リゾカジ カジノレポート

死亡遊戯(バカラ地獄編)

* マカオ 2011/ 08/ 26 Written by マカオの帝王

コメント( 6)

■ 8月10日(水)

遂に “ドラゴンの夏” の到来だ!
関空のエアマカオのチェックイン・カウンターでバロケンさん夫妻とバッタリ出会う。
愛犬の名前をハンドルネームとしているバロケンさんは、大阪在住の、自分なりのスタイルを持った、当方の尊敬するバカラプレイヤーの一人である。

今回は“リゾカジ”の公式オフ会にも初参加するとのこと。

バロケンさんの奥さんから、「荷物はたったこれだけなんですかぁ?」と驚かれる。
確かに当方の荷物は、6泊7日だというのに小さめのスーツケース一つだけ。

「下着や靴下はホテルで洗濯しつつ、途中で古いのを捨てたりするので、帰りは今より軽くなります。お土産の類も、マカオ行きの回数が200回を越えると今更特に買うものも無いですしね……」
何となく納得してもらう。

互いの健闘を祈りつつ別れる。

出国エリア内で“ヒルトン・グランド・バケーション・クラブ”への入会を勧誘される。
何でもこれに入会すると、世界中のヒルトンホテルに泊まれるとのこと。

「せっかく説明してくれたのにゴメンね。残念ながら一番良く行くマカオにヒルトンは無いみたいだし、それにもう既に “世界中の(カジノのある)ホテルにただで泊まれる” クラブの会員に入っているので……」 そう言って立ち去ろうとすると、涼しげなアロハシャツを着たお姉さんから「えっ! そんなクラブが有るのですか? 一体それはなんて言う名前なのですか?」と尋ねられたので、「ネットで “リゾート&カジノ” で検索してみて下さい。それでは……」 と言い残しゲートへと向かった。

16時半発のNX837便は定刻通り飛び立った。

マカオで開催中のポーカーのビッグ・イベント、“レッド・ドラゴン” に参加する為か、顔見知りのポーカー・プレイヤーの姿も機内でチラホラと見かける。

薄味のマカオ・ビールを飲み、うつらうつらしている内に、マカオ国際空港に到着する。

ゲートを出ると、リスボアの皇牌天下のスタッフが、当方のネームカードを持ち待っていた。
ちょうど同じリスボアホテルに宿泊するという、知り合いのポーカー仲間に声をかけ、リスボアへと向かう。

皇牌天下で荷物を預かって貰った後、グランドリスボアで22時から始まる “レッド・ドラゴン”のメガ・サテライトに参加するも、あっさり敗退。

リスボアの皇牌天下(エリートルーム)に戻り、13日のリゾカジ公式オフ会の参加要件である、プログラムの手続きを行う。

※ 男子体操界の若き帝王、内村航平選手は、「個々の競技では、自分より巧い選手はいる。だから自分が目指すのは、“オールラウンダー”だ」と世界選手権で優勝後、報道陣に語ったそうだが、当方の目指すのもそれである。
バカラ、BJ、ポーカー(トーナメント/リング)、それぞれのジャンル毎に卓越した強者はいる。けれども、もしトライアスロンのようにカード賭博の代表的なこの3種目の総合点で競うゲームが有ったとしたら、その初代チャンピオン(帝王)になりたい、それが今の偽らざる気分であった。


結局、約8ヶ月ぶりのブラックジャックはチャラ(御食事券分だけプラス)で終了となる。

時計を見ると午前3時、さすがに眠くなってきた。

マカオ到着後の長かった(時差の関係で、物理的にも1時間長い)初日の戦いはこうして終わりを告げた。


■ 8月11日(木)

昼前に目覚め、リスボアの皇牌天下(エリートルーム)に顔を出す。
海老入りのお粥と、ビール(ハイネケン)を頼む。

何人かのリゾカジ・メンバーと会い、軽く世間話をする。

1万$だけノンネゴチップに交換し、8ヶ月ぶりに皇牌天下(エリートルーム)でバカラ開始。

しかし勝てない。

いつものように、全勝負バンカーにベットしているだけなのだが、コミッションの5%分以上に負ける。

今回、リゾカジ・メンバー以外のポーカー関係者の何人かも、バカラの10万$プログラム等に参加しており、参考の為、知り合いの何人かに今の時点の中間報告を求めると、何故か皆異口同音に、「調子ですか? 今のところはチャラで、この分だけ浮きです……」といった感じの、驚愕すべき返事が返ってくる。

いつだったか、ここ皇牌天下(エリートルーム)で、プレイヤーがどこまでも勝ち続けるという“バンカー地獄”を味わい、ワンシューでクルマ1台分位を失ってからというもの、当方の頭の中にある、ある“妄想”が蘇ってくる。

それは次のようなものである。

① この皇牌天下(エリートルーム)は、一種の映画のセットのようなもので、自分が寝ている間は一切稼動していない。

② 自分が目覚め皇牌天下(エリートルーム)に向かう為、フロント横のエスカレーターに乗った瞬間にスタッフ全員に指令が下り、プレイヤー6:バンカー:4の割合でプレイヤーが勝つようにセットされたボックスがバカラ卓にセットされる。

③ 誰も客がいないとやる気が起こらないであろうから、安い日当で雇っている中国人客役のバイトを大急ぎでカーテンの向こうの控え室(普段は彼らはここでゴロゴロしている)から引っ張り出し、急遽バカラ卓に座らせ、盛り上がっている風を装う。

