戦線離脱。
が当方は久々のマカオ初日、しかも浮きからスタートしたとあっては、止めるに止められず、勝ち分を全て吐き出すまでプレイを続行する。

これを負ければちょうど原点、残念だが部屋に戻って寝よう……、と考えた勝負でラストボックスにダブル手(11)が入る。
ディーラーは6、ここでダブルをしなければ、ブラックジャックをする意味が無い。


3千ドルを追加する。
配られたカードは8。

マァマァであったが、ディーラーが6からローカードを集めて20に上がり負け、原点を割る。
後は一直線、手持ちの香港ドルが無くなりマイナス2万ドルで強制終了となる。
部屋に戻り眠る。(あ~あ……)

翌日、一眠りした後スターワールドホテルに行き、日本円75万円を、1万円=823香港ドルの交換レートで最終日までホールドして貰い、計61,725$を受け取る。
このホテル(カジノ)も雰囲気は悪く無いのだが、3月に火傷した記憶が残るからか、何故かここで勝負する気が起こらない。(諺:火傷した子供は火を恐れる)

MGMに移動するが、友人は初対面のリゾカジ関係者と会うのは苦手だと言い、一人別行動を取る。12時に‘食八方’の前に行くと、“くるくる”さん、それと今回初対面の“それいけ”さん、“バロケン”さんの3人が立っていた。少し遅れてikunoさんも現れる。

5人で青島ビールで乾杯し、適当に点心をオーダーする。
バロケンさんは奥さん同行であったが、当方の友人と同じく人見知りするそうで、MGM内の部屋でDVD鑑賞とのこと。カジノ談義に花が咲くが、お腹も満たされたので“食八方”を出る。

「火鍋を食べてみたい、また足裏マッサージというのにも行ってみたい。」

というリクエストが出た為、明日も午後1時にグランドリスボア1階ロビーに集まる約束をする。
さて、バカラ派の人とは一旦別れ、本日の勝負スタート!
それいけさんが当方と同席でのBJを所望されるので、同じテーブルに座る。

当方が4番~7番ボックスに、1,2,3,6単位を、それいけさんが3番~5番ボックスに1,2,3単位をベットし、4番/5番ボックスが部分的にシンクロするという変則の【帝王式】でゲーム開始!

序盤は好調で、2,400ドルをベットしたラストボックスがスプリット&共にダブルとなり、一つは15であったが、もう一つは20となった為、やや安心して見守るとあっさり4からバストしてくれ、一勝負で12,000ドル勝つ。しかし、ディーラーの逆襲が始まり、ほどなくこの勝ち分が回収され、その後もジリ貧状態が続く……。

それいけさんがリタイアする。
ikunoさんと友人が顔を出す。2万負けで席を立つ。

取りあえずリスボアホテルに移動する。
前回オフ会を開いた“皇牌天下”に行き、カジノスタッフに時間の都合で貰いそこねた200パタカ分の御食事券と、無料御宿泊の交渉をする。まず御食事券はすんなりと出て来た。
喉が渇いたので缶ビールを貰う。(青島ビールをリクエスト)次が宿である。

もし今回10万ドルの、最低でも5万ドルのプログラムに入るのなら、前回の帰り際の口約束の通り、一泊2千ドルのデラックスルームにタダで泊めろ!
と強気で交渉するのであったが、残りのマカオでの資金(所謂“M資金”)が僅か4万ドルではそれも出来ないので、極めて低姿勢でこう告げた。


「あぁ、今回はブラックジャックとグランドリスボアでのポーカーを中心に(これは本当)、観光もいろいろしたいので(これは嘘)、バカラのプログラムには様子見で今は入らない(入れない……)つもりです。
それで、そのぅ一泊2千ドルのデラックスルームでなく、前回と同じこのリスボア内の標準的な部屋で良いので、明日から2泊どうでしょうか?
星期二と星期三(火曜日と水曜日)なので多分空いていると思うのですが……。」

前回のローリングの多さを示す、“記念のレシートの束”を材料としてテーブル上に出す。
(やる時はやるのよ……、の意味)

