Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#8 IR法案15年の議論⑦ カジノとギャンブル依存症 2015/01/04

カジノ・IR推進法案の一連の議論では、経済振興策としてのメリットに加え、議論のスタート時点からデメリットとしての社会問題についても合わせて論じられてきました。ギャンブル依存症、青少年への悪影響、犯罪組織への対応、周辺への環境悪化など多岐に渡りますが、先進国を含む130ヶ国以上の国々で既に合法化されているカジノには、各国で有効な対策が導入されています。日本を除いて海外では「賭博は政府が厳格に監視してコントロールする」ことが主流で、IR推進法案では最新の対策を導入する方針です。現状、日本ではやみくもに禁止して闇社会に資金源となっているありさまです。
日本で特に注目を集めたテーマは、やはりギャンブル依存症問題でしょう。これは公営競技のほかパチンコも原因になりますが、IR推進法案の進展でマスコミの関心がギャンブルに向かい、一躍スポットを浴びることになりました。
日本ではギャンブル依存症の予防策やケアがなされていないことが原因で発症率が高い状態ですが、海外では収益の数%を対策に充てることが通例。カジノができれば新たな依存症患者は生まれるでしょうが、対策の導入により発症率は大幅に低下します。IR議連でも収益の数%を依存症対策費として事業者から徴収し、カジノに限定せず既存のギャンブル依存症対策にも充てる方針です。日本のカジノ市場を1兆円とすると数百億円の規模になりますが、現在の対策費はゼロに近い状態です。
カジノ解禁に伴って新たなギャンブル依存症者が生じることばかりが問題視されていますが、対策の導入により既存の依存症者を大幅に減少させ、国内総数では減ることが予想されます。現状、財政難の状況下でギャンブル依存症対策に充てる財源の目途はなく、IRの事業者から対策費を捻出させるという方法は理に適っています。IR推進法案の議論は既存のギャンブル産業の見直しにも直結しており、臭い物に蓋をするのではなく正面から議論することは必要でしょう。

#7 IR法案15年の議論⑥ 2014年通常国会でのIR法案審議 2014/12/29

国会での法案審議は、政局や国会情勢、国会日程などを勘案し、与野党の国会対策委員会(国体)が中心となってスケジュールが組まれます。例年1月から6月に組まれる通常国会では、年度末の3月まで予算審理、4月より政府提出法案(閣法)、5月の連休明け頃から議員立法の審議がそれぞれ始まります。IR法案は2013年の12月に衆議院内閣委員会に提出されましたが、公営競技などのギャンブル関連の立法は議員立法として提出されることが慣例とされてきました。
与党が過半数を占める国会情勢では、法案に反対する野党勢力は数の上では与党にかないません。一方で国会には会期に限りがあるため、野党は反対する法案に対して審議先延ばしの日程闘争を仕掛けることが通例となっています。「慎重な審議を」という言葉は一見もっともなように聞こえますが、審議スタートをひたすら先に延ばし、期限を切らずに議論を続けることは法案反対と同じ意味です。IR法案では自民・維新・生活の3党が法案提出者に議員が名を連ねた一方で、共産・社民は反対、民主・公明・その他の野党は法案賛否を決めるための党内議論を行いました。
IR法案は慎重論に配慮したことで、会期末が迫った6月より審議がスタートしました。しかし、同月の通常国会会期内には審議を終えることができず、秋の臨時国会での法案成立に望みを託すことになります。