④ プレイヤーが60%は勝つようにセットしているので、全勝負フラットベットだと当然ハウスが勝つ訳だが、5回に2回のバンカーが勝つ順番の際に、偶々当方が“オールイン”をするのを防ぐ為、その順番の時にはバイトの中国人のお姐ちゃんにバンカーに先張りで大玉を張らせ、絞りたがりの当方の動きを封じ込める。

⑤ 日本人の客全員には、例えボロ負けしていても誰かに聞かれたら「チャラ、若しくはプラスです」と言うよう催眠術をかけておく。 (人間誰しもそうであって欲しいと願うことは、信じたがるものだ)

程なく1万$は溶けてなくなった。

当方がベットしなくなった次のゲームから、バンカーが勝ち出した。

お役ごめん、とばかりに、さして金持ち風でも無いのに、それまでバンバンと大玉を張っていたお姐ちゃんもどこかへ姿を消す。

日本人の皆さんはというと、何かの興奮剤でも飲んでいるかのように、ユーフォリアに包まれた感じでゲームを続けている。

全身に違和感を覚えながら席を立ち、皇牌天下(エリートルーム)を出て、下りのエスカレーターに乗る。

ここでまた、脳内に新たな妄想が出現する。

もし今、エスカレーターを逆にかけ昇り、皇牌天下(エリートルーム)に再突入したとしたら……

妄想 ⑥

そこでは、本日の仕事を終えたばかりの全身緑色のBEMたちが、口から長い紫色の舌を出しながら、ネバネバした得体の知れない食物を、皆で旨そうに食べていた……





妄想を封印し、リスボアの平場で再度バカラにチャレンジする。
当方は農耕民族のように、集団で罫線のお告げ通りに、全員同じサイドに賭けて勝利を喜び合ったり、敗北を慰め合ったりする“草食系”のバカラは出来ない。

かといって、ハウスと一対一も苦手だ。

望ましいのは、プレイヤー側に、赤の他人の中国系の中高年者で、当方の2~3倍のベットオーナーがいて、絞りに余り時間をかけず、(かといって極端に短か過ぎもせず)適度な時間をかけて普通に絞り、妙な小芝居もせず、ナチュラルが出来たら普通に喜び、惜しいバカラ(7+3、8+2、10+絵札)となった場合は普通に悔しがり、ちょっとバンカーが連勝したからといって、安易にサイドを変更したり、席を立ったりせず、安もんのショルダーバッグから千ドル札の束をテーブル上に放り投げ、意地になってプレイヤーに大玉を張り続ける……、そんな獲物のいるバカラ卓で、ハウスにバンカーのコミッションとプレイヤー側との差額分を捧げつつ、ジワジワと獲物を追い詰め、最後に相手が力尽き、姿を消すまでバンカーで自ら絞り続けるのが、この20年間トータルでプラスをキープしている帝王式バカラの真髄であった。

眼鏡をかけた、小太りで小金持ちで、桜貝色の1万$チップを約10枚積み上げ、取り巻きと一緒にプレイヤーに毎回1枚ずつ張っている、本日の“獲物”を発見する。

バンカーに5千ドルをベットする。

プレイヤー:3
バンカー:8であっさり勝利。

その後も勝ったり負けたりであったが、同じリスボアでも、皇牌天下(エリートルーム)だと平均2勝3敗ペースとなるのに、ここ平場では平均3勝2敗ペースで推移する。

眼鏡をかけた小太りの中国人の負けが7万$を超え、残り3万$弱となった時、遂に我慢の限界に達したのか、プレイヤーにオールインしてきた。

この時点で当方の勝ちは32,050$。

バンカーに、本日マックスの1万6千$をベットする。

プレイヤーが、いつもの倍の時間を掛け、ゆっくりと絞るが、最後にうな垂れる。

7+3=0のバカラだ。

『よし!』

と気合を入れて絞るも、絵にならないスペードのAとキングの1点

『BJ、若しくはポーカーなら強いのになぁ……』

そう思いつつ、3枚目勝負となる。

どうやらプレイヤーに足は有ったようだ。

眼鏡をかけた小太りの中国人が、カードを横から絞り始める。

「サンピン!」との叫び声が聞こえる。

取り巻き連中が、目一杯上がって8になるよう、必死で応援する。
その甲斐あってか、クシャクシャになったクローバーの8が、羅紗の上に叩き付けられる。

不思議と冷静だった。

『おっさん、よう頑張ったな。けど、この勝負、例えそっちが勝っても依然4万$の負け。それに比べこっちは負けても、まだまだ1万6千$の勝ちや。それにこの勝負、まだ決着はついてへん……』

新しい爪楊枝を取り出し、口に咥えながらゆっくりと絞る。(お行儀は宜しくない)

足はあった。(第1関門クリア)

カードを横にした瞬間、プレイヤーの顔が曇った。

『3ピン!』

カード中央に図柄マークを確認する。(第2関門クリア)

サービスでプレイヤーに対し、指を3本立てて、3ピンであることを教えてやる。

ゆっくりと指先に力を込めて絞る。

爪楊枝が折れる。

一つ付いた。(第3関門クリア)

