リゾカジ カジノレポート
オペラ座の帝王③(大天使ミカエル編)
ヨーロッパ 2014/
02/
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マカオの帝王
■ 1月15日(水)
天候は晴れ時々曇り、所によりにわか雨。
朝目覚めると、リンちゃんの要望に従い、本日の目玉である “エルメスの冬のソルド(バーゲン)”会場へ向かう。
タクシーでメトロのマドレーヌ駅近くにある、巨大展示場のようなところに行き、約1時間半行列した後にやっと売り場に入場する。
確かに安くはなっていたが、日本円で2万円のハンカチが1万円、3万円のネクタイが1万5千円、5万円のスカーフが3万円、といった感じで、適当に何点か選んだもののお目当てのバッグ類は無く、リンちゃんはご不満な様子。
「アナタ! これはあくまでおまけだかんね! 今からエルメスの本店に行こ!」
勢いに押され、タクシーでエルメスの本店のある、24、Faubourg Saint-Honore, へ向かう。
いよいよ、世の女性の憧れの中心地であるパリのエルメス本店に突入!
しかしここでも陳列棚にバーキン/ケリーのハンドバッグ類は一つも無かった。
金髪の中年女性店員に尋ねる。
「あのう、バーキン、若しくはケリーのバッグは有りますか?」
「バーキン? ケリー? あぁ、今は無いわね」
「表のショーウィンドウの中にあるのは?」
「あぁ、あれは陳列用で売り物じゃないの」
「それでは、パリ市内の他の店舗の在庫状況は?」
「他の店? 残念ながらそれは分からないのよ」
エルメスは元々馬具商から始まったそうだが、まさに “馬の面にションベン” だ。
「そうですか……、けれども、ここは世界的ブランドであるエルメスのパリの発祥の地でしょう! そこに売り物となるバーキン/ケリーのバッグがただの一つも無いと言うのですか?」
これには多少プライドを刺激されたのか、眉を顰めながら勿体をつけ「そういえば、一つだけ売り物が有ったことを思い出したわ……」
と言いながら目の前に現れたのは、クロコダイルにダイヤが散りばめられた、お値段 “197,000€(=約2,800万円)” の真っ赤なバーキンだった。
無言で店を後にする。
「アナタ! もうエルメスをパリで買うのは諦めたから、日本に帰ってから百貨店で新品を買う! 分かったなぁ!」
怒りMAXモードでリンちゃんが喚く。
(後日談) 因みに帰国後、大阪に5店舗あるエルメスの正規代理店を順番に回り、4店目までは何とかクリア(在庫無し)だったのに、最後に駄目元で訪れた阪急梅田百貨店に何故か今日入荷したばかりだというケリーが一点だけ有った為、泣く泣く一束オーバーの出費を余儀なくされてしまいました……
その後、シャンゼリゼ通り、凱旋門、ルーブル美術館、エッフェル塔を回り、記念写真を撮りまくった後、フランス料理にはいささか食傷気味だったので、オペラ座近くの中華の店へ。
久しぶりの中華料理に、リンちゃんもご満悦。
けれども、当方の心はまるで本日のパリの空のように晴れなかった。
『うーん、それにしても昨日の負けは納得が行かない。ここからだと“クラブ・エンジェル”の方が近いが、リベンジするならモンマルトルだな……』
食事中リンちゃんに話しかけられても上の空で、まるで初日のショートプログラムでトリプルアクセルをしくじった浅田真央が、翌日のフリーの演技構成を考えるように、“本日のゲームプラン”を脳内で練り続けた。
『ゲームプラン① サークル・クリシーでPOK21、ゲームプラン② クラブ・エンジェルでPOK21、ゲームプラン③ サークル・クリシーでポーカー、ゲームプラン④ クラブ・エンジェルでプント・バンコ……』
他の人はいざしらず、当方の場合、勝った場合はそのカジノorゲームでプレイ。
それは他の人も同じでしょうが、問題は負けた場合です。
当方の場合、負け方に納得が行かないと、チャラで終わった店や、初めての店には何故か足が向かず、所謂一つのリベンジの為、負けた店の同じテーブル、同じディーラーと勝負すべく舞い戻る、という悪い癖があります。
その癖が顔を出し、タクシーでモンマルトルに向かう。
場内は昨日以上に賑わっていた。
奥のPOK21は悪いルールにも関わらず何故か満員、ポーカーは1時間半待ち、とのこと。
こんな時、当方はこう考える。
リベンジしたいのは山々だが、其れより何より今すぐギャンブルがしたい!
