Integrated Resort インテグレーテッド リゾート

佐藤亮平の VIVA! IR!!

IR推進法案や各地の誘致の動きから、エンターテイメントとしての魅力まで。
Integrated Resort(統合型リゾート)とは何か?を様々な角度から、専門記者がレポートしていきます。

佐藤亮平 Profile

民間でのIR誘致調査に従事したのち、2011年よりカジノ・IRの取材を開始。専門誌「カジノジャパン」記者、IRの政治・経済情報ポータルサイト「カジノIRジャパン」記者を経て、現在フリー。

#42 IR議連幹部会が開催され、関西経済同友会がプレゼンを行いました 2016/03/29

29日、国会内にて「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)の幹部会が開催されました。今回の幹部会には自民党、公明党、民進党、大阪維新の会、日本のこころを大切にする党の各党から約10名の国会議員が参加しました。今回のテーマは、①関西経済同友会が今月はじめに発表した大阪・関西の経済効果の試算についてのヒアリング、②議連の今後の活動について、の2点です。

関西経済同友会からは講師として、齊藤行巨事務局長が出席。同友会の内部に設置されている「関西MICE・IR推進委員会」が今月2日にまとめた大阪・関西IRの経済効果の試算について説明を行いました。同友会では昨年1月「大阪・関西らしいスマートIRシティ」の構想コンセプトを発表するなど長年にわたり調査・研究を続けており、構想の発表と同時にギャンブル依存症に関する提言を行っています。

観光客数等や各種マーケティングデータをもとに試算すると、大阪ベイエリア・夢洲のIRでは年間ビジネス収入が5,545億円、投資規模は6,759億円。経済効果は開業前・開業後に分け、開業までの累計で1.5兆円・9.3万人の雇用、開業後では年間7,596億円・9.8万人の雇用創出効果が期待できるとしています。

約8,000億円の投資と聞くといささか大きすぎるように感じるかもしれませんが、議連の方針では日本国内のIR設置数は当初2~3カ所で試行し、プラス・マイナスの効果を検証しながら最大で10カ所程度まで拡大していくとしています。これは、アメリカでは約1,200ものカジノ・IR施設が存在することと対照的です。日本にはパチンコがあるため単純な比較は難しいとの声もありますが、IRの施設数で考えると日本の経済規模から比較すると寡占状態と言えるほど施設数が少ないということです。実際にオペレーター(カジノ事業者)は世界最後の市場として有望視しており、1兆円投資するとの声も上がっており、大阪ベイエリアという立地を勘案しても妥当なのではないでしょうか。

ギャンブル依存症について同友会の昨年の提言では、海外のカジノ・IR業者の例に倣ってIR運営業者が対策費を拠出するとしています。日本でギャンブル依存症が問題になっている背景は、海外のように予防・対策が行われてことが一番の原因です。ちょうどこちらの過去のコラムで取り上げた「レスポンシブル・ゲーミング(ギャンブリング)」の概念ですね。日本でもようやく進みつつありますが、今後は既存のギャンブル産業の見直しは進んでいくことになるでしょう。同友会は引き続き、ギャンブル依存症など社会問題について研究調査を継続し、さらなる提言を行う予定です。

議連幹部会では今後の方針として、①各党からさらに役員を募っていくこと、②今年5月の早いうちに議連総会を開催すること、③総会で「今年秋に法案の成立を期す」とのメッセージを示すこと、の3つの方針が確認されました。また、IRがテーマとなった今月25日に開催された衆議院内閣員会の模様として、先週の内閣官房IR特命チーム凍結報道が改めて否定されていたことが報告されました。さらに同委員会における菅義偉官房長官の「(観光立国を目指す日本にとって)IRが欠かすことができない」「(IR推進法案が)成立した暁にはすぐに対応することができるような状況はしっかりと作っておく」との発言が紹介されました。

先週の一部報道では関係者の間に大きな衝撃が走りましたが、それを受けて政府からIR推進に向けた強い意欲が表明されたことになり、IR推進派にとっては「災い転じて福と為す」といったところでしょうか。IR推進法案の審議は参院選後に持ち越される方向ですが、国会質疑を通じて政府の前向きな姿勢が示されたことから、法案成立後を見据えた環境整備として地方・民間の動きは加速していくことになりそうです。