これで負けは無くなった。

バカラの最も愉しい瞬間だ。

当方の絞りが斜めに切れ上がる様を見て、プレイヤーのおっさんの顔面に恐怖の相が浮かぶ。

二つ目も付いた。

最初のAの1点が、ここへ来て良い仕事をしてくれた。

カードの皺を広げ、ディーラーに向かいそっと投げる。

プレイヤーのおっさんの心が折れた音が聞こえてきた。

手元の勝ち分が47,250$となる。

おっさん退場。

ここで止めても良かったのだが、あと1勝して勝ちを5万$にしたいと思い、バンカーに3千$、バンカー対子に100$をベットする。

これまで一度も対子に賭けなかった当方が、僅かとはいえバンカーの対子に賭けたことから、後ろで見ていた女の子が真似して100$をバンカーの対子に張る。

おばちゃんが一人、プレイヤーにテーブル・ミニマムの500$をベットする。

おばちゃんが捲ったカードは絵札と7の7点。

それに対し、バンカーの2枚は共に3ピン。

『おいおい、勘弁してくれ。現状勝ち無し。ベストは66か77でバンカー対子を取りつつ、3枚目勝負だな……』

その願いも空しく、1枚目は8。

余り良くない状況であったが、今後の展開として、どちらがよりマシなのかを計算する。

『もし、6若しくは7だった場合、対子の100$が流れて3枚目勝負となる訳だ。その場合、最終結果が7なら引き分けで3千$が戻ってくる。 最終結果が8か9なら勝ちになり、コミッション分の5%を引いて5,850$が付く訳だ。 カードは1~13まで有る訳だから、(3,000+2×5,850)÷13=約1,130$。これに対し手元のカードが8だった場合、本線の勝負は負けだが、対子分として100×12=1,200$の配当がある訳だから、8になる方が70$だけ得になる訳だな……』

殆ど差が無いと判明したので、絞る気力が無くなり、途中で2枚目を放り投げる。

結果は8で対子成立!

おばちゃんは喜び、女の子も喜び、本線は負けたが当方の傷も浅くて済んだ。
全員ハッピーとなり、この場での勝ちは約4万5千$で、本日のバカラ終了。

その後、グランドリスボアで開かれたレッド・ドラゴンのメガサテライトを通過し、“ドラゴンへの道”の第一歩が開ける。

京都のOさんから、「日本人シニア4人組で、日本食を食べに行こう」との提案があり、タクシーで旧市街に移動する。
新しい和食の店を探すが中々見つからず、結局少し前からある、マカオで何故か秋田の“稲庭うどん”を売り物にしている店に入る。

売り物にしているだけあって、ここの“稲庭うどん”は普通に美味しかった。
いずこも同じで、ポーカー界にも世代間の対立があり、ここでは書けない最近起こった事件を酒の肴にしながら、マカオの地の深夜の宴はお開きを迎えた。

タクシーに乗り込み、まず最年長のTさんがリスボアでバカラのローリングを続ける為降りた。
残る3名はタイパ島に新しく出来たカジノ:ギャラクシーへと向かった。

ここの印象としては、同じくタイパ島にあるベネティアンをやや小ぶりにして、エレガンスとホスピタリティを追加したような気がした。

Oさんは早速、好きな罫線を追っかけバカラを開始する。
Lさんは途中で行方不明となる。
当方は、取りあえずフロア内を散策する。

Oさんと再会するが、「後は自由行動で」と解散する。
(Lさんは、Oさんのマンションに泊まる予定)

タクシーで橋を渡り、回力内の健康サウナ(378$)で仮眠を取る。


■ 8月12日(金)

健康サウナで目覚めた後、回力娯楽場を覗いてみるが、店舗改装中で半分しか営業していない。
これじゃ駄目だと、取り敢えず本日の宿泊先である、リスボアホテルのロイヤルタワーの1308号室にチェックインする。

部屋はマァマァだったが、窓を開けると何故か工事中で景観は最悪。おまけにトントン、トントンと工事の音が聞こえてきて、普通なら抗議にいくところであったが、それも面倒なので、そのままにする。
(どうせ仮眠を取るだけだ、どこでも同じ……)

歩いてまずウィーンへ行く。

和食の岡田の壁にいつも掛かっている、おかしな日本語を見る。

「いつまでも 咲き続けてる 山の花」
「踊る陽の 黄金まばゆき 昼下がり」
「勝ち続く 流れにのった 今宵かな」
「絶え間なく くり返される つきの波」
「黄金の 花びらのごと 空の雲」

『相変わらずセンスが悪いな……』

そんなことを考えながら、ポーカールームを目指す。

ここで軽くポーカーのリングでも……、と思ったが、10人待ちとのこと。

諦めて向かいのMGMに向かう。

以前からここの黄色の千$のクレイチップがお気に入りだったのだが、ちょっとBJをプレイしようと思っても、テーブルが減っており、平日の昼間だからか、場が立っていない。

『これじゃだめだ……』

諦めて帰れば良いものを、何故かバカラ卓に座る。

スルスルと溶け出す。

リスボアで勝った4万5千$が最後の1万$になる。
(エリートルームでマイナス1万$な為、この時点で今回のマカオ遠征でのバカラは原点)

ここでプレイヤー優勢と見た中国人トリオが一斉に席に着き、それぞれ5千~1万$をプレイヤーにベットする。

『これで流れが変わる!』と思った。

バンカーに自信を持って1万$をオールインする。

プレイヤー:1
バンカー:5

この5は強い。

『0、1、2、3……、アート引越しセンターで死んどけ! おまけに9もあるぞ!』

絵札(ゴン)でプレイヤー死亡。

中国人トリオが再びプレイヤーに倍額をベットする。

お付き合いで当方もほぼ倍の19,500$をバンカーにベットする。

プレイヤー:0
バンカー :4

ここも、絵札(ゴン)でプレイヤー死亡。

中国人トリオが再び同額をプレイヤーにベットする。

2万$を残し、1万8千$をバンカーにベットする。

プレイヤー:6
バンカーは絵札と3ピン。

『どうやら、“勝ち続く、流れ”とやらにのれたかな?』

アッサリと一つ付き、バンカー:7のチャーシューで勝利!

