リゾカジ カジノレポート

ラスト・クリスマス(1996)前編

* マカオ 2020/ 12/ 25 Written by マカオの帝王

コメント( 12)

ラスト・クリスマス(1996)前編

♠ 1996年12月24日(火)朝

『駄目だ、勝てない……、夕方には香港に戻り、アイランド・シャングリラホテルで久しぶりに彼女とのクリスマス・ディナーだと言うのに……』

日本から持ち込んだ、280万円(約20万香港$)は 
12月21日(土)・・・3万$負け
12月22日(日)・・・6万$負け
12月23日(月)・・・6万$負け
12月24日(火)・・・3万$負け
と初日からここまで良いとこ無しで負け続け、軍資金は底をつきかけていた。

『残りは2万$を切った、最後は慣れ親しんだ、ここリスボアの平場でバンカーにオールインし、自ら絞って決着をつける!』
そう決心し、“死に場所”を求めて彷徨っていると、後ろからこのマカオで何度も耳にした、“死に神”の声が聞こえてきた。 

「ハロー! 久しぶりだね、僕だよ僕、同じ歳の君の友達、ジャクソンだよ!」

何が友達だ……と思いながら、徹夜での飲まず食わずの勝負で小腹が空いていたので、立ち話も何だと思い、取り敢えずメシでも食べることとする。
かれこれ6年越しの付き合いとなる、この海千山千のマカオ人ジャンケット屋ジャクソン(25%はポルトガル系)と、特に美味しくも不味くも無い、いつもの庶民的中華料理屋に行く。

「あぁ、ユーが日本に帰国してもうすぐ3年目だね。日本にはカジノは無いのだろぅ? ウズウズしないのかい?」
「それは、まぁ、それなりにね。隣の韓国に行ったり、マレーシアやオーストラリアに行ったり、時々はこのマカオに来たりさ。でも、やっぱりマカオが一番愉しいよ」
と、有りのままに答える。

するとジャクソンは喜んで、
「そうだろ! 僕も外国のカジノは何度かいったことが有るけど、やっぱりマカオが一番さ! ところで今回のここまでの勝負の結果は?」
漸く本題に入ってきたな、と思いつつ、正直に今の状況を告げる。

「それが、20万香港$ → 2万香港$になってしまい、君の契約しているプチVIPルームでのノンネゴチップに交換しての勝負は出来ないのが現状さ。平場でバンカーに連続オールインしてそれに勝利し、軍資金が10万$を超えたら、どうするか考えてみるよ」
平場で18万$も負けるのなら、自分の契約している部屋で負ければ良いのに……、との負の感情が一瞬ジャクソンの目に浮かんだが、そこは商売人、感情を押し殺し笑顔でこう切り返した。

「おぅ、問題無いよ。僕がユーの好きなバンカーが連勝出来る卓を頑張って探すから、ユーはそこに座って、ただ3~4回勝負するだけで全てはOKさ。そうと決まればレッツゴー!」

(ジャクソンの考え・・・推測)
『土日はVIP客のアテンドで忙しかったが、やっぱり平場の巡回も怠ってはいけないな。この日本人のようなカモもいるのだから……、それにしても、どうせ18万$も負けるのなら、自分の契約している部屋で負けてくれたら良かったのに……負ける途中でも数回転はするだろうから、手数料が1~2万$は稼げた筈だ。まあいい、今から適当に卓を選んで、運良くバンカーが連勝すれば、その場で幾らかチップを頂戴してプチVIPルームに移動、オールインで負ければ、別のカモを探してこいつとはオサラバ。今日は平日だけどクリスマス・イブだ、客も多そうだし、お爺さんはカトリックの信者だったから、孫のおいらにもサンタクロースからプレゼントが有っても良い筈だ……』
ジャクソン御用達の店を後にするが、寝不足による疲れがピークに達したので、足裏健康マッサージで暫し仮眠することを提案する。