当方に取り、望ましい状況の順番は次のようになります。
一番目・・・・・・ギャンブルをして勝っている時。
二番目・・・・・・ギャンブルをして負けている時。
三番目・・・・・・ギャンブルが出来ない時。
(二番目と三番目が反対ではないか? と思われるかも知れませんが、間違ってはいません)
貴重な時間を呆けっと待っていることなど出来ないので、モンマルトルの丘から再び移動。
但し、車中でリンちゃんから「疲れたので、一旦ホテルに帰って休憩しよう」と言われ、これには従うことにしました。
その理由としては、次の3つです。
理由① 自分も少々疲れていた。
理由② ギャンブルの際は身軽が良いので、不要な品々(土産物、コート等)を部屋に置きたかった。
理由③ 彼女がそのまま寝たならば、久しぶりで一人で思う存分勝負が出来ると思った。
さて部屋に帰り、小一時間休憩した後に、再度リンちゃんに尋ねると、「もう今日は疲れたので寝る。ワタシに爪楊枝分くれるのなら、一人で行っても良い」
との返事なので、コミッション分として300€を前渡し、晴れて解放される。
勝負服のチェルッティに着替え、足取りも軽く、ホテル前からタクシーに乗り、一路オペラ座を目指す。
夜だというのに、大勢の観光客で賑わう“カフェ・カプチーノ”のあるビルの階段を上り、“クラブ・エンジェル”のドアを開ける。
“マカオの帝王、颯爽登場!” だ。
メンバーズ・カードを見せると、スムーズに入店が許される。
場内に飛び交う中国語が、マカオを思い出させる。
『よし、アウェーからホームに戻ってきたぞ』
まずはキャッシャーで2千€を両替する。
『さて今宵の種目は……』
一通り場内を回るが、バカラ(プント・バンコ)はどの卓も黒山の人だかりで座ることもままならない様子。
それに比べ、BJ(POK21)の方は上品そうなフランス人が二人でプレイ中、しかも当方が大好きな左端のボックスが空いていた。
また、店は異なるがここまでチャラのバカラ(プント・バンコ)よりも、昨日嫌な負け方をしているBJ(POK21)の方でリベンジしたい気持ちが大きかった。
『絞れるのならプント・バンコも良いが、絞れないんじゃなぁ……、サードベースも空いているようだし、良し、POK21で勝負だ!』
いつもの“指定席”に座る。
大判の千€を底に敷き、その上に200€を4枚、40€を5枚積み上げる。
他の客のベットを見て驚いたのは、ここではディーラーの5枚のカードで決まるサイドベットのミニマムが1€でOKだということ、またボックスのMAXが300€だということであった。
『良し、これなら戦える! 2ボックスで本線200€、サイド2€ならサイドが本線に与える影響は1%未満に留まる。昨日の店の10%と比べると誤差の範囲内だ。MAXが300€なのも手頃で宜しい……』
お守りとして、モンサンミッシェルで購入した、翼の生えた大天使ミカエルのメダルをテーブル上に置く。
40€1枚をサイド用に細かくチェンジし、ゲームスタート!
アフリカ系の女性ディーラーがカードを配る。
ディーラーのフェイスカードは8、他の二人のフランス人はそれぞれ17でステイ。
当方が小手調べに50€をベットした一つ目のボックスは幸先良くブラックジャック! 100€をベットしたラストボックスは8+3=11。
当然ダブルだが、7が入り微妙……。
『まぁ一つBJが出たので、ダブルは引き分けで良しとするか……』
そう思いつつディーラーを見守るとまず8が、続いてまた8が出てバスト。
他のプレイヤーから笑顔がこぼれる。
ここで一旦ディーラーが手を止める。
本線の配当を受け取る。
続いてディーラーがカードをめくる。
1枚目はエース。
次の最終カードが同じくエースなら888AAのフルハウス成立で、現在確定している3カード(4倍)から6倍にアップ、最後が8なら4カードで21倍だ!