僅か3手でMGMでの収支がマイナス3万5千$からプラス1万$となった。

するとここで3人組撤収。

当方も撤収を決める。

『地獄の手前で、お助けトリオに救われたな。バカラは愉しいなぁ……』

そんなことを考えながら、一旦は溶けかかったリスボアで獲得した千$札軍団が、僅か一束とはいえ増えて戻ってきたことで、天国に一歩近づいたつもりになり、鼻歌でも歌いたい気分でMGMを出て、ウィーンの横の横断歩道を歩いている時、何だか聞き覚えの有る、懐かしいような、懐かしくないような、妙なアクセントの声が聞こえてきた。

「ハロー! ミスター××(当方の姓名)ロングタイム ノーシーユー! アイム ユア オールドフレンド ジャクソン!」

当方と同じ歳の、22年前からの知り合いのジャンケッター(特定のカジノ専属の客引きのようなもの)の、マカオ人ジャクソンであった。


天国の対極に地獄が有るのではない。
天国のすぐ隣に地獄は有るのだ!


ジャクソンと歩きながら話をする。

相変わらず独身で、今は前回会った時と同じく、スターワールドの12階にある、××貴賓會に所属しているそうだ。

『それにしても、リスボアの皇牌天下(エリートルーム)といい、このスターワールドの何とか貴賓會といい、世間一般では屑の集まりのバカラ中毒者の巣窟に対し、よくもまぁ大層な名前を付けたものだ……』

そんなことを考えながら、何故かスターワールドの12階まで付いて行ってしまう。

小腹が空いたので、勧められるままに野菜炒めと西瓜のジュースを貰う。

「バカラの調子はどうだい? 昔は良かったよなぁ! 二人でリスボアのVIPルームをバンバン言わせたもんだ……」
ジャクソンが懐かしそうに呟く。

確かに昔は今よりバカラの調子は良かったが、バンバン言わせたのは自分一人で平場でプレイしている時であり、ジャクソンと一緒の時は負けの方が多かったという苦い記憶が蘇ってきた。

「あぁー、ジャクソンさん。当方は今回, グランドリスボアで開かれているポーカーのトーナメントに参加するのが主な目的でマカオに来ているのだ。だから昔みたいにバカラがメインじゃないんだよ。 それにこのVIPルームは最低が2千$からだろ? それはちょっとキツいなぁ……」

しかし、さすがは海千山千のマカオ人ジャンケッター、ジャクソン;

「OK! それじゃ3Fに行ってみよう。そこならミニマム千$からプレイが出来るよ。これ位なら良いだろ?」

相手の懐具合とプライドを秤に掛け、あの手この手で話をふってくる。

まだ本日のメイン・イベントであるレッド・ドラゴンのDay1Bが始まる8時10分まで、時間はたっぷり有った。

何となく3階に連れて行かれる。

何となく席に座らされ、何となく2万$をジャクソンに預ける。

千$のノンネゴチップが20枚、手元に届けられる。

何となくバンカーに張り、何となく負ける。

2万$分のノンネゴチップが、1万$分のキャッシュチップに換わる。

ジャクソンが、ちらっとこっちを見る。

このキャッシュチップをまた、ノンネゴチップと交換しても良いですか? との確認だ。

何となく頷いてしまう。

悪徳商法に嵌まる人間の心理とは、こんなものかと思う。

これも、あっと言う間にキャッシュチップ5千$に換わる。

財布から千$札を15枚取り出す。

『これが岡田で見た、“絶え間なく くり返される”何とやらか……』

一度も増えることなく、年季の入ったダンヒルの財布から千$札が流出し続ける。

はっと気が付いた時には、千$札50枚が消えて無くなっていた。
まるで白昼夢を見ているようだった。

『所謂一つの“死亡遊戯”とはこのことか……』
脳の奥がクラクラしてきた

再び妄想モードに突入する。

① ジャクソンから、スターワールド3階のプチ高額エリアのディーラーに対し、「今から毎回バンカーにベットする日本人が向かうので、バンカー1:プレイヤー:2の割合でハウスが勝つよう、全てのボックスにセットしろ」との連絡が入る。

② プレイヤーに時々ビッグベットをし煽る為、各テーブルに張り役のバイトを配置し、闘争心が途切れないようにする。

③ つまり、このエリアは全て当方を嵌める為だけに存在している、大掛かりな芝居の仕掛けのようなもので、一般客らしき者も、全てカジノの回し者(サクラ)である。

「ジャクソン! ゲームオーバー! フィニッシュ!」

席を立とうとすると、慌てたジャクソンが、「ジャストモーメント! 今からマイボスを紹介するよ。隣のレストランで一緒にディナーを食べよう」と言ってきた。

ジャクソンのボスにもメシにも興味は無かったが、何故か断りきれず、レストランに入る。

暫らくすると、いかにも凶暴そうな顔で髪の毛を逆立て、腕には高そうな時計、胸にはゴールドのネックレスをチャラチャラと付けた、どうみてもジャクソンよりは若い、黒のTシャツを着た30代後半といった風情の、怪しさ120%の“ボス”が登場する。

ジャクソンに当方の年収を尋ねられる。

適当に答える。

ジャクソンがボスと、何やら広東語で早口の会話を交わす。

どうやら、当方にお金を回し、もう一勝負させる魂胆のようだ。

「あぁー、ミスター××、さっきはアンラッキーだったね。けど、ミーはユーがベリーストロングなことを知ってるよ。もし今手持ちのマネーが無くても、ボスに頼めばハーフミリオンまではノープロブレムさ。それで今からもう一勝負して、勝ってすっきりして夜のポーカートーナメントに参加すればグッドだよ」