「おぉ、それは良い考えだね。僕も少々疲れていたのさ。それじゃぁ、さっきの店は僕が払ったから、次のマッサージはユーの奢りね。あぁ、そこの角を曲がった店が、この辺りじゃサービスが一番だよ」

店のカウンターで、店主と何やらひそひそ話をするジャクソン。
『恐らく、客を連れてきてやったのだから、キックバックを寄こせ、とでも交渉中なのだろう。まぁいい……』これでサービスが良ければ“無問題”だったが、肝心のサービスは今一つであった。(女の子のレベルも)

けれども、横になり、財布の心配をせず、短時間でも眠れるだけで十分だった。
マッサージ開始後3分で、意識レベルは0.5に低下した。
疲れ切った脳が眠りに落ちる寸前に、何故か5年前の香港が頭の中に浮かんできた。

♠ 1991年:秋 香港 初芝電産(香港)有限公司

『あぁ、眠い! 今日は愉しい金曜日、という訳で昼は部下の香港人を引き連れて、近くの店で飲茶を奢ったのは良いけど、勧められる料理を全て食べた結果、血糖値が急上昇、ただでさえ眠いのに、もう駄目だ。とにかく、5時半になったらダッシュで会社を出て、タクシーに飛び乗り、上湾のマカオフェリー・ターミナルに行き、日曜日の夜(月曜日の早朝)までカジノだ!』

すると、香港人の美人秘書が現れ、「ナカムラさん。 ヤマサキ社長がお呼びです」と告げた。

『情報システムの構築と、新規事業の立ち上げは予定通り進んでいる。特に思いあたることは無いのだが……』そう思いながら社長室に入る。

「おぉ、中村君、どうだい、マカオの方は?」
「えっ、まぁその、ボチボチでして……」
「本当か? 香港日本人クラブでは、初芝には、“マカオの帝王”の異名を持つ、凄腕の駐在員ギャンブラーがいると噂されているぞ? まぁ、それは良い、仕事さえしっかりしてくれたらな。君の仕事の成果は評価しているが、問題は勤務態度だ。さすがに居眠りはなぁ……営業関係の他の駐在員からの苦情も私の耳に入ってくる。そこで物は相談だが、個室は本当は総経理に昇進後が慣わしだが、君を副総経理に昇格させ、今は倉庫として使っている窓際の部屋を改装し、ちょっと狭いが個室を与えることとした。どうかな?」

「そ、それは有り難いです! そうなれば、今以上に集中して業務に打ち込めます! 是非お願いします!」と本心から答えた。

「それは良かった。それと今日だが、早速で悪いがワンチャイのコンベンション・アンド・エキシビション・センターで最新家電の展示会を開催中だから、今からこれの視察を命じる。社用車で送らせるから、5時まではしっかり他社の動向を視察して、新規事業に繋げるように! その後は直帰しても構わない。いいかな?」

「はい! 了解しました(ワンチャイからなら、マカオフェリー・ターミナルにも近い!)」

社長室を出る際、部屋の奥から、「さっき、営業のXXから、『中村がまた居眠りしています。こっちは朝から営業で香港中を駆けずり回っているというのに、“マカオの帝王”だか何だか知らないが、新婚の奥さんを日本にほっといて、良い気なもんだ』とご注進されたのでな、それじゃ」

この人が香港の最高責任者で良かった! と巡り合わせに感謝しながら、社用車に乗り込み、“香港會議展覽中心”に向かった。

15分後、到着。
『うーん、こうした展示会にも顔を出して見るもんだ。我が初芝のブースが一番大きいが、ライバルのサニー電子もなかなかのものだ。それにしても、あのサニーのコンパニオン? の女の子は可愛いなぁ。この香港は蛙顔のブスが多いのに、狸っぽくて、まるで日本人みたいだ……』

