Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#35 「IR*ゲーミング学会」でギャンブル依存症をテーマに議論が行われました 2015/11/30

10月29日、大阪商業大学で「IR*ゲーミング学会」のシンポジウムが開催されました。カジノ・IRの議論は経済や地域振興、観光学、社会学、病理学などの幅広い分野に及んでおり、IR*ゲーミング学会はその横断的議論をリードしてきました。

今回のシンポジウムではIRの先進国であるシンガポールより「国立依存症サービス管理機構(National Addiction Management Service 通称:NAMS)」医療委員会副会長のクリストファー・チョク氏が登壇。「シンガポールにおける問題賭博行動への取り組み」と題して講演を行いました。シンガポールでは2010年に2つのIRがオープンしましたが、オープン前の2008年と2014年とを比較して病的賭博と問題あるギャンブル依存症者の比率が大きく減少したことが分かっています。チョク氏は、「減少したという事実は他のメンタルコンディションでは説明がつかない」と話し、自己排除システム・家族排除システム等の取り組みが減少の要因になっていることを明らかにしました。

ギャンブル依存症の対策が進んでいるシンガポールでは、カジノ入場にあたりIDの提示を求められ、本人や家族などの事前の申請によって入場を断られる「自己排除(家族排除)システム」が行われています。また、シンガポール人に対して24時間あたり70シンガポールドル(約7,000円)の入場料を科しており、これについても「安易な参加を抑止する効果がある」と話していました。シンガポールではカジノ・IRの解禁にあたって継続的にギャンブル依存症について調査を続けており、これらの結果は日本におけるIR推進法案の議論でも先行事例として参考とすべきだと感じました。

パネルディスカッションでは医療関係者のみならず、さまざまな立場の有識者が議論を交わしていました。国内で実際にギャンブル依存症者の治療にあたっている成瀬メンタルクリニックの佐藤拓院長はギャンブル依存症について、アルコール依存症などとは対照的に何らかの拍子にピタリと止まることもあり得るもので、自然回復率も高いとの報告があることを紹介しました。また、大阪商業大学アミューズメント産業研究所の大谷信盛客員研究員は、昨年夏に発表されてセンセーショナルに取り上げられた厚生労働省科学研究班の調査結果はアルコール依存症の調査を主眼に置いたもので、依存症とは言えない軽度のプレイヤーが含まれている可能性を示唆していました。

東京、大阪と2日連続でギャンブル依存症をテーマにしたシンポジウムが行われ、二つのシンポジウムでは専門家同士でも見解に大きな違いも見られました。特にギャンブル依存症を病気としてとらえるべきという意見がある一方で、治療においてもケースよっては病気とすると人格攻撃となり治療の障害にもなり得るとの意見もあって、とても興味深いですね。IR推進法案が国会で議論されたことをきっかけに、ギャンブル依存症の議論は世論でも盛り上がっており、この問題を改善したいとの思いは誰しも共通のものです。関係者がお互いに議論を交わすことで、議論が深まっていくことを望みます。

#34 「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました 2015/11/29

11月28日、都内で「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました。主催は「ギャンブル依存症問題を考える会」で、共催として「希望日本投票者の会」も加わり、フォーラム会場には約200名の参加者が集まりました。元大関の貴闘力氏が自身のギャンブル依存症体験を赤裸々に語ったこともあり、さっそくニュース番組などで取り上げられているようです。体験談のほか、専門の医師による病気の解説、国会議員による進捗状況の解説など、初めて議論に触れた人にも分かりやすい内容でした。

フォーラムで特に強調されていたのは、①ギャンブル依存症は病気であること、②ギャンブル依存症患者は回復が可能であること、③自己責任とするのではなく社会病理としてセーフティーネットの導入が必要であることの三点。

国会議員の対談では、自民党、公明党、維新の党、無所属の4名の衆参国会議員が登壇していました。首相補佐官をつとめる自民党の柴山昌彦衆議院議員は「既存のギャンブル依存症問題について、海外並みの規制を行う必要がある」と話し、規制強化に意欲を示していました。柴山氏は昨年6月にIR推進法案が議論された当時の衆議院内閣委員会で委員長を務め、昨年夏に委員会メンバーとともにシンガポールのIRを視察しています。維新の党の初鹿明博衆議院議員もIR推進法の議論で依存症にスポットが当たった一方で、公営ギャンブルやパチンコ産業がテレビなどでCMを流している状況を指摘して、「ダブルスタンダードはやめるべきだ」と指摘していました。