確かにそれは魅力的な提案だった。
けれども、ここで当然の疑問が脳裏をよぎる。

「ジャクソン、一つ確認したいんだけど、もしそのハーフミリオンを負けてしまったら、一体どうすれば良いのかな?」

「あぁ、そんなことはまず無いと思うけど、万が一そうなった場合は、一週間以内に送金してくれればノープロブレムだよ」

『ということは、もし送金が遅れたりしたら、恐ろしい事態になる訳だ……』

目の前で、鳥の足に噛り付く、髪の毛を逆立てた恐ろしげな“ボス”の姿をちらっと見る。

「ジャクソン、今から僕の言うことをそのままボスに伝えてくれ。今から始まるビッグ・ポーカー・トーナメントで上位に入れば数十万$がゲット出来る。また15日の月曜日にも別のトーナメントが予定されており、これで優勝しても十数万$がゲット出来る。バカラの資金を回してくれるのは有難いが、そちらにしても回収の不安がある訳だから、ポーカー・トーナメントが終了するまでは保留にするというのはどうかな?」

ジャクソンが早口の広東語でボスに通訳する。

ここで超能力を使い、“ボス”の頭の中を覗いてみる。

* 以下、想像……

『まったく、いつまでたっても使えないジャクソンのおっさんだ。5万$ばかしでパンクするようなせこい日本人野郎を引っ張ってきやがって……、銭を回してやってもいいが、飛んだ時に日本まで回収しに行くのは面倒だ。こいつが言うように、ポーカー大会とやらで現金が入ってくるというのなら、それで良し。後の話はそれからだな……』
“ボス”は当方の、一旦保留という提案に同意し、今から仕事に向かうとかで、ゴツゴツした手で握手して出て行った。

ジャクソンと二人、スターワールドを出て、リスボア方面に向かい歩き出す。

並んで歩きながら、ジャクソンが寂しげに口を開く。

「あぁー、ミスター××。ミーは昨日の夜、オールナイトでバカラして少々負けてしまい、今からサウナでスリープしたいところなのだけれど、ノーマネーなのだ。それで、今、バカラで負けたばかりのミスターにお願いするのは、大変心苦しいのだけれども、出来れば、オンリー・ワン・サウザンドだけ、ボロー出来ないだろうか? 明日の朝には何とかして返すよ……、ほら、覚えてるだろ? いつだったか5千$借りた時もすぐ返したじゃないか……」

プレジデントホテル前で立ち止まり、同じ歳のマカオ人のジャクソンをじっと見詰める。

髪の毛も薄くなり、白髪が目立つ。
カジノ自体が直接各種のキャッシュバック・サービスをするご時勢だ。

昔ながらの人的繋がりに寄りかかったジャンケット・サービスそのものが、もはや時代遅れの代物に成りつつあると言える。

そうした中、一回りも年下の“ボス”に顎で遣われ、今日のサウナ代も無いというのは、齢50を超えた身の上としては、さぞかし辛かろう。

黙って財布から千$札を1枚渡す。

「サンキュー、サンキュー・ベリーマッチ! また電話するよ! ポーカー大会で優勝することを祈っているよ、シーユー……」

遠ざかるジャクソンを見やりながら、じっと考えた。

『この千$が戻ってくることはまずないな……、いや、それどころか、ジャクソンが真っ直ぐサウナに行くことも無いだろう。99%の確率で、ジャクソンは今からバカラをする。それが“バカラ地獄”に堕ちた者の宿命だ。やはりバカラは“魔”のゲームだった。それを思い出させてくれたお礼として、その千$は“老朋友”の君に進呈するよ……』

レッド・ドラゴン Day1B に参加するも敗退。

ついさっき、バカラの怖さを再認識した筈なのに、何故か同じフロア内のバカラ卓に座ってしまう。

火照った頭を冷やすように、千~2千$でまったりとバンカーにベットを続ける。

平日の夜で客もまばらだったが、何故か6+3や、7+2、といったポーカーでは弱いがバカラじゃ最強! といった手がよく入る。

まるでバカラの神様から、『ポーカーなど止めて、またバカラの世界に戻ってこい!』と誘われているようであった。

結局、何の山場も落ちも無いまま、あっさりと1万5千$勝ったところで眠くなり、リスボアへの渡り廊下を通り、ロイヤルタワー13階で眠りに付く。


■ 8月13日(土)

12時にリスボアホテルの東翼F25にある、ミシュランで星を取ったという中華レストランの“桃花源(Tim’s Kitchen)”に大阪のポーカー関係者と集まり、ここの売り物の一つ、『クリスタルキング海老のフルコース』を賞味する。

『クリスタルキング海老か……、これを食べたら、今じゃ大都会のマカオで、果てしない夢を追い続けながら、大空を飛び回れるのかな? そういえば、今から20年位前に、今のMGMやウィーンが立っている辺りの埋立地に民間の小さな滑走路があり、そこでオンボロセスナに乗り込み、確か500$で20分程度のマカオ周遊をしたことがあったな……、リスボアホテルが小さな点に見えたものだ。あれからもう20年か? 余り成長していないな……』

そんなことをあれこれ考えている内に1時半過ぎにお食事会は終了した。
本日の2時10分スタートのレッド・ドラゴン Day2に残っている人は、今からの勝負に気もそぞろ、といった感じで、“マイタン”を急がせる。

アルコールもそこそこ飲んだが、結局一人500$で足りたようで、日本で同じ内容のコースを食べたら2~3倍は取られそうなことを思えば、コスト・パフォーマンスは良かった。
支払いはBJプログラムで獲得した御食事券500$分でジャストOKとなる。

