リゾカジ カジノレポート

澳門黄金週間の旅(後編)

* マカオ 2012/ 07/ 08 Written by マカオの帝王

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■ 5月1日(火)深夜

亜熱帯独特の蒸し暑い空気を感じながら、タクシーの行列に並ぶ。

『こんなことなら、エリートルームに送迎のクルマを出させるのだったな……』

そんなことを考えながら、やっときたタクシーに乗りこみ、行く先を告げる。
「新葡京(グランドリスボア)へ」


午前1時。

グランドリスボアのポーカールームは中国が祝日の影響もあり、混雑していた。
何故か25-50が満卓なので、仕方無くブラインドが10-25のテーブルにバイイン5,000で入る。

結果的にはこれが幸いした。

BBだったので、ポーカーでは最弱のハンドの一つ、62オフスーツで参加すると、フロップ;Q、6、2(ハートが2枚)のボトム2ペアとなる。

これは! と思い250打つとレイズ800が飛んでくる。

面倒くさくなり、オールインするとコールされる。

相手はQヒットのフラッシュドローだった。

こちらの2ペアを見て一瞬怯むが、リバーでハートが出て相手のフラッシュ完成。
リバイはせず席を立つ。

『やはり62は弱かったな……、まぁ損害額が5千で済んで幸いか?』

すぐ後ろのBJ台に座る。

左側3ボックスで“帝王式BJ”開始。

こちらは依然好調で、すぐにプラス1万を突破。

しかし、香港の熱気を浴びたせいか、心と身体が“渇き”を欲する。

『駄目だ、この程度の刺激じゃ物足りない。今の自分に必要なのは良く冷えたビールとクシャクシャに出来る2枚のカード(=バカラ)だ……』

ジャストプラス1万で席を立ち。空中廊下を渡り、今回ここまで負け知らずのリスボアの皇牌天下(エリートルーム)へ向かう。

顔見知りのリゾカジメンバーが数名、ローリング中。

一応罫線を見る。

バンカーが圧倒的に優勢(全体の66%程度)

『しまった! もっと早く席を立ってここに来るべきだった……、けど、今からでも遅くは無い。このシューが終わるまでに一稼ぎさせてもらうとするか……』

取り敢えず2万をノンネゴチップと交換する。

「帝王さんが絞り出したら、急にプレイヤーが勝ちだした……」
などと言われたらどうしようかと思ったが、それは杞憂に終わった。

プレイヤーの4は5、6は7、そして極めつけはプレイヤーのナチュラル8をバンカーのナチュラル9で粉砕し、バンカーの2勝1敗ペースを更に上げ(平均勝率は7割を突破)、同卓のリゾカジメンバー全員に勝利をもたらす事が出来た。

何でも “2ch” では 前回のくるくるさんのレポート(前回、バカラで豪腕の中国人に転がされる)を受けて、“マカオの帝王、くるくるに晒される” 云々といった書き込みがあったそうだが、同席したくるくるさんに、「ちゃんと見てくれましたね! これで汚名返上&名誉挽回ということで、次回のレポートではお願いしますよ」 と念を押す。
(くるくるさんも了承。なお、庶民派グルメのくるくるさんの提案で、明日の5時半にここに集合し、リモに乗ってコロアネ島のポルトガル料理屋に行くことに決定。過去、リゾカジのグルメレポート上で、「ポルトガル料理に旨いものなし!」と叩かれ続けているマカオのポルトガル料理屋の汚名返上なるか?)

手元のチャッシュチップは4万に達した。

『これで今日のトータルの勝ち分が3万、今回のマカオ遠征での差し当たっての目標であるプラス10万に中日(なかび)で達した訳だ。普通なら後は流して、所謂一つの“勝ち逃げ”を決め込む所なのだろうが、“帝王の辞書に勝ち逃げは無い!”残り3日、最後の瞬間まで戦い抜くぞ!』

とはいえ、日帰りでの香港往復等をした為、本日は些か疲れた(ナチュラル・ボーン・ギャンブラーは、ギャンブル以外の行動をすると非常に疲れやすい)こともあり、スタッフに本日の宿泊先である、タイパ島の格蘭酒店(がらんじゅーでぃん)横にあるマンション行きのクルマを出して貰うことにする。

京都のポーカー・プレイヤーであるOさんが契約している一般のマンションが、今日から4日間の宿である。

※ 中国の連休と重なる為、5月1日~3日までの期間、マカオ中のホテルは殆どが満員、若しくは料金が普段の2~3倍という、好ましくない事態となっていた。それに比べこのOさんのマンション(ここに宿泊した人が、何故か勝って帰ることが多いので、別名“勝利の館”)のルームシェア料金は変わらずで、2段ベッド=一泊150$、個室=一泊300$であることから、今回の遠征の後半4泊はここを予約していた。