するとカジノスタッフはあっさりと、

「分かりました。このリスボアで良いのなら明日から2泊OKです。勿論無料です。部屋は禁煙/喫煙どちらが良いですか?喫煙、了解しました。それでは明日の13時以降にチェックインして下さい。
あぁ、最終日は空港までクルマを出しますよ。」と返事をした。

兎に角、これで宿は確保出来た。
その後はikunoさんと友人と3人でロイヤルホテル裏の地元のタイ料理店に行き、僅か400パタカで鱈腹飲み食いした後にタクシーで移動し、いつもの足裏マッサージ店で足とボディのセットコースを受ける。

終了後、ikunoさんと別れ、ベネティアンに戻る。
友人は明日帰国の為、荷作り。
(勝利を確定させる為、最終日は勝負せず。偉い)

さて、当方は……軍資金は……、余り無い。
眠い。まだ明日も明後日もある。
無理にゲームをする理由は存在しなかった。

■ 9月22日

朝が来て目覚める。
さすがにベネティアンのベットはふかふかで、久しぶりに良く眠れた。
マイルで来た友人のマカオ滞在は今日まで。結局今回友人は、飛行機もホテルも無料で、カジノもしっかり楽しみ、しっかりとプラスで、フェリー乗り場行きの、これまた無料シャトルバスに乗り込み、意気揚々と帰っていった。

ロビーで見送った後、12時のチェックアウトまで、ベネティアンでの最後の戦いが始まった。
懐が寂しいので、ベットを落としてプレイするが、何故か順調に勝つ。

「プラス5千」→「プラス1万」と徐々に挽回し、このまま行けばベネティアンでの収支がチャラに戻るのもあと少し……、と思い始めた時に、“事件”は起こった。


ベットした金額は6番ボックスに千ドル、ラストボックスに2千ドル。
ディーラーは飛び頃の“5”。
1番から5番までの他のプレイヤーのハンドは全てイマイチで、皆16B/S通り16以下でオールステイ。
6番ボックスも4+3の7に5が入り、12でステイを余儀なくされる。

問題のラストボックスは7が2枚の14。
当然スプリットすべく、追加用のチップを用意している時、まず6番ボックスをどうするかの意思表示を求められたので、

『くだらないことを尋ねるな!』

と内心思いつつ右手を左右に高速で連続して振る。
その次の瞬間、最近のベネティアンにしては珍しく若い、しかもマァマァ可愛らしい女性ディーラーがシューからカードをサクっと2枚抜いた!

カードは1枚目が“9”、2枚目が“3”。

自分は5+9+3=17ですよ、という、やや戸惑った表情をディーラーが浮かべる。
(悩まし気な顔が可愛い)

しかし、当然当方は抗議する。
(こうなればディーラーの顔は眼中に無くなる)

「ふざけるな!こんなものはスプリットするのが当然ではないか!
現に当方の右手にはスプリット用の2千ドルが握り締められているだろう!
それをろくすっぽ確認もせずに、結果がバストならまだしも、
『はい、17でした』と言われて納得出来るか!違いますか?皆さん!」


と同じテーブルの1番から 5番のプレイヤーに同意を求める。
1番ボックスで、3千ドルをベットしていた親父も、2番ボックスで5百ドルをベットしていたおばちゃんも、3番~5番で適当にベットしていた若者達も、全員当方に賛同してくれる。

今回、幸いだったのはプレイヤー側に18~20で確定した者がいなかったことだ。
もしそうした者が一人でもいて、「俺は別にディーラーが17で構わないぞ。
7番の日本人のハンドアクションが紛らわしいのが悪いんだ。
さっさとゲームを進行させろや」などと言い出したら、ハウス側に現状で押し切られるところであったが、全員が16以下であった為、当方のスプリットに誰も反対しなかった。

待つこと40分、普通なら怒り狂うところであったが、若い女性ディーラーがしきりに広東語と英語で自分のミスを認め謝ってくれたのと、負けと思ったお金が戻るかもしれない、という期待感からか、皆終始にこやかであった。