美食の街でもあるマカオで、今回食べた唯一の高級料理がこれであった。

皆と別れた後、一人古いリスボアホテルの中を彷徨う。
バカラ卓に座る。
嫌いな中国銀行発券の千$札20枚をチップと交換する。
見渡したところ、この卓のチップリーダーは、対面に座っている30歳代のTシャツを着た中華系若者のようだった。
基本、プレイヤーに4千~1万をベットしている模様。

本日のターゲット、ロックオン。

同額をバンカーにベットする。

絞る時間が長すぎもせず、短すぎもせず、勝った時の嬉しげな顔も、負けた時の悔しげな顔も、それはそれで好ましかった。

勝敗はほぼ互角だったが、バンカーのコミッション分だけ当方が削られて行く。

『勝敗は五分五分なのに、コミッション分マイナスで手持ち1万8千か…』

と、若者の友人が数名現れ、今から食事に行くとの会話が聞こえてくる。
(簡単な広東語は今でもヒアリング可能)

Tシャツの若者が本日マックスの12,550$をプレイヤーにベットする。
それと同時に、残りの1万$チップをポーチにしまう。
どうやらこれを最後の勝負と決めたようだ。

同額勝負! と思ったが、今回のマカオ遠征でのバカラの収支をマイナスにしたくない、との消極的な考えから、1万$を残し、8千$をバンカーにベットする。

思えば、この勝負の結果は最初から決まっていたのかも知れない。

いつもよりやや長い時間をかけ、若者が友人連中に囲まれ、絞って出てきたカードは絵札と9!

一応こちらも絵札と4ピンではあったが、若者らが食事に行く時間を遅らせるのも悪いと思い、サクッと捲ると、案の定“10”が出てきた。

若者が、『日本人らしいおっさんよ、アンタとの勝負、中々楽しかったよ』とばかりに、こちらを一瞥し席を立った。

当方も軽く会釈した。

『20年前、このマカオの、今では客もまばらになったこの古いリスボアのこのフロアで、毎週末バカラに打ち興じていた頃の自分を思い出す。あの頃は絵札と4ピンの組み合わせが入ったら、6割以上はナチュラル9だったものだ。それが今じゃ4割有るか無いかだ。毎年1%ずつ、勝負どころでの“引き”が弱くなっているような気がする……』

結果は負けたというのに、昨晩主にハウス相手に何となく勝ったグランドリスボアでの勝負より、“バカラをした!”という満足感は大きかった。

ここは若者のガッツに敬意を表するとしよう。

さてここまでの当方のバカラ部門の収支は;

グランドリスボア・・・+1万5千$
リスボア・・・・・・・・・+2万5千$
スターワールド・・・・・・・-5万$
MGM・・・・・・・・・・・・・・+1万$
-------------------------
合 計・・・・・・・・・・・・・・・±0$

やはりスターワールドで負けたのが痛い。

気を取り直して、皇牌天下(エリートルーム)に向かう。

既にホテルのフロント前に大勢のリゾカジ・メンバーが集合している。
バスに乗り込み、バロケンさんの隣に座り、マカオの昔話をしながらパーティー会場である“澳門逸園賽狗會(マカオ・ドッグ・レース場)”へと向かう。
今まで200回以上マカオに来て、このドッグレース場もそばを通ったことは何度もあるが、中に入ったのは初めてだった。

オフ会初参加のご夫婦と、今回コラボ企画しているポーカー関係者二人と一緒のテーブルに座る。
会場の中で、【マカオの帝王】と印刷された名札を付けると、初参加の方達から、「あぁー! 貴方があの有名な“マカオの帝王”さんですか! もっと怖い感じの人かと想像していました。云々……」といったいつも感想を聞かされる。
やはり、“ミナミの帝王”の萬田銀次郎でもイメージされているのだろうか……

各自50$分のクーポン券を貰い、ドッグレースに投票する。
6犬立て? で何やらオッズの入ったデータ表らしきものを渡されるが、初めてのドッグレースでそんなものが役に立つ筈がない。

『Don’t think. Feel! (考えるな、感じろ!)』

直感で黄色いゼッケンを付けた3番の狗を選ぶと、何とその狗が最初から最後までぶっちぎりで1位となった。

単賞の配当は約6.8倍で、50$のクーポン券は340$のキャッシュに変身した。

その後もゲームやお誕生日会などがあり、途中からレッド・ドラゴン組も加わり、総勢66名が参加したリゾカジ公式オフ会は大盛況の内に幕を閉じた。

皇牌天下(エリートルーム)で上海28号さんのプレイを拝見した後、グランドリスボアのポーカールームのリングで少し勝ち、レッド・ドラゴンのメガサテ2回分の参加費4,800$を回収する。


■ 8月14日(日)

12時前に皇牌天下(エリートルーム)に顔を出し、サンドウィッチとコーヒー、それとハイネケンを頼む。
ここでは、冷たいハイネケンが飲み放題なのは、ビール党の当方としては嬉しい。
 
すると今回オフ会初参加の、輝政さんカップルが登場する。
何でも、以前から当方のレポートの熱烈な愛読者である、とのこと。

まるで“Living Legend(生きる伝説)”に会ったように、余りに感激されても困るのだが、少し話している内に、レポートに良く出てくる“足裏マッサージ”が話題となる。
ちょうど当方も行きたかったところなので、一緒に案内することにする。
 
リスボア前からタクシーに乗り込み、金龍酒店前の國際中心地下にある「足康樂」に向かう。
 
本当は2時間コースの方が良いのだが、初めての、しかも女性同伴だと大部屋ですぐ          
隣に連れがいる方が安心だろうと、シングルの45分コース(98$)を選ぶ。
 