予め、Oさんからルームキーを貰っていたので、エレベーターで直接16階に昇り、部屋に入る。

入り口付近の2段ベッドでは、メガネの若者が就寝中であったが、個室の管理人?さんに起きて貰い、当方の部屋を教えてもらう。

どうやら、現在の長期滞在者は3名(当然、全員男性)で、一人はフィリピンのセブ島遠征から明日戻ってくる、とのこと。
全員がポーカー(テキサス・ホールデム)プレイヤーで、皆さんそれで“飯を食っている”様子。

『素晴らしい! 自分がもう少し若かったら、きっと彼らの仲間入りしていたことだろう。どうせ人生一度切りだ。自己責任で四六時中好きなことだけをやる! 何とも羨ましい限りだ……』

管理人さんに4日分の宿泊費:1,200$を支払い、新しいバスタオルを受け取る。

シャワーを浴び(バスタブは無い)硬いベッドの上で泥のように眠る。


■ 5月1日(火)

目が覚める。

入り口付近で寝ていたメガネの若者に挨拶する。
出身が大阪とのことで、少し話をすると、当方と生まれた病院が同じ(上本町の聖バルナバ病院)と分かり驚く。

しかし、この若者、頭の回転が半端じゃない!

マカオ以外の当方が訪れたことのある海外のカジノにおける微妙なコンプの条件や、ハウスルールの違い等について話をすると、「あぁ、マカオの帝王さん、それだったら理論上は客がほんの少しですけどプラスになりますね! 但し時間の制約がなく、元手が“2億円”程必要となりますけど……」

当方が検算するとほぼその通り。

『うーん、やはりバカラのように“足して9に近づける”だけの単純なゲームのプレイヤーが、こうした複雑なポーカーを日々プレイしている連中と長時間リングでゲームして勝とうとするのは無理があるのかもしれないな……』

そんな気分にさせられながら、相互の親睦の為、宿の日本人全員でリスボアホテルに行き“飲茶”を食べる提案をする。

管理人さんと、セブ島から今朝方帰ってきたK氏に声をかけ、マンションを後にする。
普通なら、路線バス(4.2$)で行くところだが、4人なので少し窮屈だがタクシーに乗りこむ。

リスボアでの飲茶なら、やはり“日麗”が良かろうと向かうと、予約で混雑していたが、何とか席に着くことが出来る。

昔取った何とやらで、適当に点心を頼む。

さすがは冷静な判断を要求されるポーカープレイヤーの3名は、昼間からアルコールは飲まず、其の名の通り“飲茶”に徹するが、当方はビールを注文する。

メガネの若者が、「いやぁ、いつもは飯はマクドナルドで済ますことが多く、ちゃんとした飲茶を食べることは滅多に無いのですが、今日のはマカオに来てから食べた飲茶の中で一番美味しかったですよ」と嬉しいことを言ってくれる。

勿論当方の奢りで(支払いは3%お得なマカオパタカ)店を出て、同じリスボア内の皇牌天下(エリートルーム)へ向かう。

3人はコーヒーを飲みながら、しばし見物。

軽く食後の一勝負! と参戦するも、余り調子が出ず、マイナス1万で手仕舞い決定。

自分たちとほぼ同年代のリゾカジメンバーのハイローラーのTさんが5万$の大板を数枚手元に置き、バカラに打ち興じる様を見て、「我々とは世界が違うなぁ……」と呟く3人と共に、空中廊下を通って、彼らのホームグラウンドの一つである、グランドリスボア上階のポーカールームへと向かう。

ここで当方はブラインドが25-50のテーブルにバイイン15,000で参加。

積極的にゲームに参加、といえば聞こえは良いが、ようはバンクロールが潤沢になった為、普段なら参加しないようなランダムハンド(=屑手)でも、とにかくフロップを見たくて参加するという悪い癖が顔を出す。またオッズが合わなくても、ドローで捲くり目さえあれば、決まれば愉しいのでついコールするという、所謂“殿様ポーカー”モードに突入する。

徐々にチップを減らす。
そうした中で“AA”降臨!

それまでも、何でもコール&適当レイズしていたので、どうせ大したハンドではないと思われているのか、300ベットしても3人がコールで付いて来る。

フロップが開く。

Q、J、Tのレインボー。

レインボーでフラッシュ目が無いのは良かったが、危険なストレートの香りがいっぱいだ!

右脳が、『深入りするな、フォールドも視野に入れろ!』と指令を送る。
けれど、何故か左脳に支配されている右手が千のチップを放り投げる。

二人は降りたが、対面の白人が3千とレイズしてくる。
当方もコールで応じる。

ターン。
A(エース)が落ちる。

一瞬喜んだが、もし相手にキング1枚あればストレート完成で、厳しい状況に追い込まれる。

様子見で2千ベットすると、白人からオールインが飛んできた!