『これぞまさに一か八だ! 本線が勝つと、このおまけのサイドも愉しいなぁ。出来れば8!』
さすがに1も8も出なかったが、サイドの配当分として6€を受け取る。
翼を持つ大天使ミカエルが、パリの空に飛翔した。
ベットを5番;80€、ラスト;120€にアップする。
共に勝てば200€の勝利で、なんとなくこの店のチップの中で、大きさ、色、質感が気に入った200€のビスケットがちょうど1枚増えるという按排であった。
『うん、マカオのMGMの黄色の千$チップも良かったが、ここの200€も手頃で宜しい、この調子でどんどん攻めるぞ!』
“ゴールデンタイム” の始まり始まりだ!
サイドはミニマムが1€でOKなので、毎回1€しかベットしなかったが、ほぼチャラで推移し、不利な縛りが本線に影響を与えることは無かった。
途中で4番ボックスのフランス人が席を立ったので、計3ボックスに増やす。
4番・・・80€、5番・・・120€、6番・・・200€ と 2:3:5の変則フィボナッチ作戦だ。
(4番、5番が共に負けても、ラストが勝てばチャラ、また全部勝てば400€=ビスケット2枚の勝利!)
ディーラーが絵札で、こちらが15、16の場合、マカオならサレンダーだがそれが出来ないので仕方なくヒットすると、面白いように20、21になる。
『今宵の帝王は一味違うぞ!』
そう心の中で呟きながらプレイを続ける。
ラッシュは続く。
すぐに昨日の負け分の千€を回収する。
勿論プレイ続行。
バイイン分の千€2枚を下に敷き、その上に勝ち分の200€の板を5枚→10枚→15枚と積み上げる。
眠気覚ましにエスプレッソを頼み、運んできたウェイターに「メルシー」と告げるが、複雑な表情を浮かべながら何やらモゴモゴと呟かれる。
ディーラーが英語で、「1€お願いします」と当方に告げる。
『飲み物も無料じゃないんだ……』
郷に入れば郷に従え、で素直に1€を丸いチップで支払う。
昨日はまったく決まらなかったダブルが、バンバン決まる。
のどの渇きを癒す為、ウェイターを呼び、ハイネンケンをオーダーする。
どうやらこちらは2.5€らしく、同じくチップで支払う。
200€の板が足りなくなったので、ディーラーから千€の大判へのチェンジを求められるが、それを出来るだけ柔らかく断ると、『やれやれ……』といった感じで、プント・バンコの卓から200€の板が補充される。
『もっと高く、もっと上へ!』
ゴシック様式の塔の様に、積み上げた200€の板が20枚を突破する。
するとここでディーラーが英語で、
「ミスター、当店のルールで後2シューで今晩のゲームは終了となります。ご了承願います」
とおごそかに告げる。
時刻は午前2時45分。
と、その時、携帯が振動する。
リンちゃんからであった。
「アナタ! どうなってる? 何時までする? 一人は寂しいんよ。もう帰ってきて!」
「分かった、分かった」と告げ、切る。
どうやら“ゴールデンタイム”も終了らしい。
最後の2シューで5枚上乗せして、切りよく5千€の勝利! としたかったが、あと一歩及ばず4,810€の勝利で、パリにおけるBJもどき(POK21)は打ち止めとなる。
大天使ミカエルは、その翼をたたんだ。
キャッシャーに向かう途中で、プント・バンコの卓のそばを通る。
初日に千€の負けを救ってくれた白人ディーラーだった。
負ける気はしなかった。
バンコに200€を1枚ベットする。
プント:4、バンコ:5から絵札であっさり勝利!
コミッション分の10€を払う。
これで “ミッション・コンプリート”だ。
キャッシャーで千€の大判2枚、200€の小判25枚を差し出す。
百€札70枚を受け取る。
思わず笑みがこぼれる。
『昨日のモンマルトルの丘では負け犬だった。明日のことは分からない。けれども、今宵この時このオペラ座傍の,中国人御用達の小マカオで、兎にも角にも “帝王”として、パリの空の下を思う存分舞うことが出来た、今はそれだけで良かったと思うことにしよう……』
建築家:シャルル・ガルニエが設計し、1875年に完成したオペラ座を横目に見ながら、タクシーは深夜のパリの街をホテルを目指して疾走した。
(完)
*このレポートはリゾカジ.SNSの日記を転載したものです。
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