(写真)「大阪・関西らしいスマートIRシティ」 関西経済同友会提供

#41 「IR特命チームの凍結報道」について、内閣官房へ直接聞いてみました 2016/03/24

22日の報道で「内閣官房のカジノ検討チームが業務を凍結する」という趣旨の記事が出ました。これまでの私自身の取材と照らし合わせて違和感があったため、その内容について内閣官房へ照会をかけてみました。

報道では「業務を当面凍結する方針」「事務室は近く閉鎖」という表現がみられましたが、担当者は業務凍結について「凍結ということではなく、何か決定したということでもない」と話していました。このほか、別の国会関係者に意見を求めたところ、こちらからも「閉鎖という可能性はないのでは」と疑問の声が聞かれました。

そもそもIR推進の特命チームは、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」(新成長戦略)において「統合型リゾート(IR)については、(中略)関係省庁において検討を進める」との表現が盛り込まれたことをきっかけとして発足しています。新成長戦略では「観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待される」という表現とともに、「犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要」との文言も盛り込まれており、特命チームはIRによって生じるプラス面・マイナス面双方の検討を進めているわけです。

ここから先は私見になりますが、IR推進法案の審議が昨年持ち越されたことで内閣官房の検討作業が先行していることも明らかで、定例人事異動で増減する可能性はあると思います。関係者の間では配置転換で減少するのではないかという観測もあることも確かですが、これを掘り下げると「凍結」という表現よりは「検討作業の山場を超えた」と見るのが適切。これまで段階的にチームが大きくなってきたことの揺り戻しにすぎません。実際、これまでも発足後の増員という事実はあった一方でニュースとして報じられることはなく、私もこれに絞って取材しようとは思いませんでした。もちろん特命チームが廃止されるなら話は別ですが、「人員が増えた」「減った」というだけでは私は特に報じる必要性は感じないということです。事務所の閉鎖という話も同じことで、人員規模が変われば今のスペースから移転することは当然のこと。要は定例の人事異動で適材適所に移る可能性があるというだけで、こちらも驚くべきことではないと思います。

一方で「内閣官房」「業務凍結」「事務所閉鎖」という表現は、その言葉だけが独り歩きしてしまうほど、強いインパクトが含まれています。現に電子版が出たわずか10分後から、さっそく驚いた関係者からなぜか私のところにまで照会がかかってきました。政府の動静を見定めるという点と、ちょうど年度末という時期も手伝って、関係者がこの手の情報に関して神経をとがらせているためです。

報道された政府高官によるコメントは、実際にあったものと考えて良いでしょう。また、現場に情報が下りていないだけで、今後事実になるという可能性も否定できず、「凍結する方針を固めた」という強い文言が気になることも確かです。ただし、他社が続かなかったことから記者会見における正式な発言ではなく、オフレコの独自取材として読むことになります。その上で記事内容を政府発と記者の見解とに分類していくのですが、見出しは基本的に記者とは別の人間が付けているため、そこも分けて考えます。さらに、ぶら下がりでの発言は記者会見と比べると往々にして憶測も混ざることもあるという点も念頭に読み解いていきます。

今回の報道は社会的関心の表れ乃至ひとつのニュースとしての価値は十分ありますが、ここで紹介したように現場レベルでは困惑が広がっていることに加えて、他紙の後追い記事も見られません。そのため、関係者が各種判断を下す材料とするには不明瞭で、それには4月初めの人事異動や、さらなる続報での検証を待った方が賢明という判断になるかと思います。

日本の報道はどうしても人目を惹くであろう内容が過度に強調される傾向があるため、読み手側はそういうものとして、そこから割引いて読む技術も必要になってきます。一方で今回の件は、IRというテーマが社会の関心を惹くテーマとなっていることの現れでもあり、それ自体は結構なことだと思います。私はメディアリテラシーとして考えさせられる記事だと感じましたが、皆さんはどうご覧になりましたか。

#40 鳴門のミニフォーラムで考える「カジノと健康」 2016/03/07

鳴門IR健康保養誘致協議会は3月5日、鳴門市内でミニフォーラムを開催しました。徳島県内では日本カジノ健康保養学会が10年以上にわたって地方型カジノの誘致運動を展開。昨年9月には同学会のほか鳴門商工会議所、鳴門市うずしお観光協会、鳴門青年会議所、鳴門法人会などが結集するかたちで「鳴門IR健康保養誘致協議会」が設立されています。

今回のミニフォーラムのテーマは「カジノと健康」。日本カジノ健康保養学会の中西昭憲会長は、70枚におよぶスライド写真を見せながら、緑に囲まれた古くからのカジノ保養地として有名なドイツ・バーデンバーデンの街づくりを紹介。学会が提唱している「カジノ健康保養システム」の紹介がなされました。