まず若い黒服が現れ何やら確認した後に、白人の偉そうなマネージャーが現れ、当方に英語で、

「ビデオカメラで確認致しました。
確かに当方のディーラーが貴方の意思の確認を怠ったようです。
よってノーゲームではなく、現状でプレイを再開致します。
あなたはこの77を本当にスプリットしますか?」

と尋ねてきた。

「オフコース!」 と答え、2千ドルを差し出す。

当然、1枚目は順番の通り9が配られ、16となる。
普通ならここでステイだが、次が3なのは確定している。
ディーラーが5の場合、その最終ハンドは次のようになる。

 ● 21・・・・・10.8%


 ● 20・・・・・11.3%


 ● 19・・・・・11.8%


 ● 18・・・・・12.2%


 ● 17・・・・・12.2%


 ● バスト・・・41.7%


よって16のままだと現状で約332ドルの負けだが、19にアップすればその場合の期待値は、18&17&バストになる確率と19で引き分けになる場合を考え合わせて、

{(12.2+12.2+41.7)×2+11.8}÷100=1.44

である為、約880ドルの勝ち、となる。

『うーん、ここでステイして、次の3を2枚目の7に送れば10になりダブル手になる。
もしそれが決まればでかい。が、外せばオール屑手で58.3%は全滅する。
それは避けたい……
ここは手堅く最初の7は19で確定させ、次の7は流れに任せるか?まてよ、期待値が1を上回っているのなら、現状の16からダブルも有りなのでは?』

ディーラー、黒服、他のプレイヤー、全員の熱い視線を一身に受ける。
結局敢えて欲張りなダブルはせずヒットに留め、一方は19で確定させる。
(人生、ある種の程を知らねば)

もう一方の7にはあっさりと絵札が配られ、当然ステイ。
ディーラーの1枚目は絵札。

『ここで2~6が出れば、金輪際ブラックジャックは止めだ!』

その願いが通じたのか、2枚目も絵札でディーラーはバスト、テーブル全員が勝利した!
このテーブルでは、当方と同じく千ドルチップでプレイを続けていた1番ボックスの親父が目で『良かったな、日本人よ』とメッセージを送ってくる。

ビッグベットが無かったからか、マネージャーも満足そうに頷きながら姿を消した。
ディーラーの女性もほっとした様子で、全員に謝りながら配当を付け、シフトの関係か無愛想な男性ディーラーと交代し、足早に去っていった。

朝の勝ちはジャスト1万5千ドル、このベネティアンでの負けは残り5千ドル、普通なら射程圏内になった。しかし、時計の針は12時を回っていた。

『今からチップを交換し、チェックアウトし、タクシーに乗り、1時に約束したグランドリスボアの玄関に行く為には、駄目だ……、タイムアウトだ。
まてよ?あと一勝負位なら……、あっ!この男性ディーラー相手の勝負は前にボロ負けしたんだったな。小心小心……(ご用心ご用心……)
ベネティアンのスィートルーム2泊と“帝王点心”の飲茶一回でちょうど5千ドル、
そう思えば(思い込めば)結果はチャラだ。
タイパ島を出てマカオ半島への橋を笑って渡るとするか?』

時計を指差しながら、同じテーブルのプレイヤーに別れを告げ席を立つ。
ボックスの数を維持した方が良いという考えからか、1番ボックスの親父が当方の座っていた6番と7番ボックスに千ドルチップを置いた。

去り際に、このゲームの結果を見守る。

6番は19、7番は20、ディーラーは7。

『もう1ゲームすれば良かったかな?』

ディーラーがカードを開く。

7+7+7=21!しかもオール赤!

親父は40分待ってゲットしたチップを一瞬で失う。

今マカオで公演中だという、“プリンセス天功”のイリュージョンとやらは見ることが出来なかったが、最後に面白いショーを見せて貰った……。まぁこれなら次回も部屋を出してくれるかな?
とにかく、今回のベネティアンでの戦いはこれで終了だ!

