ホールデムポーカーの極意書

第十一之巻 私のポーカー戦略-初手の選択(4)
いままで述べてきたハンドの強弱やポジションは、初手の選択の基本である。現実のトーナメントでは、これにさまざまな状況が加算されそのゲームに参加するかどうかをきめることになる。私にとって最も重要なのはこの「状況」である。
アーリーポジションで配られたハンドがAAであったとしよう。
この場合のアクションも状況によって異なる。一般的にはBBの3-4倍レイズするのがよいプレイだろう。コールで入るスロープレイも考えられるが、バタバタと後ろのプレイヤーにコールされると面倒である。
しかしながら、400人参加の参加費$10000の高額トーナメントで、後5人飛べば入賞が確定し、自分のチップ量はアベレージチップ量の半分程度であった場合はどうであろうか。入賞すれば$10000以上の賞金を手にできる。私の資金量では$10000は大きい。また、この段階でアベレージの半分を持っていれば、普通は入賞確実といえるだろう。私は、フォールドして確実に入賞をねらう。
では、同じ状況だが、参加費が$500だった場合はどうだろう。
参加費$500はそれなりに大きい。しかしながら、仮に負けてもしょうがないとあきらめきれる金額である。私はオールインレイズするだろう。この段階でアベレージの半分程度持っているならば、レイズ額はBBの10倍くらいだとおもう。この段階では、他のプレイヤーも入賞目指して慎重にプレイしているのでこのオールインにコールできるのは、チップリーダークラスか持ちチップ量が少なく勝負をかけざるを得ないプレイヤーであろう。従って、スチールが成功するかヘッズアップになると思われる。スチールすれば、入賞がより確実になってくる。ヘッズアップになれば勝率は85%以上であり納得できる。また、勝てば、アベレージチップ量を持つことができ、より高額な賞金を狙える。
最後に参加費が$100だった場合はどうであろう。$100はゲームを楽しんだ費用と見ればそれほど問題となる金額ではない。そうであれば、入賞を確定するより持ちチップ量を増やすことが優先される。従って、私は通常の3-4倍レイズか、他のプレイヤーが慎重になっている点を考慮してコールするものが少ないと判断して、コールして他のプレイヤーのレイズを期待するかもしれない。
このように、同じハンド、同じポジションであっても、プレイの選択は異なる。
それでは、どのような点を「状況」を決める基準とするのであろうか。
第一に自分の順位、持ちチップ量である。
そのトーナメントでどの程度の順位にいるかをある程度知っておく必要がある。一般的にそのトーナメントのアベレージチップ量を持っていると上位 40-45%にいるはずである。なぜならチップリーダークラスはアベレージの数倍のチップを持っているのが普通だからである。アベレージチップ量を計算するためには、そのトーナメントの総チップ量を把握しなければならない。一般的なトーナメントでは、第一回の休憩時にトーナメント参加人数が何人であるか発表される。リバイトーナメントであれば、リバイできるラウンドが終わった休憩後に発表される。そこで、その時点でプレイしている人数で割ってアベレージチップ数を算出するのである。私は、海外のトーナメント会場に電卓を必ず持っていく。
私は、自分の持ちチップ量が
・ アベレージの2倍以上ある場合
・ アベレージ以上ある場合
・ アベレージ以下ではあるが、70%以上ある場合
・ アベレージの30-70%程度である場合
・ アベレージの半分以下である場合
に分けてプレイスタイルを変えている。
第二に入賞点のアベレージチップ量はいくらかである。
最低入賞順位のアベレージチップ量を持っているとほとんど何もしなくても入賞できる。また、アベレージの半分持っていると、最低入賞は十分狙える。従って、私はチップ獲得の第一目標をアベレージチップ量の半分にしている。トーナメントの序・中盤ではこのアベレージチップ量の半分をどのように獲得するかを考えてプレイしているのである。
第三に、そのテーブルの雰囲気である。すなわち、ルーズなプレイスタイルのプレイヤーが多いのか、タイトなプレイヤーが多いのか。ルーズなテーブルであれば、参加するハンドを絞って、レイズ額を多くアグレッシブルにプレイするし、固いテーブルであれば、参加するハンドの基準をさげて、レイズではいり、スチールをねらう。
第四に、現在のトーナメントの状況である。
トーナメントは入賞しなければリターンはない。従って、その時点でのトーナメントの状況を把握するのは重要である。序盤なのか。入賞直前なのか。入賞は決まっているが、高額賞金を獲得できるファイナルテーブルまでは相当な人数が残っているのか。ミニバブル(賞金ゾーンの区切り順位の次)なのかどうかなどである。
私が2005年WSOPで世界チャンピオンのレイマー氏に飛ばされたとき、ショートスタックでJJがきた。ちょうど111人残っているときだった。111位では、賞金は$56000、110位だと$65000である。自分の番になって三分くらい考えた。まだ、持ちチップ量はブラインドの4倍程度あったので確実に$65000を獲得するためにフォールドも考えたのである。しかし、これ以上のハンドがくることは少ないだろう。その時、他のテーブルでオールインコールのアナウンスが聞こえた。これで、私が勝つか他のテーブルのプレイヤーが飛べばよくなった。確率は他のプレイヤーが勝って、私が負ける場合だけがミニバブルになる。レイマー氏には勝っていると思っていたので、おもむろにオールインレイズした。結果的にレイマー氏の86oにストレートを引かれて負けたのは残念であったが。
<<ポーカーを楽しもう!INDEX