そんなことを考えていると、何故かその狸顔の女の子がこちらに向かって歩き出した。

「えっと、初芝の駐在員さんですか? ワタシはサニー電子香港の竹原典子です。」
そう言いながら、狸顔の彼女が名刺を差し出した。

「あっ、初芝の駐在員なのはその通りだけど、生憎名刺は切らしてまして、それにしても、女性なのに駐在とは優秀なんですね」と答えると、

「ワタシ、実は現地採用なんです……」そう彼女は呟いた。

「それで、一つ質問が有るのですけど、ワタシ、香港日本人会の公認サークルの一つとして、“ローカルグルメの会”の事務局というのをやってまして、毎月1回会員で集まって、隠れた名店巡りをしてるんですけど……」

そう話す彼女の大きな瞳がキラキラ輝いているのを見ると、何となく心がざわざわしてきた。

「そのメンバーの人から、『初芝香港には“マカオの帝王”と呼ばれるゴッド・ギャンブラーがいて、毎週末マカオで一睡もせず、爪楊枝を咥えながら、毎回毎回バカラとかいう怪しげなゲームに何万$も賭け、チップの山を築き上げ、マカオ中のカジノのディーラーから恐れられている……』って聞いて、一体どんな人なのかなぁ? と興味が沸いてきまして、歳は30ちょっとだそうだから、貴方と同じ位だと思うんですけど……」

「竹原さん、その話は概ねその通りだけど、一睡もしない、というのはちょっと大袈裟かな? 時々足裏健康マッサージで仮眠は取っているし、バカラのベット額は平均は5千$位だよ」

「そうなんですかぁ……、それにしても、幾ら同じ会社だといっても、えらく詳しいですね? 初芝さんも香港島に3カ所、九龍に2カ所、新界にも工場と倉庫が有り、駐在員さんも大勢いらっしゃいますよね? その“マカオの帝王”さんとは仲の良いお友達ですか?」

「いや、そうじゃなくて僕が、貴女の目の前にいるこの中村秀樹が、“マカオの帝王”なんですよ」と告げると、いきなり竹原典子は笑顔を爆発させた。

「えーっ! 嘘でしょ! あなたが噂の“マカオの帝王”さん? そんなぁ! ワタシ、てっきり“ミナミの帝王”に出てくる、萬田銀次郎みたいな強面の人をイメージしてたのにぃ……、だって、全然そんな感じはしなくて……」

「良くそう言われます」と答える。

「ところで、今日もこれからマカオ遠征ですか?」軽く頷くと

「ふーん、やっぱり噂は半分は本当だったんだ! それはそうと、中華料理は好きですか? 良かったら来週、“ローカルグルメの会”の集まりが有りまして、事務局としては新メンバー募集中なのですよ!」

「中華は全般的に好きだけど……」

「良かった! じゃあ、月曜日の朝、初芝香港の代表に電話して集合場所と時間を連絡しますから、絶対参加して下さいね♡」

「了解です。喜んでお誘いに乗ることにします」と答えた後、彼女から“衝撃発言”が飛び出した。

「あっ、それから、幾らワタシが魅力的だといっても、勘違いしないで下さいね。今年の6月に結婚したばかりの、新婚さんですから!」彼女が差し出した左手の薬指には、1カラットは有ると思われる大きなダイヤモンドの指輪が燦然と光り輝いていた。

「それじゃ、ワタシの中学の時の、バレーボール部の顧問だった理科の先生によく似た、メガネの“マカオの帝王”さん、またお会いしましょうね♡」

そう言い残し、竹原典子はコンパニオン風衣装を靡かせながら、颯爽と走り去っていった。





「ハロー、マッサージは終了だよ。代金はチップ込みで500$、パタカでもOKだよ。さぁ、ゲームの時間さ」

ジャクソンの声で目が覚めた。

『あれから5年が経った。出会った時は24歳の人妻だった彼女も29歳になった。今は僕と同じ独身だ。来年は香港返還、今夜は文字通りラストクリスマス・イブ。負けっ放しじゃ彼女に合わす顔が無い。せめてチャラに戻し、プレゼントを手にして、アイランド・シャングリラでクリスマス・ディナーだ!』

