リゾカジ カジノレポート

ヤング “マカオの帝王” THE ORIGIN(1991)「運命の前夜」前編

* マカオ 2021/ 03/ 19 Written by マカオの帝王

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ヤング “マカオの帝王” THE ORIGIN(1991)「運命の前夜」

■ 1991年3月2日(土)午前10時 香港島 フェリー・ターミナル

初芝電産(香港)有限公司での退屈な一週間の“お勤め”を終え、待ちに待った“週末マカオ遠征”の時間がやってきた。

手荷物は殆どない。フェリーの中で、去年の5月に香港駐在がスタートしてから、今までのマカオの戦いの軌跡を振り返る。 

※ ここまでの成績・・・19勝7敗3分(収支:プラス43万HK$)
『全体的に右肩上がりで軍資金が増えていく、という状況は大変結構なのだが、所謂“限界効用逓減の法則”に則り、段々と勝負の嬉しさ、ワクワク感が薄れてきた。感覚的には、一遠征毎に3%ずつ位、“限界効用”が減っている気がする。0.97を30回掛けると……、当初の約40%か……、大体そんな感じだ。このままだと1年後にはどうなることやら……』

※ 種目別プレイタイム・・・BJ:98%、大小:2% ☆(バカラ無し)
『因みに、学生時代からパチンコ屋にはよく足を運んだが、今に至るもその殆どの店に併設されている、所謂 “パチスロ” でプレイしたことは無かった……』

今も昔も、マカオのカジノではバカラが主流であったが、ここまで、この “バカラ王国” のマカオの地で、ただの一度もバカラをプレイしたことは無かった。
その理由は次のようになる。

① 経 験
BJなら、韓国(ソウル)、アメリカ(ラスベガス)で僅かだが実戦経験が有ったが、バカラについては無かった。

② 戦 友
偶々同じ初芝(香港)に、5歳年上の先輩駐在員で、カジノ(BJオンリー)好きの人がおり、時々は一緒に遠征するのだが、この先輩がBJオンリーなので、当然こちらも同じとなる。

③ 確 率
BJの場合、当方の得意な確率(期待値)を計算することで、勝率をアップする余地が存在するが、バカラの場合、その余地が皆無であること。
(暇つぶしに計算してみたが、バンカー勝利の期待値:98.8%、プレイヤー勝利の期待値:98.6%、引き分け:85.6%、ふーむ、引き分けに張る奴はアホだな。バンカー/プレイヤーには殆ど差はないが、強いて言えばバンカーがややマシか……、しかしこれでは、毎回バンカーにのみベットするのが、最良かつ唯一の戦略となってしまう。何だかアホみたいだ……)

④ 雰囲気
マカオのカジノは何処も同じ“鉄火場”である。特にバカラ台に於いては、ガラもアタマも悪そうな中国人(香港/マカオ/台湾/シンガポール/そして大陸本土)たちが、「ゴン!」だの「チョイ!」だの喚きながら勝負に打ち興じている訳だが、その中でBJ卓に座っているのは、比較的お上品な皆さん(白人、日本人、英語を話す国際的?中国人)が多かったので、本格的なカジノデビュー、一年生の当方としては、こちらが好ましかった。

⑤ バンクロール
当初、初芝(本社)から支給された海外駐在員向けの支度金(約10万HK$)が、そのままマカオの軍資金となった訳だが、ここまで多少の浮き沈みは有ったものの、ほぼ右肩上がりで増えていた。ならば、このままBJプレイヤーの道を貫けば、海外手当と合わせて帰国時には一財産、手に出来るというのに、皆さんが危険だという“バカラ”に敢えて手を出し、約1年間かけて築き上げたバンクロールを、一晩で失いたくは無かった。


『海の色が茶色く濁ってきた。もうすぐマカオだ。思えば、日本に一時帰国する盆と正月、それとホテル等が激混み状態となるマカオ・グランプリ開催中とこっちの旧正月以外は“ほぼ毎週末マカオ生活”を始めてからもうすぐ1年だ。マカオのローカルルールに対応した、マカオ版ブラックジャックB/Sを“紙と鉛筆と電卓”で作成し、周囲のバカラには一切手を出さず、只管ブラックジャックの道を究め、やっとここまで来た。今回の遠征は切りの良い30回目! 目標はこれを7万$の勝利で終え、マカオでの勝ちの累計を、これまた切りの良い50万$にすること。日本だと毎年この時期は“花粉症”に悩まされ、集中力が低下するのだが、幸いなことに、この香港/マカオの地には杉の木が一本も存在しない為、忌まわしいスギ花粉も飛散せず、体調も万全だ。いざ、勝負!』