#6 IR法案15年の議論⑤ 野党側から後押しする維新の党の小沢鋭仁元環境相 2014/12/25

カジノ・IR法制について国会議員の間で議論されている間、地方自治体レベルも議論が重ねられてきました。大阪では2002年より当時の太田房江府知事が誘致に取り組み、大阪市、泉佐野市、堺市で誘致活動が活発化しました。
後任の橋下徹大阪府知事(当時)も、2010年7月に大阪府庁に検討委員会を設置。大阪市長に転じた後には大阪府市統合本部で議論をスタートし、橋下氏が共同代表として立ち上げた日本維新の会(当時)も国会レベルで議論を進めることになります。
日本維新の会には、民主党から小沢鋭仁元環境相、自民党から松浪健太衆議院議員といった、出身政党でIR法案の議論を後押ししてきた議員が参加。小沢氏は民主党時代から培ってきた与野党間の広い人脈を駆使して、法案提出に向けて他党間の調整に汗をかきました。
2013年の通常国会では維新が他党に先駆けてIR法案を衆議院に提出します。同年秋の臨時国会では維新・自民・生活の党の3党により、法案が共同提出されました。
日本維新の会は野党再編の動きの中で、2014年9月に維新の党として衣替えしましたが、同年末の衆議院総選挙でも公約にIR推進を掲げて選挙戦を戦い、党勢を維持しています。
(写真・中央)2014年10月、都内の集会で講演する小沢鋭仁元環境相

#5 IR法案15年の議論④ IR議連発足と2段階法制 2014/12/13

2002年より自民党で議論を進めていたIR法案ですが、2006年の参議院選挙での与党過半数割れきっかけに首相が毎年交代する厳しい国会情勢のあおりを受け、自民党のみで行っていた議論から超党派の枠組みを模索することになります。その結果、従来自民党内の議論を引き継ぐ形で、民主党政権下の2010年4月に「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)が発足。自民・民主・公明をはじめとする主要政党から国会議員がメンバーとして名を連ねました。
IR議連は経済効果や社会問題などをテーマに議論を重ね、2010年8月に「特定複合観光施設区域整備法案」(通称・古賀会長私案、※1)を発表。自民党で議論してきた内容を法案の形でまとめたものになります。
一方で関係省庁と詳細な論点について議論を進めるにつれ、議員立法として国会議員のみで制度の詳細まで決めるのではなく、中央省庁の協力を得るべきだという判断に傾いていきます。たとえば、カジノでのチップの扱いに関しても有価証券として扱うか否かという論点があります。これを法務・税務・会計上の側面で法案の条文を詰めるには、国会議員が詳細まで決めるより、日々実務にあたっている官僚の手を借りた方が既存の法体系との整合性が取りやすくなります。論点はこのほか、事業者のライセンス、ギャンブル依存症者の入場規制など多岐にわたります。
その結果、これまで古賀会長私案などでまとめてきた法案を、基本的な内容や中期的な目標を定める「IR推進法案」※2、詳細を定める「IR実施法案」※3の2つに分割することになりました。IR推進法案では政府・内閣官房に「IR推進本部」を設けることと記載し、IR推進法成立後、推進本部がIR実施法案を作成することになります。このような2段階法制は一般に「プログラム法」と呼ばれ、IRのほか社会保障制度改革など法体系が大部に及ぶ場合に用いられる手法で、珍しいものではありません。

※1 正式名称は「国際競争力のある滞在型観光と地域経済の振興を実現するための特定複合観光施設区域整備法案」
※2 正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」
※3 「IR実施法案」は略称。「特定複合観光施設区域整備法案」(仮称)とも呼ばれる

#4 スペイン大使館セミナー・綜合ユニコムシンポジウム 2014/12/11

先月末になりますが、IRをテーマとした大規模なイベントが都内で相次いで開催されました。11月27日・28日の2日間、有明の東京ビックサイトにて行われた大規模なシンポジウムの主催は、レジャー業界誌「月刊レジャー産業資料」とその発行元である綜合ユニコム㈱。IR推進協議会設立準備委員会議長を務める日本総合研究所の寺島実郎理事長、IR議連顧問の溝畑宏元観光庁長官など、9つのセッションで各分野の有識者・誘致担当者、総勢20名が登壇しました。パネルディスカッションでは自治体関係者から大阪府・長崎県・佐世保市・沖縄県、民間誘致関係者から熱海・珠洲・鳴門・沖縄の関係者が登壇し、議論を交わしていました。
綜合ユニコムシンポジウム1日目の夜には、東京・六本木のスペイン大使館でもセミナーが開催され、大使館のホールには収容人数を超える約150人の参加者が集まりました。、会場は文字通り熱気に包まれていました。
2014年秋の臨時国会でIR推進法案が成立する可能性がありましたが、残念ながら衆議院の解散に伴い法案の動きは一時中断。法案は来年春の通常国会に再度提出される方向です。IRについての議論が高まっていることが肌で感じられた2日間。関係者が一堂に会したことで、アフターコンベンションとして行われた大使館内のパーティーでも、参加者同士で活発な意見交換が行われていました。
(写真)2014年11月28日、綜合ユニコムシンポジウムの模様