マッサージ店を後にし、戦場であるリスボアに向かう。

『これが本当の“戦場のメリー・クリスマス”だな……』
と思いながら、元祖リスボアホテルに“盟友?”ジャクソンと突入する。

バンカーで絞れれば、卓はどこでも良かったのだが、ジャクソンは場内を走り回る。

「あぁ、ここが良さそうだよ。見てご覧。直近の18ゲームはPPPPPPBBBBBBPPPPPP、今からバンカーが6連勝するよ。シュア、僕を信じてよ!」
ジャクソンの見立てだけでは決心がつかなかったが、この卓のディーラー(ゴツい顔つきなので、仮に“ゴリラーマン”と呼ぶことにする)が過去に何度も当方を土壇場から救ってくれた“ラッキー・ディーラー”であることに気がつき、言われるままに、9番の席に座る。
『今日の夕方には香港に戻る。予約済のディナーはアメックスで精算するとして、キャッシュも5千$位は持っていないと格好がつかない。となると、ここでのオールインは15,000$だな。コミッションを差し引いて4連勝でほぼチャラ、そこから先はその時点で考えるとするか? さぁ、勝負の始まりだ!』

プレイヤーの6連勝中であったが、ここらで切れそうだと皆さん感じているのか、張りはBPそれぞれにバラけていた。
1万5千$をバンカーにベットする際、ちらっと“ゴリラーマン”に視線を送る。
無言で頷く。

ジャクソンの見立てだけで、は段ボール並の強度しかないが、このディーラー(仮称“ゴリラーマン”)の頷きは“鉄板”だったことを思い出す。

プレイヤーの絞り手は、対面の太いオッサン(仮称“鄧小平”)

“鄧小平”が2万$をプレイヤーにベットするも、絵札と2で絵にならず。
最もこちらも絵札と5で、やや心許なかったが、バンカーの“5条件”を信じてじっと待つ。

『1,2,3,8,9,10(絵札)で決まり! 仮に捲られてもまだ3枚目がある。さっさと捲れ!』
なかなか “鄧小平” がカードを放り上げない。
『絵札かAなら負け確定。足有り(4から10)ならカードを横にする筈だ。そのどちらでもなく、縦に絞り続けているということは……、広東語で“ガッタウ”、2か3だな。負け無しで此方の勝ちか引き分け。悪くはないが、引き分けは嫌だ。ここは勝ちたい!』

ジャンケット屋のくせに、状況を把握しきれていないのか、ジャクソンが「ゴン! ゴン!(絵札! 絵札!)」と卓を叩く。

“ゴリラーマン”を仰ぎ見る。
無言で頷く“ゴリラーマン”
これで一安心。

プレイヤーのオッサンが負けカードの “2” を放り投げる。

配当の29,250$を受け取り、端数の250$を“ゴリラーマン”にチップとして渡す。
無言でチップBOXに落とす “ゴリラーマン”

続いて、29,000$をバンカーにベットする。
再び “ゴリラーマン”を見るが、無言で頷く。(一安心)

昼間なので、満卓ではなかったが、マカオ人と思しき中高年女性3人組(三婆)が3千$ずつ、当方と同じくバンカーに賭ける。

対面の “鄧小平” だけが再びプレイヤーに2万$をベットする。
“ゴリラーマン”がカードを配る。

“鄧小平” がムスッとしながらカードを放り投げる。
絵札+3=3点。
これでは“絵”にならない。

最も、此方も2枚とも“ガッタウ(2か3)”でプレイヤーよりはマシだが、2枚ともつけ3+3=6点とするのが精一杯であった。

『これで勝てるのか?』
と“ゴリラーマン”を仰ぎ見るが、静かに微笑みを浮かべているのを見て、不安が吹っ飛ぶ。

“鄧小平” の絞りは、先ほどと同じく縦!