週末で混雑するイミグレを通過し、はたと考える。
『さて今から、何処で(ブラックジャックの)勝負するか? 普通ならリスボアだがいつも混雑している上、この前スリにポケットから1万$チップをいつの間にか掏られたことがあったしなぁ……、もうあんな目に合うのはコリゴリだ。となると、BJ卓は4台しかないが、フェリー・ターミナルから近く、比較的空いているのでスリに遭遇する可能性も低く、数名だが美人ディーラーもおり、ここまでの勝率も高い、文華東方娯楽場(マンダリン・オリエンタル)だな……』

本日のゲーム・プラン、決定。
文華東方娯楽場(マンダリン・オリエンタル)2Fに突入する。

なお、当時のマンダリン・オリエンタル2FにおけるBJ卓の状況は次の様なものであった。

① 4卓中2卓は回収台で、古参ディーラー相手に客はほぼ全員が負ける。
② 4卓中1卓は遊び台で、新人(中堅)ディーラー相手に客は勝ったり負けたり。
③ 4卓中1卓だけは看板台で、美人ディーラー相手に客は少しだけ勝つ。

よってこの当時、マンダリン・オリエンタルのBJで勝ちたいのなら、何とかして “③” の卓に座ること! それが無理なら、せめて “②” に座る、決して “①” には座らない、ことであった。

尚、上記の①~③の見分け方は簡単だ。
胸に付けている、ディーラーとしての登録番号が4桁の古参ディーラー達は、ほぼ全員カテゴリー①と考えれば良かった。
登録番号が5桁の後半の場合は、カテゴリー②の新人ディーラーである。
そして、数は少ないが “顔” を見て、美人ならカテゴリー③という訳である。

更にダブルチェックをするとすれば、卓上の人数と各プレイヤーの表情、それと卓上のチップ量を見ることだった。

卓に空席が有り、プレイヤー全員が葬式の帰りの様な表情を浮かべており、卓上に現金が飛び交う(=追加のチップを購入している)状況であれば、それは;カテゴリー①の“回収台”。

卓がフルBOXで、一部でも笑顔のプレイヤーが存在し、卓上に現金が飛び交わない(=皆さん、手持ち資金で遊べている)のであれば、それはカテゴリー②の“遊び台”。

卓の回りを立ち張りが取り囲み、全員が興奮状態で、卓上にチップの山が築かれているならば(滅多にないが)それはカテゴリー③の“看板台”。

これを頭に入れ、カテゴリー①では決してプレイせず、カテゴリー②に空きがあれば、少ない目の賭け金でプレイし様子を見つつ、カテゴリー③に空きがあれば直ちに席を移動する、というパチンコ屋のような立ち回りが、当時のマンダリン・オリエンタルのBJにおける “勝利の秘訣”であった。

1990年代前半、香港/マカオ共に数年後の中国本土への“回帰”を控えた微妙な時期に、ほぼ毎週末、香港からマカオのカジノに繰り出し、バカラには目もくれず、少数派のBJで毎回凌ぎ、勝った際にも慣例であるディーラーへの“飲茶(=チップ)”を一切拒絶する忌まわしき“日本鬼子”の存在は、マカオ中のディーラーの間で知れ渡っていた。(最も、その頃の、全てのマカオのカジノのディーラーの数は、今のグランド・リスボア一つと同じ位であった)

予想通り、美人ディーラーの卓はフルボックスで賑わっており、空く気配が無い。
その他の3台は、パラパラと空席があるが、内2台は登録番号4桁のおばはんディーラーで、共に静まりかえっており、“回収台” 間違い無し。