入り口で料金を先払い後、足を薬草の入った熱いお湯でふやけさせてから、タイ人の女性マッサージ師がクリームを付け、丁寧に揉んでくれる。
このコースは、以前は88$だったので、10$値上げした訳だが、それでも安い。
スカート姿の輝政さんの彼女の為に、マッサージ師がスコートのようなものを持ってきて、これを履けという。
たまたま昼間だったので、前の列に他の男性客はいなかったが、もし途中で入ってきたりすると、そいつらに綺麗な日本人女性の下着をタダで見せてやることになるので、これは正解。
 
連日の戦いの疲れからか、うつらうつらしている内にマッサージ終了。

足裏初体験の、輝政さんカップルは大感激している模様。

前はJ’sさんが取り纏めてくれていたのだが、少しでもその代役を務めることが出来たとしたら良かったと思う。

その他のリクエストを募ると、カジノ関係の記念品のようなものを買いたい、とのこと。
それなら、グランドリスボア1階にある、「精品廊」に色んなグッズを売っていたことを思い出し、タクシーで移動し案内する。

どうやら満足して貰えたようだ。

当方もここで携帯用のトランプ仕様のストラップを一つ、28$で購入する。
これで今回の自分用の買い物は、終了。

輝政さんカップルと別れ、グランドリスボアの上階へと向かう。

帝王式BJで3万$勝つ。

リゾカジ・メンバーでの食事会に参加する為、リスボアの皇牌天下(エリートルーム)に戻る。
リゾカジいちの食通、シャンパン隊長以下、ちくわさん、輝政さんカップル、他、全部で12名で、プレジデントホテル裏の“徳興火鍋海鮮酒家”の個室に入る。
ちくわさん推奨の“Blue Girl”という韓国製のビールで乾杯後、鮑やミル貝の刺身、ラム肉、その他、火鍋独特の厳選された具材が次々に鍋に投入される。

シャンパン隊長から、「これはジャスト1分間だけ、鍋に入れて下さい。それ以上でも、それ以下でもいけません」といった風に、具体的な指示が飛ぶ。

ビール党の当方のグラスが空になると、輝政さんの美人の彼女が、「足裏マッサージではお世話になりました。はい、どうぞ♡」と注いでくれる。

今回のマカオ遠征での総収支もプラスに転じた直後でもあり、美人のお酌で良く冷えたビールが一層旨く感じる。

締めに、様ざまな高級食材のエキスがタップリと入った火鍋に乾麺を放り込み、他ではとても味わえない、極上の麺を美味しく戴く。

最後は、今回の料理の代金を当てるという、リゾカジ恒例のゲームとなり、12人の内、正解に近い3人がタダ、正解から遠い6人は千$、その中間の3人は700$、というルールのもと、何とか中間の3人に入り、700$を支払う。
(もし日本で同じものを食べたとしたら、この4~5倍は覚悟する必要が有りそう)

火鍋の醍醐味を味わった後、グランドリスボアに向かい、ほろ酔い気分でバカラとBJをするが、共にチャラで手仕舞う。

少しだけリングのポーカーをして眠りに付く。


■ 8月15日(月)

グランドリスボアで12時10分から、大阪のJPK(Japan Poker King)クラブが主催の、日本人のみのポーカー・トーナメントに出るも途中で敗退。

その後、帝王式BJが炸裂し、8万$勝つ。

皇牌天下(エリートルーム)に向かう。

相変わらずここでは微温的なバカラが続いている。

取り敢えず、ここのキャッシャーに1万円=991HK$でホールドしていた日本円の“人質”を解放する。

明日は帰国だ。

恐らく、今滞在で最後になりそうなリゾカジ・メンバーの皆さんに対し、「皆さん、勝ち逃げも負け逃げもせず、最後の瞬間までプレイを続けて下さい。それを貫いた人だけが、本当の勝利の喜び(敗北の悲しみ)を味わうことが出来るのですから」と自論を披露して、グランドリスボアに戻る。


■ 8月16日(火)

第1回のJPKカップは美人女性プロのセリーナ・リンの優勝で幕を閉じた。

記念撮影後、リオホテルの裏手にある、【音楽世界】という若者向けカラオケ・バーで、優勝したセリーナの奢りで関係者の打ち上げ会があるとのことで、タクシーに分乗し移動する。

今回の大会運営に協力してくれた、グランドリスボアのトーナメント・ディレクターも現れる。

狭い部屋に40人程が集まる。

セリーナ・リン登場!

代表の挨拶後、乾杯、じゃんけんゲーム、そして室内は異様な熱気と喧騒に包まれる。

けれども、その中で少しずつ醒めつつある自分を発見する。

『良いのか? これで良いのか? まだ出発まで6時間有るというのに、ここで朝まで馬鹿騒ぎをしていて……、いや、駄目だ。これでは一種の“勝ち逃げ”ではないか? 最後まで自分のスタイルを貫くべきだ。戻ろう、カジノに』

その時、関東からの参加者が何名か、「明日早いので、ホテルに帰ります」と関係者と握手して出口に向かうのが目に入る。

今だ! と思い、後に続く。

すぐにタクシーは拾えた。

「新葡京へ」

再びグランドリスボアに戻った。

BJで2万$負ける。

席を立ち、今回は原点で封印した筈のバカラ卓に向かう。

5千$をバンカーにベットする。

負ける。

もう一度5千$をバンカーにベットする。

また負ける。

一旦は閉じていた地獄の釜の蓋が開きだす。

『まずい、マカオのバカラの神様! もう今回はバカラで勝とうとは思いません。だから最後に一度だけ、出来ればナチュラル9で勝たして下さい。お願いします!』

バンカーに1万$ベットすることは決めたが、ここで一つ問題が発生する。

仮にこれで勝ったとしても、コミッションを500$取られるのでチャラにならないのだ。

その時、ドッグレースで獲得した340$が有ったことを思い出す。

『広東語の“狗”と、数字の“9”は発音すると同じ“ガウ”だ。 ガウはガウを呼ぶ! よし、この300$を上乗せしよう』

ドッグレースの勝ち金の百$札3枚をチップに換え、お守りとして桜貝色の1万$チップの上に乗せる。

プレイヤーは7。

バンカーは絵札とスペードの4ピン。

気合を込めて絞るが、結果は10……

再度、祈りを込める。

再び4ピン、しかも図柄も同じくスペード!