個人的に印象的だったのは、「職親(しょくしん)プロジェクト」を推進しているカンサイ建装工業株式会社の草刈健太郎代表取締役の話でした。職親プロジェクトとは刑務所出所者の社会復帰を手助けするため、有志の企業が働く場を提供するというもの。草刈氏は以前、ご家族を海外で殺された経験があるものの、出所者の55%が再犯を冒すことからプロジェクト参加を決めたそうです。刑務所では食事などの経費や人件費などを合算すると、受刑者一人あたり年間1,500万円の経費がかかるそうで、仮に3年で出所した後に再度3年の刑を受けると、1億円弱のコストがかかることになります。受刑者の社会復帰は、行政コスト削減に直結している訳ですね。

大阪商業大学の谷岡一郎教授の「日本にカジノができるとき」という本の中で、海外のカジノ産業で広く用いられている「ノブリス・オブリージュ(noblesse oblige)」という言葉が紹介されていました。これは「貴族の義務」、すなわち富を持つ者は積極的に社会に富を還元せよという意味です。ギャンブル産業は人々の心に潜在的に存在する「射幸心」(ギャンブルで儲けたいという欲望)に働きかける側面があるので、広い社会貢献が求められるのです。ノブリス・オブリージュの精神は海外のカジノ運営者のあいだで実際に「レスポンシブル・ゲーミング(responsible gaming)」として、ギャンブル依存症対策のための基金の拠出などのかたちで実践されています。残念ながら日本にはこれらの概念がありませんが、どこか職親プロジェクトと通じるものがあると思います。

「ギャンブル依存症問題を考える会」はIR・カジノを含む統合型リゾートについては賛成でも反対でもなく、中立の立場を取っています。先進各国の例を見てもギャンブルを禁止すると闇社会に戻るのが通例なので、きわめて現実的な対応だと思います。昨年春の通常国会でIR推進法案が質疑されたことでギャンブル依存症問題にスポットが当たりましたが、IR推進法案が進まないのであれば対策だけでも先行させるべきという声も上がっています。

ギャンブル依存症の問題というのは決してカジノが建設された後の将来の問題ではなく、いま現実に起こっている問題です。IR推進の側も、考える会などの依存症関連団体との連携を強化すべき段階に来ていると思います。

#33 IRとギャンブル依存症① なぜ日本でギャンブル依存症が問題になっているのか 2015/11/22

2015年のIRに関する議論を振り返ると、ギャンブル依存症問題について大きなスポットが当たったと思います。

IRとは「カジノを含む統合型リゾート」のことです。カジノはギャンブルの一種であり、その運営にはプラス面・マイナス面の双方があることは事実で、マイナス面のひとつがギャンブル依存症です。これは何もカジノに限ったことではなく、国内の既存のギャンブル産業も同じように抱えてきた問題でもあります。

取材を続けてきた印象をひとことで言うと、国内の議論ではロジックのすり替えばかりが目立つということです。パチンコや公営ギャンブル、宝くじなどのギャンブル産業を原因としているギャンブル依存症の解決について、なぜかカジノ・IRへ責任転嫁されています。IRはまだ日本に存在していないので、これでは解決に向かうわけがありません。

国内でギャンブル依存症問題の対策に取り組む「ギャンブル依存症問題を考える会」が今年9月にまとめた報告書によると、新聞で報道されたギャンブル依存症を原因とする事件ではパチンコ・パチスロへの依存症が大半を占めているそうです。パチンコ・パチスロ産業が日本のギャンブル産業で大きなシェアを占めているという事実からも、これは納得できる結果だと思います。

もちろん、大王製紙の横領事件なども実際に起こっており、カジノを原因とするギャンブル依存症がゼロであるということではありません。しかし、日本国内でカジノが解禁されていない現状においては、カジノのある海外リゾートに渡るか、国内の違法カジノに行くかの2択。どちらもハードルが高いので、既存のギャンブル産業と比較すれば限られたケースであることは明らかです。

一方で、報道もだらしないと感じています。ギャンブル依存症の問題について取り上げる一方で、CMや新聞広告ではギャンブル産業からの出稿が絶えないので、スポンサーとして過度に気を遣っているようにも見えます。ギャンブルのCMについて、カジノ・IRの先進国では「射幸心をあおる」ものとして制限されているのが通例ですが、日本では放置されてしまっています。