残る1台は……、美人? とは言えないが、どことなく愛嬌がある、目が大きいので勝手に “平目ちゃん” と名付けた、当方と同年代のディーラーだった。
『これは、“平目ちゃん” の卓で決まりだな。カードを配るスピードが早くも無く、遅くも無く、カウントは正確で、自分が21の時は申し訳そうに、バストした時は手際よく配当をつけてくれる。こちらが勝っても、他のディーラーのように “飲茶(=チップ)”を要求されることも無く、時々、サービスドリンクをオーダーしてくれる。これで勝負がプラスなら万々歳なのだが、これまで結構長時間相手をしたものの、トータルは何とトントン! 究極のカテゴリー②の遊び台だ。しかし、遊び台なら良しとするか?』

そう決心し、12時ジャストに “平目ちゃん” の卓でプレイ開始!
(ベットは様子見で2千$前後……)






6時間後、±15,000$を行ったり来たりした挙げ句、今日も又プラマイゼロで終了……
“平目ちゃん” も退場。(小さな声で “再見” と言い残し、奥の控え室へ消えた)

『午後6時、そろそろ小腹が空いてきた……、どうやら “平目ちゃん” も上がりのようだ。交替のディーラーがおばはんなら休憩するか? おや? おや?? これは確か去年の12月に一晩で10万$勝たせてくれた、滅多にお相手出来ない、カテゴリー③の美人ディーラーのお出ましだ! 彼女は性格は悪く、当方に対しても敵愾心を露わにするが、それも一興だ。おっと、7番BOXのおっさんが晩飯の為か席を立った! もち移動だ。ここまで6時間、この卓でプレイを続けた甲斐があったぞ。こうなったらメシはどうでも良い。今から本当の勝負スタートだ!』
 
マンダリン・オリエンタル2FのBJ卓、いつものように左端の“指定席”に座り、右手の届く、BOX4、BOX5、BOX6の主導権を常にBOX内の過半数をベットすることで握りながら、コントロール続け、カテゴリー③の美人ディーラー相手に、“帝王の進撃” は続いた。

この間、突然バックから、当方のBOXに5千$がベットされた。
主は爽やかなイケ面男性、年齢は当方とほぼ同年代、腕にはパテック・フィリップ、どことなく日本人ぽい……
MAXが2千$なので、このベットは受け付けられない、とディーラーが広東語で説明するが、どうやら分からない様子。
「何で駄目なんだろうなぁ……」
と日本語の呟きが聞こえてきたので、
「あっ、日本の方ですか。ここのBJはBOXのリミットが2千$なので、それ以上はベット出来ないのです。もしバックベットするのなら、うーん、4番BOXに千$なら出来ますけど?」
「成る程! そうだったんですね。それじゃ、ちょっと両替してくれますか?」
と普段余りBJ卓では見かけない、5千$チップを千$5枚と交換する。
「さっきから見ていると、今晩はずっと調子良さそうですねぇ。しかし、同じ日本人とは思わなかったなぁ……、今、奥のバカラがシャッフルに入ったので、ちょっとだけ乗らせて下さい。勿論、アクションはお任せしますので……」

そう言われれば、頷くしかない。

その結果、4番BOXは、
大学生・・・300$
当方・・・・500$
イケ面・・・千$
となり、配られたのは何と、A、J のブラックジャック!

「いやぁ、偶には “ジャッキ”も良いもんですねぇ。コミッション分も稼いだし、そろそろシャッフルも終了だ。さぁ、今から挽回するぞ!」
そう言い残し、奥のバカラ卓に日本人イケ面男性は消えた。

ちょうどBJの方もシャッフルに入ったので、トイレに行った帰りに奥のバカラルームを除くと、イケ面男性の席には、四角い“ビスケット(=高額チップ)”がお城のように積み重ねられており、邦貨で5千万円以上は有るものと思われた。

『さっき確か、“挽回” と聞こえたような……、挽回、挽回……ということは、現状負けている訳だ。とすれば、彼は最初、一体幾らからスタートしたんだろう!?』

時はバブル、高騰した株や不動産を高値で売り抜けた “勝ち組” に属する者たちの手には、所謂 “泡銭” が溢れ、その使い道に悩むという、何とも贅沢な時代であった。

(注1)当時のマカオのBJの特殊ルールとして、フェイスダウンで配られたカードは座っている人がオープンする。従って無人のBOXには誰もベット出来ない。
(注2)BOX内で、ヒット、ステイ、ダブル、スプリット、サレンダー、等のアクションを決めるのは、座っている人ではなく、そのBOX内で最も高額のベットをしている人であった。
(注3)マンダリン・オリエンタルのBJ卓のBOXのリミットは2千$の為、ミニマム(200$)との差はたったの10倍、これも一種のカウンティング対策か……