ジャクソンは「ゴン! インシ!(絵札! A!)」と意味も無く卓を叩く。

『おいおい、ジャクソン! 絵札やAならとっくにオッサンはカードを放り投げてるだろうが? そうせず、横にもしないと言うことは、またまたガッタウ(2か3)で負けか引き分けという、不毛な絞りをしているという訳だ。しかし、こっちに3が2枚、あっちにも3が1枚出ているということは、3が3枚少ない訳だから、オッサンが必死になって絞っている“ガッタウ(2か3)”は“2”である確率が50%より大きいということになる。さぁ、死んで貰おうか!』

真ん中に何も見えなかった“鄧小平”が、再び負けカードである“2”を放り投げる。
卓を叩いて喜ぶジャクソン。

配当の56,550$を受け取り、端数の550$を“ゴリラーマン”にチップとして渡す。
当然とばかりにこれをチップBOXに落とす“ゴリラーマン”

『あと2回、それでチャラになる。取り敢えず原点復帰!』

56,000$をバンカーにベットするも、“ゴリラーマン”は微動だにしない。
大船に乗った気分でカードが配られるのを待つ。

“鄧小平”はベットせず、“見”を決め込む。
プレイヤー側が誰もいなくなったので、“ゴリラーマン”がサクッと2枚を捲る。
絵札+6=6点

それに対し、此方は……、絵札+3ピン(6,7,8)
負け無し確定!
ここからは、バカラのバンカー側の絞り手にとって、至福の時間の到来だ!
柄はダイヤ、一つ付けば勝利確定、だが抜ける。

けれども、負け無しの心地よさ、ゆっくりゆっくりと絞る。
途中でジャクソンに「サンピン」と途中経過を報告する。
「チャ・パー! チャ・パー!(7か8! 7か8!)」と横で大声を出すジャクソン。
当方の約10分の1ずつベットしている “三婆“も「チャ・パー!」と大声援を送ってくる。

徴が見えた!
P6 VS B7 の“チャーシュー”で美味しい勝利!

“ゴリラーマン”から配当、109,200$を受け取る。
チップとして1,200$を渡す。その際、チラッと表情を確かめるが、このまま(=バンカーに連続オールイン)で問題無さそう……

『次勝てば原点復帰! 頼んだぞ“ゴリラーマン”!』

108,000$をバンカーにベットする。

これを見た“三婆”も、勝ち分の殆どである1万$をそれぞれバンカーに張る。
席に座り、バンカーに張る者が増えてくる。
プレイヤーは誰もいない。(鄧小平は依然様子見)

カードが配られる。
“ゴリラーマン”に2枚ともオープンするよう促す。
サクッと捲られたのは、絵札+7=7点。
ナチュラルでは無かったが、かなり厳しい。

取り敢えず、最初に配られたカードの“足”を確認する。
足は有った。
横にする。
両端以外何も見えない。
リョンピン(4か5)である。

次に後から配られたカードの“足”を確認する。
足は無く、“ガッタウ(2か3)”である。

現時点での確率は;
8点で勝ち・・・・・(5+3の場合):25%
7点で引き分け・・・(5+2、又は4+3の場合):50%
6点で負け・・・・・(4+2の場合):25%

何とか五分五分となる。
ジャクソンと最初からの戦友である “三婆”に、「リョンピン、ガッタウ(4か5と2か3の組み合わせだよ)悪くは無い。五分五分さ!」と告げる。

それを聞いて、卓に歓声が沸き起こる。

『まずはリョンピンの5!』
そう考え絞りかかるが、ここで手が止まる。

『まてよ? これが5なら素晴らしい! 負けなしで勝ちか引き分け決定だ。けど、これが4なら……、その場合は勝ち無しで、良くて引き分けに持ち込む為に、苦しい絞りを余儀なくされることになる。それは嫌だ! うーん……、目の前にカードが2枚、左右両手で腕も2本有る。ここは一つ、伝家の宝刀? である“二刀流”のお出ましだぁ!』

左右両手の親指と人差し指で、目の前の2枚のカードの右端(左端?)を隠しながら、同時に1㎜ずつ、ゆっくりと時間をかけて斜め上に絞り上げに入る。

「頂(テンガー)点がついて現れろ!」と叫ぶジャクソン!