ドイツ語圏ではバーデンという言葉を含む歴史あるカジノリゾートが多く存在します。Badenとはドイツ語で「温泉」を意味し、諸外国では日本のようにどこで穴を掘っても温泉が湧くということは極めてまれです。そのためヨーロッパ諸国の温泉保養地は王侯貴族に独占され、遠方からの訪問客が持て余した時間を過ごすレクリエーションとしてカジノが好まれました。これを現在の日本に置き換えると、諸外国から来日した富裕層が観光地訪問や文化体験などを楽しむかたわら、空いた時間でゲームを楽しむということになるでしょう。実際に日本ではナイトエンターテイメントの種類が乏しく、深夜便で日本に到着した外国人が行き場を失っているということが起きています。

インバウンド増の影響もあり、現在東南アジア諸国などから日本の高い医療技術を求めて、検査や手術を目的に来日する医療ツーリズムも増えてきています。現状では患者はほとんどが高所得者層で1週間以上の滞在。医療費のほか本人および同伴者の渡航費、宿泊費などを含めると1回の渡航費で数百万円以上という例も多く、その経済波及効果は莫大なものになります。地方では医療機関があってもラグジュアリークラスのホテルなどは極めてまれで、老若男女、病人やけが人でもハンデなく楽しめるカジノ・IRは医療ツーリズムとの相乗効果も期待できるわけです。

精神科医でもある中西氏はフォーラム開催後、「海外富裕層向けのメディカルツーリズムとしても意義があり、税収を街づくりに充てるシステムとしてカジノが街と調和している」と話していました。カジノ・IRの議論に縁がなかった参加者からは「マカオ・シンガポールとは異なる魅力があり驚いた」との声も上がったそうです。

セミナーには国際観光振興議員連盟から細田博之会長、岩屋毅幹事長、萩生田光一事務局長の連名による祝電が届き、鳴門での活動に対して議連として感謝の意が伝えられました。その中で法案については「遅くとも今年中の成立を目指し、調整を続ける」と従来よりも一歩踏み込んだ決意表明がなされました。セミナーの模様は地元ケーブルテレビなどで放送されたそうで、地元での理解がさらに進むものと思います。

(写真)当日の会場の模様 鳴門IR健康保養誘致協議会提供

#39 JAPICがセミナー 岩屋氏・観光庁田村長官・アトキンソン氏らが議論 2016/02/23

一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は17日、都内で「『観光立国ニッポン』実現のみちすじ」と題したセミナーを開催しました。基調講演には小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏が登壇。また、特別ゲストとして国際観光産業振興議員連盟幹事長の岩屋毅衆議院議員が講演したほか、パネルディスカッションには観光庁の田村明比古長官はじめ観光分野の有識者が加わって議論を交わしました。

JAPICは地方創生や国家戦略などの分野におけるさまざまな課題について、産官学および民間のネットワークをもとに革新的な提案を行っている団体です。IRに関しても膨大な蓄積があり、石原慎太郎東京都知事(当時)がお台場カジノ構想を提案した1999年に、内部に「複合観光事業研究会」を設置。米国や欧州、オセアニア、アジアのカジノ・IRリゾートの視察調査を実施し、その調査報告は現在のIR推進法案の議論の土台になっています。今回のフォーラムは「複合観光事業研究会」と「ヒト・モノ・カネ呼び込み戦略委員会」との共催というかたちで開催されました。

イギリス出身のアトキンソン氏はゴールドマン・サックス証券取締役を経たのち、文化財の修復を手掛ける小西美術の社長に転身した異色の経歴の持ち主。講演では日本の観光について自然・気候・歴史文化・食事といった観光資源に加え、海外と比較して「多様性」が武器になると話していました。フランスは世界第1位の外国人観光客数を誇る国として知られていますが、地中海には温暖な気候を生かしたビーチリゾートがある一方で、ヨーロッパ最高峰のモンブランでは登山も楽しむことができます。アトキンソン氏は日本の観光資源も世界有数の多様性を有しており、現在の日本の潜在的な外国人観光客数を試算すると5,600万人に及ぶそうです。さらに2030年には全世界の観光客数が現在の1.5倍程度増えるため、客単価を上げて増加分を抑えることを考慮しても、2030年の日本の観光客数受け入れの潜在能力は8,200万人まで上昇。すなわち、日本の観光産業の現状というものは、観光資源の多様性に恵まれているものの、観光客受け入れの潜在的能力を生かし切れていない状態ということになります。