アタマを切り替え、目の前のBJ勝負に集中する。

『4番にいつものマカオ大学の大学生、5番6番に香港人のメガネのカップルが座ってくれてから、流れが完全に変わった。基本、4番に500$、5番に800$、6番に1200$、そして自分の7番に2千$を毎回ベットし、多少の浮き沈みはあるものの、平均すればほぼ全シュープラスで終わっているのだから、皆さん大満足という訳だ……、手の届かない1番から3番には、入れ替わり立ち替わり一般客が座り、思い思いにプレイしているが、それは別に構わない。賑やかしも必要だ。ところで、幾ら勝ってもディーラーに殆ど “飲茶(=チップ)”を進呈しないことへの腹いせなのか、他のプレイヤーが無料サービスのソフト・ドリンク類をオーダーすると、すぐに奥の厨房からウェイトレスが持って来るのに、当方が頼むと聞こえないふりをして、何も出てこないのには参った……、おや? 4番のマカオ大学の大学生が当方のオーダーした、“チャーンチャ(オレンジジュース)”を追加で注文してくれたようだ……、ふぅ、助かった。喉が渇いて死にそうだったものなぁ……、最も、こちらが5万$勝っている間に、大学生の方も最初はミニマムの200$だったのが、今では300~400$となっており、勝ち分は? ざっと4千$強か……、学生にとっては大金だ。無料のオレンジジュース位、オーダーしてくれて当然か……』
そんな中、4番に♡6、♡8、5番にAA、6番に♣7、♠7の14、そして自分のBOXには♢7、♢8の15、が配られた。(1番から3番のおっさんトリオはオール20で、当然ステイ)

美人ディーラーのアップカードは♢Q

『ふむふむ、危険だが面白い。ここはマカオの独自ルールに則った、“帝王式変則B/S”で勝負するとしよう……』

通常は絵札相手に14はサレンダーだが、ここはワンヒットするぞ、とマカオ大学の学生に目と指で示す。ここまでの当方の“実績”を信じたのか、黙って頷く大学生。
(ベット・オーナーである以上、承諾は必要なかったが、一応の礼儀として……)
美人ディーラーの方を向き、4番BOX上で、右手の人差し指で卓を叩く。

配られたカードは、“♡7”!

マカオのローカルルールにより、この瞬間オリジナル・ベット+3倍=計4倍が確定する!
400$をベットしていた若者は1,600$を、当方は2千$を受け取る。
(このローカルルールの良いところは、同じスーツの6,7,8の21が成立した瞬間に配当が貰えることである。でないと、絵札からディーラーがAを引き、BJの場合には引き分け? とか言われたら興ざめだが、それが無いのが嬉しいところだ……)
大学生は笑顔で100$をチップとしてディーラーに進呈する。

次の5番BOXのAAだが、他所のカジノならA相手でもきついがスプリットするところだが、ここはそのままヒットを選ぶ。(カップルの女性は素直に頷く)
これが9なら良かったのだが、配られたのは6であった。
合計18である。
もう一枚要求する。
これが3なら良かったのだが、配られたのは8であった。
合計16である。
ここで香港人カップルから、『もう、ステイで宜しいのでは……』といった感じが伝わってきたが、ここは断固として5枚目のカードをディーラーに対して要求する。

最終カードは3だった!
16+3=19である。
バストしなかったことに胸を撫で下ろす香港人カップル。
美人ディーラーの手が止まる。

『さて、貴方は5枚引いてバストしませんでした。現状は19です。このままワタシの絵札と勝負しますか? それとも今すぐ賭け金の50%の配当を受け取り、このゲームを終了させますか? どちらにするか、さっさと決めて下さいな?』と目で訴えてくる。

当方が紙と鉛筆と電卓で編み出した、マカオ版のB/Sによれば、親の絵札に対しては、5枚引いて20、21ならそのまま勝負、19以下なら50%の配当をその場で受け取り、半分だが勝利を確定させるのがベスト、と出ているので、右手を前に出し先貰いを示す。

ディーラーが渋々当方に800$の半額の400$、香港人女性に400$の半額の200$の配当をつける。

どうやら、香港人のカップルは、このマカオの特殊ルールを知らなかったようで、半分だが賭け金(400$)の半分が配当として確定したことが良く分かっていない様子……

当方が英語で説明しようとした矢先に、4番のマカオ大学の学生が広東語で代りに説明してくれたので、手間が省けた。(香港人カップルも納得した様子)

次は6番BOXである。

77の14だが、ここはステイでもスプリットでもサレンダーでもなく、祈りを込めてワンヒットを選択する。

『スーツは何でも良い。欲しいのは ❝7❞ だ!』

祈りは通じた。

美しい♢7が配られ、スリーセブン成立で、これまた“賭け金+3倍”のボーナス獲得!

喜ぶ香港人カップル!
美人ディーラーが眉を曇らせながら、嫌嫌当方に1200$の4倍の4800$を、香港人カップルの男性に400$の4倍の1600$を放り投げる。

単なる21と思っていたのか、香港人カップルが親切そうなマカオ大学の学生に状況を尋ねる。

7が3つの21は、出た瞬間に“賭け金+3倍”で勝利が確定することを説明され、喜び倍増(4倍増?)となる香港人カップル!

ここでディーラーが夜叉に変身し、チップを要求する。
香港人カップルは二人で相談の上、200$を進呈する。
これを無言で毟り取る美人ディーラー。
当方にもチップを要求するが、さっきのオレンジジュースの仕返し、とばかりに聞こえない振り(広東語が分からない振り)をして、目の前の4,800$全額を自分のBOXに収容する。
こちらを睨みつける美人ディーラー。
(これじゃ美人も台無し、やはり女性は愛嬌が無いと……)

さて、最後の仕上げである。

15は普通ならサレンダーであったが、ここまで“流れ”が良いので、ローカルルールによるアドバンテージ(同スーツの21の可能性が有る為、ヒットした場合の期待値が4~5%アップ)を信じ、思い切ってヒットを選択。(期待値的にはサレンダーと殆ど同じ)

自分達のBOXの勝負は既に終了しているのだが、ここまで自分達を導いてくれた、日本人の勝利を願い、4番、5番、6番BOXから広東語で6を意味する、「ロッ! ロッ! ロッ!」の大合唱が沸き起こる。

その最中、配られたカードは狙い通りの、“♢6”!
思わず卓上で、勝利の雄叫びを上げる!

天を仰ぐ美人ディーラー……

指先を震わせながら、当方に2,000$×4=8,000$をつける。
よく見ると泣いているようだ……
さすがに哀れになり、500$をチップとして進呈しようと前に出す。
すると、驚いたことに、何やら大声で悪態を吐きながら、こちらに叩き返してくる。
(よほど悔しかったのだろう……)

マカオの帝王の支配エリアである、4番から7番BOXの勝負は、これで全て終了したが、彼女にはまだやるべき仕事が残っていた。

自分の2枚目のカードをシューから引っ張り出す。

意地のエースでBJ成立。

絵札の20で悪くとも引き分け、と考えていた1番から3番のおっさんトリオは唖然とする。

「日本人野郎(ヤップンチャイ)ばかりが勝つ、こんなクソッタレ名な台(ディーラー?)でやってられるか! 辞めた辞めた、アホらしい、小姐のいるサウナに行くぞ!」とぼやきながら、一斉に席を立つ。

それを待っていたのか、勝ちが5千$を超えた4番のマカオ大学の学生も「それでは僕もこの辺で……」と呟きながら、嬉しそうに後に続く。

香港人のカップルだけは、もう少しプレイを続けたいような素振りであったが、経験上、3BOXでの勝率は低く、思案していると奥から黒服が現れ、美人ディーラーに交替を命じ、代わりにディーラー登録番号4桁の、ガマ蛙のような、小太りのおばはんディーラーが現れた。

これまでの経験上、このようなおばはんディーラーを相手にした場合の勝率は更なる低下となることが多かった。

現時点での勝ちは61,500$、500$チップ3枚を残し、他を全てダンヒルのポーチに仕舞う。

こちらを睨みながら、『さぁ、毎度毎度妙なやり方で勝つ癖に、アタイ達に飲茶(=チップ)をくれない日本人野郎(ヤップンチャイ)よ。大玉に両替したってことは、もう終了するのかいな? それともまだ一勝負する気が有るのか? どっちなのよ!』と無言で圧力をかけてくる。

端数の500$チップ3枚を、5番、6番、7番、に1枚ずつベットする。

当方が張りを落としたのを見て、香港人カップルも互いにミニマムの200$に下げる。

仏頂面のガマ蛙が、体型に似合わない猛スピードで、ビシビシと音を立てながらカードを配る。
5番:15、6番:16、7番:17、どれもこれもパッとしない。

そしてディーラーの前にはエース!

『サレンダーもさせないよ! と言う訳か……、まぁ良い。そんなこともあろうかと、張りはここまでの1/3に落としている。取り敢えずヒットだな……』

5番をヒットすると絵札で敢えなくバスト。
続いて6番もヒットすると、これまた絵札でバスト。
7番はステイするも、ガマ蛙の前にこれまた絵札で瞬殺される。

脳内に藤圭子の歌(15,16、17と~……)が流れる。
潮時と判断し、タバコ、ライター、爪楊枝を全てダンヒルのポーチに仕舞う。
それを見て、香港人カップルも終了を決める。

(二人合わせて約1万$の大勝利! 週末の土曜日の夜、ただ黙って座っているだけで、左端の日本人が全て判断し、その結果もたらされた思わぬプレゼントを大事に握りしめ、こちらに会釈しながら、香港人カップルはキャッシャーに向かった)

『今日はここまで! 目標の+7万$を指呼の距離に捉えたぞ。明日に備えここは一旦休憩だ……』

以降、30年に及ぶ、バカラとの邂逅前夜の闘いは、こうして終わった。

                                        続く。



このReportへのコメント(全 4件)

2021/03/20(Sat) 16:42

くるくる

マカオの帝王さん、

こんばんは~!

面白い!
マカオの帝王さん=バカラ、のイメージですが、カジノデビュー当初はバカラを避けていたとは!

どのような経緯で鬼畜(笑)のゲーム「バカラ」に手を出すようになったのか、興味深いです!笑(^O^)/


2021/03/22(Mon) 12:32

あーちゃんbunny

こんにちはマカティさん

拝読させていただきました。読んでる私も、文章からその場にいるような、ドキドキ感が伝わってきました。

他の作品も少しずつ読んで、刺激の少ない私の日常生活で楽しみにさせて頂いています♫


2021/03/22(Mon) 21:48

マカオの帝王

くるくるさん、こんばんは!
この30年間のカジノ(ギャンブル)生活を振り返ると、BJ → バカラ → ポーカー、あれ? ゲーム性は異なるものの、結局最初に2枚のトランプのカードが配られ、それである程度の強弱(勝敗? 期待値?)が決まるものの、最終的な勝ち負けはその後追加で配られる数枚の決定的なカード(との組み合わせ)で決まる、といったゲームばかり人生の約半分を没入していたことに、還暦になってやっと気が付きました……
(島耕作+シャア・アズナブル)÷2=ヤング “マカオの帝王” THE ORIGIN(1991)「運命の前夜」後編、は今月中にアップします!


2021/03/22(Mon) 23:58

マカオの帝王

あーちゃんbunnyさん?

夢に向かっての第一歩は歩き出せたかな?

昨日はミナミで【夕刊フジ杯ポーカー王位決定戦】の大阪地区代表最終予選に出ていたので、返事が遅くなりました。
結果は見事? 1位通過(但し2位の人と殆ど差は無し)しましたので、3月28日に東京・西新宿である決勝戦で頑張りま~す。

ツィッターの公式アカウント【夕刊フジ杯ポーカー王位決定戦】にで、昨日の写真も出ていますので、また見て下さいね。
* 何故か “マサティ?” になってます。




拝読させていただきました。読んでる私も、文章からその場にいるような、ドキドキ感が伝わってきました。

他の作品も少しずつ読んで、刺激の少ない私の日常生活で楽しみにさせて頂いています♫


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