ホールデムポーカーの極意書

第十三之巻 私のポーカー戦略 - ベッティング(1)
ポーカーの目的は、一回のゲームに勝つことではない。ゲームに勝つことによって持ちチップ量を増やすことである。つまり、ゲームに何回も勝っても獲得チップ量が少なかった場合には、たった一回のゲームの負けでそれまで獲得したチップを失ってしまうことになる。それでは、目的を達成することはできない。
その意味で、ベッティングは最も重要なスキル(技術)である。
チップで会話する
囲碁の世界では、打った石で会話するといわれている。その意味するところは、棋士が打った石は全てその棋士の意思の表現であり、相手側はその意思を汲み取って次の手を打つことにより、言葉を使わない会話が成立しているということである。
ポーカーでは、それをベットされたチップでおこなう。
ホールデムポーカーでは、各プレイヤーに最初に配られた2枚のカード(ホールカード)は、わからない。従って、プレイヤーの意思はそのプレイヤーのベットでおこなうことになる。
大きくわけて、ベットには大きく分けて3種類のパターンがある。
●ホールカード強いハンドの場合。
現状で勝っているか、勝つ可能性の高いハンドを持っているので、獲得チップ量を増やそうとしてベットする場合である。
●相手にコールやベットをされたくない場合
現状では、中途半端のハンドを持っているが、フォールドするのも惜しい。または、ブラインドベットをスチールしたい場合である。後述するように、フラッシュやストレートドローのハンドの場合、リスクを軽減するためのベットも含まれる。
●相手の情報を引き出すための場合
対戦相手の意思を確認する場合に、ベットしてそれに対する反応をみるためにベットする場合である。
以下にゲームの各段階で、ベットの意味を考えてみよう。(全てノーリミットホールデムを前提とする。)
プリフロップ
プリフロップでは、ブラインドベットがされているので、コールするかレイズするか、レイズした場合、レイズ額がいくらかでプレイヤーの意思が表現される。
コールする場合は、プレイヤーの意思は、多くの場合フロップ以降の展開をみてみたいからである。同じスーツが2枚あるとか、絵札が2枚あって、フロップでマッチすれば勝つ可能性が高いなどが典型的な場合である。
これに対し、レイズは積極的な意思が感じられる。一般的にはプレイヤーのハンドが良く勝つ可能性が高い場合であろう。但し、ポジションが良く、スチールをしたい場合なども考えられる。
問題はレイズ額である。通常はポットレイズ(BBの3.5倍程度)近辺のレイズ額が一般的である。これ以外のベット額(ミニマムレイズやBBの5倍以上のレイズ)には、プレイヤーの特別な意思が反映している場合が多い。ミニマムレイズでは、BBにコールされる可能性は高い。従って、プレイヤーのハンドが強く、コールしてもらいそのゲームのポット額を上げたいという意思が感じられる。他方、5倍以上のレイズの場合、何がなんでもそのゲームはとりたいとの意思が感じられる。Jのペアーなど、プリフロップでは強いが、フロップが開くと急に寒くなるハンドや、持ちチップ量が少なく、トーナメントを生き延びるためにブラインドスチールで充分と考え、オールインする場合などである。
レイズがあった場合のコールやリレイズは、プレイヤーのどのような意思の反映であろうか。コールは、レイズした者に対抗できる強いハンドをもっている。または、フロップが開いた後に勝つ可能性があるなどが考えられる。また、多数のプレイヤーがレイズにコールしている場合、ポットの金額が高いので、後に述べるオッズがあったのでコールする場合もあるだろう。また、一度コールしたので、その後にレイズがあってもついていくとの意思もありうる。
これに対し、リレイズはレイズしたプレイヤーに対する積極的な挑戦である。レイズ・リレイズがはいると、他のプレイヤーはよほどのハンドを持つか、持ちチップ量によほどの余裕がない限りコールすることは難しい。従って、最初にレイズしたプレイヤーとヘッズアップの勝負を挑んでいるとの意思がある。AAやKKなどの強力なハンドの場合、参加人数が増えると勝てる可能性が下がってくる。レイズが入っているので、そのゲームのポットも満足できるものである場合が多い。従って、ヘッズアップに持ち込み確実に勝つためにリレイズするのである。また、レイズした相手のハンドをA+ハイカードと考えて、ローペアーでヘッズアップ勝負にいく場合もあるだろう。
フロップ後
フロップが開いた後のアクションは、情報がある程度開示されるので、ベットにプレイヤーの意思がより反映される。アクションとしては、チェック・ベット・レイズ・レイズに対するコール・リレイズがある。
ここで考えなければならないのは、一回のベットだけではなく、プリフロップでどのようなアクションをしているかである。プリフロップでレイズしているので、フロップ後もベット・レイズしている、プリフロップでコールしているのにベット・レイズし始めたなどである。すなわち、前のアクションを加えたプレイヤーの一連の意思を考えなければならない。
チェックは消極的な意思表示である。フロップが期待したカードがでないので、フォールドするつもりだが、前のプレイヤーからベットがなされていないのでチェックするというのが典型的である。フラッシュやストレートドローになっているので、完成するまでは、支払額を少なくしたいという場合もあるだろう。
チェックだけでは、そのプレイヤーの意思はわからないので、ベットしてそのプレイヤーの意思を確認する必要がでてくる。
ベットは、積極的な意思表示で、プリフロップ時の最初のレイズと同じ意味がある。加えて、前のプレイヤーがチェックしていたときの確認の意味をこめたベットもある。特にフロップがフラッシュやストレートの可能性がある場合は、フロップ段階で勝っていてもターンやリバーでまくられる可能性があるので、その確認は重要になる。
この場合も、ベット額は最も重要である。その時点でのポット額の半分以下のベット額かどうかがまず判断の基準になるであろう。ポットの半分以下である場合は、勝つ可能性が高くポットを引き上げたいという意思が感じられる。また、相手の意思を確認する場合もあるだろう。ポットの半分以上ベットした場合は、そのポットをとりたいという意思の表明と考えてよいだろう。
レイズ・リレイズは、プリフロップ時のリレイズと同様な場合が多い。但し、前のプレイヤーのベット額が少ないときに、フラッシュドローなどの時にあえてレイズして、ターン・リバーのカードを見に行くという場合もある。
気をつけなければならないのは、チェックレイズである。チェックレイズとは、一度チェックした後に、他のプレイヤーのベットにレイズする戦略である。フロップでスリーカードができたなど、勝つ可能性が高い場合により多くのチップを獲得しようとしてもちいられる。
ベットやレイズにコールする場合は、その段階では勝っているか、ターン・リバーで勝つ可能性がある場合である。
以上は、一般的なプレイヤーの意思の現れであり、それを逆手にとろうとするプレイヤーもいることを、常に頭の隅においておかねばならない。
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