タクシーに飛び乗り、グランドリスボアへ向う。

■ 9月22日 後半

何とかグランドリスボア1階玄関に1時前に着く。
ikunoさん, それいけさん、バロケンさんと合流し、リゾカジ御用達の火鍋専門店“徳興”に向う。

ビールと、適当に火鍋の具材を頼み、昨日のカジノの戦績を話し合う。
シャンパンさんが幹事の時のように“高級食材”を殆どオーダーしなかったからか、お腹いっぱい飲み食いして、一人たったの180パタカで収まった。

さてどうするか?という話になり、これまたリゾカジ御用達の足裏マッサージ屋に行くことに決定。足とボディの基本セットを受け、酔いも醒め、リフレッシュは出来た。
折角ここまで来たのだからと、歩いてすぐの場所にある“回力娯楽場”に向う。
鉄火場的な雰囲気に驚く、それいけさんとバロケンさん。

ここの高額区域で昔懐かしい“大バカラ”の台を見つける。
高額区域といってもミニマム千ドルなので、それいけさんが“記念”にと勝負する。

あっさりカジノの勝ち。

それを見ていたバロケンさんが、「それでは私も……」と3千ドルを専用チップに換え、選手交代で座る。バロケンさんは勝ったり負けたりであったが、何か閃いたのかタイに賭けると言い出す。

本線をバンカーに千ドル張り、タイに少額張ろうとすると、ディーラーが何故か首を振る。この回力の大バカラ台はおかしなことに、本線もタイもどちらもミニマムが千ドルであることに気が付く。
バロケンさんにそれを伝えると、「それなら……」とタイに千ドルをベットし直す。

『うーん、本線の十分の一位ならともかく、自分は絶対にタイに同額は張れない……、それはともかく、何故か大バカラ台を見ても闘志が沸いてこないなぁ。

そうか!自分が求めていたのは、単なる大バカラ台でのプレイじゃなく、20年前に初めてマカオでバカラをした時と同じ状況だったのだな。
あの頃は香港から週末毎にフェリーに乗りマカオに行けば、そこら中に自分より一回り年長で、小金持ちで、日本人が嫌いな中国系のおっさんがうじゃうじゃ居て(皆どこにいったのだろう……)、そんなおっさんどもとサイドを分かれてカードを絞り合い、勝ったり負けたりするのが愉しかった訳だ。

それが最近は、どこに行っても周りを見渡せば自分より年下ばっかり、何て事が多くなってきた……、それも嫌だが、ハウスと差しでプレイするのはもっとつまらない。それならBJの方がまだましだ。どうやらバカラも潮時かな……。』

そんなことを考えながら見物していると、ハウスプレイヤーは0から5、それに対しバロケンさんは5からセイピンというアツい状況になっていた。

『10ならタイで配当8倍!9なら負けか。もしここでタイが出れば大きいな……』

じっくりと絞るバロケンさん。
絞り抜いたカードは10であった!
配当として8千ドルが付けられる。

「これで嫁にスカーフでもプレゼントしてやりますよ♪」
と嬉しそうなバロケンさん。

“裏世界遺産”とでも言うべき、“回力娯楽場”見学ツァーも終わり、バロケンさんはMGMに、残る3名はグランドリスボアに向う。
最近ポーカー(テキサスホールデム)をやり始めたというikunoさんに合わせて、グランドリスボアの5階にあるポーカールームに向う。初心者のそれいけさんは練習用テーブルで講習を受ける。

ikunoさんと当方はスモールブラインド:10ドル、ビッグブラインド:20ドルという、一番レートの低いテーブルに3千ドルのバイインで参加する。当方は順調にポットを獲得し、徐々に増える。

しかしキャッシュゲームが始めてのikuno さんは周りにハンドを読まれるからか、ジリ貧で再度のバイインを余儀なくされる。時計の針が12時を回る。

夕食がまだだったことを思い出し、ポーカーテーブルを離れる。
ikuno さんとグランドリスボア内の麺の専門店で軽く食事を取る。
(支払いは当然リスボアで貰った御食事券で)