#3 IR法案15年の議論③ 自民党内議論をリードした岩屋毅衆議院議員 2014/12/08

自民党では2002年に党内有志の国会議員により「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」が発足し、議論がスタートしました。関係省庁担当者や有識者へのヒアリングなど3年間議論を詰めた後、2004年に基本構想を発表。これを土台にして、2006年には党の政務調査会に設置された「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」で議論を続け、基本構想をまとめました。議論のテーマは経済的効果からカジノ運営会社への監視体制、社会的問題への対処まで多岐に渡っています。
これら一連の議論において特に中心的な役割を果たしてきたのが、自民党の岩屋毅衆議院議員で、有志議連では事務局長、検討小委員会では委員長と要職を歴任しました。

岩屋:「我が国では特別立法でたくさんの公営ギャンブルを認めています。ギャンブルである以上は小さい割合で、どうしてもギャンブル依存症患者が出てきてしまう。しかし、それに対して国は今まで調査も対応もしたこともありません。IRを創出できれば、その収益金の一部を使ってそういったギャンブル依存症の調査・抑止・ケアなどを行う機関を作ることを提案しています。」
出典:「カジノジャパン29号」(2014年3月)より引用

自民党内での10年の議論を経て、2010年4月に超党派の国際観光産業振興議員連盟(IR議連)が組織され、岩屋氏は議連の幹事長を務めています。
(写真・中央)2012年4月、自民党本部で議論する岩屋氏

#2 IR法案15年の議論② 都議会一年生議員だった柿沢未途衆議院議員 2014/12/05

維新の党の柿沢未途政務調査会長といえば野党再編を仕掛けた国会議員として有名で、IR推進法案をまとめた超党派の国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の副会長を務めています。柿沢氏は2001年、都議会議員に当選した最初の議会質問で、当時の石原都知事に対してカジノについて質問をしています。

柿沢氏:「カジノ構想を今後の臨海副都心のまちづくり計画の中核に据えることを提案いたしますが、知事のご所見をお聞かせください。」
石原氏:「世界の先進国の中で、百万以上の人口を持つ都市にカジノが一つもないというのは日本だけなんですね。なぜかパチンコはギャンブルとされず、従来の競馬、競輪だけがギャンブルとされております。」
(2001年9月27日、東京都議会定例会会議録より引用)

「IR推進法案は議論の時間が足りない」という批判もありますが、少なくとも都議会では13年前から議論をしています。2013年12月にIR推進法案が衆議院に提出された際には、柿沢氏は提出者、石原氏に賛成者としてそれぞれ名を連ねました。
(写真)2014年11月、都内の集会で挨拶する柿沢未途氏

#1 IR法案15年の議論① 石原慎太郎都知事のお台場カジノ構想 2014/12/01

今回からこちらのコラムを担当します、佐藤亮平と申します。普段は硬めの記事が多いのですが、こちらではインタラクティブな議論を行えればと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
議論の前段階として、報道でも話題になりつつあるIR推進法案について、これまでの経緯をおさらいしましょう。
1999年に石原慎太郎東京都知事(当時)が「お台場カジノ構想」を提唱したことが、政治レベルでの議論のスタートになります。2002年には都庁45階の展望室でカジノゲーム体験イベントも開催し、マスコミの間でも一気に話題になりました。
石原氏はパチンコの換金システムである「三店方式」をモデルに、既存の法体系の中でのカジノ施設の解禁ができないか検討を進めました。しかし三店方式は法的にグレーゾーン。刑法の賭博罪の規定をクリアするには、やはりカジノも公営ギャンブルなどと同様に独自の法律が必要との認識となり、国会に望みを託すことになります。
(写真)2014年10月16日、IR議連総会で挨拶する細田博之会長

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