リゾカジ カジノレポート

帝王VS皇帝(1991:マニラ)① 

* アジア 2022/ 09/ 23 Written by マカオの帝王

コメント( 2)

帝王VS皇帝(1991:マニラ)①

■ 1991年5月 香港 
* 眼下にビクトリア湾を見下ろす、香港島中心部のノースポイントタワー22階にある、初芝電子(香港)有限公司の昼下がりのオフィス内

「ところで、6月の上旬は何か予定入っているかな?」
と5歳年長の数少ないマカオ仲間(最もBJオンリー)の石田総経理(営業担当)が話しかけてきた。

「予定? と言われても、いつもようにマカオに金曜の夜から行くか、土曜の朝から行くか、を考えているところですが……」と、香港に駐在して丸1年が経過し、独り身の気軽さも手伝い、“週末マカオ生活” を絶賛満喫中の、人呼んで “マカオの帝王” が答えた。

「多分そうだろうと思っていたけど、偶には河岸を変えてフィリピンのマニラに行って見ないか?」と石田が誘い掛けた。

「えっ! マニラですか……、ところでそれはどういう風の吹き回しですか?」

「いや、去年の暮に、初芝フィリピンから何人かやってきて、昼間のミーティングの後、ペニンシュラで晩餐会を開き、その後、アジア地域の情報交換と称して尖沙咀のカラオケ廻りをしたことがあっただろ?」

『そういえば、そんなことも有ったような……』と生返事を返すと、

「そのお返しで、今度はマニラで ”初芝アジアン・ミーティング” が来月開かれる訳だ」

「けど、それなら、同じ営業の若手駐在員の神内くん辺りが適任なのでは?」と答えると、

「あぁ、当初はその予定だったんだけど、あっち(注;中国本土)側で大口の商談が入ったので、残念ながら行けなくなったんだよ。それで今回は君にお鉢が回ってきたという訳さ」

「けど、このところマカオは絶好調でして……、自分はゴルフもしませんし、週末にカードに触れないとなると、何だか物足りなくてですねぇ……」

「木曜日の午後出発で夜はホテルで寝るだけ、形式だけの会議を金曜日に実施後、全日航ホテルでディナー+お楽しみ。 土曜日は親睦ゴルフ大会だが、君は無理に出なくてもOK! 日曜日は完全自由行動で、月曜日の午前中に市場調査と称してマニラ市内の家電量販店を見学した後、午後便で香港に戻る予定だ!」

(注)古き良き90年代には、今から思うと夢のような“社内接待”が、大手企業においては堂々と行われていました……

「うーん……」

「当然、今回は “ビジネス”な訳だから、エアは往復共キャセイのビジネスクラス!」

「うーん……」

「飯は我らが食の都、香港には負けるだろうけど、全日航ホテルの高級和食が食える筈だ。カラオケも、本場のマニラ娘は情熱的で可愛いぞ、それに……」石田が一瞬口ごもった。

「それに、何ですか?」

「泊まるのは、マニラ最大の“カジノ”が有る、パビリオン・ホテル! 部屋の真下では24時間カジノが営業中だ!」

「それを早く言って下さい! では6月中旬の週末遠征予定をマカオからマニラに変更決定!」

「そうくると思った、それじゃあ、社長には話を通しておくよ……」石田がニヤッと笑った。



■ 1991年5月下旬 初芝フィリピン(マニラ) 社長室

「あぁ、仲田君、来週末に初芝香港のご一行が、遊び半分(仕事半分)でマニラ入りするそうだ。アジア地区の販社同士でマーケット情報を交換し、相互に親睦を図る、のが目的だが、なぁに、最近景気が良すぎて、接待交際費を余らせるのも何だから身内同士で遣ってしまえ! と言う訳だ」

初芝フィリピンの社長の話を、営業担当駐在員の仲田(首都大学理学部数学科卒:30才)は黙って聞いた。

「それで、大体のスケジュールだが……、6月6日(木)の夜にキャセイでマニラ入りするそうだから、空港からホテルまでのクルマの手配、ホテルは先方のご指定で、エルミタのパビリオンで決まり。翌7日(金)に一応形式だけのミーティングをする。テーマは……、そうだ! 去年君が作成した、10年後のフィリピン市場を大胆に予言した、”未来予想図21”をOHPで映すとするか? あれは日本の本社でも評判が良かったしなぁ……、夜は我が社の厨房機器一式を採用してくれている、全日航ホテル内の高級和食の店を予約しといてくれ。まさか、中華の本場、香港からのご一行に、ここの不味い中国料理を食べさせる訳には行かんだろう。その後のお楽しみは……、向こうの泊まり先を考慮すれば、エルミタが良いのだろうけど、何かあっても困る。この前、君の営業努力のお陰で、我が社の最新カラオケ機器の導入に成功した、“クラブ・マカティ”を予約しといてくれ。人数は……、向こうが4人、こっちも4人で計8人だ」

「分かりました」と仲田が頷く。

「8日(土)は親睦ゴルフコンペ。これは向こうが3人なので、こっちも3人、計6人でクルマ2台の手配とゴルフ場の予約を頼む。9日(日)は完全自由行動で、10日(月)はマニラ市内の大手家電量販店を視察後、空港へ向かい、行きと同じキャセイ便で香港に戻るそうだ」

「成るほど、ただ私の記憶では、初芝香港の営業関係の駐在員の皆さんは、4人共ゴルフ大好き人間だった筈ですが、何故今回は3人なのですか?」

「おぉ! 肝心なことを言うのを忘れていた! 今回は君と同じ歳の神内君は、広州で大口の商談が有るとかで残念ながら仕事だそうだ、尤もこれも仕事な訳だが……、その代わりに選ばれたのが……、初芝香港の有名人、財務&電脳&新規事業担当の副総経理、ミスター中村、又の名を“マカオの帝王”だ! 何でも、彼はゴルフに関しては初心者なので、ご迷惑をかけるだけだと辞退したそうだ。実年齢は向こうが一つ上だが、入社は君と同期だから、タメ口でいいぞ! 前に一度、どんな奴か有ってみたいと言っていたが、その願いが叶った訳だ。“マカオの帝王”とやらに、“マニラの皇帝”の底力を見せてやってくれ!」

一礼し社長室を出る際、仲田は考えた。

「ついに! あの “マカオの帝王” と逢える! 一体どんな奴か? これは楽しみになってきたぞ!」



■ 1991年6月6日(木) マニラ ニノイ・アキノ国際空港

初めてのフィリピン・マニラだったが、その第一印象は最悪だった。
エスカレーターは何故か動かず、トイレには臭気が漂い、税関の職員は横柄で愛想のかけらもなかった。

(注)因みに、こうした傾向はその後も改善されなかったようで、国際空港に関する利用者投票で2011年から2013年まで、「世界最悪空港ランキング・ワースト1位」を3年連続で獲得している。

初芝フィリピンが手配したクルマに乗り込み、薄暗い海岸沿いの道を走り、“マニラの新宿歌舞伎町”と呼ばれるマビニ通りにあるパビリオン・ホテルに到着。
取り敢えず部屋にチェックインし、石田先輩と早速カジノへ。

尚、今回の軍資金は日本円百万円+3千US$

「フィリピンじゃ、1に米ドル、2に日本円、3,4が無くて5に英ポンドだ。香港ドルも両替出来なくもないが、レートが悪い、悪すぎる。けれど、手持ちの香港ドルを米ドルに両替し、それを再度ペソに両替することを思えば、手持ちの米ドル+纏まった日本円を持ち込むのがベストだよ」
というマニラ通の石田先輩情報に従い、持参した軍資金の内、まずは米ドルを全てペソに両替する。

普通のブラックジャックと、ディーラーが一人のミニバカラがフロア内に混在し、何とも紛らわしい。大バカラはそれなりに賑わっており、スロットマシンやドロー・ポーカー等のゲーム・マシンにも、やや興味を惹かれたが、何といっても同伴者が、“BJオンリー”なので、ここは黙ってBJ台に座る。

いつものように、当方がサードベース、石田先輩が中央に陣取り、初のマニラでのBJスタート!

記念すべき初手であったが、ベットした2ボックス共に16と最悪。

同じく石田先輩は、19とマァマァだったが、不愛想な浅黒いディーラーがオープンしたカードは絵札……。

『これは共にサレンダーで決まりだな……』

と思っていると、ディーラーが何やら青いプラスチックの板を取り出し、1番ボックスから順番に、「ビジネス、ビジネス……」と呟きながら、ゆっくりと板を移動させ、当方の前まで持ってくる。
意味不明なので、そのままやり過ごす。

「ビジネス・クローズ!」と宣言した後、ディーラーがカードを配りだす。

石田先輩は勿論ステイ。

さて当方の順番だ。

世界共通(の筈の)フィンガーアクションで、サレンダーの意思表示をするも、何故か受け入れられず、「ヒット? オア ステイ」と告げられる。

戸惑っていると、隣の石田先輩が、
「あぁ、これは失敬。ここマニラでは、サレンダーすること自体は認められているのだけれど、それは初っ端に、つまり、さっきディーラーが青い板を各ボックスに突きつけながら、『ビジネス、ビジネス……』と呟いていた際に、サレンダーの意思表示をすべきであって、そのタイミングを逃すと、サレンダーは出来ないんだよ……、久しぶりなので、君に説明するのを、すっかり忘れていて失礼しました」と説明してくれた。

『それを早く言っといて下さいよぉー』と心の中で呟きながら、仕方なくヒットすると共にハイカードでバスト。

ディーラーはピクチャーで石田先輩も負け。

その後も、一度も水面下に浮上せず、小さく勝って大きく負ける、やっと2連勝したと思ったら3連敗、といった感じで、二人ともズルズルと削られる。

石田先輩が今回こそっと持ち込んだ、前回のマニラ遠征時にそのまま香港に持ち帰ったフィリピン・ペソのキャッシュが半分溶けたところで、ようやく“手仕舞い”の宣言が出される。

黙って頷き、こちらも手仕舞いとする。
(米ドルを両替したフィリピン・ペソは、こちらも約半分となっていた)

まだ木曜日の夜なので、フロアは閑散としており、電力事情が悪いのか、カジノたるもの、煌びやかで有るべきなのに、全体に薄暗く活気に欠け、水代りに飲んだ地元産ビール(サンミゲル)のせいか、頭がぼぉーとしており、明日は(一応)仕事だったので、これ以上プレイ続行することは出来なかった。

『なーに、戦いはこの一戦で終わりでは無いのだよ! まだまだ軍資金は豊富に有る。BJが駄目ならバカラも有る。本当の勝負はこれからだ!』

二人揃って席を立ち、部屋で眠りにつく。

                      帝王VS皇帝(1991:マニラ)②に続く。
https://www.resocasi.com/res/report/detail?id=2073
                           


このReportへのコメント(全 2件)

2022/09/28(Wed) 18:10

くるくる

マカオの帝王さん、

こんばんは!
ご無沙汰しております、くるくるです!

続きが楽しみです!(^O^)/


2022/10/01(Sat) 01:06

マカオの帝王

くるくるさん お久しぶりです!
9月の三連休×2は、コロナ前なら当然マカオでしたが、今回は大阪ミナミでポーカー三昧でした。
9/19は数百人参加の大規模トーナメントで11位(インマネ)
9/25は百数十人参加の中規模トーナメントで4位(インマネ)
と、恐らく参加者中、最年長者として若者に一矢報いました(^_^)


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