リスボアに戻り、暇潰しに大小をする。
負ける。

取り戻そうとまたベットする。
また負ける。

少額ずつだったが、負けが2千ドルになる。
大小に2千ドルをベットする気になれないので、バカラ台に移動する。

プレイヤーが連勝している台に無表情で座り、素直にプレイヤーに賭け連勝している男がいた。
妙な対抗心が胸の中に沸いてきた。そのすぐ隣の台ではバンカーが連勝中であったが、何故だかプレイヤーが連勝中の台に座る。

バンカーに2千ドルずつベットする。
P P P P P
5連敗で1万ドルを失う。

ikuno さんが姿を現す。無言で隣の台を指差す。
見事なバンカーの面であった。

『天国と地獄は隣り合わせか……』

今日はこれまでと思い、24日までマカオに滞在する当方と違い、明日の朝マカオを出るikuno さんに別れを告げ、部屋に戻り眠る。

■ 9月23日

不思議と爽やかに目覚める。
何も根拠は無いが、今日は勝てそうな気がする。
昨晩と同じ、リスボアホテル1階で、まず大小をする。

千ドルを小に賭ける。
3+3+4=10と鼻の差で小。

次も小に、と思ったが直前で大に変更する。
3つのサイコロの内、一つに1が見え、一瞬しまったと思ったが、1+4+6=11とこれまた鼻の差で大。昨晩の大小の負けはサクっと戻ってきた。

次にバカラに向う。
プレイヤーが連勝中の台を選び、一人バンカーに4千ドルをベットする。
初老の怪しげな雰囲気の中国人が、時間をかけて絞る。

プレイヤーは6、バンカーは絵札+3ピン。

『多分、7だろう……。』

と思いつつ絞ると、予想通り7で決まり。

プレイヤーの面(7連勝)を切られた初老の中国人が、不機嫌そうに再度プレイヤーに2万ドルを張る。

当方はバンカーに6,600ドルをベット。
プレイヤーはナチュラル8!

どうだ!とばかりにカードを叩きつける。
しかしこちらにも“材料”は有った。

3ピン+ガッタウ(2か3)。
3ピンは7であった。

もう一枚を絞る。
真ん中は真っ白だった!
バカラの収支がプラス70ドルになる。

『よし、これから!』

と思い始めた時、悪態を付きながら初老の中国人と、
その取り巻き連中が一斉に席を立つ。

仕方なく当方も席を立ち、グランドリスボアに移動する。誰もいないブラックジャック台に座る。
4ボックスに1,2,3,6単位ずつをベットする、帝王式の標準でスロースタート。

おばちゃんディーラーはあまりバストしないものの、17、18が多く、徐々にチップが増える。
朝からの勝ち分が22,400ドルになる。

『ほぼチャラに戻ったな。まてよ……、今回一度試してみたかったことの一つが、
“6ボックス”対応だ。ユニットは決まっている。1、2、4、7、14、28だ。

(映画、『博士の愛した数式』に出てきた、
所謂“完全数”の一つである“28”がベース)

単位を400ドルにすれば、ちょうどここまでのこの台の勝ち分と同じになる。
良し、勝負だ!』

2番に400ドル、3番に800ドル、4番に1,600ドル、5番に2,800ドル、6番に5,600ドル、7番に11,200ドルをベットする。

目を丸くするおばちゃんディーラー。
カードが配られる。

ディーラーは10。
全般に手は悪い。

2番ボックスにブラックジャックが入るが、他はどれも悪い。
最悪の16となった6番はサレンダーで逃げる。

3番・・・13から絵札でバスト。

4番・・・A+5から9+7でバスト。

5番・・・12から2+8でバスト。

苦しい展開だ。
11,200ドルをベットしたラストボックスは12。

取りあえずヒットする。
2で14になる。

もう一枚ヒット。
また2で16になる。

心の中で泣きながらヒットする。
5が入り21!