『やっぱりキングを持っているんだな……、そうに違いない。けど、Aポケがセットになったので、望みは薄いがリバーでエースのクワッド若しくはフルハウスの可能性も約20%は残っている。 マカティの辞書にフォールドはあるが、帝王の辞書にフォールドは無い!(ポーカーだが、気分は“帝王モード”)』

オールインに応じる。

案の定、白人はKQだった。(白人にとってはベストな展開)
リバーはラグ(関係無し)って白人の勝利。

少し残ったが、次のハンドがAQだったので、ランダムハンドでの投げやりオールインに見えれば? と千数百点をオールインするも二人にコールされる。

相手はAJと99で、何も起こらず99の勝利。
2手で全滅し、席を立つ。

このモヤモヤを、ポーカールーム裏手のBJ台にぶつける。

バイイン25,000で、帝王式BJの拡大版4ボックス方式、300-500-800-1500でゲーム開始!

4、5番目のボックスが死んでも6、7番目が勝つという、帝王式の理想的なパターンが続き、黄、赤、紫のせんべい型チップが乱舞する。

途中で、ポーカーテーブルで一緒だった若い香港人と思われるプレイヤーが1番ボックスに座り、ミニマムの300をベットしながら当方を見て、『おや、これはさっき同じテーブルに座っていたスーツの人ではないか? うわぁ! 最後のボックスのスプリット&片方ダブルが決まり、ディーラーがバストしたから、この一手で約6千の勝ちか……、こんなのをほぼ毎回……、恐ろしい相手とプレイしていたんだなぁ……(以上、全て当方の想像)』といった表情を浮かべる。

500のボックスのBJで受け取った50チップが3枚溜まった際、最終ボックスのペアに1枚遊びで置くと、見事99が入る。

ディーラーは6。

当然スプリットだが、ディーラーが目で『ペアに賭けないのか?』と誘う。

普通はペアには張らないのだが、場に他に9が出ていないことを確認したので、釣られて50を1枚、放り投げる。

またもや9!
当然ここも再スプリット。

最後の1枚の50を放り投げる。

またもや9!
まずはペアの配当を受け取る。

再度、ペアを誘われるが、さすがにもう無いと断る。(手元の半端も無くなったことだし……)

その後は絵札、A、絵札、8でオールステイ。

ディーラーバストでこの勝負、全部勝つ!
バイインの25.000は5万に増えた。

ここからディーラーの反撃が始まり、チップが増えなくなる。

深追いはせず、席を立つ。

空中廊下を通り、皇牌天下(エリートルーム)へ戻る。

本日のバカラ、スタート。

最初はこの皇牌天下(エリートルーム)には珍しい、若い(まぁまぁ綺麗な)御姐さんと同じ卓に座る。

最初のゲーム。

プレイヤーに御姐さんが1万ベットする。
バンカーに当方が4千ベットする。

御姐さん・・・・・・2点

当方、絵札と3ピンから優しく6点
御姐さん、頑張って6を引き8点に上がる。

当方、ガッタウ(2か3)で負け無しも2の8点で引き分け。

次のゲーム。

御姐さん・・・・・・4点

当方、モウピンと3ピンも3+8=1点
御姐さん、6を引いてがっくりの0点。

当方、4ピンで負け無しも9を引き、バカラ(=0点)で引き分け。

こんな感じで生温い勝負が続く。

「オンナを殺す刃物は持っちゃいないのさ……」

などと隣で観戦中のくるくるさんに呟く。

結局、この卓ではちょい負けで脱出し、横のむさ苦しい中国人男性との差しの勝負で少し勝ち、本日の初バカラはトータルプラス5千で終了。

『やはり、大事な“タマ”の遣り取りをするのは野郎相手じゃないとな……』などと一人悦に入る。

軽く食事をし、タイパ島行きのクルマの手配をする。

説明が難しいので、格蘭酒店(がらんじゅーでぃん)へと告げる。

折角来たのだからと、このホテルの中にあるオールマシンのゲームセンターのようなミニカジノ、“モカ”に入る。

当然、バカラで全勝負バンカーにベット(各400)する。
一進一退だったが、最後バンカーの3連勝で、気が付けばプラス千超になる。
端数が負けたところで、プリントアウトのボタンを押す。
出てきた紙を清算機に差し込み、キャッシュを受け取る。

『今日のところは、これが一番単純で効率が良かったな……』

そんなことを考えながら、道路の反対側のマンション、別名“勝利の館”に戻り眠る。


■ 5月2日(水)

帝王の朝は早い。

ほぼ連日、夜明けと共に眠りに着き、3~4時間ベッドで横になると自然に目が覚め、シャワーを浴びたら本日の活動開始だ。

マンション前から4.2$でバスに乗り、マカオ大橋を渡ってグランドリスボア前で降りる。

今回、ここまでのところ、グランドリスボアのBJと、元祖リスボアの皇牌天下(エリートルーム)でのバカラに関しては、感覚的には無敵状態である。(所謂 “ムテキ” 到来!?)