日本ではあるべきギャンブル依存症対策が導入されていないため、国際水準から見ても依存症罹患率が高くなっています。逆に言えば、しかるべき対策を導入すれば日本も国内のギャンブル依存症罹患率を減少させることも可能になります。実際に、2010年にIRを解禁したシンガポールの事例では、ギャンブル依存症対策を同時にスタートしたことによって、当初の懸念とは反対に国内のギャンブル依存症罹患率が減少を続けています。

ギャンブル依存症問題の解決について重要なことは。ギャンブルの種類や施設の数が問題なのではありません。適切な対策を導入できるかどうかです。今回から数回に分けて、この問題について掘り下げていきます。

#32 第10回日本IR創設サミットin泉佐野が開催されました 2015/10/31

10月30日、関西国際空港のおひざ元である「りんくうタウン」にて「第10回日本IR創設サミットin泉佐野KIXりんくう」が開催されました。会場には約300名の出席者が駆け付け、改めて地方におけるIR誘致の熱気が感じられるイベントでした。

「日本IR創設サミット」とは、以前は「日本カジノ創設サミット」という名前で毎年行われてきたもので初回は2003年にさかのぼり、今回10周年を迎えました。いろいろな団体が開催するセミナーや勉強会とは異なり、全国各地でIR誘致に民間の立場で取り組む「全国IR誘致団体協議会」加盟の団体が集まることで知られています。それらの加盟団体はIR推進法案が成立した後には、誘致を巡って相互に競争しあうことになりますが、そういった利害関係を乗り越えて関係者が一堂に会する、まさに主要国首脳会議になぞらえた年に1回の「サミット」ということになります。今年は4名のIR議連メンバーが出席し、全国協議会の代表者が壇上で議連に対し、法案の早期審議を要望しました。

今回のサミットでは地元から泉佐野市の千代松大耕市長や泉佐野りんくう国際観光振興協議会の宮本勝浩会長らが登壇。宮本会長は関西大学の名誉教授で、経済波及効果の算出の第一人者として広く知られています。最近ではタレントのマツコ・デラックスさんのテレビ番組での「おいしい」というひとことが、その商品を扱う店舗・原材料店・交通費など、8億円超もの経済効果を生むという推計を行って話題になっていました。りんくう協議会でも関西空港における関空利用者などをもとに需要の予測やIRの事業規模の算定を行っています。

サミットでは毎年、国内外から招いたさまざまな分野の有識者が講演やパネルディスカッションを行うことが恒例となっています。今回も趣向をこらした内容になっていましたが、特に印象的だったのは国内の4大監査法人の担当者がはじめて勢揃いしたパネルディスカッション。4社はそれぞれ世界4大監査法人グループと提携しており、そこでは実際にカジノオペレーターの監査を行っていることが知られています。すなわち、国内の4大監査法人も海外のグループ会社を通じてIRを公正に見ていることになります。パネルでは法案成立後の実施法の在り方についての綿密な分析が示されたほか、登壇者からIRが安倍政権の掲げる一億総活躍社会や国内GDP600兆円達成の切り札になるといった見通しも示されました。

IRの経済効果は、学術の分野における経済波及効果の第一人者、世界を代表する監査法人グループの双方から太鼓判を押されたことになります。

それともうひとつ感じたことは、今回のサミットは内容がかなり濃密だったということですね。登壇者の中にはサミットでの講演に備え、とても綿密な事前調査を行っていた方や、準備をしていたものの時間の関係で内容をかなり絞った方もいました。まさに、主催者や登壇者の方々の並々ならぬ意気込みが伝わってきたわけですが、数日間に分けて開催するなどもっと広く深くお聞きしたかったというのが正直な感想です。

(写真)当日の会場の様子

#31 IR(統合型リゾート)推進協議会が都内で会合。IR議連総会は年内にも開催 2015/10/22

北海道から沖縄まで、全国各地の経済団体などが中心となって財界の立場でIR導入を推進している「IR(統合型リゾート)推進協議会」は20日、都内で役員会を行いました。

会合は非公開でしたが出席者によると、共同代表を務める(一財)日本総合研究所の寺島実郎理事長のほか、役員を務める全国の関連諸団体、学識経験者らが出席。会議ではIR推進法案にギャンブル依存症の対策が盛り込まれるだろうとの見通しが示されたほか、IR議連から「臨時国会開催の有無にかかわらず、年内には議連総会を開催したい」とのメッセージも紹介されたそうです。