しかしディーラーがサクサクとカードを捲る。

10+6+5=21……

折角21を作ったのに!もし16でステイしていたとしたら……、10+5+6=21!お見事!
引いたことで負けが辛うじて引き分けになったのか……

結局1万5千ドルのプラスでブラックジャックを終了する。

『朝の感じではもっと行けると思ったが、ここいらが限界か?
完全数作戦の一発目は不発に終ったな……さて、またポーカーでもするか?』

■ 9月23日 完結

マカオ唯一のデパートである、新八百半(広東語でパパプン)に、知り合いの女の子に頼まれたYSLの“魔法の美容液”とかいうのを買いに行く。
3本で約2千ドル、他にも土産物を少し買い、マカオでのショッピングはこれにて終了。

グランドリスボアのポーカールームに向う。
テーブルの10名のメンバーの内、3人は昨晩と同じ面子だった。

『本当にポーカーが好きなんだな……。』

お互いに顔を見合わせ、苦笑する。
トーナメントではなくリングゲームなので、お金と時間が許す限り、エンドレスで続く。

途中、3回連続でポケット(しかも33・・・はフルハウスに昇格し、残りはKK&AAのモンスターハンド!)が入る事があり、ガッツリと稼がせて貰う。普通は伏せてディーラーに戻すのだが、KKとAAで連続して相手をフォールドさせた時は、敢えてオープンする。

テーブルのそこかしこで溜息が漏れる。
スモールブラインド・・・10ドル、ビッグブラインド・・・20ドルの一番安いテーブルであったが、何人かのオール・インを美味しく頂き、どんどんチップが増える。

マネージャーが現れ、

「ミスター?もし宜しければより高額なテーブルにも空席がありますので、
移動されますか?」

と持ちかけてくる。

しかし、丁重にお断りする。理由はこうである。

● バカラなら所持金やテーブルのリミットに関係無く、一回ずつの勝負の期待値は、
どこでプレイしようと同じである。(バンカー6は除く)

● ディーラーが相手のブラックジャックでも事情は同じだ。

けれども、客同士が互いのチップの取り合いをするポーカーでは事情は異なる。
テーブルの中に、ポーカーの基本的戦術を良く知らない素人さん(所謂“フィッシュ”)が数名いれば、その“フィッシュ”からは時間の経過と共に確実に所持金を巻き上げられるので、そのテーブルではある程度の熟練者は労せずしてチップを稼げる訳である。

当然のことながら、そうした“フィッシュ”は高額テーブルではなく、一番安いテーブルに集まるであろうから、敢えて勝ちにくい高額テーブルに移動する理由はどこにも無かった。

背中合わせになっている、高額テーブルの様子を時々眺める。
皆、眼光鋭く、セオリー通りのプレイをしている様子。

ポーカーの世界の格言の一つに、

「テーブルでは、まず“フィッシュ”を探そう。

もし周りを見渡して、どこにも“フィッシュ”がいなければ、そのテーブルでプレイしてはいけない。
何故なら、あなたがそこでは“フィッシュ”なのだから……。
と言うのがある。

『魚は釣る方に回らないとね……』

さて、夜が更けるにつけ、ポーカールームも徐々に人が増え、昼間は何人かいた“フィッシュ”も皆、無謀なオールインで消えていった結果、タイトなゲームが続くようになる。
そうした中、ポーカーで最も有利なボタンの位置で、K8sが入る。
初手169種類中37位、期待値1.17のまぁまぁ悪くない手であった。

当然コールする。
フロップが開かれる。

K、8、7
いきなり2ペアが成立する。

スーツもバラバラでフラッシュの恐れも無い。

心持ちベットすると、メガネをかけた香港人がレイズしてくる。コールで回す。
ターン(共通カードの4枚目)にKが舞い降りる。
キング・フルハウスの完成だ!勝利を確信する。
が、何故かメガネの香港人が3千ドルと、このテーブルではビッグベットを打つ。