続いて登壇したIR議連の岩屋毅幹事長は、日本の成長性として一番有力なものは観光分野であると強調。国会日程はタイトなものの、「今年中の推進法案成立に向けて環境整備をしっかりと行っていきたい」と発言。衆議院予算委員会で平成28年度予算案が通過の目途が付き次第、ただちに役員会を開催したいとの意向を示しました。

パネルディスカッションでは観光庁の田村長官が2015年の速報値で観光産業市場が3.4兆円を超えて過去最高を記録したことに触れ、「輸出製品として見ると自動車製品と同じくらいの額」と日本経済における観光産業の存在感が増加していることを指摘していました。また、ヒト・モノ・カネ呼び込み戦略委員会で委員長を務める森ビル都市企画(株)山本和彦代表取締役社長は、都市部の六本木ヒルズのほか、香川・岐阜・福井でのプロジェクトを紹介。ロードサイドでチェーン店の進出が続いている状況に触れ、既存中心街の活性化の意義を指摘。また、プライスウォーターハウスクーパース株式会社パートナーの野田由美子氏も、既存の観光資源を磨き、ないものを足して再構築することで8,200万人も夢ではないと話していました。

主催者によると今回のセミナーには約230名が出席したそうで、関心の高さが伺えました。世界の観光産業を見ると、シンガポールがIR導入後の5年間で外国人観光客数を1.5倍に増加させた例など、観光産業振興の切り札としてIRの導入が有効であることが実証されています。言うまでもなく観光産業は数少ない成長産業で、2030年に18億人まで増加する外国人観光客をいかに日本へ引き付けるかということは、今後の日本経済の成長性につながってくることになります。観光産業の切り札としても、IRの議論がさらに進んでいくといいですね。

#38 ハウステンボスで「ロボットカジノ」 西九州統合型リゾート研究会総会 2016/02/18

「西九州統合型リゾート研究会」は16日、ハウステンボス(HTB)のレンブラントホールにて定期総会を開催しました。HTBへのIR誘致活動は長崎県・佐賀県・福岡県の経済界関係者を中心に、2007年より観光活性化に向けた取り組みの一環として取り組まれてきました。当日は研究会会員のほか、地元市民、マスコミ関係者など、約100名の参加者が会場を訪れました。

HTBでは2015年7月に最先端技術を活用した「変なホテル」が開業。ロボットを宿泊分野へ活用したことが話題となったほか、輻射パネルなどの技術導入によって冷暖房のコストを削減。特に人型や恐竜型のロボットが宿泊客を相手にチェックイン手続きを行う様子はとてもユニークで、テレビや雑誌などでも多く取り上げられました。一方、ハウステンボスを擁する長崎県・佐世保市エリアは、官民一体となった誘致活動が長期にわたって展開されてきたエリアとしても知られています。

今回のイベントでは「ロボットカジノ」と題して、ロボットが模擬カジノのディーラーをサポート。ルーレットテーブルでは「ノーモアベット」とチップを賭ける終了の合図の掛け声を上げ、そのユニークな動きに参加者も思わず顔をほころばせていました。

講演を行った大阪商業大学の美原融教授はイベント開催後の取材で、「将来のカジノとしてのPR効果も大きく、話題性の提供という観点でもとても面白い取り組み」とコメント。主催関係者も「説明会などを開催してきたが、IRに関して新しい可能性を提案していきたい」と話していました。また、ロボットとカジノという組み合わせには報道機関の高い関心を引き、長崎県内の全てのローカルテレビ局・地方紙で取り上げられました。

HTBでは今年の夏には「ロボットの王国」のコンセプトのもと、ロボットが店長や料理長をつとめる「変なレストラン」、さまざまなロボットを体験できる「ロボットの館」をオープンする予定。“ロボットとIR”のコンセプトは世界でも例がなく、ハウステンボス独自との取り組みとして今後も関心を集めることになりそうです。

(写真左)ロボットがルーレットディーラーをサポート。西九州統合型リゾート研究会提供

#37 パチンコ依存症を扱った映画「微熱」が2週間限定で上映中 2016/01/13

1月22日までの2週間限定で渋谷ユーロスペースにて開催されている「全力映画祭」で、ギャンブル依存症をテーマにしたショートムービー「微熱」が上映されており、私も見に行って参りました。

映画では、若い夫婦と幼い娘の3人の家庭が、夫のパチンコ依存症によって転落していく過程が丹念に描かれています。テンポの良い映像として表現されていることで感情移入しやすく、転落していくストーリーが決して他人事ではないと感じられることから、思わずスクリーンから目が離せなくなります。

精神科医で作家の帚木蓬生氏の「ギャンブル依存とたたかう」(新潮選書・2004年)という本の冒頭に「ある主婦の『転落』」という悲劇の物語が描かれており、ふとその内容が脳裏に浮かびました。ギャンブル依存症問題について勉強するなかで読んだ一冊でしたが、こちらもパチンコ依存症の主婦の心境が緻密に描かれ、私自身もこの本で大きな衝撃を受けたことが現在の取材の原点のひとつになっています。「微熱」ではギャンブル依存症者の心境や家族の風景がリアルな映像として表現されているためそれ以上に心に刺さるものがあり、依存症についての事前知識の有無に関わらず映画を観た観客も大きな衝撃を受けるだろうと思います。

周囲にギャンブル依存症者がいない場合、依存症についての本や記事を読んだとしても本人や家族の苦悩というところまではなかなか理解することが困難で、「自分には関係ない」とどこか他人ごとのように捉えてしまいがちです。映画ではナレーションがなく役者同士の会話も少なめですが、カメラがギャンブル依存症者本人やその家族の視点に置かれ、彼らの心境が生々しく表現されています。たとえば「会社の金に手を付ける」という場面。ギャンブル依存症で横領と聞いただけでは「いくらギャンブル依存症でもそこまではしないだろう」と思ってしまいがちですが、映画を見ると「こういう状況ならやってしまいかねない」と背筋が凍る思いがしました。

小澤雅人監督に話を伺ったところ、ご自身もギャンブル依存症の家庭で育ったそうで、「自分がギャンブル依存症だということに気づけないと、悪い循環から抜け出せない」と話していました。監督はこれまでも社会問題にスポットを当てた映画を手掛けており、「微熱」も第14回イマジンインディア国際映画祭でベストショートフィルム賞を受賞しています。ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表も「パチンコ依存症者やその家庭のリアルが描かれており、その現実を知ってほしい」と話していました。

前回までのコラムで海外カジノ産業における「レスポンシブル・ゲーミング」(賭博産業の企業責任)について書いてきましたが、映画「微熱」は日本で啓発が遅れている現実についても私たちに突きつけてくれた気がします。ギャンブルの楽しさと表裏一体にある依存症問題について、あらためて考えさせられる映画です。

「全力映画祭」は今月22日までのレイトショーで、小澤監督のトークショーも予定されています。興味のある方は是非ホームページで上映スケジュールをチェックしてみてください。

(写真)「微熱」で第14回イマジンインディア国際映画祭ベストショートフィルム賞を受賞した小澤雅人監督

#36 パチンコの釘調整問題で考える「責任あるギャンブル産業」の在り方 2015/12/25

12月24日、新聞・テレビ等の報道各社がパチンコの釘調整問題について、一斉に取り上げ始めました。各社の報道を見ると表現の共通点が多く、記者クラブを通じて発表がなされたものとみられます。ギャンブル依存症問題の関連テーマとして今回はパチンコの釘調整問題についてスポットを当ててみます。

パチンコ店に置かれているパチンコ台の釘に関して、法令において「おおむね垂直であること」との規定が置かれています。一方で金属の釘は用意に曲げることが可能であることから実際には釘調整が広く行われており、これは法的にグレーゾーンです。パチンコ・パチスロは製造にあたって「射幸性(当たりやすさ)」に焦点を置いた型式検定試験を通過する必要があり、試射試験では一定時間内の出玉数が所定の範囲内に収まらなければなりません。しかし釘調整で射幸性を高め、本来は検定を通過できない射幸性の高い機械を生み出す「釘曲げ」も蔓延していました。今回の問題はこの過度な「釘曲げ」行為が出荷段階で行われたことが問題視され、警察庁が業界団体に対して撤去を要請する騒ぎになりました。

この背景には、レジャー産業の多様化にともなうパチンコ市場の縮小による、パチンコ店同士の競争激化というパチンコ業界が抱える構造的な問題があります。言い換えればパチンコ店・機械台数の供給が、縮み続ける需要・すなわちファン人口減少のペースに追いついてこなかったということです。釘調整によって射幸性を過度に引き上げ、客単価を上げて利益を確保することで参加人口の減少をカバーしてきており、これは「射幸心(ギャンブルで大当たりしたいという欲望)」をあおってきたということと同義です。結果として多くのギャンブル依存症者を生み出してしまい社会問題化しており、これが昨年行われたIR推進法案の国会質疑をきっかけに一気に表面化していました。

パチンコ業界における大規模な機械の入れ替えは、今回が初めてではありません。今から10年ほど前のことですが、警察庁の主導によりホールに設置されていたパチスロ(4号機)のいわゆる「爆裂機」を3年間の移行期間を設けて新たな基準に基づく「5号機」に全台入れ替えたことがあります。一般にはあまり知られていませんが当時と現在とで入れ替えの背景について考えてみると、いずれも政府や与党内でカジノ合法化が政策として浮上していた時期と重なります。実際に当時もカジノ合法化議論の中で推進派の国会議員からパチンコの換金問題などについて警察庁を問いただす場面が見られ、今回も警察庁が監督官庁としてカジノ・IRの法案が国会で議論される前に、射幸性を高める主な要因となっている釘調整問題について手を打ったと考えるのが自然でしょう。

前々回(#34)のコラムでも簡単に触れましたが、海外のカジノ先進国では「レスポンシブル・ゲーミング(または、レスポンシブル・ギャンブリング)」という言葉があります。この概念は、ギャンブル産業が射幸性に基づく産業である以上、産業として一定の社会的責任を果たすべきという考えです。その一端としてギャンブル依存症予防・ケアへの資金の拠出などがあるのですが、日本では「自己責任」として、現状では依存症者本人や家族の負担になってしまっており、これは見直す必要があります。IR推進法案にもその趣旨の規定が盛り込まれていますが、カジノがまだ存在しない日本でギャンブルに関連した社会問題が発生している以上、既存のギャンブル産業もレスポンシブル・ゲーミングに倣って、相応の負担を負うべきでしょう。言い換えれば、現状は依存症対策が満足に行われていないために、社会問題になってしまっているわけですね。

さらに今回の一連の報道が出た背景として「ギャンブル依存症問題を考える会」の活動の影響も大きいと見ています。先月末、都内で開催された考える会のフォーラムにはギャンブル依存症に苦しんだ経験を持つ元大関貴闘力関や与野党の国会議員を迎え、多くのテレビや新聞などの多くの報道関係者が詰めかけていました。そのフォーラムの席においても、国会議員らを前にギャンブル依存症問題のほか、釘調整問題について問題視する声が上がっていました。

個人的には、ギャンブル産業全体にとっても近代化を進める良い機会になると考えています。今年もつい先日までテレビなどで年末ジャンボ宝くじのCMがバンバン流れていましたが、やたらと当選金額を強調したCMを見るたびにいつも「これはいかがなものか」という思いが浮かびます。日本では宝くじはギャンブルではないなどと言う識者もいるようですが、賭博とは「①偶然の事象に②金銭を賭して③勝敗の結果で財物を手に入れる遊興」のことなので、本来は宝くじもギャンブル産業として適切な規制がなされるべきです。もちろん、競輪や競馬などの公営ギャンブルも適切な規制が必要ということはあえて言うまでもありませんが、それらもカジノ・IRの議論が深まるたびにだんだん俎上に上がっていくことになるでしょう。

日本ではレスポンシブル・ゲーミングが浸透していないため対策がおろそかになっており、結果としてギャンブル産業の社会的評価がいつまでも高くならない遠因となっています。今回のパチンコ釘調整問題は、カジノ・IRの議論という黒船によって既存のギャンブル産業も変革せざるを得ない場面に直面したひとつの事例ということです。

#35 「IR*ゲーミング学会」でギャンブル依存症をテーマに議論が行われました 2015/11/30

10月29日、大阪商業大学で「IR*ゲーミング学会」のシンポジウムが開催されました。カジノ・IRの議論は経済や地域振興、観光学、社会学、病理学などの幅広い分野に及んでおり、IR*ゲーミング学会はその横断的議論をリードしてきました。

今回のシンポジウムではIRの先進国であるシンガポールより「国立依存症サービス管理機構(National Addiction Management Service 通称:NAMS)」医療委員会副会長のクリストファー・チョク氏が登壇。「シンガポールにおける問題賭博行動への取り組み」と題して講演を行いました。シンガポールでは2010年に2つのIRがオープンしましたが、オープン前の2008年と2014年とを比較して病的賭博と問題あるギャンブル依存症者の比率が大きく減少したことが分かっています。チョク氏は、「減少したという事実は他のメンタルコンディションでは説明がつかない」と話し、自己排除システム・家族排除システム等の取り組みが減少の要因になっていることを明らかにしました。

ギャンブル依存症の対策が進んでいるシンガポールでは、カジノ入場にあたりIDの提示を求められ、本人や家族などの事前の申請によって入場を断られる「自己排除(家族排除)システム」が行われています。また、シンガポール人に対して24時間あたり70シンガポールドル(約7,000円)の入場料を科しており、これについても「安易な参加を抑止する効果がある」と話していました。シンガポールではカジノ・IRの解禁にあたって継続的にギャンブル依存症について調査を続けており、これらの結果は日本におけるIR推進法案の議論でも先行事例として参考とすべきだと感じました。

パネルディスカッションでは医療関係者のみならず、さまざまな立場の有識者が議論を交わしていました。国内で実際にギャンブル依存症者の治療にあたっている成瀬メンタルクリニックの佐藤拓院長はギャンブル依存症について、アルコール依存症などとは対照的に何らかの拍子にピタリと止まることもあり得るもので、自然回復率も高いとの報告があることを紹介しました。また、大阪商業大学アミューズメント産業研究所の大谷信盛客員研究員は、昨年夏に発表されてセンセーショナルに取り上げられた厚生労働省科学研究班の調査結果はアルコール依存症の調査を主眼に置いたもので、依存症とは言えない軽度のプレイヤーが含まれている可能性を示唆していました。

東京、大阪と2日連続でギャンブル依存症をテーマにしたシンポジウムが行われ、二つのシンポジウムでは専門家同士でも見解に大きな違いも見られました。特にギャンブル依存症を病気としてとらえるべきという意見がある一方で、治療においてもケースよっては病気とすると人格攻撃となり治療の障害にもなり得るとの意見もあって、とても興味深いですね。IR推進法案が国会で議論されたことをきっかけに、ギャンブル依存症の議論は世論でも盛り上がっており、この問題を改善したいとの思いは誰しも共通のものです。関係者がお互いに議論を交わすことで、議論が深まっていくことを望みます。

#34 「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました 2015/11/29

11月28日、都内で「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました。主催は「ギャンブル依存症問題を考える会」で、共催として「希望日本投票者の会」も加わり、フォーラム会場には約200名の参加者が集まりました。元大関の貴闘力氏が自身のギャンブル依存症体験を赤裸々に語ったこともあり、さっそくニュース番組などで取り上げられているようです。体験談のほか、専門の医師による病気の解説、国会議員による進捗状況の解説など、初めて議論に触れた人にも分かりやすい内容でした。

フォーラムで特に強調されていたのは、①ギャンブル依存症は病気であること、②ギャンブル依存症患者は回復が可能であること、③自己責任とするのではなく社会病理としてセーフティーネットの導入が必要であることの三点。

国会議員の対談では、自民党、公明党、維新の党、無所属の4名の衆参国会議員が登壇していました。首相補佐官をつとめる自民党の柴山昌彦衆議院議員は「既存のギャンブル依存症問題について、海外並みの規制を行う必要がある」と話し、規制強化に意欲を示していました。柴山氏は昨年6月にIR推進法案が議論された当時の衆議院内閣委員会で委員長を務め、昨年夏に委員会メンバーとともにシンガポールのIRを視察しています。維新の党の初鹿明博衆議院議員もIR推進法の議論で依存症にスポットが当たった一方で、公営ギャンブルやパチンコ産業がテレビなどでCMを流している状況を指摘して、「ダブルスタンダードはやめるべきだ」と指摘していました。

個人的に印象的だったのは、「職親(しょくしん)プロジェクト」を推進しているカンサイ建装工業株式会社の草刈健太郎代表取締役の話でした。職親プロジェクトとは刑務所出所者の社会復帰を手助けするため、有志の企業が働く場を提供するというもの。草刈氏は以前、ご家族を海外で殺された経験があるものの、出所者の55%が再犯を冒すことからプロジェクト参加を決めたそうです。刑務所では食事などの経費や人件費などを合算すると、受刑者一人あたり年間1,500万円の経費がかかるそうで、仮に3年で出所した後に再度3年の刑を受けると、1億円弱のコストがかかることになります。受刑者の社会復帰は、行政コスト削減に直結している訳ですね。

大阪商業大学の谷岡一郎教授の「日本にカジノができるとき」という本の中で、海外のカジノ産業で広く用いられている「ノブリス・オブリージュ(noblesse oblige)」という言葉が紹介されていました。これは「貴族の義務」、すなわち富を持つ者は積極的に社会に富を還元せよという意味です。ギャンブル産業は人々の心に潜在的に存在する「射幸心」(ギャンブルで儲けたいという欲望)に働きかける側面があるので、広い社会貢献が求められるのです。ノブリス・オブリージュの精神は海外のカジノ運営者のあいだで実際に「レスポンシブル・ゲーミング(responsible gaming)」として、ギャンブル依存症対策のための基金の拠出などのかたちで実践されています。残念ながら日本にはこれらの概念がありませんが、どこか職親プロジェクトと通じるものがあると思います。

「ギャンブル依存症問題を考える会」はIR・カジノを含む統合型リゾートについては賛成でも反対でもなく、中立の立場を取っています。先進各国の例を見てもギャンブルを禁止すると闇社会に戻るのが通例なので、きわめて現実的な対応だと思います。昨年春の通常国会でIR推進法案が質疑されたことでギャンブル依存症問題にスポットが当たりましたが、IR推進法案が進まないのであれば対策だけでも先行させるべきという声も上がっています。

ギャンブル依存症の問題というのは決してカジノが建設された後の将来の問題ではなく、いま現実に起こっている問題です。IR推進の側も、考える会などの依存症関連団体との連携を強化すべき段階に来ていると思います。

#33 IRとギャンブル依存症① なぜ日本でギャンブル依存症が問題になっているのか 2015/11/22

2015年のIRに関する議論を振り返ると、ギャンブル依存症問題について大きなスポットが当たったと思います。

IRとは「カジノを含む統合型リゾート」のことです。カジノはギャンブルの一種であり、その運営にはプラス面・マイナス面の双方があることは事実で、マイナス面のひとつがギャンブル依存症です。これは何もカジノに限ったことではなく、国内の既存のギャンブル産業も同じように抱えてきた問題でもあります。

取材を続けてきた印象をひとことで言うと、国内の議論ではロジックのすり替えばかりが目立つということです。パチンコや公営ギャンブル、宝くじなどのギャンブル産業を原因としているギャンブル依存症の解決について、なぜかカジノ・IRへ責任転嫁されています。IRはまだ日本に存在していないので、これでは解決に向かうわけがありません。

国内でギャンブル依存症問題の対策に取り組む「ギャンブル依存症問題を考える会」が今年9月にまとめた報告書によると、新聞で報道されたギャンブル依存症を原因とする事件ではパチンコ・パチスロへの依存症が大半を占めているそうです。パチンコ・パチスロ産業が日本のギャンブル産業で大きなシェアを占めているという事実からも、これは納得できる結果だと思います。

もちろん、大王製紙の横領事件なども実際に起こっており、カジノを原因とするギャンブル依存症がゼロであるということではありません。しかし、日本国内でカジノが解禁されていない現状においては、カジノのある海外リゾートに渡るか、国内の違法カジノに行くかの2択。どちらもハードルが高いので、既存のギャンブル産業と比較すれば限られたケースであることは明らかです。

一方で、報道もだらしないと感じています。ギャンブル依存症の問題について取り上げる一方で、CMや新聞広告ではギャンブル産業からの出稿が絶えないので、スポンサーとして過度に気を遣っているようにも見えます。ギャンブルのCMについて、カジノ・IRの先進国では「射幸心をあおる」ものとして制限されているのが通例ですが、日本では放置されてしまっています。

日本ではあるべきギャンブル依存症対策が導入されていないため、国際水準から見ても依存症罹患率が高くなっています。逆に言えば、しかるべき対策を導入すれば日本も国内のギャンブル依存症罹患率を減少させることも可能になります。実際に、2010年にIRを解禁したシンガポールの事例では、ギャンブル依存症対策を同時にスタートしたことによって、当初の懸念とは反対に国内のギャンブル依存症罹患率が減少を続けています。

ギャンブル依存症問題の解決について重要なことは。ギャンブルの種類や施設の数が問題なのではありません。適切な対策を導入できるかどうかです。今回から数回に分けて、この問題について掘り下げていきます。

リゾカジの歩き方! リゾカジsnsって何? 初心者のためのカジノ

マリーナ・ベイ・サンズ Marina Bay Sands

フライデークラブ

リゾート・ワールド・セントーサ

リスボア

プルマン・リーフカジノ

リゾート・ワールド・マニラ

AJPC

リゾカジスマホはじめました

RSSフィード

FlashGame

リゾカジ SNS

PROJECT NEXT