春の通常国会では一連の安保法制議論などの影響で時間切れとなり、IR推進法案の進捗は残念ながら再提出のみにとどまりました。しかし、来週30日には今回で第10年目となる「日本IR創設サミット」も関西空港のおひざ元である泉佐野市で開催され、今回のIR推進協議会を皮切りに、IR導入に向けた議論が再スタートすることになります。

今後のIRに関する論点をIRの賛成派、反対派ともにいかに深く掘り下げていけるかが焦点になるでしょう。ギャンブル依存症の問題についても、「国内536万人」という数値が報道等で独り歩きしている状態ですが、合法化されたカジノの存在しない日本においては、既存のパチンコ・パチスロ産業や公営ギャンブルが原因です。カジノの存在する海外と比較してギャンブル依存症が蔓延しているということは、日本ではそれだけ対策が遅れているということの証左であり、IR反対の理由にはなり得ません。IRの論点は依存症だけにとどまらず、幅広い経済波及効果、さらには大人の女性も楽しむことができるラグジュアリーな空間創出といったエンターテイメントとしての側面にももっとスポットが当たるべきでしょう。

IR創設サミットでは経済アナリストのほか、国内の4大監査法人からIRの担当者がパネルディスカッションに登壇するそうです。国内GDP600兆円に向けた第三の矢としてIR導入が有効なのかどうか、議論がされることになると思います。

#30 IR議連勉強会とギャンブル依存症議員勉強会が開催されました 2015/07/31

今月29日、「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)は国会内で勉強会を開催しました。これは世界的なコンサルティング会社であるオックスフォード・エコノミクスが日本にIRが誘致された場合の経済効果について今月に入ってレポートを発表しており、担当者の来日に合わせてヒアリングを行ったということです。会場にはIR議連の役員、議連メンバーのほか、報道関係者も集まっていました。

今回発表されたレポートでは、日本の主な都市圏である東京圏、大阪圏でそれぞれIRが建設されたという前提で、推計調査を行ったものになります。それによると、消費支出(IRを訪問した内国人・外国人旅行客が消費した金額)は東京圏で2.2兆円、大阪圏で1.6兆円、雇用創出効果はそれぞれ103,000人、77,500人、税収は国税・地方税を合わせてそれぞれ4,700億円、3,400億円におよぶとされています。ライアン氏の説明によると、今回の分析ではマーケットの潜在性、需要予測、開発コスト、損益などについても考慮し、さまざまなプログラムを想定して算出したとのこと。

同日夕には院内で「ギャンブル依存症対策推進のための超党派勉強会」も開催。発起人にIR推進法案への反対者が含まれていたことからIR反対の勉強会との憶測も一部流れたようですが、IR議連から岩屋毅幹事長らも出席。ギャンブル依存症問題について医師・IR推進法案への賛成・反対ということではなく、日本における既存のギャンブル依存症問題の解決に向けて勉強会を続けていくことを決めたそうです。

カジノ・IRに関連して重要な会合が国会内で二つ開かれたことになりますが、ひとつ残念だったことは、報道の取り上げ方がIR推進法案への賛否、今国会でのIR推進法案成否の2点へ偏っていたことです。法案の賛否を検討するには世界各国のIRの現状、日本における15年の議論のストックへ目を向けるなど議論を深く掘り下げる必要がありますが、有識者による講演内容をよそに、政局に絡めた憶測ばかりにスポットが当てられていました。縦割り行政がかつて批判されたことがありますが報道も縦割りにならないように、広い視点から報道する姿勢が求められているのではないでしょうか。

(写真)当日の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)勉強会の模様

#29 IR推進法案の調整が本格化 2015/06/24

前回のコラムにおいてIR議連総会において、財界・地方自治体による早期成立にむけた要望の模様を取り上げましたが、さっそく調整の大きな進展が見られました。報道各社によると自民党の佐藤国会対策委員長は23日、IR推進法案の成立に意欲を示したと伝えられています。

ここで、政党の政策決定プロセスについて簡単におさらいしましょう。自民党はじめ主要国政政党では「政務調査会」(政調)、「総務会」、「国会対策委員会」(国対)という党内組織が置かれています。IR法案は超党派のIR議連において法案がまとめられたのち、政策の立案・審議を行う政調ならびにその下の部会において2012年はじめより議論がスタート。部会、政調役員会における承認を経たのち、翌年末に党の意思決定機関である総務会にて了承。この段階で党議決定、すなわち党内の手続きを終えたということになります。厳密にいうとIR推進法案ではギャンブルという側面も勘案して政調の部会にかける前にも時間をかけて丁寧な議論を行っているのですが、以前のコラムでも取り上げたので今回はその説明を割愛します。(本コラム#3参照)

政調、総務会というのはあくまでも党内の政策決定プロセスですが、国会は自民党だけ回るものではありません。他の政党と国会の進め方を協議して、調整を行うのが国対です。その自民党側の責任者である佐藤国対委員長が成立に意欲を示したということは、国会審議に向けた調整が進むことが期待できるということですね。

今回の発言における背景を考えると、会期の大幅な延長ということももちろんあるでしょうが、先日のIR議連総会における財界、地方自治体の弾みをつける要素になったと考えられます。政治では「一寸先は闇」という言葉もありますので、結果は最後まで分からない部分もありますが、期待して注視していきたいと思います。

#28 IR議連が総会を開催。IR推進協議会から財界や地方自治体代表者が登壇 2015/06/20

「国産観光産業振興議員連盟」(IR議連)は18日、国会内で総会を開催しました。今年2回目の開催となる今回の総会には国会議員の出席が約50名、代理出席が約100名、さらに民間や報道の関係者などから優に100名を超えるとみられる参加者が集まり、さながら今国会における法案成立へ向けての決起集会といった様相でした。

財界関係者からなる「IR推進協議会」から寺島実郎氏(日本総研会長)、新浪剛史氏(サントリー会長)の2名の共同代表がそれぞれ講演を行いました。「IRを成功させることで年間外国人観光客数を年間3,000万人、10兆円市場を目指すべき」(寺島氏)、「IRこそが大きな投資を集め、持続的な経済成長を可能とする」(新浪氏)とIR導入に伴う大きな経済的インパクトにスポットを当て、法案成立へ期待を示していました。また、協議会に参加している地方自治体の代表者として北海道・長崎県の副知事、佐世保市の副市長、大阪市の経済産業局長がそれぞれ登壇。IR誘致に向けた各地域における取組を紹介し、いずれもの国への要望として今国会における早期法案成立を要望していました。IR議連の細田博之会長も挨拶の席で「大きなサポートをお願いしたい」と発言していました。

一方、今回は開催されたタイミングから民間の関係者などを中心に、IR推進法案の審議を行う付託先委員会および審議開始時期の発表があるのではといった期待が広がっていたため、それらに関する発表がなかったことから一部に落胆の声があるようです。しかし、国会はIR推進法案を中心として動いているものではもちろんありませんし、政局や他の法案審議状況等の影響を受けることは仕方のないことです。ましてや、現在のように国会の会期延長幅が決定していない状況下においては、成立のための道筋をつけるのは難しいでしょう。しかし、そういった落胆の声が上がるということ自体、IR推進法案に対する関心の高さの裏返しとも言えます。

総会を機に、多くの国会議員や報道関係者を前にして財界と地方自治体の代表者が今国会における法案成立を申し入れたという事実はのちの法案審議にも大きなプラスとなるでしょう。引き続き注目されることになります。

(写真)当日の会場の様子

#27 世論を動かすには工夫も必要 2015/05/29

先日、関係者数名と会食をしたときに伺った話として、とても興味深いものがありました。そのうちのひとりはIRについては中立で、賛成でも反対でもありません。しかし彼女の活動がIR推進法案の議論の行方によってかなり影響を受ける事情があるため、このテーマについて一歩引いた立場から議論を見守ってきました。私と彼女とではスタンスが違うわりにお互いはっきりとものを言うので、IRや彼女の専門テーマで議論となることもたびたびありましたが、私自身としては初めて取材で話を聞いたときから目から鱗が落ちる経験を何度もさせてもらった人物です。

最近のIR推進法案の議論において、現在ネックとなっていることとしてメディアなどの報道での取り上げ方が挙げられます。私もIRの議論を長らく見守っており、ここ15年くらいのIRの動きはだいたい頭の中に入っているため、最近はIRに関連したニュース報道などに接する際には、赤ペンでチェックするような姿勢で接するようになってきました。その日はお酒も入っていたということもあり、恥ずかしながらそのような論調でメディア批判論をぶっていたのですが、そのとき彼女から真っ二つに斬られてしまいました。

彼女の団体はIRではありませんが注目の高いテーマの啓蒙活動を行っているため、メディアに取り上げてもらうことが多々あります。しかし、それが記事や映像となったときには、自分のアピールしたい内容から離れていることもあるそうです。そのときに、彼女はそのメディアを批判的に見るのではなく、自分のアピールの仕方がいけなかったと反省し、次はきちんと伝わるように工夫をするのだそうです。

これは私自身もそういった発言してきた張本人として反省しなければいけませんが、最近のIR推進派の議論のなかで「メディアを信じてはいけない」という声が多く聞かれるようになってきました。しかし、メディアはやはり世論へ発信する社会の公器。推進派の人間が行うメディア批判にIRとは縁もない一般の方が接すると、むしろ批判する側にも疑いの目を向けたくなってしまうそうです。記者もやはり人間なので「もっと勉強しろ」などと吠えられれば不快になることもあるでしょう。メディアの理解が足りないと思うのであれば、メディアが議論を行うことができる情報を推進派もきちんと提供すべきで、記者ひとりひとりに理解者になってもらうことが大切ということですね。

確かに、ひとの悪口などはよそから見ればたいてい目をそむけたくなるもので、度が過ぎれば逆にその人物の人間性を疑ってしまうことさえあります。そういった発信を行うことで、社会にどういった影響を及ぼすかということを冷静に見極めなければなりません。重要なことは他人の揚げ足を取ることではなく、きちんとした研究やエビデンスを示して議論を積み重ねるということです。法案が通った後には誘致を巡って競争するであろう候補地の関係者も、いまは一丸となって推進に動いている時期ですから、IR推進の議論を行うのであればみな気を引き締める必要があるのではないでしょうか。

#26 IR議連幹部会が開催されました 2015/05/26

先週21日になりますが、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の幹部会が開催されました。幹部会には細田博之会長はじめ、自民党、民主党、維新の党、公明党、次世代の党、日本を元気にする会より、各党世話人が顔を揃えました。

今回の幹部会では「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)の再提出についての報告のほか、法案審議に向けた各党における検討状況および国会審議についての意見交換がなされました。また、6月中旬にIR議連総会を開催する方向であり、その席にて先月正式に発足した「IR推進協議会」から代表者を向かえるかたちで調整が進められることになりました。

今国会においては、昨年末の衆議院総選挙、4月に統一地方選挙、5月に大阪都構想住民投票などの選挙の影響により、国会審議スケジュールが例年に比べて全体的に1カ月程度の遅れが生じています。一方で安保法制といった長い審議時間が必要な議論も残っており、1カ月半程度の会期延長が見込まれています。IR推進法案は民主党、公明党がそれぞれの党内で対応を協議していますが、自民党、維新の党、次世代の党はすでに党議決定を行っています。そのため現時点においては、IR推進法案が今国会で成立する可能性は高いものと考えるべきでしょう。

ただし、実際に成立するかどうかは会期末まで分かりません。IR議連では6月以降より国会審議を進めたい考えですが、国会日程というものは生き物のように変化するものです。今国会での成立を前提とすると、やはり6月中には審議入りすることが望ましいでしょう。一方で現時点では国内でのIR解禁について議論について、残念ながら議連の考えが必ずしもきちんと伝わっていないように見えます。これは報道に頑張ってもらいたいところですが、推進する側も世論や報道などへきちんと伝わるように心を尽くす必要があります。

参入を考えている自治体や企業の中でも「カジノ」という言葉にいまだ抵抗感があるのでしょうか、表立った動きを控えたいという風潮がいまも見られるようです。地方や民間の姿勢というものは実は法案審議の進捗にも間接的に影響を及ぼします。その意味では推進する立場であれば法案審議に向けて、ひとりひとりが協力して声を上げるべき時期に来ており、それが法案の成立時期に直結することになります。審議入りが早ければ法案成立の可能性が高まり、遅くなれば今国会における成立可能性はどんどん低くなるでしょう。

その意味ではIR推進協議会のような枠組みはとても重要だと思います。すでに反対派も準備を進めているようですが、推進するのであれば世論への発信や、各党や付託先委員会の理事や委員へ要望するなど、もう動き出すべき時期に来ています。

リゾカジの歩き方! 初心者のためのカジノ

プルマン・リーフカジノ