いつのまにか“三婆”の他にも、この卓の盛り上がり(熱気?)に魅せられたのか、全ての席が埋まっており、この勝負もバンカーが勝てば、次はますます“鉄板”とばかりに、バンカーに張るべく風見鶏たちが固唾をのんでこの勝負の行方を見守っていた。

共に何も見えない。

『これが4と2なら、ジ・エンドだ、待てよ……、しまった! こんな展開になるのなら、タイに幾らか張っておけば良かった! それなら引き分けでもやや原点に接近できたのに……、しかし、悔やんでも仕方がない。テン、テン、テンガー! どっちでも良い。頼む、何か見えてくれ! カードの真ん中の模様って、こんなに見えないものだったっけ? もしや4と2? これで終了?』

その時、言葉通り、“手に汗握る”展開の中、左手が手汗のせいかやや滑り、一気に捲れたところ、中央に燦然と光り輝くダイヤモンド、“♢“ が降臨した!

思わず日本語で、「3!(さん!)」と叫ぶ。
それを聞いて狂喜するギャラリー達(日本語でも中国語でも3は“さん”と発音する)

もう怖いものは無い。
一気に右手を斜め上に絞り上げる。
こちらも真ん中に皇帝を示す、♠ が降臨する!

3+5=8点で勝利!
卓上で歓声がこだまする!

“ゴリラーマン”から普通なら配当として、1万$の大判煎餅21枚と600$を受け取るのだが、手元に付けられたのは、1万$が20枚、5千$が1枚、千$が5枚、500$が1枚、100$が1枚だった。

『日本人よ。勝って良かったな。ところで肝心のチップだが、600$じゃ少ない、けど1万$くれる程、気前は良くないだろう? そこで手間が省けるよう、最初からバラシておいた訳だ。さぁ、今回のスリル満点の配牌のお代は幾らかな?』

以心伝心で、2,600$を“ゴリラーマン”に手渡す。
『まぁ、こんなところか……』と無言でチップBOXにポトポトと放り込む “ゴリラーマン”

次も“鉄板”バンカーと読んだ“三婆”と風見鳥たちが、我先にバンカーに5千$~2万$をベット。

『今、ここで席を立てばチャラ、けど、ここはもう一押し! 来年の7月1日には香港が中国に返還される。その後はこのマカオも……。慣れ親しんだ香港・マカオで過ごす、最後のクリスマスの,
これが最後の勝負!』

“ゴリラーマン”を見る。
一瞬躊躇ったが、瞼を閉じ、小さく頷く。
それで十分だった。

(続く)



このReportへのコメント(全 12件)

2020/12/27(Sun) 20:01

インベスターCP

マカオの帝王 さん
はじめまして。リゾカジレポートの中で、最も読みやすく、面白いレポートの2大巨頭が、「マカオの帝王さん」「龍次さん」のレポートだと思っております。今回も拝読させて頂きました。

マカオに初めて行ったのは2008年で、昨年は6回、今年は1回だけ行けました。フォーシーズンズの下にあるプラザカジノが主戦場のため、半島側にはあまり行かないので、リスボアには疎いのですが、臨場感が伝わって参りました。

covid-19の治療薬が開発されるまでは、自由な往来は難しそうですが、
いつかリスボアでマカオの帝王さんの勇姿を拝見できる日を楽しみにしています!


2020/12/27(Sun) 20:57

マカオの帝王

インベスターCPさん、初めまして。
コロナ禍の為、何処へも行けないので、部屋の整理整頓をしていたら、昔の記念の品々が色々出て来たので、記憶を辿り久しぶりにレポートに纏めてみました。
^_※ 流石に時効だろうから、リンもOK。
尚、後編は大晦日にアップする予定です。


2020/12/27(Sun) 21:56

くるくる

マカオの帝王さん、

相変わらず驚異的な記憶力が健在ですね!楽しかったです!後編も楽しみです!