『何だろう?ブラフかな……、いや、このおっさんはここまでずっとタイトなプレイに徹してきている。ブラフは無い。
7か8のポケットを持っていて、弱めのフルハウスが完成したか、Kと何かを持っていて、キングの3カードといったところか……。
もしその何かが8ならチョップ(引き分け)、7ならこちらの勝ち!
よし、恐れることは無い!』

レイズしても良かったが、降りられても困るのでコールで回す。
リバー(共通カードの最終の5枚目)は9。
ここでメガネのおっさんが約7千ドルのオール・インを宣言する。
ポット(掛け金の総額)が膨らむ。

ボードをじっと見詰める。ストレートフラッシュもクアッドも有り得ない。
即コールしようとするが、一瞬違和感がよぎる。

『待てよ、リバーの9でオール・インしたということは……、
最初に9のペアを持っていてKK999?これなら分かる。
そしてこれならこっちの勝ちだ。

KKK77でも勝ち、KKK88なら引き分け、あと考えられる可能性としては……、
あっ!KKK99のフルハウスが有った!

まずい。しかし、ここまで来て、こっちにキングのフルハウスが完成していて、
これだけのポットを目の前にしてフォールドは出来ない……。』

躊躇いながらオールインをコールする。
その瞬間、おっさんがキングと9を放り投げる!

予想通り、ナッツ(絶対に負けない)のフルハウスであった……。(釣られてしまった)
周囲の期待に応える為、こちらもカード(K&8)をオープンする。
テーブル上にどよめきが走る。約2万数千ドルが勝利者に付けられる。

『これに勝てば今回のマカオ遠征でプラ転だったが、それは無理だったな……。』

テーブルのプレイヤーに退席を告げ、人質となっている日本円を解放する為にスターワールドに向う。何とか、福沢諭吉75枚は奪還した。リスボアの“皇牌天下”に向う。
バロケンさんと、大阪から来たという、威勢の良い30代の男性がバカラを打っている。

昼間、他のカジノでやられたというが、最終日の夜に負けているにも関わらず、闘志を持ってバカラをしている様子を見ると、もうこの元気は自分には無いな、と思う。
普段はソウルが主戦場で、今回が“初マカオ”だという大阪出身の男性から、

「もしかしたら?とは思いましたが、やはり“マカオの帝王”さんでしたか!
いつもリゾカジのレポートを読んでますよ!
古いのも全部遡って読ませて貰いました。
いや、こんなところで逢えるとは……」


と妙に感激される。そこにマカオは10何年ぶりだという“人道人間”さんが現れる。
テニアンでは何度かBJ大会で一緒になったことがあったが、会話をするのは初めてである。
今度時間がある時に、ディープなマカオを案内する約束をする。

しばし歓談した後、3人の勝利を祈りながら、別れる。良く考えると、ポーカールームでハンバーガーを食べただけで、まともな食事をしていないことを思い出し、一人“不夜天”に行く。

“回遊魚”の御姐さん達からしきりに声を掛けられるが、手持ちの香港ドルのほぼ全額を人質の奪還に投入した結果、財布の中のキャッシュは5百ドルを切っていた。

『これっぽっちじゃ、あとはメシ食って寝るだけだ。
まぁ、軍資金一束で最終日まで良く健闘した、とは思う。
けど、結局今回も負けだ……。

もうすぐ10月、上海蟹の美味い季節の到来だ。マカオの夏も終りだな。
自分ももうすぐ50代になる。(なってしまう)

ギャンブラーは常人の1.5倍のペースで歳を取るというが、“夏”も終わりだな。
特に体力と気力が必要なバカラは、もう若い時のように長時間集中して出来そうに無い。秋天落日(秋の夕日)か……。』

翌日、マカオ空港のバスの中で“プリンセス・天功”と一緒になり、携帯で2ショットの写真を撮り、関空行きのエアマカオに乗り込む。


『次は年末年始だな。“新年快楽2010”まで、ひとまず再見!』


帝王的假日(秋天落日)【完】

*このレポートはリゾカジ.snsの日記を転載したものです。


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