その他のカジノ(MGM、カサ・リアル、COD、ウィーン)はほぼトントン、よって移動の手間を省く観点からもこの2軒を、空中廊下を行き来しながら攻めるのがベスト! と本日のゲームプランを決める。

まずはグランドリスボアにて、帝王式BJスタート。

本日もお日柄も良く、前回はさっぱりだった伝家の宝刀 “ブラックジャック” は切れ味鋭く、おばちゃんディーラーを朝っぱらから切り刻み、サクッと1万5千の勝利!

暇つぶしに後ろ側のブラインドが10-25のポーカーをするが、小さなポットを取ったり取られたりで、結局5時過ぎにチャラで終了。

空中廊下を渡り、リスボアの皇牌天下(エリートルーム)へ移動する。

くるくるさん他、リゾカジメンバーの皆さんと集合し、クルマでコロアネ島にあるポルトガル料理屋へ向かう。

途中で皆さん愉しくカジノ談義。

ともすれば孤独になりがちな海外カジノ遠征で、殺伐とした勝負の合間にこうした息抜きの時間があるのは有りがたい。

過去200回を超えるマカオ遠征で、3度目のコロアネ島に足を踏み入れる。
やがて前方にお目当ての店が見えてきた。
古い南欧風の造りの、雰囲気のある店であった。

飲み物としては、この店の売り物のサングリア(=安い赤ワインを甘いソーダで割り、それに砂糖と果物を少々加えた、清涼感のある飲み物)とポルトガル・ビールを頼む。
料理はこれまたこの店の名物らしい、鰯の蒸したのと、海老のガーリック焼き、それとチキン、野菜、味付けイカの中に何かを詰めたもの、その他イロイロが順番に出てきた。

お味は合格!

くるくるさん曰く、「マカオのポルトガル料理屋で始めて美味いものを食べた!」

途中でシンガポール遠征からの途中下車になる “J”さんも登場。

ほぼ野外で、蚊取り線香はあるのだが、蚊の襲来を完全には防ぐことが出来ず、半袖の人が腕を蚊に刺されたりしたが、料金も一人約250$と安く、ギャンブラー達の束の間の休息は終わった。

タイパ島内のカジノに向かう2名はタクシーで、其の他の5名は店が路線バス(26A)の始発でもあるのでバスに乗りこみ、拠点である皇牌天下(エリートルーム)へと向かう、マカオ半島を縦断する短いバスの旅がスタートする。

やがてバスがリスボアホテル前で停まる。
一行下車し、ぞろぞろと皇牌天下(エリートルーム)へ。

食後のバカラスタート!

どうやら、皇牌天下(エリートルーム)に巣食っていた魔物(通称:“ヤツ”)はシンガポールにでも遠征しているようで、当方の大好きなバンカーモードで推移する。

一度など、普段は賭けないペアに、自分が絞るバンカーサイドだけに300、本線に4,000ベットすると、ハウスプレイヤーは6、バンカーの1枚目はクラブのA(エース)。

『3ピンなら勝利!』

と思いながら絞ると、何やらモジャモジャが……。

お守りとして卓上に置いてある、フェリー乗り場にて68$で買ったポーカー用のカードプロテクターの表面の印字を見る。

『クラブとスペードのそれぞれA(エース)だ! ポーカーじゃ最強、バカラじゃ???の手だが、今回に限りこれもまた良し!』

苦笑しながらスペードのエースを放り投げ、手元のカードプロテクターをリゾカジメンバーに見せると、「おぉ! 今のトイチと絵柄まで同じじゃないですか? これは凄い……、後は本線ですね」 と言われる。

対子の配当(3,300)を受け取る。

「本線も勝ちたいですねぇ……」

そう呟きながら3枚目のカードを絞ると、負け無しの両ピン!

『テンガー!(真ん中に付いて5になれ!)』

その思いが通じたのか、2+5=7で勝利!

“ヤツ”が居ぬ間の何とやら、で皇牌天下(エリートルーム)を鱠切りにする。

プラス3万で一旦手仕舞うことにする。

『これで、今回のマカオ遠征の勝ちのトータルはジャスト15万! 残るは後1日! 勝ちはほぼ決まりだが、“クラブ・スコーピオン”の会長としては、最後の瞬間まで戦い抜かねばならない……、それはさておき、最終日にバタバタしない為にも、ここらで “人質” の福沢諭吉を解放しておくか……』

スタッフを呼び、初日に “他ホテル宿泊者用、バカラ38,000$プログラム” でホールドした日本円を、38,253$と交換する。

無事に “人質” が解放され、スタッフにタイパ島行きのクルマを手配して貰う。

移動中のクルマの中で考える。

『ここまで、特に記憶に残る大勝負は無い。一箇所での記録的な大勝利も無い。ただ幸いなことに今回はここまで一箇所で2万オーバーの負けらしい負けが一度も無い。これが大きい! 結果として、連日3万から4万超の中勝利の連続(悪くともチャラ)で、気が付けばプラス15万だ。久しぶりの二束も見えてきた。明日も行くぞ!』

クルマがマンション前の3星ホテル、格蘭酒店(がらんじゅーでぃん)に到着する。

本日最後の儀式として、このホテル内のミニカジノ、“モカ”に入る。

最初少し沈むが、途中で勝ち出し、マイナス570まで挽回する。
『何だか眠くなってきた、ようし、バンカーに600ベット! これに勝てばチャラ!』

プレイヤーがいきなりナチュラル8を出す。
しかしバンカーは絵札と4ピン!

スクィーズ機能を用いて、願いを込めてタッチパネルに触れる。

抜けた!

美しい“パー・シュウ・ガウ(=8対9)”でのバンカーの勝利!

『これでマシンバカラはチャラか……、良し、今日はもうここまで!』

現金に換え、“勝利の館”へ帰還する。


■ 5月3日(木)

遂に最終日を迎えた。
(明日は午前便なので、殆ど時間無し)

今日は名古屋出身の、当方と誕生日、血液型、名前のヨミが同じという、マカオ在住のイケメンポーカープレイヤー、“H”君と久しぶりに再会の約束をする。

取り敢えず、グランドリスボアのポーカールーム横のBJ台に“出勤”する。

本日もサクッと勝利! と行きたかったが、そうは問屋が卸してくれず、ズルズルとチップを削られる展開となる。

そうこうする内に“H”君登場!

相変わらずのイケメン振りである。(まるで当方の若かりし頃のように……)

BJで良いところを見せたかったのだが、結局マイナス2万で撤収することとし、下のフロアの“麺屋”に同宿のKさんと3人で入る。

何故か中国では蘭州が“麺の本場”ということになっているので、そのことを二人に伝えると、二人とも「それなら、その本番の麺を……」となり、基本の麺は決まる。
(ここの写真入りメニューでも一番大きく載っている)

後は適当に各人で具材を選び、当方はここでの定番である“巨大生ビール”をオーダーし、ポーカー談義で盛り上がる。

“H”君によれば、同じ名古屋の新婚ポーカープレイヤーの“M”君も、勤めていた一流企業を辞め、美しい新婦を日本に残し、魑魅魍魎が跳梁跋扈する、この天外魔境マカオで冥府魔道のポーカー修行を歩むことを決意し、この黄金週間から長期滞在の予定だという。

『うーん、会社を辞めるのまでは理解出来るが、新婚の奥さんを日本に置いてけぼりにするのは如何なものか……。けど、それもまた彼の選んだ道だ。3年後、彼がWSOP(ラスベガスで開催されるポーカーの世界的な大会)でブレスレッドを獲得(優勝の賞金:約10億円)するか、それとも矢折れ力尽き、日本に帰る破目になるか、それは誰にも分からない……』

食事終了、当方が纏めて支払い、勝負再開!

さて、肝心の再開する場所だが、最近“H”君らは専らスターワールドで打っているとのこと。郷に入っては郷に従え、が当方のモットーであるが、“スターワールド”と聞いた際に、一瞬嫌な予感がした。

『あの“スターワールド”か……、去年の夏に旧知のジャンケット屋“ジャクソン”の口車に乗り、あっという間に5万を失った忌まわしい場所だ……、あの時も、その負け分が無ければ一束超の勝ちだったのになぁ。けど、今回はポーカーだ。バイインは1万まで! それなら悪くとも去年の再現には成らない筈だ……』

そう思い直し、一緒にスターワールドへ向かう。

ポーカールームは程良い混み具合で、ブラインドが25-50なら1席だけ空きがあるという。
“H”君らは予算の都合で、10-25が希望だったが、そちらは満席とのこと。

取り敢えず、当方のみがバイイン1万で25-50に座る。

“H”君らはウェイティングリストに登録し、暫し外から観戦。
グランドリスボアやウィーンで見た連中の姿を目にする。

『結局、同じ顔ぶれが狭いマカオのポーカールームをグルグルと回っている訳だ。少しずつ相手のベットパターンが分かってきたぞ……、けど、それは相手にとっても同じことだから、プラマイゼロか……、それは兎も角、連日の睡眠不足と、さっき飲んだビールのせいで猛烈に眠くなってきた…………』

皆さんタイトな為、チップは増えも減りもしない。

と、そんな中、KKが降臨!

300打つと二人がコール。

『ポーカーの神様、フロップでエースが落ちませんように。出来ればもう1枚Kingが落ちてくれますように。それから妙なドローも付きませんように……』

キングは落ちなかったが、ほぼ願いは叶えられた。

フロップ;Q、T、2のレインボー。

気を良くして900打つと一人(白人)がコールで付いてくる。

『AQ、KQ辺りか? それなら大歓迎! セット若しくは2ペアだったら仕方が無い……』

そんなことを考えながら、注目のターン!

K!

遅ればせながら、トップセットが完成する。

『よし! これで相手のセットも2ペアも怖く無くなった! ストレートの可能性は残るが、ここは勝負!』

単なるストレートドローなら降りるだろうと、2千打つがコールされる。
最終のリバーは何とQ!

フルハウスに昇格した。

これでストレートも、可能性は低いがランナーランナーフラッシュも怖く無くなった。同じフルハウス同士なら当方が最強だ!

但し、相手がクィーンのクワッド(所謂4カード)でさえなければ……

クワッドを警戒しつつ3千打つと、白人からオールインが飛んでくる。

『まさか、クワッドなのか? QQのポケットがフロップでセットになり、それがリバーでクワッドにまで上り詰めたとでも言うのか? もしそうならこちらが“飛んで火に入る夏の虫”だ。けどもうコミットしてしまっている。今更降りられない……』

こちらもオールインする。

予想通り、白人はQQだった。

全滅である。

終了を宣言して席を立つ。

身体的疲労と睡魔は限界に達していたが、その一方で何とかこのスターワールドに一矢報いてやりたい、との歪んだ情念が頭の中に渦巻いていた。
(危険度:★★★★★)

フラフラとバカラの“高額投注区”に足を踏み入れる。

席に座ると、ディーラーが「メンバーカードは持っているか?」と尋ねてくる。

『うるさい! これが全マカオで共通の“メンバーカード”だ!』

とばかりにポーチから10万の束を放り投げる。

1万チップ10枚を受け取る。

1枚をバンカーに張る。
プレイヤーが勝つ。

次もバンカーに1枚張る。
プレイヤーが勝つ。

何かが外れて2枚をバンカーに張る。

プレイヤーがいきなりナチュラル9を出す。

絞る気力が無くなり、そのまま放り投げると絵札と8であった。

次は4万! と張ろうとすると何故かディーラーに止められる。
良く見れば、黒いカットカードが羅紗の上にあった。

『そうか、もうシューの終盤だったのだな。どうりで誰も居ない筈だ……。それにしても、このスターワールドは勝てないな。あっという間にポーカーと合わせるとマイナス5万だ。結局去年の夏の二の舞になった訳か……』

冷静さが少し戻ってきて、残った6枚をキャッシュに戻して忌まわしいスターワールドを出る。

体中が悲鳴を上げていた。

『リセットが必要だ。とにかく一旦休憩をとろう……』

タクシーに乗り込み、金龍酒店前の國際中心地下にある「足康樂」に向かう。

足裏マッサージの2小時(45分×2)の長時間コース(196$)を頼み、足を揉まれる内に眠りに落ちる。

マッサージ終了後も、しばしそのまま休憩を取る。

徒然なるままに、最終のゲームプランを再構築する。

『“じっくり考えろ。しかし、行動する時が来たなら、考えるのをやめて、進め” これは確かナポレオンの言葉だったな。よし、“足は第二の心臓”と言うが、体のあちこちで澱んでいた血の塊が動き出した様子だ。眠気は治まった。酔いも覚めた。行動する時は来た。前へ進むとするか……』

店を出て、一旦は左に歩き出すが、あることを思い出し右へ向かう。

『もうちょっとで儀式を忘れるところだった……』

幸運を呼ぶというタイの黄金象の頭に触り、指先を“ゴールドフィンガー”にする。

儀式終了。

回力娯楽場前からタクシーに乗る。

決戦の場は、新旧両リスボアホテルだ!


閑話休題;

寿司やワインの世界で、“シロからアカ”へと移行するのが常道であるように、カジノの世界においても、一つの基本が有ります。
それは、“最後はバカラ”だと言うことです。
ポーカーやBJの後にバカラはプレイ出来ますが、その日一度(ひとたび)バカラをプレイしたならば、選択肢としてはバカラしか有りません。


タクシーはグランドリスボア前に着いた。
エスカレーターで上を目指す。
リベンジモード中なので、午前中に負けたのと同じ台に座る。
スターワールドでの“虐殺”を免れた幸運な札を20枚、チップと両替する。

『まずはBJで勝つ。出来るかな? 出来るさ。確かナポレオンの名言の一つに“負けると思ったらあなたは負ける、最終的に勝利を収めるのは「私は出来る」と思っている人なのだ。” と言うのがあったな。今回、ここまで帝王式BJは有効に機能している。「私は出来る」 後は前に進むだけだ』

ブラックジャックの切れ味は蘇っていた。

400-600-1000の3ボックス帝王式の、特に後半のボックスが、ディーラーをなぎ倒す。

勝ちが1万5千を超えたところで、所謂“凪”の状態に突入する。
これは良くない兆候である。

『15万 → 8万 と勝ちを一気に減らしたものを、限られた時間内にピークである15万に戻そうとすると、どこかに無理が生じて破綻する。目指すはピークの70~80%だ。そこまで戻れば十分、そう考えれば午前中にこの台で失った2万の内、75%はたった今戻ってきた。BJに関しては、これで十分だ……』

大玉に換えて席を立つ。

空中廊下を渡り、最終決戦の場であるリスボアの皇牌天下(エリートルーム)へと向かう。

5万をノンネゴチップと換える。
ちらっと罫線を見る。
相変わらずバンカー優勢である。
リゾカジメンバーの姿も見かけたが、会釈だけで席に座る。

最後のバカラが始まった。

プレイヤーがナチュラルを出すことは殆ど無い。
良くて6、7止まり。

一方、バンカーは殆どの場合、2枚の内どちらか1枚に“足”がある。
(2枚共にある場合もあったが、それはそれで一興)
つまり、いつでも“絞る”材料が有る訳である。

こうなると負ける方が難しい。

最初に両替した5万のノンネゴチップは、まるで獲物を追い求める猟犬のように、貪欲にハウスからキャッシュチップを捥ぎ取った。

勿論、途中で何度か負けることもあった。

しかし、猟犬と化したノンネゴ軍団は、まずは原点(5万)を確保した後も、忠実にハウスからキャッシュチップを捥ぎ取り続けた。

手元のキャッシュチップが;
5.5万 → 6万 → 6.5万 → 7万 →7.5万 と増えていった。

最後まで健闘したノンネゴチップ(5,200)がバンカーの4連勝の後に、遂にハウスプレイヤーに敗れた。
結局、バンカーの(=当方の)16勝10敗1分で、バカラ終了。

※ リセット後の結果、グランドリスボアのBJ:+1.5万、リスボアのバカラ:+2.5万、合わせて+4万、今回のマカオ遠征のトータル:+12万(ピーク時の15万の80%)

『リセット後のゲームプランで立てた目標は達成した。まだ戦えるが、ここから+3万は険しそうだ……、それに小腹も空いてきたし……』

その時、携帯が鳴った。

“H”君からで、今グランドリスボアのカフェで、ポーカー仲間と軽く夜食を食べているので、良かったら合流しませんか? との誘いであった。

“天の声”だと思い、席を立つ。

スタッフを呼び、ここまでの1%のローリング分を含めて清算する。

その際、スタッフから「セカンドバイインの賞品として、マカオ → 香港国際空港間の豪華位のフェリー・チケットを獲得しています」と告げられるが、今回はマカオ空港からの直行便なので、一旦保留にする。

空中廊下を渡り、グランドリスボアのカフェへ。

“H”君ほか2名のポーカープレイヤーとサンドウィッチ(ポーカーと言えば、やはりこれ)を食べながら、深夜のポーカー談義。

当方のメンバーカードで優待価格にしてもらい、“マイタン”。

会話の中で、黄金週間明けに“H”君が一旦香港経由で日本に帰ると聞いたので、フェリー・チケットを進呈することにする。

皇牌天下(エリートルーム)に戻り、スタッフにフェリー・チケットの贈呈は可能か?
と尋ねると、パスポートがあればOKだと言う。

偶々“H”君がパスポートを持っていたので、一件落着。

その後はグランドリスボア内の両替所で、手持ちの香港$の大半を日本円に両替し(968$=1万円)タイパ島の“勝利の館”に戻り眠る。


■ 5月4日(金)

7時に目覚める。

シャワーを浴び、もともと殆ど無いが荷物を纏め、同部屋の住民に別れを告げる。

少し早いが、空港でお土産でも買って……、と考えながら、マンション前でタクシーに乗り込む。

行く先を尋ねられた際、不思議な感覚に襲われる。

直前まで“機場(ゲイジョー;飛行場のこと)”と答えるつもりだったのに、口から出てきた言葉は“葡京(プーキン;リスボアホテル)”だった。

橋を渡りながら考える。

『まだ時間は1小時(45分)ある。冷静に考えれば、今更マカオで買うべき土産物など無い。それならば、“クラブ・スコーピオン”の会長としての使命を果たすべきだろう。これで良い』

皇牌天下(エリートルーム)へ。
まだ数名のリゾカジメンバーの皆さんがゲーム中であった。
スタッフに11時発の飛行機に間に合うよう、9時半にクルマの手配をする。

時計を見る。
9時前であった。

手元の“お土産用”千$紙幣5枚を、紫のチップ5枚と両替する。

プレイヤー優勢で、徐々にチップが減り、遂に最後の1枚となる。

「クルマの準備が出来ました」とスタッフ。

「明白了(了解した)、少しだけ待ってくれ」

そう告げ、最後の紫色のチップをバンカーに張る。

同じテーブルにはリゾカジメンバーの方が1名いたが、最後だからと絞る権利を譲り受ける。

「最後はナチュラルで勝ちたい……」

そう呟きながら絞り始めるが、もうピン2枚(1+2=3点)で絵に成らない。

ハウスプレイヤーをオープンさせると厳しい7点。

「ナチュラルどころか、これはキツイ……」

配られたカードを確認する。

足は有った。

横にする。

両ピンを望むが3ピンだった。

どうやら最後までマカオの神は試練を与えるつもりらしい。

一つ抜けた。

『まだまだ……』と一瞬思うが、良く見れば抜けたのはスペードの模様が2枚同じ方向を向いている側であった。

『何年バカラをやっている! カードの構造上、これはもう6で確定ではないか?』

そんなことを考えながら、この遠征で最後の絞りをゆっくりと愉しむ。

指先には黄金象に触った際に付いた金箔がまだ残っていた。

3+6=9で、ささやかであったが、最後の勝利を飾る。

スタッフに急かされながら、最後の勝利の配当(1950)を両替し、クルマに乗り込む。

『“クラブ・スコーピオン”の会長としては、使命を果たせたかな?』

そんなことを考えている内に、空港が見えてきた。


澳門黄金週間は終わりを告げたが、マカオの熱い夏はこれから始まる。


* 本編はバロケンさんの掌編【澳門白金週間の旅】へのオマージュです


【澳門黄金週間の旅(完)】



*このレポートはリゾカジ.SNSの日記を転載したものです。


このReportへのコメント(全 4件)

2012/07/13(Fri) 03:42

okataka

前後編読ませていただきました!

私が熱中しているポーカーの件が随所に出てきて、
「マカティ」さんのプレイだけでなく、なかなか知ることの出来ない
マカオ在住のポーカープレイヤー達の生き様が垣間見えた
貴重なレポートをありがとうございました。


今回、ポーカーについては残念な結果でしたが、
(帝王さんにとって)レートの低いポーカーで、不運を消化し、
本業でキッチリ勝利を収める立ち回りには感服いたします。


以前はポーカーの部分は斜め読みしかしていなかったので、
(とゆーか、読んでも何言ってるのか分からなかったw)
現在、過去レポのポーカー部分を遡って読んでいます。


2012/07/13(Fri) 21:53

マカオの帝王

okatakaさん こんばんは!

国内でのポーカーですが、7月7日(土)には西日本のNo.1を決めるJPKグランドチャンピオンシップに前日深夜に行われた最終予選を突破して参加し、周囲が皆5万点からのスタートなのに最小の2万点から粘り抜き、ファイナルテーブルに進出したところ(9位)で力尽きました。

また宜しくお願いします。


2012/07/26(Thu) 23:50

なおさん

マカオの帝王様、ご無沙汰しております。

今回も楽しませていただきました。
昨年末から今年に入り、マカオでの勝率は非常に高くなりました。
なぜでしょうね?

皆さんにはわかりませんが、なぜかリスボアの平場(エリートルームの前)
が勝率がいいんです。円形の平場がローローラーの私にはあっています。
きっと席でタバコがすえないので、BJの調子が悪くなると、いつの間にか
席を立ってタバコを吸いにいっています。

しらずしらずにHit and awayなんでしょうね。
他のカジノでは負け越していますが、生涯成績もあとわずかでプラスに
なれそうです。

今後ともご指導をお願い致します。
実はBJで勝って軍資金を少しためて、グランドリスボアのポーカーで負けて
います。(授業料)まだ3回しか遊んでいませんが大変楽しいものです。

またご指導くださいね。ポーカーが楽しくてしかたがありません。
3回遊んでやっと場の雰囲気が少し見えてきました。
まだまだですが、毎回、得られるものがあります。ありがとう。






2012/07/28(Sat) 00:34

マカオの帝王

なおさんへ

博打で勝ったカネで打つ、“負ける博打”ほど愉しいものはありません。

バカラやBJのペアベットのように、期待値的にはあきらかに損なのに、本線で大幅に勝ち越している際などに、端数をペアにベットしてうまく取った時の嬉しさは格別です。

ポーカーを楽しんで下さい。


P.S.本日アップされた、『首爾帝王(その男に騙されるな)』にもポーカーの場面が出てくるので、また宜しくお願いします。


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