コロナでいつ海外旅行できるようになるかわかりませんが、今となっては2019年までマカオに行けるだけ行っておいて良かったです。

それでは、いつかまたマカオでの再会を楽しみにしております!(^O^)/


2020/12/28(Mon) 10:23

akasakaten

マカオの帝王さん

待ってました。いつ拝読してもワクワクします。
今回も楽しませていただきました。多謝。

・・・まだ、(真)バカラデビューできていないのですが。。。。

ジャクソン、何故か身近に感じてしまいます。笑
後編も楽しみです。


2020/12/28(Mon) 10:31

マカオの帝王

くるくるさん、お久しぶりです。
最近は歳のせいか、携帯やクルマのキーなどを、ちょくちょく置き忘れてしまうのですが、昔のことは、いつまでも覚えているものです。 
コロナのせいで、マカオは勿論、東京行きでさえ、制約されるご時世ですが、この正月休みに、回顧録の第二段として、【マカオの帝王、THE ORIGIN. 誕生マカティ!〔1991)】をまとめてアップする予定です^_^


2020/12/28(Mon) 12:06

マカオの帝王

akasakatenさん、お久しぶりです^_^

ジャクソンには何度も煮湯を飲まされたのですが、何故か縁を切れず、ルパン三世に出て来る、峰不二子? みたいな感じで、また騙されることでしょう?! 

まあ、それはそれで一興です^_^

今年も後僅かですか、来年こそコロナが収束し、又自由に海外、特にマカオに行けたら良いですね!


2020/12/28(Mon) 18:16

cbquin

マカオの帝王さん

初めまして。いつも楽しく拝読しております。
過ぐる年のIRcafeのイベントでお目にかかりたかったのですが、
諸事情でそうもいかず。。。

遂に若き日の肖像がアップされるとのことで楽しみにしております!

それにしてもマカオへ行けないからといって、
種が増える訳でもないのはどういうことなんでしょうかw


2020/12/28(Mon) 19:09

ムテキング

はじめまして。とても楽しく読ませて頂いたので、お礼のコメントさせて下さい。
ありがとうございました。まるで自分が体験しているかの様に臨場感たっぷりに書かれていてすごいです。次回作が待ち遠しいです。


2020/12/31(Thu) 17:06

Andy

まってましたよ〜私がリゾカジ覗くようになったのも マカオの帝王さんのブログからです 今年は特にマカオの帝王さんのブログが読みたかった... 以前こんな時期こそマカオファンのために帝王さんのブログが読みたいですと お願い投稿したのですが 投稿カテゴリー違いで失敗してしまいました...
夕べリゾカジ覗いたら びっくり 帝王さんのブログが投稿されてるじゃないですか 感激です 2020大変でしたが 年末に良いクリスマスプレゼントいただきました これからも楽しみにしています それでは帝王さん リゾカジさん マカオファン カジノファンの皆さん良いお年を


2020/12/31(Thu) 18:45

マカオの帝王

cbquinさん、こんばんは!

マカオの帝王です。

IRcafeは店の雰囲気、スタッフのサービス、共に大好きなのですが、(今年の1月に還暦のパーティーをお願いした位です)大阪遠征時の寝泊まり用に借りたワンルームマンションがミナミにある為、余り顔を出せないでいます。

また来年、“リゾカジ・ナイト”が開催されたなら、パーティー大好き人間のリン共々参加しますので
是非お会いしましょう!
遂に若き日の肖像がアップされるとのことで楽しみにしております!

それにしてもマカオへ行けないからといって、
種が増える訳でもないのはどういうことなんでしょうかw


2020/12/31(Thu) 18:47

マカオの帝王

ムテキングさん、はじめまして。

漸く、年末最後の大阪ポーカー遠征から戻ってきました。

続きは24時間以内にアップします!


2020/12/31(Thu) 18:57

マカオの帝王

Andyさん、はじめまして。

1990年代の返還前(世紀末)に、30代で恐い物知らずだった自分が、香港・マカオで過ごした日々を、古いパスポートや当時のメモを頼りにこの正月休みに纏めてみます。

良かったら、また感想をお聞かせ下さい。


コメントの投稿

投稿するにはログインが必要です。
会員登録がお済でない方は≫コチラ

PASS: