負けがこんでアツくなってしまうと、当たり前のことができなくなる。カジノで平常心を失うことは、もともと数学的不利を背負うプレイヤーが更に大きな不利を背負うことに他ならない。メンタルのアップダウンが激しいカジノにいて、平常心のままポジティヴ思考でいられたとしたら、リゾカジはより楽しいものになるだろう。
GAKUストラテジーはそれを目指すために、自分自身に課したメンタル・コントロール法である。
勝敗確率が約二分の一のゲームを戦うのだから、カシノ賭人は当然にも、勝ったり負けたりする。勝っている時なら、誰にでもそれなりの芸は見せられるものだ。問題は、負けている時である。
受身を学ぶ。しっかりと学ぶ。
この部分がいい加減だと、カシノ賭人は大怪我をしてしまう。
ほんのわずかなつまずきに、メンタルな部分が揺らぎはじめる。つまずきが重なり、ふと気がつくと、喉元まで泥沼にどっぷりと嵌まっている自分を発見する。もう、こうなってしまっては、回復は困難だ。
当たり前の話で恐縮だが、カシノでは「勝ち逃げ」をしなければ、勝てない。ところがこれが結構難しい。勝っているうちに打ち止められない。決してかなわぬ夢を見てしまう。「希望の病理」と名づけられた賭博における行動様式だ。
「勝ち逃げ」が難しいくらいだから、じつは「負け逃げ」はもっと難しい。
どうしても、取り戻そうと試みてしまう。「希望の病理」としても、悪性のものだ。足掻けば足掻くほど、傷口を広げていく。
GAKUさんをオーストラリアのカシノで最初に見掛けたのは、4年ほども前になるのだろうか。独特のスタイルで、ハウスをシバいていた。
BJに疎いわたしにも、奇妙と映る戦法である。GAKUさんは、セッションを切った。勝利のシューも、敗北のシューも、短く切っていく。ヒット・アンド・アウェイの反復だった。つまり、「勝ち逃げ」と「負け逃げ」を繰り返した。それで、メンタルな部分の崩壊を防いでいる。なるほどねえ。
BJでの戦い方の技術的な部分に関する評価は、わたしの手に余る。しかし、GAKUさんが独特なスタイルで、「希望の病理」を凌駕しようとしていることだけは、わたしにもよくわかった。「希望の病理」さえ凌駕できれば、じつはカシノから勝って帰るのは、それほど難し
いことじゃない。なぜ難しくないかの説明は、長くなってしまうので拙著をご参照願
いたい。
GAKUさんのその独特なプレイ・スタイルが「GAKUストラテジー」と呼ばれるものであったのを知ったのは、ずっとあとになってからだった。
参考までに書き加えると、GAKUさんの2006年のカシノ戦績は13勝2敗である。そのほとんどを、わたしは自分の目で確認した。勝利金額のトータルは知らないが、きっと膨大なものだと思う。
リゾカジストの中のリゾカジスト。その知見とホスピタリティあふれる人柄に、多くのカジノファンから慕われているリゾカジ.com の重鎮。とくに、オーストラリアカジノのことでは右に出るものはなく、「オーストラリアの伝道師」の異名を持つ。
プレイヤーとしても抜群の成績を誇り、彼が開発したBJ における GAKU ストラテジーは、今ちょっぴりブームになり始めているほどだ。