『スペードの10は1枚減っている。もう無いだろう! これがラスト!』

祈りは通じた。

ナチュラルでは無かったが、何とか9(ガウ)点で勝ち、今回のバカラ部門の収支をチャラに戻す。

その後、ポーカーで少し勝つ。

リスボアの皇牌天下(エリートルーム)に戻り、またまたサンドウィッチとコーヒー、それとハイネケンを頼む。
このような拠点がマカオにあることは、正直いって有難い。

いつの日か、レッド・ドラゴンで上位にインマネでもした時には、サンドウィッチとビール分くらいは寄付することにしよう。

同じく、10時半発の香港空港行き直行フェリーに乗り込む予定のリゾカジ・メンバー3人と一緒にクルマに乗り込む。

フェリーに乗り込む直前に携帯が鳴る。

ジャクソンからだった。

「あぁー、ミスター××、ポーカー・トーナメントの結果はどうだった?」

「ノーグッドだったよ……」と当方。

「そうか……、それから、ワン・サウザンドだけど、ボスと色々あって、ちょっと今回は渡せなかったけど、ネクストタイムには必ず返すから……」

「明白了(了解しました) それじゃ、そろそろフェリーが出るので、再見!」と当方。

電話を切り、考える。

『自分からジャクソンに連絡はしない。けれど、狭いマカオのことだ。またいつか会うだろう。その時は、その時だけは、いつもの“オールバンカー”戦法じゃなく、ジャクソンの言う通りにベットしてみよう。何故なら奴もこのマカオの地で30年も死なずに生き残っている海千山千のジャンケッターだ。 バカラの神様の気紛れで、その予想が当たるかも知れないじゃないか?』

マカオでは何が起こるかわからない。
分からないからマカオは面白い。

(完)


*このレポートはリゾカジ.SNSの日記を転載したものです。




リスボア/グランドリスボア Hotel Risboa/Grand Lisboa


このReportへのコメント(全 6件)

2011/08/27(Sat) 21:27

cvmasa

帝王様、お疲れ様です。

本当に生きるか死ぬかのプレーは緊張感ありますよね、私も他のSNSでも書きましたけど、たとえ金額の大小ちがえども、お金かかれば性格までも変わる私なのでこの記事はなるほどと思いました。

そう言う意味でもカジノは死亡遊戯なのかなと、怖くも思ってしまいました。

JPK出られていたのですか、あの日私はいつものように500HKDバウンティ出場したのですが、良いところ無く負けました、ミスプレーもあったので自業自得ですww

しかし、それを上回る幸運があったので悔しいけどサバサバしてしまいました、でもこれはいけないことで、常に命賭けた勝負をしないといけないなと思い、翌日以降もがんばりました。

さらなる帝王様の報告期待しています。

追記-やはりもう少しマカオ情報を帝王様から聞いておけば良かったなと思ってます。
   次回行くときあると思いますので、差し支え無い範囲で教えてください。


2011/08/29(Mon) 00:38

マカオの帝王

cvmasaさん,こんばんは!

次回のマカオ行きの予定ですが、年末~年始を考えていますので、また決まりましたら連絡下さい。

予定があえば、現地でご一緒しましょう。


2011/08/30(Tue) 18:39

なおさん

マカオの帝王様、


先日は別コーナーにて、ポーカーのご指導有難うございました。

そしてこのレポートをじっくり読ませていただきました。

臨場感がありいいですね。またすぐにでもマカオに行きたい衝動に

かられました。私は華南地区にいますので、行きたい気持ちを抑え

るのはなかなかです。


いつかどこかでお会いできる日を楽しみにしております。

私は10月の連休は必ず行っていますので、これからも宜しくお願い

致します。あ、早めにお会いして授業料をお支払いしないと。。。

まあ、マカオの帝王様の1ベットにも遠くおよびませんがね。。。


2011/08/31(Wed) 04:49

マカオの帝王

なおさん、こんばんは!

今回は、故ブルース・リーへのオマージュとして、3部作になっており、ポーカーをメインにした「ドラゴンへの道(ポーカー無限編)」も近日中にアップされる予定です。

10月にグランドリスボアで開催されるポーカーのトーナメントで優勝すれば、賞金は約160万HK$ですので、その際にはお約束の授業料(=15%で24万HK$)をお支払い下さい。

加油!


2011/09/02(Fri) 18:46

なおさん

マカオの帝王さん、

返信有難うございました。
とにかく9月に一度実践してみます。

続報を楽しみにしています。

ビギナーズラック!!!



2011/09/05(Mon) 01:56

マカオの帝王

なおさん、こんばんは!

当方も昔、香港に駐在していた時は、日本に帰る盆と正月と、マカオがやたらと混む旧正月と国慶節とマカオグランプリ開催期間を除いては、ほぼ毎週マカオ入りしていました。

本日続編がアップされましたので、またご覧下さい。

ビギナーズラックをお祈りしております。


コメントの投稿

投稿するにはログインが必要です。
会員登録がお済でない方は≫コチラ

PASS: